内田洋行 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

内田洋行 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム市場に上場する内田洋行は、公共・オフィス・情報の3事業を展開するICTと環境構築の複合企業です。直近の決算では、自治体システムの標準化対応やGIGAスクール構想の更新需要、民間企業のIT投資拡大などを背景に、売上高・各利益ともに過去最高を更新する大幅な増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社内田洋行 の有価証券報告書(第87期、自 2024年7月21日 至 2025年7月20日、2025年10月10日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 内田洋行ってどんな会社?


教育・オフィス・情報の3分野で、ICTと空間デザインを融合した環境構築を行う専門商社です。

(1) 会社概要


同社は1910年に満鉄御用商として創業し、1917年に現在の商号へ統一しました。1941年に現法人の母体となる会社を設立し、1969年には東証一部へ指定替えを果たしました。その後、ICT関連事業や海外展開を推進し、2022年には連結子会社であったウチダエスコを完全子会社化するなど、グループ再編を進めています。

同社グループの連結従業員数は3,272名、単体では1,113名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は大手損害保険会社、第3位も信託銀行となっており、金融機関や事業会社が主要株主として名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 11.41%
東京海上日動火災保険株式会社 4.42%
三井住友信託銀行株式会社 4.20%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性1名、計13名で構成され、女性役員比率は7.0%です。代表取締役社長は大久保昇氏が務めています。社外取締役比率は23.1%です。

氏名 役職 主な経歴
大久保 昇 取締役社長(代表取締役) 1979年入社。教育システム事業部長、マーケティング本部長、公共事業本部長、営業統括本部長などを歴任し、2014年7月より現職。
宮村 豊嗣 取締役専務執行役員公共ICT統括 1981年入社。教育ICT事業部長などを経て、2021年より公共ICT統括兼教育ICT事業部長。2024年7月より現職。
白方 昭夫 取締役専務執行役員ICTエンジニア統括 1981年入社。システムズエンジニアリング事業部長などを経て、2021年よりICTエンジニア統括。2025年7月より現職。
林 敏寿 取締役常務執行役員財務グループ統括 1983年入社。経営企画部長、グループ経営推進部長などを歴任。2021年より財務グループ統括。2023年7月より現職。
小柳 諭司 取締役常務執行役員営業支援グループ統括 1983年入社。営業グループ副統括、経営企画統括部長などを歴任。2020年より営業支援グループ統括。2024年10月より現職。
佐藤 将一郎 取締役主席執行役員経営・人事・総務グループ統括 兼 経営企画部長 1997年入社。経営企画部長、広報部長などを歴任し、2021年より経営・人事・総務グループ統括。2024年10月より現職。


社外取締役は、竹股邦治(元電源開発常務執行役員)、今庄啓二(元フューチャーベンチャーキャピタル社長)、田中雅子(元古河電気工業執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「公共関連事業」「オフィス関連事業」「情報関連事業」および「その他」事業を展開しています。

公共関連事業


大学・小中高市場へのICTシステム構築や機器販売、教育機器の製造販売、教育施設への空間デザインなどを手掛けています。また、官公庁自治体市場向けに基幹業務システムやICTシステムの構築、オフィス家具の製造・販売・施工なども行っています。

教育機関や自治体等から、システム構築費用、機器・家具の販売代金等を受け取るビジネスモデルです。運営は主に内田洋行が行うほか、ウチダエスコ、ウチダシステムズなどの連結子会社や関連会社が販売や施工、保守を担っています。

オフィス関連事業


民間および公共市場向けに、オフィス家具の開発・製造・販売、空間デザイン・設計・施工を行っています。また、ICT機器の販売や事務用機械、ホビークラフト関連製品の製造・販売も手掛けており、働き方の変化に対応したオフィス環境を提供しています。

顧客である企業や官公庁から、家具・機器の販売代金やデザイン・施工料を受け取ります。運営は内田洋行のほか、製造をサンテックや海外子会社が行い、販売・施工をウチダシステムズやウチダテクノなどのグループ会社が担当しています。

情報関連事業


民間企業向けに、基幹業務システムの設計・構築、ICT機器・ネットワークシステムの販売・保守、ソフトウェアライセンスの提供などを行っています。大手民間企業から中堅・中小企業まで幅広い顧客に対し、ITソリューションを提供しています。

企業からシステム開発費、機器販売代金、ライセンス料、保守・運用サービス料などを受け取ります。運営は内田洋行に加え、内田洋行ITソリューションズが開発・販売を、ウチダエスコが保守・設置を、ウチダスペクトラムがライセンス販売を担っています。

その他


上記報告セグメントに含まれない事業として、教育研修事業、人材派遣事業、不動産賃貸事業などを展開しています。民間企業向けの研修サービスや、グループ内での物流、事務受託なども含まれます。

顧客から研修受講料や派遣料、賃料などを受け取ります。運営はウチダ人材開発センタ(教育研修・人材派遣)や内田洋行(不動産賃貸)、関連会社の陽光(物流)などが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、売上高、利益ともに右肩上がりの成長トレンドにあります。特に直近では、GIGAスクール構想や自治体システム標準化、企業のIT投資需要を捉え、大幅な増収増益を達成しており、利益率も向上傾向にあります。

項目 2021年7月期 2022年7月期 2023年7月期 2024年7月期 2025年7月期
売上高 2,910億円 2,219億円 2,465億円 2,779億円 3,371億円
経常利益 110億円 78億円 92億円 101億円 131億円
利益率(%) 3.8% 3.5% 3.7% 3.6% 3.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 45億円 40億円 52億円 49億円 83億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高が約21%増加し、それに伴い売上総利益、営業利益も大きく伸長しています。増収効果に加え、利益率の改善も見られ、本業の収益力が強化されていることが読み取れます。

項目 2024年7月期 2025年7月期
売上高 2,779億円 3,371億円
売上総利益 477億円 524億円
売上総利益率(%) 17.2% 15.5%
営業利益 93億円 122億円
営業利益率(%) 3.4% 3.6%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が175億円(構成比43%)、その他が91億円(同23%)を占めています。売上原価については、商品及び製品の仕入等が大部分を占めています。

(3) セグメント収益


各セグメントともに増収増益となりました。公共関連は自治体システム標準化やNEXT GIGA需要で大幅増益、オフィス関連はリニューアル需要で堅調、情報関連はWindows更新需要やライセンス販売が好調で増収となりました。

区分 売上(2024年7月期) 売上(2025年7月期) 利益(2024年7月期) 利益(2025年7月期) 利益率
公共関連事業 809億円 928億円 30億円 52億円 5.6%
オフィス関連事業 563億円 594億円 16億円 20億円 3.3%
情報関連事業 1,397億円 1,837億円 44億円 46億円 2.5%
その他 10億円 12億円 2億円 3億円 24.3%
調整額 -62億円 -62億円 1億円 1億円 -
連結(合計) 2,779億円 3,371億円 93億円 122億円 3.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動によるキャッシュ・フローは、増収に伴う売上債権や棚卸資産の増加により、前年度から大幅に減少しました。これは、第4四半期の売上急伸に伴う運転資本(売上債権・在庫)の積み増しが、一時的にキャッシュ・フローを押し下げたことによるものです。

その結果、当期の営業活動で得られたキャッシュのみでは、投資活動および配当支払による支出を賄うに至らず、手元資金を充当する形となりました。事業投資や株主還元については継続して実施していますが、今後は債権回収等による資金効率の改善が焦点となります。

項目 2024年7月期 2025年7月期
営業CF 49億円 5億円
投資CF -18億円 -10億円
財務CF -24億円 -28億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は14.5%でプライム市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は40.3%でプライム市場(非製造業)平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「人間の創造性発揮のための環境づくりを通して豊かな社会の実現に貢献する」という企業理念を掲げています。すべてのステークホルダーから信頼と満足を得られる企業を目指し、コーポレートビジョン「情報の価値化と知の協創をデザインする」のもと、顧客の成長支援を通じて社会貢献と企業価値向上を追求しています。

(2) 企業文化


同社は、顧客の「働く」と「学ぶ」の発展に取り組んできた歴史を持ち、ICTと環境構築の両面からユニークな事業ユニットを構築しています。グループビジョン「情報の価値化と知の協創」を推進し、グループ全体のリソースを活用して、セグメントを超えた連携により、市場変化にフレキシブルに対応できる体制づくりを重視しています。

(3) 経営計画・目標


第17次中期経営計画(2025年7月期~2027年7月期)において、最終年度の数値目標と、経営指標としてのROE目標を掲げています。

* 連結売上高:3,400億円
* 連結営業利益:115億円
* ROE:10%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「人」と「データ」への投資を重視し、少子化や社会構造の変化に対応するトランスフォームを推進しています。グループ全体のリソースを結集し、ICTと環境構築のノウハウを融合させることで、独自の競争優位確立を目指しています。

* 公共市場:教育ICTおよび官公庁自治体事業を集結し、重点市場を深耕。
* 民間市場:グループ事業ユニット間の連携推進とSEの再編・強化。
* 基盤強化:グループ共通販売管理システムの構築と人事交流による統合加速。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


外部環境の変化に対応し、主体的にキャリアを切り拓く人材の育成を目指しています。特に管理職、女性社員、若年層、システムエンジニア、DX人材の育成に注力しています。また、仕事と生活の両立支援や健康経営を通じて、多様な人材が能力を発揮できる職場環境の整備を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均(763万円)とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年7月期 40.6歳 16.4年 7,783,747円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 7.6%
男性育児休業取得率 78.0%
男女賃金差異(全労働者) 73.5%
男女賃金差異(正規雇用) 70.5%
男女賃金差異(非正規雇用) 86.3%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒採用における女性割合(43.9%)、女性育児休業取得率(100%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 国内外の経済動向による影響


同社グループの事業は国内市場への依存度が高いため、国内経済の動向による影響を強く受けます。企業収益の悪化による設備投資の減少や、政府・自治体の財政悪化による公共投資の削減が発生した場合、業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 情報管理に関するリスク


顧客や取引先の個人情報・機密情報を多数取り扱っており、情報保護は信頼の根幹です。管理体制の整備や教育を行っていますが、万が一情報の漏洩が発生した場合、社会的信用の低下や損害賠償責任の発生により、業績や財務状況に悪影響が生じる可能性があります。

(3) 公的規制等に関するリスク


公正取引、環境、租税、独占禁止、事業許認可、輸出入など、多岐にわたる法令や規制の適用を受けています。これらを遵守できなかった場合、事業許可の取り消しや指名停止処分などにより事業活動が制限され、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。