アーバネットコーポレーション 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アーバネットコーポレーション 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場の不動産デベロッパー。東京23区・駅徒歩10分圏内の投資用ワンルームマンション開発・1棟販売を主力事業とする。2025年6月期は、戸建・アパート開発会社のM&A効果や都市型賃貸マンションの販売が好調に推移し、大幅な増収及び経常増益を達成した。


※本記事は、株式会社アーバネットコーポレーション の有価証券報告書(第28期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. アーバネットコーポレーションってどんな会社?


同社は、東京23区駅近の投資用ワンルームマンション開発を主力とするデベロッパーです。「ものづくり」にこだわり、デザイン性やアートを取り入れた独自性のある物件開発が特徴です。

(1) 会社概要


1997年に土木・建築設計等を目的として設立され、2000年にマンション開発販売を開始しました。2007年にジャスダック証券取引所へ上場し、2013年の市場統合等を経て現在は東証スタンダード市場に上場しています。2015年に連結子会社を設立し、2020年にはホテル事業を開始しました。2024年には株式会社ケーナインを子会社化し、戸建・アパート開発へ事業領域を拡大しています。

2025年6月30日現在、連結従業員数は90名、単体では54名の体制です。筆頭株主は創業者の服部信治氏の資産管理会社と思われる株式会社服部で、第2位はマイルストーンキャピタルマネジメント株式会社、第3位は信託銀行です。

氏名 持株比率
服部 13.90%
マイルストーンキャピタルマネジメント 1.69%
日本カストディ銀行(信託口) 1.65%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役会長兼CEOは服部信治氏が務めています。社外取締役比率は30.0%です。

氏名 役職 主な経歴
服部 信治 代表取締役会長兼CEO 1974年北斗建設入社。1978年カク建築設計事務所設立。1997年同社設立・代表取締役。2006年社長を経て、2022年より現職。
田中 敦 代表取締役社長兼第一事業本部長 1998年同社入社。取締役都市開発事業本部長、取締役副社長などを経て、2022年代表取締役社長就任。2024年より現職。
赤井 渡 常務取締役上席執行役員管理本部長 1988年協和銀行入行。りそな銀行芝支店長などを経て、2019年同社入社。取締役上席執行役員管理本部長を経て、2025年より現職。
猪野 晃史 取締役上席執行役員第二事業本部長 2002年同社入社。執行役員都市開発事業本部都市開発第一部長などを経て、2025年より現職。


社外取締役は、中島信一郎(弁護士法人中島信一郎法律事務所代表)、篠田哲志(元東洋証券代表取締役社長)、山口さやか(公認会計士・税理士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「不動産事業」および「ホテル事業」を展開しています。

不動産事業


東京23区・駅徒歩10分圏内の投資用ワンルームマンション等の開発・1棟販売を主力としています。また、戸建・テラスハウス分譲、アパート開発、不動産売買の仲介、不動産賃貸業等も行っています。独自性を追求した自社ブランドの確立を進め、設計事務所出身のノウハウを活かしたプラン設計を行っています。

収益は主に、マンション販売会社や国内外の投資家、一般法人、富裕層への物件販売代金、および賃貸収入から得ています。運営は主に同社が行い、子会社の株式会社ケーナインが戸建・アパート開発等を、株式会社アーバネットリビングが分譲・賃貸・管理サービス等を担当しています。

ホテル事業


不動産事業がレジデンス分野に集中していることから、販売先の多様化とホテル経営の研究を目的として開始されました。東京・蒲田駅前で自社保有ホテル「ホテルアジール東京蒲田」(全48室)を開発・運営しています。

収益は、宿泊客からの宿泊料等から得ています。運営は、同社の100%子会社である株式会社アーバネットリビングを通じて行われています。インバウンド需要等の拡大により、客室稼働率と客室単価の向上を図っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は順調に拡大しており、特に直近の2025年6月期には大幅な増収を達成しています。経常利益も安定的に推移しており、2025年6月期は増益となりました。利益率も8%台から10%台と底堅い水準を維持しています。

項目 2021年6月期 2022年6月期 2023年6月期 2024年6月期 2025年6月期
売上高 210億円 196億円 203億円 280億円 339億円
経常利益 21億円 20億円 21億円 24億円 28億円
利益率(%) 9.9% 10.1% 10.6% 8.7% 8.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 13億円 13億円 15億円 18億円 15億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で大きく増加し、売上総利益も拡大しました。売上総利益率は高い水準を維持しています。一方、営業利益率は若干低下していますが、絶対額としての営業利益は増加しており、事業規模の拡大が利益の積み上げに寄与していることがうかがえます。

項目 2024年6月期 2025年6月期
売上高 280億円 339億円
売上総利益 46億円 65億円
売上総利益率(%) 16.6% 19.0%
営業利益 27億円 35億円
営業利益率(%) 9.7% 10.3%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が6億円(構成比19%)、その他が4億円(同14%)を占めています。売上原価のうち、不動産取得費が187億円(構成比68%)、建物建築費が107億円(同39%)を占めています。

(3) セグメント収益


不動産事業、ホテル事業ともに増収増益となりました。特に不動産事業は、都市型賃貸マンションの販売増やM&Aによる戸建・アパート事業の取り込みが寄与し、全体の業績を牽引しました。ホテル事業も需要回復により収益性が改善しています。

区分 売上(2024年6月期) 売上(2025年6月期) 利益(2024年6月期) 利益(2025年6月期) 利益率
不動産事業 277億円 337億円 39億円 50億円 14.9%
ホテル事業 2億円 2億円 0.3億円 0.5億円 19.2%
連結(合計) 280億円 339億円 27億円 35億円 10.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年6月期 2025年6月期
営業CF 30億円 -73億円
投資CF -0.8億円 -26億円
財務CF -35億円 128億円


なお、同社は在庫を多く抱える事業を主力としているため、営業CFのマイナスは棚卸資産(商品・販売用不動産等)の増加(事業拡大)に起因している可能性があり、必ずしも業績悪化を意味するものではありません。

企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は27.8%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「人々の安全で快適な『くらし』の提案を行い、豊かで健全な社会の実現を目指す」ことを企業理念としています。事業を通じて社会の発展とサステナビリティ課題の解決に寄与し、持続的な成長と企業価値向上を図ることでステークホルダーに貢献することを基本方針としています。

(2) 企業文化


同社グループは、「ものづくり」にこだわり、独自性を追求した自社ブランドの確立を進めてきました。効率性と芸術性の融合を目指し、デザイン性やアートを加える姿勢を重視しています。また、少人数体制でアウトソーシングを活用しつつ、社員への投資を積極的に行うなど、人的資本経営を重要視する文化があります。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、安定的な収益確保と持続的成長、株主への安定的な利益還元を基本方針とし、「売上総利益率」を重視する経営指標としています。また、連結営業利益を業績連動型株式報酬の指標として設定しています。

* 2026年6月期 連結営業利益目標:36億2300万円

(4) 成長戦略と重点施策


同社グループは、東京23区での都市型賃貸マンション開発に加え、M&Aを活用して東京・川崎・横浜の戸建・テラスハウス分譲やアパート開発へ事業領域を拡大しています。また、ホテル事業やシルバー層向け住居への取り組み、他社との共同事業、北海道等での宿泊施設開発なども視野に入れ、企業価値向上と持続的成長を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループは、「人材育成」と「魅力ある職場の実現」を重要課題とし、新卒・階層別・役員向け研修や女性管理職登用、若手育成に注力しています。また、新人事制度の制定や評価制度の見直し、住宅補助、資格取得補助、新オフィス移転などを通じて、働きがいと意欲が高まる職場環境づくりを推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年6月期 41.6歳 6.5年 10,728,178円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 -
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規) -
男女賃金差異(非正規) -


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済情勢の変動に係わるリスク


主要事業である不動産開発販売は、景気・金利・不動産需要・住宅税制等の影響を受けやすい特性があります。景気悪化や大幅な金利上昇、販売価格下落等が起きた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、ホテル事業も景気変動による宿泊需要の影響を受けます。

(2) 気候変動及び自然災害に係わるリスク


主な開発エリアである首都圏等において、大地震や気候変動に起因する大型台風、ゲリラ豪雨等が発生した場合、地盤への影響や建設中建物の倒壊等のリスクがあります。ハザードマップの確認や安全対策を行っていますが、被害が発生した場合は業績に影響する可能性があります。

(3) 事業用地の仕入に係わるリスク


持続的成長には安定的な用地取得が不可欠ですが、都心好立地での他社との競合や価格高騰により、計画通りの取得が困難になる可能性があります。また、事前調査等は徹底していますが、土壌汚染等の想定外の問題が発生した場合、追加費用により業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 特定取引先との取引集中に係わるリスク


アウトソーシングを活用した少人数体制をとっており、建築工事において株式会社合田工務店への発注が集中しています。取引関係の急変等は業績に影響する可能性があります。また、販売先についても特定の販売会社等との取引がありますが、不測の事態が発生した場合のリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。