京都機械工具 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

京都機械工具 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場の工具メーカーです。主力は自動車整備用工具で、国内トップクラスのシェアを誇ります。IoT技術を搭載した次世代工具の開発やファシリティマネジメント事業も展開しています。当期は自動車市場向けの販売が堅調に推移し、売上高90億円(前期比7.3%増)と増収を達成しましたが、最終利益は減益となりました。


※本記事は、京都機械工具株式会社の有価証券報告書(第75期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年9月16日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 京都機械工具ってどんな会社?


自動車整備用工具や一般作業工具の製造販売を主力とし、「KTC」ブランドで知られる老舗工具メーカーです。

(1) 会社概要


同社は1950年に設立され、自動車搭載工具の製造を開始しました。1980年には大阪証券取引所市場第二部および京都証券取引所に上場を果たしています。その後、中国での子会社設立などを経て、2013年の市場統合に伴い東京証券取引所市場第二部に上場しました。2022年の市場区分見直しにより、現在はスタンダード市場に移行しています。

現在の従業員数は連結で244名、単体で198名です。筆頭株主は同社役員(会長)の宇城邦英氏で、第2位以降は大手都市銀行や生命保険会社などの金融機関が名を連ねています。

氏名 持株比率
宇城邦英 7.12%
三菱UFJ銀行 4.92%
明治安田生命保険相互会社 4.80%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長社長執行役員は伊吹和彦氏が務めています。社外取締役比率は37.5%です。

氏名 役職 主な経歴
伊吹和彦 代表取締役社長社長執行役員 1985年同社入社。常務執行役員T&M推進本部長、取締役などを経て2025年4月より現職。
片岡実 取締役副社長副社長執行役員 1982年三菱銀行入行。三菱東京UFJ銀行本店長等を経て同社入社。2019年6月より現職。
宇城邦英 取締役会長 1981年同社入社。代表取締役社長社長執行役員最高執行責任者等を経て2019年6月より現職。
田中滋 取締役 1977年同社入社。代表取締役社長社長執行役員等を経て2025年4月より現職。
安藤基嗣 取締役執行役員ものづくり技術本部長 1989年同社入社。北陸ケーティシーツール代表取締役社長等を務め、2022年6月より現職。


社外取締役は、津田穂積(津田公認会計士事務所所長)、鈴木治一(植松・鈴木法律事務所所長)、岩永憲秀(岩永公認会計士事務所所長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「工具事業」、「ファシリティマネジメント事業」の2つの報告セグメントを展開しています。

(1) 工具事業


自動車整備用工具、医療用工具、精密鋳造部品などの製造販売を行っています。主力製品には、汎用工具や専用工具のほか、IoT技術を搭載した測定具「TRASAS」シリーズなどがあります。顧客は主に自動車整備業界や産業機械メーカーなどです。

収益は、製品の販売代金および保守サービス料から得ています。運営は主に京都機械工具が行っており、製造の一部を連結子会社の北陸ケーティシーツールやHI-TOOLが担っています。

(2) ファシリティマネジメント事業


同社グループが所有する不動産の有効活用を目的として、不動産の賃貸および管理運営を行っています。また、太陽光発電設備による売電事業も含まれます。

収益は、テナントからの賃貸料および電力会社への売電収入から得ています。運営は主に京都機械工具が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、売上高が73億円から90億円へと着実に成長しています。経常利益も5億円台から9億円台へと拡大傾向にあります。当期は売上高、経常利益ともに増加しましたが、当期純利益は製品回収関連の特別損失計上などが響き、前期を下回りました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 73.2億円 79.4億円 84.0億円 84.3億円 90.5億円
経常利益 5.1億円 7.6億円 8.3億円 9.0億円 9.4億円
利益率(%) 6.9% 9.6% 9.8% 10.7% 10.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 3.4億円 5.1億円 5.9億円 5.8億円 5.4億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加し、売上総利益も微増しました。一方で販売費及び一般管理費が増加したため、営業利益は前期と同水準に留まりました。売上総利益率は38.9%から37.2%へと低下しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 84.3億円 90.5億円
売上総利益 32.8億円 33.7億円
売上総利益率(%) 38.9% 37.2%
営業利益 8.5億円 8.5億円
営業利益率(%) 10.0% 9.4%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が6.1億円(構成比24%)、荷造運送費が4.4億円(同17%)を占めています。

(3) セグメント収益


工具事業は、自動車市場向け販売や高付加価値製品が堅調で増収となりましたが、利益は微増にとどまりました。ファシリティマネジメント事業は、不動産取得費用などが影響し、増収ながら減益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
工具事業 82.0億円 88.1億円 6.9億円 6.9億円 7.8%
ファシリティマネジメント事業 2.3億円 2.3億円 1.6億円 1.6億円 68.1%
連結(合計) 84.3億円 90.5億円 8.5億円 8.5億円 9.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社は、運転資金は内部資金で賄い、不足時は短期借入金で調達しています。設備資金は、設備投資計画に基づき、内部資金で不足する場合は長期借入金等で調達する財務政策をとっています。

営業活動によるキャッシュ・フローは、製造販売業として必要な原材料等の仕入や販売費及び一般管理費等の営業費用により変動します。投資活動によるキャッシュ・フローは、工場や機械装置、DX推進のための設備投資、ソフトウェア開発等の無形固定資産投資により生じます。財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金の返済や調達等により変動します。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 5.0億円 10.7億円
投資CF -2.0億円 -12.5億円
財務CF -1.8億円 -3.2億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、社是として「お互いに誠実でたゆまず前進し、軽くて強くて使いよい工具を創り、社会に貢献しよう」を掲げています。品質・価格・納期の面で顧客の要求に応える製品とサービスを提供し、企業の継続的発展を目指すとともに、法令遵守や安全・環境面でも社会に貢献する企業グループを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、社訓として「信用・誠実・協調・創造・実行」を掲げています。これらを経営理念の根底に置き、顧客、社会、従業員等のステークホルダーに対して誠実に向き合い、信頼される企業であり続けることを重視しています。

(3) 経営計画・目標


長期ビジョン「KTC vision 2030」を策定し、2030年度までの9年間を3つのフェーズに分けて中期経営計画を実行しています。本業での収益性を示す営業利益率を重要な指標と位置づけ、当面の目標として以下の数値を掲げています。

* 営業利益率:10%

(4) 成長戦略と重点施策


「TRASAS&neprosで、世界に通ずるトップブランドとして、持続的成長を確実に遂げる」を基本方針に掲げています。IoT技術を用いた「TRASAS」シリーズやRFID搭載工具「nepros ID」の展開により、作業管理の効率化や安全性向上に貢献します。また、サプライチェーンマネジメントの強化や、人とロボットの協働によるものづくり革新にも注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「人の成長」を人事の基本とし、社員一人ひとりが能力を最大限に発揮できる環境づくりを進めています。多様な価値観に対応した人材登用や、成長と能力発揮を目的とした投資を行い、「人を中心に置きながら人に依存しない体制」を構築することで、社員が働きがいを感じられる会社を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 40.9歳 17.1年 5,877,512円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」等の規定による公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員エンゲージメント(56.3ポイント)、育児休業等の取得率(女性)(100.0%)、育児休業等の取得率(男性)(33.3%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 品質問題による業績への影響


ISO9001を取得するなど品質管理を徹底していますが、製品開発や製造過程でのリスクを完全に排除することは困難です。製品の不具合やリコールが発生した場合、対策費用の発生や社会的信用の低下により、同社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 調達・生産体制に関するリスク


国内外から原材料や部品を調達していますが、ウクライナ情勢や中東情勢などの地政学的リスクによりサプライチェーンが混乱する可能性があります。これにより材料・エネルギー価格の高騰や調達難が生じた場合、生産・供給能力が低下し、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 販売ルート・市場競争のリスク


同社は自動車関連市場に強みを持ち、販売代理店を通じた販売が中心ですが、流通構造の変化により売上が減少する可能性があります。また、国内外の競合他社との競争において、価格やサービス面での優位性を維持できない場合、市場シェアの低下を招く恐れがあります。

(4) 連結子会社の管理リスク


国内に工具事業を行う連結子会社を有していますが、これらの業績が悪化した場合、グループ全体の経営成績に影響します。また、子会社における不適切な会計処理等の不祥事が発生した場合、内部統制上の問題として社会的信用の低下や対応コストの発生につながる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。