※本記事は、総合商研株式会社 の有価証券報告書(第54期、自 2024年8月1日 至 2025年7月31日、2025年10月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 総合商研ってどんな会社?
北海道札幌市を拠点に、チラシ・カタログ等の商業印刷や年賀状印刷、Webコンテンツ制作などをワンストップで提供する企業です。
■(1) 会社概要
1969年に「プリント企画」として創業し、1972年に法人化されました。1983年に年賀状印刷事業を開始し、その後プリントハウス事業やWeb制作へと領域を拡大しています。2001年に店頭登録(後のジャスダック)、2022年の市場区分見直しによりスタンダード市場へ移行しました。近年では2023年にベトナムのBPO企業を持分法適用関連会社化するなど、事業領域を広げています。
2025年7月31日現在の連結従業員数は388名(単体359名)です。筆頭株主は合同会社実力養成会で、第2位に従業員持株会、第3位に大丸が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 合同会社実力養成会 | 26.94% |
| 総合商研従業員持株会 | 9.23% |
| 大丸 | 4.67% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性13名、女性1名の計14名で構成され、女性役員比率は7.1%です。代表取締役社長は小林直弘氏が務めています。社外取締役比率は28.6%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 小林 直弘 | 代表取締役社長兼経営管理室担当 | 2004年入社。制作センター部長、取締役制作本部長、専務取締役北海道統括、取締役副社長等を経て2022年10月より現職。味香り戦略研究所取締役を兼務。 |
| 片岡 廣幸 | 代表取締役会長 | 1980年入社。営業本部長、代表取締役社長兼営業本部長等を歴任。2022年10月より現職。 |
| 竹田 利之 | 常務取締役本州統括部長 | 2003年入社。商印営業2部長、営業本部長、執行役員本州統括営業部長等を経て2022年10月より現職。味香り戦略研究所取締役を兼務。 |
| 加藤 優 | 取締役名誉会長 | 1969年プリント企画創業。1972年総合商研設立とともに代表取締役社長就任。代表取締役会長を経て2022年10月より現職。札幌プリントピア理事長。 |
| 髙谷 真琴 | 取締役地方創生支援部長 | 1994年入社。常務取締役東日本統括、事業開発部長等を経て2025年4月より現職。 |
| 棟方 充 | 取締役年賀事業本部長 | 1990年入社。執行役員ふりっぱー事業部長、取締役北海道営業本部長、取締役戦略営業部長等を経て2025年4月より現職。 |
| 長岡 一人 | 取締役企画管理本部長 | 1993年入社。東京支社営業部長、執行役員年賀・物販事業部長、執行役員大阪支社営業部長等を経て2018年10月より現職。 |
| 大平 亮一 | 取締役年賀事業本部長 | 2007年入社。ITS部長、執行役員ITS部長を経て2020年10月より現職。 |
| 久留 正宏 | 取締役北海道営業本部長 | 2025年4月入社。北海道営業本部札幌営業部長を経て2025年10月より現職。 |
| 加藤 憲夫 | 取締役(常勤監査等委員) | 1984年入社。東京本部営業部長、年賀事業部長、執行役員事業開発部長等を経て2020年10月より現職。 |
社外取締役は、藤丸順子(ニコア代表取締役)、髙田育生(元道銀カード社長)、山川寛之(元札幌第一興産副社長)、谷藤健治(元北日本広告社社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「情報コミュニケーション事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 商業印刷
流通店舗のチラシをはじめ、パンフレット、カタログ、ポスターなどの商業印刷物の製造を行っています。また、Webやデジタルコンテンツの制作、サイン商材の製造も自社一貫体制で手掛けています。近年ではデジタル技術を活用し、動画や3DCGなどのクリエイティブ表現や、Web・SNS広告などのデジタル媒体を活用したマーケティング支援も強化しています。
収益は、主に流通・小売企業などの法人顧客から、印刷物の製造やデジタルコンテンツ制作、販促支援サービスの対価として受け取ります。運営は主に総合商研が行っており、連結子会社のプリントハウスがオンデマンド印刷サービスを提供しています。
■(2) 年賀状印刷
全国の郵便局や量販店等を通じて販売される年賀状の印刷を行っています。長年培ってきたノウハウを活かし、企画から製造、物流までを一貫して手掛けています。年賀状需要の減少に対応するため、Webやアプリなどの販売チャネルの拡大や、カタログ関連を含む年賀商材の開発強化に取り組んでいます。
収益は、日本郵便やマイプリントなどの主要取引先や一般消費者から、年賀状の印刷代金として受け取ります。運営は主に総合商研が担当しています。
■(3) その他
フリーペーパー「ふりっぱー」の企画・発行、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)事業、インターネット接続サービス、食品の味覚分析などを展開しています。BPO事業では、コールセンター業務やデータ入力、事務局代行などを提供しています。
収益は、広告主からの掲載料、BPO受託料、味覚分析サービスの利用料などから得ています。運営は、総合商研のほか、味覚分析については連結子会社の味香り戦略研究所が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は150億円から160億円台で推移しており、底堅い動きを見せています。利益面では、第51期に一時的な減少が見られたものの、その後は回復傾向にあり、直近の第54期では経常利益率が改善しています。当期純利益も増益基調を維持しており、堅調な経営状況がうかがえます。
| 項目 | 2021年7月期 | 2022年7月期 | 2023年7月期 | 2024年7月期 | 2025年7月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 162億円 | 153億円 | 159億円 | 158億円 | 162億円 |
| 経常利益 | 4.1億円 | 2.2億円 | 3.0億円 | 3.5億円 | 4.3億円 |
| 利益率(%) | 2.5% | 1.4% | 1.9% | 2.2% | 2.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 2.4億円 | 1.7億円 | 1.9億円 | 2.5億円 | 3.2億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を見ると、売上高の増加に伴い売上総利益が増加しています。売上原価率は微減しており、利益率の改善に寄与しています。販売費及び一般管理費は増加していますが、増収効果により営業利益率は前年を上回っています。全体として収益性が向上していることが読み取れます。
| 項目 | 2024年7月期 | 2025年7月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 158億円 | 162億円 |
| 売上総利益 | 47億円 | 50億円 |
| 売上総利益率(%) | 30.0% | 31.0% |
| 営業利益 | 2.5億円 | 3.5億円 |
| 営業利益率(%) | 1.6% | 2.2% |
販売費及び一般管理費のうち、その他が20億円(構成比44%)、給料及び手当が18億円(同38%)、運賃が8億円(同18%)を占めています。売上原価については内訳の記載がありません。
■(3) セグメント収益
同社は「情報コミュニケーション事業」の単一セグメントですが、サービス別の売上状況を見ると、主力の商業印刷が増収となり全体を牽引しています。一方、年賀状印刷は需要減少の影響を受け減収となりました。その他事業は微増で推移しています。
| 区分 | 売上(2024年7月期) | 売上(2025年7月期) |
|---|---|---|
| 商業印刷 | 104億円 | 111億円 |
| 年賀状印刷 | 53億円 | 50億円 |
| その他 | 0.9億円 | 0.9億円 |
| 連結(合計) | 158億円 | 162億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
総合商研は、情報コミュニケーション事業を主軸に、堅調な事業展開を進めています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、利益創出や減価償却費の計上により増加したものの、税金等の支払いがそれを上回ったため、前年と比較して減少しました。投資活動では、設備投資等により資金が流出しました。財務活動では、借入による収入があったものの、借入金の返済がそれを上回り、資金が流出しました。
生産・受注・販売実績は、各地域で前年を上回る伸びを示しており、特に受注残高は増加傾向にあります。
| 項目 | 2024年7月期 | 2025年7月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 9億円 | 6億円 |
| 投資CF | 0.4億円 | -2億円 |
| 財務CF | -11億円 | -3億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、地域に根差し、顧客や生活者に寄り添いながら、情報伝達サービスを中心としたソリューションの提供を通じて社会課題の解決に取り組み、新たな価値を創出する「クリエイティブカンパニー」を目指しています。社名の由来である「総合的に商業や商売、商流について研究する」というコンセプトを大切にしています。
■(2) 企業文化
同社は「性善説」を基本とし、良い土壌には素晴らしい花が咲くと信じて努力を続けることを重視しています。また、動機が不純なことは行わず、株主、顧客、社員、取引先、地域社会、消費者に対して「ウソ、ごまかし、だまし」はしないという倫理観を持った行動を基本としています。社是として「共存共栄」を掲げています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、具体的な数値目標を含む中期経営計画の詳細な数値は開示していませんが、「4つの成長軸」を掲げて事業を展開しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
「リアリティの追求」「販売促進プラス」「企業間連携構想」「新規事業への投資」の4つを成長軸としています。既存事業では商業印刷の収益性向上や年賀状印刷のシェア維持・拡大を図りつつ、デジタル技術を活用したマーケティング機能の強化や、動画・3DCGなどのクリエイティブ表現の進化に取り組みます。また、BPO事業の拡大や地方創生支援事業の展開など、既存の枠を超えた領域への挑戦も進めています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、社員を「価値を生み出す財産」と位置づけ、多様な価値観を持つ人材の採用強化や、能力を発揮できる環境整備を進めています。具体的には、給与水準の向上やキャリアごとの給与体系確立による待遇改善、女性管理職比率の向上などの多様性推進、研修や勉強会を通じた人材育成に注力しています。また、「やる気と熱意」を成長の源泉とし、社員の成長を支援する体制を整えています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年7月期 | 45.3歳 | 13.4年 | 4,985,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 18.8% |
| 男性育児休業取得率 | 75.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 71.2% |
| 男女賃金差異(正規) | 83.8% |
| 男女賃金差異(非正規) | 82.7% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、係長職以上の女性社員の割合(27.5%)、月平均所定外労働時間(25.6時間)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 特定顧客・業界への依存
大手流通・小売企業および日本郵政グループへの売上依存度が高くなっています。これらの企業の業績悪化による受注減少や、紙媒体からデジタル媒体へのシフト加速などにより取引額が変動した場合、同社の業績に重大な影響を与える可能性があります。
■(2) 材料価格の変動
印刷用紙やインクなどの原材料価格が、世界情勢の変化や原油価格の高騰、製紙市場の需給バランスなどの影響を受けて著しく高騰した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。同社は複数メーカーからの調達や価格転嫁の交渉などで対応を図っています。
■(3) 事業の季節的変動
同社の売上は、年賀状印刷や年末年始商戦に関連する受注により、上半期に偏る傾向があります。そのため、上半期に災害等のマイナス要因が発生した場合、通期の業績に重大な影響が及ぶ可能性があります。同社は閑散期における事業展開を推進し、平準化を目指しています。



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