ウエスコホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ウエスコホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場のウエスコホールディングスは、総合建設コンサルタント事業を中核に、スポーツ施設や水族館の運営事業も展開しています。2025年7月期の連結業績は、主力のコンサル事業が堅調に推移し、売上高は前期比2.5%増、営業利益は4.8%増と増収増益基調で推移しました。


※本記事は、株式会社ウエスコホールディングス の有価証券報告書(第12期、自 2024年8月1日 至 2025年7月31日、2025年10月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ウエスコホールディングスってどんな会社?


純粋持株会社として、西日本を中心とする総合建設コンサルタント事業に加え、スポーツ施設や水族館の運営を行う事業会社を統括する企業グループです。

(1) 会社概要


1970年に前身となる西日本測量設計(現ウエスコ)が設立され、2014年に単独株式移転によりウエスコホールディングスを設立し、東証二部に上場しました。その後、2015年にオーライズ、2017年にアクアメントを設立して事業を拡大し、2022年には東証スタンダード市場へ移行しました。

同グループは連結従業員797名、単体20名体制で事業を展開しています。筆頭株主は公益財団法人ウエスコ学術振興財団で、第2位は公益財団法人加納美術振興財団、第3位はウエスコ社員持株会となっており、財団や従業員持株会が主要株主となる安定的な構成です。

氏名 持株比率
公益財団法人ウエスコ学術振興財団 14.30%
公益財団法人加納美術振興財団 7.37%
ウエスコ社員持株会 6.95%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は松原 利直氏が務めています。社外取締役比率は約22.2%です。

氏名 役職 主な経歴
松原 利直 代表取締役社長 1994年ウエスコ入社。同社島根支社長、岡山支社長、代表取締役社長を経て、2022年4月より現職。
北村 彰秀 取締役 1984年ウエスコ入社。同社関西支社副支社長、業務推進本部長兼管理本部長、代表取締役社長を経て、2024年10月より現職。
大倉 一夫 取締役 1981年ウエスコ入社。同社取締役執行役員管理本部長兼業務推進本部長などを経て、2022年10月より現職。アクアメント社長を兼務。
藤原 身江子 取締役 1987年ウエスコ入社。同社執行役員女性活躍推進室長兼地盤調査事業部長などを経て、2023年10月より現職。経営管理本部長を兼務。


社外取締役は、福原 一義(公認会計士・税理士)、前野 詩朗(岡山大学特命教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「総合建設コンサルタント事業」「スポーツ施設運営事業」「水族館運営事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 総合建設コンサルタント事業


建設コンサルタント、建築設計、補償コンサルタント、環境アセスメント、一般測量、航空測量、地質調査などのサービスを、主に官公庁などの公的機関に対して提供しています。

収益は、測量・調査・設計等の業務委託料を国や地方自治体から受け取ることで発生します。運営は主に株式会社ウエスコ、株式会社西日本技術コンサルタント、株式会社アイコン、株式会社オーライズが行っています。

(2) スポーツ施設運営事業


フィットネスジムなどのスポーツ施設および関連施設の運営を行っています。

収益は、施設利用者からの会費や、スポーツウェア等の物品販売代金を受け取ることで発生します。運営は株式会社エヌ・シー・ピーが行っています。

(3) 水族館運営事業


水族館の管理・運営、開業支援や生物調達等の請負業務などの総合マネジメント業務を行っています。

収益は、入館料や、運営受委託契約に基づく基本報酬・インセンティブ報酬等を受け取ることで発生します。運営は株式会社アクアメントが行っています。

(4) その他事業


陽画焼付、図面複写、各種印刷および製本業務や、不動産の分譲、賃貸および関連施設の運営等を行っています。

収益は、複写製本サービスの利用料や不動産賃貸料を受け取ることで発生します。運営は株式会社NCPサプライおよび株式会社ウエスコが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は138億円から161億円へと着実に成長しています。経常利益も10億円台から12億円台で安定して推移しており、利益率は7%台を維持しています。当期純利益も安定的で、堅実な経営基盤がうかがえます。

項目 2021年7月期 2022年7月期 2023年7月期 2024年7月期 2025年7月期
売上高 138億円 157億円 156億円 157億円 161億円
経常利益 11億円 12億円 11億円 12億円 12億円
利益率(%) 7.7% 7.9% 7.3% 7.8% 7.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 5億円 6億円 5億円 5億円 4億円

(2) 損益計算書


前期と比較すると、売上高は増加し、売上総利益も増加しました。営業利益率は6.0%から6.1%へ微増しています。販管費の増加を売上総利益の増加で吸収し、営業増益を確保していますが、営業外収益の減少により経常利益は微減となりました。

項目 2024年7月期 2025年7月期
売上高 157億円 161億円
売上総利益 42億円 43億円
売上総利益率(%) 26.4% 26.6%
営業利益 9億円 10億円
営業利益率(%) 6.0% 6.1%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び賞与が16億円(構成比49%)、その他が13億円(同41%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の総合建設コンサルタント事業が増収増益となり全体を牽引しました。スポーツ施設運営事業は減収増益、水族館運営事業は減収増益となりました。その他事業は減収減益でした。

区分 売上(2024年7月期) 売上(2025年7月期) 利益(2024年7月期) 利益(2025年7月期) 利益率
総合建設コンサルタント事業 132億円 138億円 11億円 11億円 7.9%
スポーツ施設運営事業 8億円 8億円 0.1億円 0.1億円 1.0%
水族館運営事業 14億円 13億円 0.8億円 0.9億円 6.9%
その他 3億円 3億円 0.4億円 0.3億円 9.8%
調整額 -3億円 -2億円 -3億円 -2億円 -
連結(合計) 157億円 161億円 9億円 10億円 6.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業の営業活動で得た資金と、投資有価証券の売却等による資産売却で借入返済を進める改善局面(改善型)にあります。

項目 2024年7月期 2025年7月期
営業CF 7億円 12億円
投資CF 5億円 0.4億円
財務CF -6億円 -8億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.8%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は76.5%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「未来に残す、自然との共生社会」という企業理念を掲げています。社会インフラ、健康、社会教育等の事業分野を展開する企業集団として、地域社会へ貢献するとともに、持続的な企業価値向上に努めることを経営方針としています。

(2) 企業文化


ウエスコグループ行動憲章に基づき、多様な人材が安心と生きがいを感じる職場環境の整備を推進する文化があります。サステナビリティ経営においては「人的資本」を中核要素とし、事業活動を通じて社会およびグループの持続的な発展を目指しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、2026年7月期を最終年度とする「第一次中期経営計画2024-2026」を策定し、事業基盤の再構築に取り組んでいます。
* 売上高:170億円
* 営業利益:10億50百万円
* 営業利益率:6.4%
* ROE:5.0%以上

(4) 成長戦略と重点施策


人材、技術、市場の3つの戦略を軸に企業価値向上を目指しています。人材面では技術継承と多様性推進、技術面ではDX推進による生産性向上を図ります。市場戦略としては、総合建設コンサルタント事業での防災・減災関連業務の強化やエリア拡大、スポーツ施設でのフランチャイズ拡大、水族館事業での新規出店を掲げています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


多様な人材が風通しの良い職場環境で互いに成長し自己実現できる機会の提供を目指しています。「人的資本」を最大の経営資源と捉え、女性や中途採用者、外国人などの中核人材登用や、階層別研修の充実によるキャリア形成支援に取り組んでいます。また、DX促進による業務効率化や健康経営の推進により、柔軟な働き方の実現を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年7月期 47.7歳 13.5年 6,120,782円


※平均年間給与は基準外給与および賞与を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.8%
男性育児休業取得率 100%
男女賃金差異(全労働者) 60.3%
男女賃金差異(正規雇用) 61.3%
男女賃金差異(非正規) 83.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、中途社員管理職比率(47.6%)、従業員持株会加入率(66.8%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 公共事業への高い依存度と価格競争


主力事業の売上高の多くを公共事業が占めており、入札制度の変更や競争激化による価格低下が業績に影響する可能性があります。入札競争力の向上や実務支援を行う専門部署を設置し、情報分析や提案書の改善支援を通じて安定受注の確保に努めています。

(2) 人材の確保・育成と労務リスク


事業の源泉である人的資本について、少子高齢化による労働人口減少や獲得競争の激化により、人材確保が課題となっています。従業員の高齢化に伴う技術継承も重要課題です。企業認知度向上やインターンシップ拡大、研修による内部生産力強化、働きやすい環境整備を進めています。

(3) 水族館運営における固定費負担と集客変動


水族館事業では長期の賃貸借契約を結んでおり、中途解約や賃料減免が困難な構造です。災害や感染症などで集客が減少し収益が保証賃料を下回る場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。感染防止対策やイベント開催、広告宣伝強化により事業活動の維持に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。