ヤスハラケミカル 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ヤスハラケミカル 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場の化学メーカーです。植物由来の天然原料「テルペン」を出発点とした化学製品やホットメルト接着剤、ラミネートフィルムの製造・販売を主力事業としています。第67期は、自動車用品用途や電子材料分野の好調により、売上高147億円、経常利益19億円の増収増益を達成しました。


※本記事は、ヤスハラケミカル株式会社の有価証券報告書(第67期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ヤスハラケミカルってどんな会社?


天然由来のテルペン樹脂や接着剤、ラミネートフィルム等を製造・販売する化学メーカーです。

(1) 会社概要


1959年に安原油脂工業として設立され、1989年に現社名へ変更しました。1995年に広島証券取引所へ上場し、2000年には東証二部へ上場しました。主力工場である新居浜工場や福山工場の設備拡張を進め、2022年の市場区分見直しにより東証スタンダード市場へ移行しています。

同社は連結子会社を持たず、単体での従業員数は231名です。筆頭株主は同族資産管理会社のワイエス興産で、第2位は社長の安原禎二氏、第3位は取引先持株会となっています。上位株主には創業家や関係者が名を連ねており、安定した株主構成となっています。

氏名 持株比率
ワイエス興産有限会社 13.63%
安原 禎二 13.07%
ヤスハラケミカル取引先持株会 10.84%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は安原禎二氏が務めています。社外取締役比率は28.6%です。

氏名 役職 主な経歴
安原 禎二 取締役社長(代表取締役) 1979年入社。1998年代表取締役専務を経て、2000年6月より現職。ワイエス興産および有限会社スマイルの代表取締役社長も兼務。
新井 隆太郎 取締役常務(代表取締役) 2019年入社。2023年営業部長、2024年取締役を経て、2025年4月より現職。
原田 桂子 取締役経営統括本部長 2019年入社。社長室室長、経営企画部長を経て、2024年4月より現職。
栗本 倫行 取締役生産本部長 1991年入社。新居浜工場長、技術一部長などを歴任。2016年取締役就任。2019年4月より現職。
中居 英尚 取締役(監査等委員) 1983年入社。取締役生産本部長を経て、2016年6月より現職。


社外取締役は、神原宏尚(神原宏尚法律事務所所長)、前岡大(前岡大公認会計士税理士事務所所長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「テルペン化学製品」「ホットメルト接着剤」「ラミネート品」事業を展開しています。

テルペン化学製品事業

粘着・接着用樹脂(テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂など)や、オレンジ油、テレピン油などの化成品の製造・販売を行っています。これらの製品は、自動車用品、電子材料、医薬原料など幅広い分野に応用されています。

収益は、国内外の顧客への製品販売による対価です。主要な販売先には横浜ゴムなどが含まれます。運営はヤスハラケミカルが行っています。

ホットメルト接着剤事業

食品包装用などを中心としたホットメルト型接着剤の製造・販売を行っています。環境配慮型や高機能な接着剤の開発も進めています。

収益は、製品の販売代金です。運営はヤスハラケミカルが行っています。

ラミネート品事業

主に光沢化工紙用などのラミネートフィルムの製造・販売を行っています。

収益は、製品の販売代金です。運営はヤスハラケミカルが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は着実に増加傾向にあり、第67期は147億円に達しました。利益面でも、経常利益は前期比で大きく伸長し19億円、当期純利益も14億円と過去5年間で最高水準を記録しています。利益率も向上しており、好調な業績推移を示しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 113億円 126億円 119億円 132億円 147億円
経常利益 5億円 11億円 6億円 12億円 19億円
利益率(%) 4.2% 9.0% 5.3% 8.9% 12.8%
当期純利益 3億円 8億円 7億円 6億円 14億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い売上総利益が拡大し、利益率も向上しています。販売費及び一般管理費は増加しているものの、増収効果が上回り、営業利益は大幅に伸長しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 132億円 147億円
売上総利益 27億円 38億円
売上総利益率(%) 20.1% 26.2%
営業利益 7億円 18億円
営業利益率(%) 5.2% 12.4%


販売費及び一般管理費のうち、荷造運賃が4億円(構成比19%)、給料手当が3億円(同17%)を占めています。また、研究開発費は3億円(同15%)となっています。

(3) セグメント収益


主力のテルペン化学製品は、自動車用品用途の樹脂や電子材料分野の化成品が好調で増収増益となり、全社利益を牽引しました。ホットメルト接着剤は食品用途が好調で黒字転換し、ラミネート品も増収増益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
テルペン化学製品 98億円 111億円 16億円 25億円 22.2%
ホットメルト接着剤 29億円 31億円 -1億円 3億円 8.3%
ラミネート品 5億円 5億円 -0.1億円 0.3億円 4.9%
連結(合計) 132億円 147億円 7億円 18億円 12.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業で稼いだ資金(営業CFプラス)をもとに、投資(投資CFマイナス)を行いながら、借入金の返済や配当支払い(財務CFマイナス)を進めており、健全な資金循環となっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 8億円 31億円
投資CF 1億円 -8億円
財務CF -22億円 -15億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.7%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は76.0%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「自然の恵みと科学技術を融合させる独創企業として、産業と生活の向上につながる活動領域をひろげます。」という基本理念を掲げています。テルペン化学で培った精神で、自然界の可能性を引き出し、高品質・高付加価値製品の供給を通じて社会や暮らしに貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は行動方針として「BEST」を掲げています。これは、向上心を持ってより良い状態を目指す「Better」、職務の重要性を認識し専門家を目指す「Expert」、創造と挑戦を行う「Spirit」、相互に尊重し合う「Team Work」の頭文字をとったもので、これらの精神に基づいた行動を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、投下資本の運用効率と収益性を測る指標として「ROA(総資産利益率)」を重視しており、長期的な目標値を4%としています。この目標達成のため、高付加価値製品の売上増進や生産の効率化に取り組んでいます。

* 長期的なROA目標値:4%

(4) 成長戦略と重点施策


天然由来資源を活用した高付加価値市場への展開とグローバル化を推進しています。特に自動車、電子材料、環境対応分野の開拓に注力するとともに、欧米・東南アジア市場への拡販を目指しています。また、生産合理化による収益性改善や、人材育成を通じた企業体質の強化にも取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


従業員一人ひとりが主体的に行動できる組織を目指し、人材の確保と育成を推進しています。従来の階層別教育に加え、幹部候補生養成トレーニングを実施することで社員の成長を促しています。また、働きやすい環境を整備することで、変化への対応力を高める方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 47.7歳 24.3年 6,764,223円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 10.5%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用) -
男女賃金差異(非正規) -


※同社は公表義務の対象ではないため、有報には男女賃金差異の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原材料調達リスク


主要原材料であるテルペン類は全量を輸入に依存しており、国際市況や為替相場の変動により仕入価格が影響を受ける可能性があります。また、気候変動等により調達自体が困難になるリスクもあります。これに対し、同社は備蓄による対応や新規調達先の多様化を進めています。

(2) 為替相場の変動


海外売上高比率が3割を超え、原材料輸入も外貨建てで行われているため、為替変動が業績に影響を与える可能性があります。輸出で獲得した外貨を輸入支払いに充てることでリスク軽減を図っていますが、完全な回避は困難です。

(3) 製造物責任による影響


製品の欠陥により顧客や第三者に損害を与えた場合、製造物責任賠償保険ではカバーしきれない損失が発生する可能性があります。品質管理の徹底やISO認証取得などの対策を講じていますが、財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。