※本記事は、株式会社アイル の有価証券報告書(第35期、自 2024年8月1日 至 2025年7月31日、2025年10月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. アイルってどんな会社?
中堅・中小企業の経営課題に対し、基幹システム(リアル)とWebサービスを融合させたトータルソリューションを提供するIT企業です。
■(1) 会社概要
1991年に大阪市で設立され、2007年に大証ヘラクレスへ上場しました。2009年には主力となる複数ネットショップ一元管理クラウドサービス「CROSS MALL」をリリース。その後、市場統合を経て2013年に東証JASDAQ(グロース)、2018年に東証一部へ指定され、2022年の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行しました。
同グループの従業員数は連結1,009名、単体992名です。筆頭株主は有限会社GTホールディングで、第2位は代表取締役社長の岩本哲夫氏、第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| GTホールディング | 33.48% |
| 岩本哲夫 | 8.12% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 5.96% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性14名、女性0名の計14名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は岩本哲夫氏です。社外取締役比率は35.7%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 岩本哲夫 | 取締役社長(代表取締役) | 1979年大塚商会入社。1991年同社設立とともに代表取締役社長就任。 |
| 岩本亮磨 | 取締役副社長ビジネスパートナー推進統括本部長兼経営企画本部長兼CROSS事業部管掌 | 2008年富士通マーケティング入社。2011年同社入社。2024年より現職。 |
| 尾崎幸司 | 専務取締役システムソリューション事業部管掌 | 1995年同社入社。2010年営業本部長などを経て2016年より現職。 |
| 土井正志 | 常務取締役システムソリューション事業部管掌 | 1996年同社入社。システムサポート本部長などを経て2013年より現職。 |
| 山本浩孝 | 常務取締役CROSS事業部長 | 1996年同社入社。クラウド事業部長などを経て2018年より現職。 |
| 戸田泰裕 | 取締役経営管理本部長 | 2002年フジオフードシステム、2005年夢の街創造委員会入社。2008年同社入社。 |
| 宮久保貴義 | 取締役経営管理本部人事部長 | 1995年同社入社。内部監査室長などを経て2017年より現職。 |
| 池本任男 | 取締役CROSS事業部CROSS開発部長 | 2005年夢の街創造委員会入社。2008年同社入社、開発本部長を経て2018年より現職。 |
| 大黒仁士 | 取締役(常勤監査等委員) | 1989年大塚商会入社。1991年同社入社。常勤監査役を経て2015年より現職。 |
社外取締役は、奥田好秀(元アサヒグループホールディングス専務取締役)、下島文明(元富士通フロンテック社長)、正脇久昌(元三井住友ファイナンス&リース常務執行役員)、三田与志雄(三田公認会計士事務所所長)、岩谷博紀(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「システムソリューション事業」および「Webソリューション事業」を展開しています。
■システムソリューション事業
基幹業務パッケージ「アラジンオフィス・シリーズ」の設計・開発、保守、ネットワーク構築などを提供しています。主な顧客は中堅・中小企業です。また、IT教育サービスを行うアイルキャリアカレッジの運営も行っています。
収益は、顧客企業からのシステム開発費、導入費、および月額の保守・運用サポート会費(ストック型収益)から構成されます。運営は主にアイルが行っており、ファッション業向けの一部システムでは子会社のウェブベースと連携しています。
■Webソリューション事業
複数ネットショップ一元管理ソフト「CROSS MALL」やポイント・顧客一元管理ソフト「CROSS POINT」、ECサイト構築支援などを提供しています。基幹システムとWeb商材を連携させた提案を行うことで、顧客企業の経営効率と競争力向上を支援します。
収益は、クラウドサービスの月額利用料、Webサイト制作費、コンサルティング料などから構成されます。運営は主にアイルが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は着実に右肩上がりで成長を続けており、132億円から193億円へと拡大しています。経常利益も売上の伸長に伴い増加傾向にあり、利益率は14.1%から24.7%へと大幅に改善しています。ストック型ビジネスの積み上げが収益性の向上に寄与していることが読み取れます。
| 項目 | 2021年7月期 | 2022年7月期 | 2023年7月期 | 2024年7月期 | 2025年7月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 132億円 | 129億円 | 159億円 | 175億円 | 193億円 |
| 経常利益 | 19億円 | 21億円 | 36億円 | 43億円 | 48億円 |
| 利益率(%) | 14.1% | 16.4% | 22.4% | 24.5% | 24.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 12億円 | 14億円 | 24億円 | 28億円 | 35億円 |
■(2) 損益計算書
増収効果により売上総利益が増加しており、利益率も高水準を維持しています。販売費及び一般管理費も増加していますが、売上総利益の伸びがそれを上回っているため、営業利益は前期比で増加し、営業利益率も25.0%と高い収益性を確保しています。
| 項目 | 2024年7月期 | 2025年7月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 175億円 | 193億円 |
| 売上総利益 | 98億円 | 107億円 |
| 売上総利益率(%) | 55.8% | 55.2% |
| 営業利益 | 43億円 | 48億円 |
| 営業利益率(%) | 24.4% | 25.0% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が24億円(構成比40%)、賞与が6億円(同11%)を占めています。また、売上原価においては、労務費が37億円(構成比58%)、経費が28億円(同43%)となっており、人件費が主要なコスト要因です。
■(3) セグメント収益
システムソリューション事業は、大型案件の受注やストック売上の増加により堅調に推移しています。Webソリューション事業も、既存顧客への機能強化や新規顧客の獲得により売上を伸ばしています。両事業ともに増収基調を維持しており、特に主力事業の規模拡大が全社の成長を牽引しています。
| 区分 | 売上(2024年7月期) | 売上(2025年7月期) |
|---|---|---|
| システムソリューション事業 | 153億円 | 170億円 |
| Webソリューション事業 | 22億円 | 23億円 |
| 連結(合計) | 175億円 | 193億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は33.3%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は71.6%で市場平均を上回っています。
| 項目 | 2024年7月期 | 2025年7月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 26億円 | 34億円 |
| 投資CF | -7億円 | -5億円 |
| 財務CF | -9億円 | -21億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「企業=人」という理念を掲げ、「FREE, LOVE & DREAM」を創業以来のポリシーとしています。労働集約型から知識集約型ビジネスモデルへの転換を目指し、人材を最も重要な経営資産と位置づけています。基幹システムとWebサービスを融合させた「CROSS-OVER」戦略により、中堅・中小企業の企業力強化に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
「アイルの常識は業界の非常識」と言われることに誇りを持ち、学問的知識以上に現場での実践的な知恵を重視する文化があります。また、毎月開催される「月報会議」で経営状況を全社員と共有する「ガラス張り経営」や、社員が社長へ直接メッセージを送れる仕組みを通じて、風通しの良い組織風土と社員一人ひとりの自律を促しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、継続的かつ安定的な収益確保と事業規模の拡大による企業価値向上を目指しています。具体的な経営指標として以下の目標を掲げています。
* 売上高営業利益率:30%
■(4) 成長戦略と重点施策
「CROSS-OVER」戦略を軸に、リアルとWebの融合による付加価値の高いトータルソリューションを提供し、競合との差別化を図ります。また、パートナー連携強化による販路拡大や、開発工程におけるモジュール化・AI活用による生産性と品質の向上に注力します。地域密着型の営業展開や新たな拠点展開も視野に入れ、更なる成長を目指します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「企業=人」の理念に基づき、社員の成長を通じて顧客価値の向上を目指しています。採用では価値観の共有を重視し、新卒・中途ともに人物本位の選考を行っています。育成面では現場でのOJTを重視し、独自の評価制度「おきもチップ」や「ファインプレーカード」などを通じて、数値化しにくい貢献も評価する仕組みを整えています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年7月期 | 34.7歳 | 8.7年 | 6,517,666円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 11.5% |
| 男性育児休業取得率 | 42.9% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 75.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 78.2% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 40.8% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、離職率(2.3%)、GHG排出量(69.5t-CO2)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) システムソリューション事業の競争激化
主力製品である基幹業務パッケージ「アラジンオフィス・シリーズ」は、IT業界におけるニーズの高まりと共に競争が激化しています。競合他社のパッケージソフトやクラウドサービスの性能強化が進んだ場合、同社の業績や事業展開に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) Webソリューション事業の連携リスク
同事業は、自社クラウドサービスと基幹システムや市場の各種サービスとの連携を前提とした提案を行っています。連携サービスの動向やシステムトラブル等により顧客に損害が生じ、賠償対象となった場合、業績に影響を与える可能性があります。
■(3) システムトラブル等の発生
事業運営は通信ネットワークやコンピュータシステムに依存しており、自然災害、事故、サイバー攻撃等によりシステムダウンや障害が発生した場合、事業や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、情報セキュリティ対策を講じていますが、ウイルスや不正アクセスによるリスクも存在します。
■(4) 技術者の人材確保と育成
新卒およびキャリア採用を通じて技術者の確保・育成に努めていますが、採用市場の競争激化により優秀な人材の確保が困難になる可能性があります。計画通りに人材を確保・育成できない場合、事業成長や業績に影響を及ぼす恐れがあります。



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