※本記事は、株式会社ファーマフーズ の有価証券報告書(第28期、自 2024年8月1日 至 2025年7月31日、2025年10月21日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ファーマフーズってどんな会社?
機能性素材の研究開発を起点に、自社開発素材を配合した製品の通信販売や創薬事業を展開するバイオ企業です。
■(1) 会社概要
1997年に機能性食品素材の開発・販売を目的として設立され、2006年に東証マザーズへ上場しました。2012年に通信販売事業を開始し、自社ブランド製品の直販体制を構築しています。2021年には明治薬品を完全子会社化し、医薬品製造機能を取り込みました。2022年の東証市場区分見直しに伴い、プライム市場へ移行しています。
同グループの連結従業員数は613名、単体では136名です。筆頭株主は日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口)で、第2位は創業者の金武祚氏、第3位は金氏の資産管理会社である株式会社PFホールディングスとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 10.82% |
| 金武祚 | 7.71% |
| PFホールディングス | 5.13% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役社長は金武祚氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 金武祚 | 取締役社長(代表取締役) | 太陽化学研究所長、常務取締役を経て1997年にファーマフーズ研究所(現同社)を設立。韓国高麗大学校生命工学院教授などを歴任し、1999年より現職。 |
| 益田和二行 | 専務取締役グループ経営統括担当通販事業担当 | 2003年入社。営業部課長、取締役営業部長、常務取締役を経て2019年専務取締役。明治薬品、フューチャーラボなどの代表取締役社長を兼務し、2023年より現職。 |
| 井上泰範 | 取締役 | 2016年入社。通販事業部課長、フューチャーラボ代表取締役社長、明治薬品専務取締役などを経て、2024年8月より取締役営業本部担当兼営業本部本部長。 |
| 金英一 | 取締役研究開発担当営業部門担当 | ロート製薬を経て2021年入社。開発部部長などを経て2023年取締役就任。2025年9月より現職。 |
| 東山寛尚 | 取締役管理部門担当 | 2018年入社。管理部経理課課長、社長室室長、バイオメディカル部部長などを歴任。PF Capital代表取締役社長を兼務し、2023年より現職。 |
| 佐村信哉 | 取締役 | ニッセン入社後、同社代表取締役社長、ニッセンホールディングス代表取締役社長などを歴任。SSプランニング代表取締役社長を務め、2015年より現職。 |
| 山根哲郎 | 取締役 | 医師。京都府立医科大学講師、松下記念病院院長などを経て同病院名誉院長。2018年より現職。 |
| 林由佳子 | 取締役 | 京都大学大学院農学研究科助手、講師、助教授、准教授を経て、2024年10月より同研究科教授および同社取締役。 |
社外取締役は、佐村信哉(元ニッセンホールディングス社長)、山根哲郎(松下記念病院名誉院長)、林由佳子(京都大学大学院教授)です。
2. 事業内容
同社グループは、「BtoB事業」「BtoC事業」「バイオメディカル事業」および「その他の事業」を展開しています。
■BtoB事業
機能性素材(GABA、ボーンペップ等)、健康食品、医薬品の研究開発・製造を行い、食品・医薬品メーカーや流通事業者に販売しています。また、明治薬品が医薬品製造受託(CMO)やドラッグストア向け販売(CHC)を行っています。
収益は、メーカーや流通事業者への製品・素材の販売代金や、製造受託による加工賃などから得ています。運営は主にファーマフーズと明治薬品が行っています。
■BtoC事業
独自素材を配合したサプリメント、医薬部外品、化粧品、医薬品などを、通信販売を通じて消費者に直接販売しています。主力製品には育毛剤「ニューモ」やサプリメント、まつ毛美容液などがあります。
収益は、一般消費者からの製品購入代金です。運営はファーマフーズ、明治薬品、フューチャーラボ、メディラボが行い、ファーマフーズコミュニケーションが受注業務を担っています。
■バイオメディカル事業
自己免疫疾患やがん等を対象とした抗体医薬品・ペプチド医薬品の研究開発、およびプロテオーム解析などの研究支援サービスを行っています。独自の抗体作製技術「ALAgene technology」を基盤としています。
収益は、提携製薬企業からの契約一時金、マイルストン収入、ロイヤリティ収入、および研究機関等からの解析受託料などから得ています。運営は主にファーマフーズが行っています。
■その他の事業
ベンチャーキャピタル事業や投資事業などを行っています。
収益は、ファンド運営による管理報酬や投資収益などです。運営はPF Capitalなどが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績推移を見ると、売上高は拡大傾向にあり、第26期に686億円まで達した後、第27期に一時減少しましたが当期は再び増加しました。利益面では変動があり、当期は新製品への広告投資や研究開発投資の強化により、前の期と比較して減益となっています。
| 項目 | 2021年7月期 | 2022年7月期 | 2023年7月期 | 2024年7月期 | 2025年7月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 468億円 | 602億円 | 686億円 | 621億円 | 653億円 |
| 経常利益 | 58億円 | 13億円 | 35億円 | 52億円 | 26億円 |
| 利益率(%) | 12.3% | 2.1% | 5.2% | 8.4% | 3.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 38億円 | -4億円 | 31億円 | 32億円 | 4億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は増加しましたが、売上総利益率の改善の一方で、販売費及び一般管理費が増加したため、営業利益は減少しました。積極的な広告宣伝や研究開発への投資が利益を圧迫している構造が見て取れます。
| 項目 | 2024年7月期 | 2025年7月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 621億円 | 653億円 |
| 売上総利益 | 488億円 | 526億円 |
| 売上総利益率(%) | 78.4% | 80.6% |
| 営業利益 | 51億円 | 24億円 |
| 営業利益率(%) | 8.2% | 3.6% |
販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が367億円(構成比73%)、その他が76億円(同15%)を占めています。売上原価については、商品原価や製造費用などが計上されています。
■(3) セグメント収益
BtoC事業が売上の大部分を占めており、当期は新製品の販売好調により増収となりましたが、広告宣伝費の増加により減益となりました。BtoB事業は明治薬品の受託方針転換等の影響で減収減益、バイオメディカル事業は開発フェーズのため損失が継続しています。
| 区分 | 売上(2024年7月期) | 売上(2025年7月期) | 利益(2024年7月期) | 利益(2025年7月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| BtoB事業 | 91億円 | 82億円 | 16億円 | 12億円 | 15.3% |
| BtoC事業 | 525億円 | 567億円 | 53億円 | 37億円 | 6.5% |
| バイオメディカル事業 | 5億円 | 3億円 | -3億円 | -4億円 | -114.2% |
| その他 | 0.2億円 | 0.2億円 | -0.2億円 | -0.1億円 | -66.7% |
| 調整額 | - | - | -15億円 | -22億円 | - |
| 連結(合計) | 621億円 | 653億円 | 51億円 | 24億円 | 3.6% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業・投資・財務いずれもマイナスで資金繰りが危機的な「末期型」です。ただし、同社の場合は営業CFのマイナス要因として法人税等の支払いや棚卸資産の増加が挙げられ、手元資金も潤沢にあるため、直ちに経営危機を示すものではありません。
| 項目 | 2024年7月期 | 2025年7月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 55億円 | -11億円 |
| 投資CF | -14億円 | -10億円 |
| 財務CF | -48億円 | -45億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.2%でプライム市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は35.4%でプライム市場平均(非製造業)を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは「医食の研究で貢献」をミッション、「ヘルスケアのリーディングカンパニー」をビジョン、「誠実、挑戦意欲」をバリューとして掲げています。人々の持続可能な健康的で幸せな社会の実現を目指して経営を行っています。
■(2) 企業文化
創業時からの企業理念として「ここには夢がある 笑がある」を掲げています。これは「夢と笑は自由な発想を生む」という考えに基づいています。また、「宇宙人以外は誰でも応募可能」をテーマに、国籍や性別にとらわれないダイバーシティ経営を実践し、多様な人材が能力を発揮できる環境を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
継続的な事業拡大を通じて企業価値の向上を目指しており、特に事業規模の拡大と成長性を重視する指標として「売上高1,000億円」を目標としています。この目標達成後には、収益性指標としての営業利益率も重視していく方針です。
■(4) 成長戦略と重点施策
「新価値創造 1Kプロジェクト」を掲げ、300億円規模の投資を開始しています。独自素材の開発や生産能力増強、M&Aに資金を投じ、成長を加速させる戦略です。
* BtoB事業:「ファーマギャバ」の米国FDA GRAS認証に向けた開発、未利用資源の活用、海外販路の拡大。
* BtoC事業:科学的根拠に基づく新製品開発、広告クリエイティブ開発による顧客満足度向上、システム効率化。
* バイオメディカル事業:創薬パイプラインの拡充、他社との共同開発推進、次世代抗体の創出。
* 全社:総額50億円超の「卵殻膜バイオものづくりプロジェクト」、約125億円の「医薬品新工場建設」。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
年齢、性別、国籍等にとらわれず、実行力や成果を重視した採用、評価、育成を行う人事制度の構築を進めています。各事業を担う人材がポテンシャルを最大限に発揮できるよう人的資本投資を行い、成長投資の成果最大化と将来のキャッシュ・フロー増加を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年7月期 | 39.3歳 | 5.0年 | 5,500,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 33.3% |
| 男性育児休業取得率 | 50.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 61.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 68.7% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 94.9% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 組織体制に関する事項
代表取締役社長である金武祚氏は設立時からの事業推進者であり、経営方針策定や人脈・営業力などで重要な役割を果たしています。組織的な対応強化を進めていますが、何らかの理由で同氏の業務遂行が困難になった場合、事業運営に支障が生じる可能性があります。また、専門知識を持つ研究員の確保が計画通り進まない場合、研究開発の遅れなど事業展開に影響が出る可能性があります。
■(2) ビジネスモデル上のリスク
研究開発に主軸を置いた経営を行っていますが、技術開発の進捗や市場情勢、法規制等の影響を受けます。特にバイオメディカル事業は不確実性が高く、研究開発の失敗や遅延、導出先が見つからない場合などに、投資回収ができなくなる可能性があります。BtoC事業では広告宣伝費の費用対効果が悪化したり、薬機法等の法規制に抵触する事象が発生したりした場合、業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 特定製品への依存
主力製品である「ニューモ育毛剤」の売上高は、グループ全体の売上高の約24.0%を占めています。何らかの理由により当該製品の仕入または販売に関して不測の事態が生じた場合、経営成績に影響を与える可能性があります。
■(4) 競合について
他社に対し優位性のある製品開発を目指していますが、大手メーカー等が機能性食品分野へ参入または事業拡大することで競争が激化することが予想されます。競合他社が優れた製品を開発・販売した場合、優位性が低下し、販売活動や業績に影響を与える可能性があります。



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