※本記事は、株式会社大和コンピューター の有価証券報告書(第49期、自 2024年8月1日 至 2025年7月31日、2025年10月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 大和コンピューターってどんな会社?
受託開発と独自サービス(SaaS・農業ICT)を両輪とする、関西地盤の独立系システムインテグレーターです。
■(1) 会社概要
同社は1977年にソフトウェア開発を目的に設立されました。1981年の東京進出を経て拠点を拡大し、2006年にジャスダック証券取引所へ上場しました。2010年にはSaaS型システム「プラチナスクール」の提供を開始し、サービス事業を強化しています。2017年には農業法人ルーツを設立し、異業種である農業分野へも参入しました。2022年の市場区分見直しに伴い、現在はスタンダード市場に上場しています。
現在の従業員数は連結191名、単体184名です。大株主の構成は、筆頭株主が有限会社ジェネシス、第2位が社長の中村憲司氏、第3位が主要取引先でもあるSCSKとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ㈲ジェネシス | 24.70% |
| 中村 憲司 | 18.21% |
| SCSK㈱ | 7.91% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は中村憲司氏が務めています。取締役4名のうち1名が社外取締役であり、社外取締役比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 中村 憲司 | 代表取締役社長 | 1984年日本アイ・ビー・エム入社。1987年同社入社。専務取締役等を経て、2002年5月より現職。 |
| 鈴木 義人 | 取締役専務執行役員 | 1985年同社入社。取締役営業部長、取締役常務執行役員ソリューション本部長等を経て、2025年2月より現職。 |
| 寺川 英信 | 取締役執行役員企画管理本部長 | 1993年同社入社。執行役員経営企画部部長、執行役員企画管理本部副本部長等を経て、2024年11月より現職。 |
社外取締役は、田代来(田代来税理士事務所所長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ソフトウェア開発関連事業」、「サービスインテグレーション事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) ソフトウェア開発関連事業
顧客から請け負った受託開発業務を中心に、システムやソフトウェアの設計・開発・導入・保守サービスを提供しています。また、ソフトウェア開発プロセスの改善やCMMI(能力成熟度モデル統合)導入のコンサルテーションも行い、顧客の企業活動を支援しています。
収益は、顧客であるSCSKや大塚商会などの大手SIerやエンドユーザー企業からの開発受託費や保守料などが主な源泉です。この事業は主に同社が運営しています。
■(2) サービスインテグレーション事業
SaaS型ソフトウェアサービスの提供や、関連するコンサルティング、システム構築、ハードウェア導入などを通じて顧客をトータルにサポートしています。特にSaaS型スクール管理システムなどが主力製品の一つです。
収益は、サービスの利用料(サブスクリプション)やシステム導入費用、ハードウェア販売代金などから得ています。運営は同社および子会社のフィット・コムが行っています。
■(3) その他
各メーカーのソフトウェアからハードウェアまでのシステム販売を行っています。また、農業分野において農作物の生産・加工・販売を行うほか、ICTを活用したスマート農業の推進にも取り組んでいます。
収益は、機器・ソフトの販売代金や、メロン・トマトなどの農作物販売から得ています。システム販売は同社が、農業事業は子会社のルーツおよび浅小井農園が運営しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は26億円から32億円規模へと着実に拡大傾向にあります。特に利益面では、経常利益が5億円前後から6億円台へと伸長し、当期利益も増加傾向です。第49期は売上高が前期比でわずかに減少しましたが、利益率は19.3%と高い水準を維持しており、収益性の向上が見て取れます。
| 項目 | 2021年7月期 | 2022年7月期 | 2023年7月期 | 2024年7月期 | 2025年7月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 26億円 | 29億円 | 30億円 | 33億円 | 32億円 |
| 経常利益 | 5.0億円 | 5.1億円 | 5.2億円 | 6.0億円 | 6.2億円 |
| 利益率(%) | 19.0% | 17.6% | 17.1% | 18.3% | 19.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 2.9億円 | 3.2億円 | 3.3億円 | 3.2億円 | 4.1億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高は微減となりましたが、売上総利益は11億円前後で安定しています。営業利益率は17%台後半と高収益体質を維持しており、販管費のコントロールも含めて効率的な経営が行われていることがわかります。
| 項目 | 2024年7月期 | 2025年7月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 33億円 | 32億円 |
| 売上総利益 | 11億円 | 11億円 |
| 売上総利益率(%) | 32.2% | 32.8% |
| 営業利益 | 5.7億円 | 5.7億円 |
| 営業利益率(%) | 17.2% | 17.8% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給与及び手当が1.0億円(構成比22%)、役員報酬が0.8億円(同16%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力のソフトウェア開発関連事業は、案件内容が中小規模から高度な技術力を要する支援型へとシフトしたことで売上高は減少しましたが、外注費抑制により増益となりました。サービスインテグレーション事業は新規契約の鈍化により減収減益でした。その他事業はシステム販売や農業関連が堅調で大幅な増収となっています。
| 区分 | 売上(2024年7月期) | 売上(2025年7月期) | 利益(2024年7月期) | 利益(2025年7月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| ソフトウェア開発関連事業 | 25億円 | 24億円 | 4.4億円 | 4.6億円 | 19.1% |
| サービスインテグレーション事業 | 6.1億円 | 5.8億円 | 1.6億円 | 1.3億円 | 22.4% |
| その他 | 1.6億円 | 2.3億円 | -0.4億円 | -0.2億円 | -6.9% |
| 調整額 | -0.1億円 | -0.1億円 | -0.0億円 | -0.0億円 | - |
| 連結(合計) | 33億円 | 32億円 | 5.7億円 | 5.7億円 | 17.8% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業で稼いだ資金(営業CFプラス)の一部を投資や借入返済、配当に充てており、財務バランスの取れた「健全型」のキャッシュ・フローと言えます。
| 項目 | 2024年7月期 | 2025年7月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 5.9億円 | 2.8億円 |
| 投資CF | 0.8億円 | -0.9億円 |
| 財務CF | -0.8億円 | -1.1億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は86.0%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「和の魂」を経営理念の根幹に据えています。これは、個々の力を連携させて組織の力にする精神です。「安心」「安全」「信頼」の絆作りを追求し、商品・サービスを買いたい、取引したい、勤めたい、投資したいと思われる「魅力ある会社」を創造し、社会に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、「品質」「環境」「技術」のバランスを重視する価値観を持っています。品質第一主義による信頼獲得、地球環境保全への配慮、そして時代のニーズに合った最適・最先端技術の習得に加え、「半歩先」の技術への挑戦を掲げています。これらを追求することで、本質的な事業活動を推進する文化があります。
■(3) 経営計画・目標
同社は、2030年7月期を最終年度とする中期経営計画「DCX 2030」を策定しています。2027年の創業50周年を節目として第二創業期の変革を推進し、売上総利益および営業利益を重視しながら、適正な利益の確保と事業の継続的拡大を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
「DCX 2030」に基づき、既存事業の深化と新規領域の拡大を進めています。ソフトウェア開発では生成AI活用による生産性向上やPM育成を推進し、クラウドサービスでは認知度向上と基盤強化を図ります。また、スマート農業(i-農業)への投資を強化し、収益の柱として育成することを目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
IT業界の競争力の源泉は人材であるとし、高度な技術力と業界知識を持つ人材の育成に注力しています。これまでの新卒中心から中途採用の強化へシフトし、人材確保の多様化を図っています。また、「Daiwa Computer 未来プロジェクト」や人材育成センターを通じて、次世代リーダー育成や従業員エンゲージメントの向上に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年7月期 | 42.6歳 | 19.2年 | 6,156,646円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 0.0% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 74.5% |
| 男女賃金差異(正規) | 75.8% |
| 男女賃金差異(非正規) | - |
※非正規雇用労働者の男女賃金差異は該当データがありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 受託開発案件のプロジェクト管理リスク
システム開発において、納期や検収時期の変更、見積りと実績の乖離による採算悪化、予期せぬ不具合発生などが経営成績に影響を与える可能性があります。同社はCMMI等に基づくプロセス管理や引当金計上で対策していますが、プロジェクトの大型化に伴いリスク管理の難易度は増しています。
■(2) 主要取引先への依存
売上高の過半をSCSKや大塚商会といった主要取引先が占めています(第49期で合計約51%)。両社との取引は安定していますが、相手先の事業動向によっては同社グループの経営成績に影響が及ぶ可能性があります。これに対し、技術者のマルチスキル化や特定領域への特化で対応を図っています。
■(3) 優秀な人材の確保と育成
高度な技術と品質を維持するためには優秀な技術者の確保が不可欠です。労働市場の逼迫により必要な人材を適時に確保できない場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。同社は人材育成センターの設置や多様な採用手段の活用により、人材基盤の強化に努めています。



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