ヒット 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ヒット 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ヒットは、東京証券取引所グロース市場に上場しており、繁華街やロードサイドにおける屋外広告媒体の企画・開発・運営を行う広告事業を主軸に展開しています。直近の業績は、大型デジタル媒体の稼働が好調で売上高は増加しましたが、経常利益は微減となり、増収減益のトレンドとなっています。


**※本記事は、株式会社ヒット の有価証券報告書(第35期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。**

ヒット転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

1. ヒットってどんな会社?


屋外広告を専門とし、渋谷や大阪・道頓堀などの好立地に大型デジタルサイネージや看板を保有・運営する企業です。

(1) 会社概要


同社は1991年に設立され、屋外広告の販売を開始しました。2014年に渋谷駅前の大型ビジョン「シブハチヒットビジョン」の放映を開始し、その後も大阪・道頓堀や表参道などに大型媒体を展開しました。2019年にはシンガポールに現地法人を設立し、2025年7月に東京証券取引所グロース市場へ上場を果たしました。

2025年6月30日現在の従業員数は連結89名、単体88名です。筆頭株主は創業者であり代表取締役会長を務める松丸敦之氏で、第2位は同氏の資産管理会社であるボンド・ホールディングスです。

氏名 持株比率
松丸 敦之 62.10%
ボンド・ホールディングス 22.30%
深井 英樹 5.65%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性0名の計10名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は深井英樹氏です。社外取締役比率は20.0%です。

氏名 役職 主な経歴
松丸 敦之 代表取締役会長 1991年同社設立・代表取締役就任。2022年7月より現職。HIT SINGAPORE PTE. LTD.社長を兼務。
深井 英樹 代表取締役社長 日興證券(現SMBC日興証券)、メックス社長、ブレイントラスト社長等を経て、2016年同社入社。2022年7月より現職。
安田 仁裕 常務取締役 日興證券(現SMBC日興証券)、Olympic、エイチ・エス証券(現Jトラストグローバル証券)等を経て、2025年7月より現職。
勝山 宏哉 取締役 日興証券(現SMBC日興証券)、ティア等を経て、2017年同社入社。2022年7月より経営企画本部長(現任)。
髙橋 徹 取締役 日興証券(現SMBC日興証券)、インテグレックス等を経て、2018年同社入社。2025年7月より西日本事業本部長(現任)。
大岩 義典 取締役 タイタス・コミュニケーションズ(現JCOM)等を経て、2018年同社入社。2022年7月より管理本部長(現任)。


社外取締役は、川野毅(元ニューオータニ代表取締役経営管理室長)、長谷川潤(元電通スポーツパートナーズ代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「広告事業」の単一セグメントで事業を展開しています。

広告事業(屋外広告媒体事業)


同社は、不動産オーナーからビルの屋上や壁面を賃借し、広告用のデジタルサイネージやアナログ看板を設置・保有して、広告主に対し広告掲出サービスを提供しています。媒体は「デジタル媒体(デジタルサイネージ)」と「アナログ媒体(看板)」に大別され、さらに設置場所により「繁華街媒体」と「ロードサイド媒体」に分類されます。特に渋谷、表参道、大阪・道頓堀などの好立地における大型媒体の開発に強みを持ちます。

主な収益源は、広告主からの広告放映料や掲出料であり、アナログ媒体の場合は施工費なども含まれます。また、デジタル媒体用の「肉眼3D広告」等のクリエイティブ制作や、スマートフォン位置情報広告サービス「HIT-movi」等の周辺サービスも提供しています。これらの事業運営は主にヒットが行っており、連結子会社のHIT SINGAPORE PTE. LTD.はASEAN市場の調査等を担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近3期間の業績を見ると、売上高は順調に拡大を続けています。これは、繁華街における大型デジタル媒体の稼働が好調に推移したことや、新規媒体の開発が進んだことによるものです。利益面では、高い利益率を維持していますが、経常利益は直近で微減となりました。

項目 2023年6月期 2024年6月期 2025年6月期
売上高 34億円 41億円 44億円
経常利益 11億円 14億円 14億円
利益率(%) 33.1% 34.1% 31.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 8億円 9億円 9億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益も増加していますが、販売費及び一般管理費の増加により営業利益は横ばい圏で推移しています。依然として30%を超える高い営業利益率を維持しており、収益性の高いビジネスモデルであることがわかります。

項目 2024年6月期 2025年6月期
売上高 41億円 44億円
売上総利益 26億円 28億円
売上総利益率(%) 63.4% 62.2%
営業利益 14億円 14億円
営業利益率(%) 33.9% 31.4%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が4.0億円(構成比29.4%)、役員報酬が3.6億円(同26.2%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社は広告事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの比較情報は記載していませんが、事業全体としては、自社デジタル媒体の新規開発や既存媒体の好調な稼働により、増収を達成しています。

区分 売上(2024年6月期) 売上(2025年6月期) 利益(2024年6月期) 利益(2025年6月期) 利益率
広告事業 41億円 44億円 14億円 14億円 31.4%
連結(合計) 41億円 44億円 14億円 14億円 31.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社は、広告市場の回復と屋外広告市場の拡大を背景に、デジタル媒体への投資を積極的に行っています。営業活動によるキャッシュ・フローは、主に利益の計上により資金が増加しました。投資活動では、将来の事業展開を見据えた定期預金の預入等により資金を使用しました。財務活動では、借入金の返済等により資金が減少しました。

項目 2024年6月期 2025年6月期
営業CF 15億円 11億円
投資CF -10億円 -7億円
財務CF 3億円 -8億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「屋外広告のリーディングカンパニーとして世界を変えるメディアを創造する」という経営理念を掲げています。好立地かつ大型な広告媒体の開発や、特定エリアでの同時多面展開が可能な商品の開発を通じて、高い広告効果を提供し事業を拡大することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、理念実現のためのビジョンとして、「未来を見据えて発想し、理想を現実にする」「常にクライアント目線に立ち"最小の予算で最大の効果を発揮する"提案をする」「変化を歓迎しよう。リスクや失敗を恐れずチャレンジし、成功への糧とする」「高い倫理観を持ち、透明な企業活動を築く」「ダイバーシティの考えに基づき、社員お互いが尊重し目標を達成する」の5つを掲げています。

(3) 経営計画・目標


同社は、経営目標の達成状況を判断する指標(KPI)として、事業のポテンシャルを示す「自社デジタル媒体数」および「デジタル媒体満稿額」、効率性を測る「デジタル媒体稼働率」を設定しています。

* 自社デジタル媒体数:10媒体(第35期実績)
* デジタル媒体満稿額:7,840,000千円(第35期実績)
* デジタル媒体稼働率:42.7%(第35期実績)

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、更なる売上拡大に向けて、「新規媒体の開発」「広告媒体稼働率の向上」「屋外広告周辺サービスの強化」「海外展開」「DXによる業務効率化」「新規ビジネスへの取組み」の6つの戦略を推進しています。特に新規媒体開発では、繁華街での大型デジタル媒体開発を年間3~5媒体目標としています。また、将来的な人口減少を見据え、ASEAN諸国(シンガポール等)への進出を計画しており、現地法人の活用や人材配置を進めています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、事業拡大のために優秀な人材の確保・育成を重要な課題と認識しています。新卒および中途採用を積極的に行うとともに、社員研修の充実や資格取得支援制度の導入など教育の質を高めることで、高度な専門知識や経験を持つ人材の育成と定着を推進しています。また、ダイバーシティの推進や、働きがいのある職場環境の整備にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年6月期 35.1歳 4.8年 6,178,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、研修時間(2,151分)、新卒採用人数(11名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済状況の影響について


同社の広告事業は景気変動の影響を受けやすい傾向があります。国内外の景気悪化、物価上昇、為替変動、広告予算の削減等により、屋外広告媒体への出稿が減少した場合や、仕入価格が高騰した場合には、業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 国際情勢の影響について


デジタル媒体で使用するLEDパネル等は主に中国製であり、供給停止等のリスクがあります。また、海外からの広告出稿も多いため、国際情勢の変化により出稿減少や部材供給の不安定化が生じた場合、業績に影響が出る可能性があります。

(3) 法的規制等について


屋外広告業は、「屋外広告物法」や各自治体の条例等による規制を受けています。今後、法令等の改廃や新たな規制の制定、あるいは屋外広告業登録の取消し等が生じた場合には、事業活動に支障をきたし、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) 人材の確保及び育成について


広告主への直接営業を重視する同社では、営業社員の確保が重要です。また、媒体開発・管理には専門人材が不可欠です。必要な人材の採用・育成が計画通り進まない場合、競争力低下や事業拡大の制約となり、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。