※本記事は、京都機械工具株式会社の有価証券報告書(第76期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 京都機械工具ってどんな会社?
京都機械工具は、自動車整備用などを中心とした作業工具の製造販売を主力とする老舗の工具メーカーです。
■(1) 会社概要
同社は1950年8月に自動車搭載工具の製造を目的として設立され、翌1951年に国内市販用作業工具の製造を開始しました。1980年3月に大阪証券取引所市場第二部および京都証券取引所に上場し、事業の拡大を続けています。2023年1月にはHI-TOOLを完全子会社化し、生産・供給体制の基盤強化を図っています。
現在の従業員数は連結で248名、単体で205名です。筆頭株主は元役員の宇城邦英氏で、第2位および第3位には三菱UFJ銀行や明治安田生命保険相互会社などの大手金融機関が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 宇城邦英 | 7.13% |
| 三菱UFJ銀行 | 4.92% |
| 明治安田生命保険相互会社 | 4.80% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性5名、女性1名の計6名で構成され、女性役員比率は16.0%です。代表取締役社長社長執行役員は伊吹和彦氏が務めており、社外取締役の比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 伊吹和彦 | 代表取締役社長社長執行役員 | 1985年3月同社入社。2014年7月執行役員、2019年4月常務執行役員T&M推進本部長、2020年6月取締役等を経て、2025年4月より現職。 |
| 川田実 | 取締役常務執行役員 | 1992年4月三菱銀行入行。三菱UFJ銀行横浜支社長等を経て2023年4月同社執行役員。2025年5月HI-TOOL代表取締役社長(現任)。2025年10月より現職。 |
| 大橋博 | 取締役(監査等委員) | 1993年4月同社入社。コーポレートサービス本部経理部長、経営統括部長等を経て、北陸ケーティシーツール監査役等を歴任。2025年11月より現職。 |
社外取締役は、谷明典(弁護士法人北浜法律事務所代表社員弁護士)、岩永憲秀(ひかり監査法人統括代表社員)、長谷川葵(弁護士法人色川法律事務所社員弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「工具事業」および「ファシリティマネジメント事業」を展開しています。
■工具事業
自動車整備用工具、医療用工具、電設関連工具、一般作業工具およびこれらに関連する機器や、ロストワックス製法による精密鋳造品の製造販売を行っています。自動車整備現場などのプロユースから一般ユーザーまで、多様化するニーズに対応した安全で使いやすいツールを市場に提供しています。
主な収益源は、販売代理店などを通じて得られる製品の販売代金や保守サービス料です。事業の運営は主に京都機械工具が担っており、製品の加工や製造などは連結子会社の北陸ケーティシーツールおよびHI-TOOLが行っています。
■ファシリティマネジメント事業
同社が保有する不動産の有効活用を目的として、賃貸オフィスビルや賃貸商業施設などの業務用不動産の運営管理、および太陽光発電設備を利用した売電事業を行っています。
主な収益源は、所有する不動産の入居テナントから毎月受け取る不動産賃貸料収入や、太陽光発電による電力の販売収入です。本事業の運営は主に京都機械工具と北陸ケーティシーツールが実施しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は80億円から90億円規模で推移しており、底堅い需要に支えられて一定の事業規模を維持しています。利益面については、原材料費や人件費の高騰に加え、不適切会計事案や製品の自主回収に伴う費用の計上などが重なり、直近は利益率が低下する傾向にあります。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 79.4億円 | 84.0億円 | 84.3億円 | 90.5億円 | 83.3億円 |
| 経常利益 | 7.6億円 | 8.3億円 | 9.0億円 | 9.4億円 | 8.2億円 |
| 利益率(%) | 9.6% | 9.8% | 10.7% | 10.4% | 9.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 5.0億円 | 6.1億円 | 6.6億円 | 6.0億円 | 5.0億円 |
■(2) 損益計算書
売上高と営業利益は前期比で減少しています。生産性向上のための設備投資や経費削減に努めたものの、市販部門等での販売伸び悩みや調達コスト・人件費の増加が利益を圧迫する結果となりました。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 90.5億円 | 83.3億円 |
| 売上総利益 | 33.7億円 | 32.2億円 |
| 売上総利益率(%) | 37.2% | 38.7% |
| 営業利益 | 8.5億円 | 7.5億円 |
| 営業利益率(%) | 9.4% | 9.0% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が6.5億円(構成比26.1%)、荷造運送費が4.3億円(同17.5%)を占めています。また、売上原価は51.1億円であり、売上高に対する構成比は61.3%となっています。
■(3) セグメント収益
主力の工具事業は、一部製品の自主回収に伴う影響などにより前期比で減収となりました。一方、ファシリティマネジメント事業は、所有不動産の安定稼働や新たな収益物件の貢献により増収を確保しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 工具事業 | 88.1億円 | 80.8億円 |
| ファシリティマネジメント事業 | 2.3億円 | 2.6億円 |
| 連結(合計) | 90.5億円 | 83.3億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
投資CFがプラスに転じ、営業CFと合わせて得られた資金で借入の返済などを進めていることから、財務体質の改善に取り組む局面であると判断できます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 10.7億円 | 2.3億円 |
| 投資CF | -12.5億円 | 1.4億円 |
| 財務CF | -3.2億円 | -2.1億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は79.9%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、社是として「お互いに誠実でたゆまず前進し、軽くて強くて使いよい工具を創り、社会に貢献しよう」を掲げています。品質・価格・納期の面において顧客の要求に最大限応えられる製品とサービスを提供し、法令を遵守しながら安全や環境面でも地域や社会に貢献できる企業グループを目指しています。
■(2) 企業文化
社訓として「信用・誠実・協調・創造・実行」を定めており、これらの価値観を日々の業務の基盤としています。また、サステナビリティに関する方針として「地球に、社会に、私たちができること」を掲げ、環境問題への対応や多様なステークホルダーとの共生を重視して事業活動を推進しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、2030年度を最終年度とする新5ヵ年計画「Restart KTC vision 2030」を推進しています。まずは不適切会計等の課題に対し強固な経営基盤を再構築し、その上に本質的な成長を重ねることで着実な目標達成を目指しています。
・売上高100億円
・営業利益率10%
・PBR1倍
・ROE8%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
主力の工具事業において「もの」から「こと」を提案するサービス事業への領域拡大を加速させます。具体的には、IoT技術を用いた「TRASAS」シリーズや、RFIDを搭載した「nepros ID」など、ソフトウェアとサービスを組み合わせた新たな価値の提供に注力します。また、人とロボットの協働環境の構築など、サプライチェーンの強化も進めます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「Restart KTC vision 2030」の達成に向け、従業員一人ひとりが能力を最大限に発揮できる職場づくりと、主体的なキャリア形成の支援を推進しています。採用の拡大やITなどの高度専門人材の確保を重要課題と位置づけるとともに、教育研修制度を充実させ、内部人材と外部人材が融合して成長できる環境づくりに取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 40.6歳 | 17.0年 | 5,815,766円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 4.4% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
※男女賃金差異については、同社および連結子会社が公表義務の対象ではないため、有報には記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 製品品質と新サービス展開におけるリスク
ISO9001を取得し品質最優先のものづくりを進めていますが、製品開発や製造過程における品質上のリスクを完全に排除することは困難です。IoT技術を搭載した製品やサービス事業への領域拡大により、新たな品質リスクが顕在化し業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 地政学リスクに伴う調達・生産網の混乱
国内外のサプライヤーから鋼材や部品を調達していますが、通商政策の動向や地政学リスクに起因するサプライチェーンの混乱が生じる可能性があります。これに伴い材料やエネルギー価格が高騰し、調達難に見舞われた場合、生産および供給能力に悪影響を及ぼす恐れがあります。
■(3) 流通ルートの変革と競争激化
創業以来、自動車関連に強みを持ち販売代理店ルートを中心に展開していますが、外部環境の変化に伴う流通ルートの変革が売上に影響を与える可能性があります。また、顧客の求める総合的なサービスを競争力のある価格で提供できない場合、市場シェアを喪失する懸念があります。



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