アルチザネットワークス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アルチザネットワークス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場する通信計測機メーカーです。移動体通信やネットワーク機器の開発・テストに必要な計測器の開発・販売およびテストサービスを主力事業としています。第35期は、顧客の投資減速により減収となったものの、固定費削減等により経常利益は大幅増益となり、最終黒字化を達成しました。


※本記事は、株式会社アルチザネットワークスの有価証券報告書(第35期、自 2024年8月1日 至 2025年7月31日、2025年10月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. アルチザネットワークスってどんな会社?


通信インフラの開発・構築を支える計測器メーカーです。5Gなどの次世代通信技術に対応した製品開発やテストサービスを展開しています。

(1) 会社概要


1990年に設立され、翌年には自社製品SS7テストシステムを開発しました。2001年に東証マザーズへ上場し、その後2014年に東証二部へ市場変更、2022年の市場区分見直しによりスタンダード市場へ移行しました。近年では5Gテストシステムの開発や、子会社化を通じたテストサービス事業の拡大を進めています。

連結従業員数は161名、単体では132名です。筆頭株主は創業者の床次隆志氏で、第2位は同氏の資産管理会社と思われる有限会社エス・エイチ・マネジメント、第3位は個人株主となっています。

氏名 持株比率
床次 隆志 20.04%
有限会社エス・エイチ・マネジメント 9.11%
東 政光 1.48%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性0名、計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長執行役員は床次直之氏が務めています。社外取締役比率は20.0%です。

氏名 役職 主な経歴
床次 直之 代表取締役社長執行役員 1992年入社。開発、品質管理、営業等の本部長を歴任し、2019年より現職。
床次 隆志 代表取締役会長 1990年同社設立とともに代表取締役社長に就任。2019年より現職。
永井 英樹 取締役執行役員 2005年入社。モバイルプロダクト事業本部長などを経て、管理本部長および営業推進本部長を務める。
近藤 誠司 取締役 日本電気入社後、NECプラットフォームズ執行役員を経て2023年同社入社。2024年より現職。


社外取締役は、Jacob J. Hsu(元イネオクエスト社取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「物販」「サービス」の2つの報告セグメントで事業を展開しています。

(1) 物販


移動体通信分野では「プロトコル・シミュレータ」と呼ばれる通信計測機や保守管理機器等の開発・販売を行っており、通信インフラ機器の信頼性向上に寄与しています。また、固定通信分野では「パケットキャプチャ」と呼ばれるネットワーク監視装置やセキュリティ関連製品の開発・販売を行い、ネットワーク品質の向上を支援しています。

収益は、通信事業者や通信機器メーカー等への製品販売から得ています。運営は主にアルチザネットワークスが行っています。

(2) サービス


移動体通信分野において、通信計測機や保守管理機器等を用いたテストサービスを提供し、通信インフラ機器の開発効率向上を支援しています。また、情報通信システムやネットワークにおける保守・運用・監視サービスも展開しています。

収益は、顧客からのテストサービス受託料や保守・運用・監視サービス料から得ています。運営は、テストサービス等をアルチザネットワークスが、保守・運用・監視サービス等を子会社のシー・ツー・エムが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年7月期から2022年7月期にかけては売上高・利益ともに増加傾向にありましたが、その後は売上高が減少傾向にあります。2024年7月期には一時赤字となりましたが、直近の2025年7月期では経常利益が増加し、黒字回復を果たしています。利益率は変動が大きく、開発投資や市場環境の影響を受けていることがうかがえます。

項目 2021年7月期 2022年7月期 2023年7月期 2024年7月期 2025年7月期
売上高 41億円 45億円 41億円 28億円 27億円
経常利益 8億円 15億円 4.3億円 0.5億円 2.5億円
利益率(%) 20.4% 32.4% 10.5% 1.6% 9.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 8億円 11億円 1.0億円 -1.6億円 1.2億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で減少しましたが、売上原価の低減により売上総利益はほぼ横ばいを維持し、利益率は改善しました。営業利益は前期の約3.6倍に増加しており、販売費及び一般管理費の抑制等の効果により、本業の収益性が向上していることが確認できます。

項目 2024年7月期 2025年7月期
売上高 28億円 27億円
売上総利益 17億円 17億円
売上総利益率(%) 59.0% 61.8%
営業利益 0.3億円 1.2億円
営業利益率(%) 1.2% 4.3%


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が8.4億円(構成比54%)、給料及び手当が1.4億円(同9%)を占めています。売上原価については、製品の製造に関わる部材費や労務費等が計上されていますが、詳細は割愛します。

(3) セグメント収益


物販セグメントは、国内向け販売が想定を下回ったことなどから減収となり、営業損失が拡大しました。一方、サービスセグメントはテストサービスの受託や保守サービスの獲得により増収となり、固定費削減効果もあって営業利益が大幅に増加しました。

区分 売上(2024年7月期) 売上(2025年7月期) 利益(2024年7月期) 利益(2025年7月期) 利益率
物販 17億円 14億円 -0.9億円 -2.6億円 -17.9%
サービス 11億円 13億円 1.2億円 3.7億円 29.6%
連結(合計) 28億円 27億円 0.3億円 1.2億円 4.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は78.1%で市場平均を上回っています。

項目 2024年7月期 2025年7月期
営業CF 2.3億円 4.0億円
投資CF -0.6億円 -41.3億円
財務CF -5.3億円 -5.9億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「全社員の成長と幸福を追求すると同時に、お客様、社会の進歩発展に貢献する」を経営理念として掲げています。技術志向型企業として、独自の研究開発とタイムリーな製品・サービスの提供を通じ、「品質・技術力・創造性でお客様の満足を獲得する」ことを事業目標としています。

(2) 企業文化


同社は、「人間として何が正しいか」を物事の判断基準とする独自の経営哲学「アルチザフィロソフィ」を定めています。この哲学をベースに、健全な企業風土の構築とコンプライアンスの徹底を図り、全社員が共有すべき考え方やルールとして浸透させています。

(3) 経営計画・目標


安定的な成長・発展の継続を目指し、中長期的な売上・利益成長、一定水準以上の利益率の確保、キャッシュ・フロー重視の3点を経営指標として掲げています。これらを達成することで企業価値の最大化を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


5Gや6Gなどの次世代移動体通信技術への対応を最重要課題とし、新製品開発やテスト環境の整備を進めています。また、インドや欧米などの海外市場開拓、固定通信分野等の次世代ネットワークソリューションの強化、ローカル5G等の新規事業開発にも積極的に取り組んでいます。加えて、テストサービスや保守サービス等のサービス事業を拡大し、収益源の多角化を図っています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材獲得を最重要課題の一つと位置づけ、教育制度の拡充により次世代の経営人材育成に注力しています。また、多様な人材が活躍できるよう、ワークライフバランスの充実やダイバーシティを推進し、働きがいのある職場環境の実現を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年7月期 39.6歳 8.2年 6,671,977円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 0.0%
男性労働者の育児休業取得率 100.0%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 73.9%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) 68.4%
労働者の男女の賃金の差異(非正規雇用) 81.1%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性正社員の比率(14.0%)、年次有給休暇平均取得日数(9.7日)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定業界・顧客への依存


売上が通信事業者や通信機器メーカーの研究開発・製造部門に集中しています。そのため、顧客の経営動向や開発方針、通信業界全体の設備投資状況によって、同社グループの業績が大きく影響を受ける可能性があります。

(2) 通信技術開発段階での受注変動


同社製品は通信技術開発の初期段階から使用されますが、研究開発部門での採用競争に敗れた場合、その後の製造・保守部門での受注にも悪影響を及ぼし、棚卸資産の評価減や減損損失につながるリスクがあります。

(3) 部品の製造中止・調達難


ハードウェア製品の寿命に対し電子部品の技術革新が速く、採用部品の製造中止リスクがあります。また、特定サプライヤーへの依存や世界情勢による供給遅延・価格高騰が発生した場合、製造計画や業績に悪影響を与える可能性があります。

(4) 人材の獲得・育成


製品の競争力は開発エンジニアの能力に依存しており、優秀な人材の確保と育成が不可欠です。採用や定着が計画通り進まない場合、製品開発の遅延や業務への支障が生じ、業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。