※本記事は、日本スキー場開発株式会社 の有価証券報告書(第20期、自 2024年8月1日 至 2025年7月31日、2025年10月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 日本スキー場開発ってどんな会社?
国内各地で特徴あるスキー場を取得し、地域と一体となって再生・活性化させるスキー場運営会社です。
■(1) 会社概要
2005年、日本駐車場開発によりスキー場運営を目的として設立されました。その後、鹿島槍、川場、白馬観光開発などを相次いで連結子会社化し、事業を拡大。2014年には運営する白馬エリアの総称「HAKUBA VALLEY」のロゴを決定し、ブランド化を推進しました。2015年に東証マザーズへ上場を果たしています。
同社グループは連結250名、単体107名の従業員を擁しています。筆頭株主は親会社であり駐車場運営を行う事業会社、第2位はカストディ業務を行う香港の法人、第3位は同社代表取締役社長です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本駐車場開発 | 68.60% |
| OKASAN INTERNATIONAL (ASIA) LIMITED | 2.61% |
| 鈴木 周平 | 1.73% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は鈴木周平氏です。社外取締役比率は40.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 鈴木 周平 | 代表取締役社長 | 監査法人トーマツ、パシフィックゴルフマネージメントを経て、日本駐車場開発入社。2012年より現職。 |
| 岩本 竜二郎 | 取締役 | 日本駐車場開発にて取締役、常務取締役、営業統括本部長などを歴任。同社グループ事業統括室長などを経て2021年より現職。 |
| 高柳 寛樹 | 取締役 | ウェブハット・コミュニケーションズ代表取締役社長などを経て、アロワナパートナーズ代表取締役CEO。2024年より現職。 |
| 渥美 謙介 | 取締役 | 日本駐車場開発入社後、日本自動車サービス開発代表取締役社長などを歴任。日本駐車場開発常務取締役管理本部長。2020年より現職。 |
社外取締役は、草本朋子(白馬インターナショナルスクール理事長)、荒木隆司(インテラセット代表取締役)、山田哲(タイトー取締役会長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「スキー場運営事業」を展開しています。
■スキー場運営事業
長野県の「HAKUBA VALLEY」エリア(八方尾根、岩岳、栂池)や、群馬県の川場スキー場、岐阜県のめいほうスキー場など、国内の有力スキー場を運営しています。ウィンターシーズンにおいては、スキーヤーやスノーボーダーに対し、リフト・ゴンドラの運行、ゲレンデの提供を行うほか、グリーンシーズンには高山植物や景色を楽しめるテラスなどを運営し、オールシーズンの集客を図っています。
主な収益源は、リフト券の販売、レストラン等での料飲提供、スキー・スノーボード用品のレンタル料、土産物等の物販収入です。運営は、白馬観光開発、川場リゾート、めいほう高原開発などの各連結子会社が主体となって行っています。同社はグループ全体の経営管理やコンサルティングを担い、各スキー場と連携して事業を推進しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2021年7月期から2025年7月期までの業績推移です。売上高は一貫して増加傾向にあり、特に直近では大幅な増収となっています。利益面でも、2021年7月期は赤字でしたが、翌期以降は黒字化し、利益率も大きく改善して成長を続けています。
| 項目 | 2021年7月期 | 2022年7月期 | 2023年7月期 | 2024年7月期 | 2025年7月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 45億円 | 56億円 | 69億円 | 82億円 | 105億円 |
| 経常利益 | -3億円 | 3億円 | 11億円 | 16億円 | 22億円 |
| 利益率(%) | -5.9% | 6.2% | 15.6% | 18.8% | 21.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -5億円 | 0.3億円 | 3億円 | 2億円 | 8億円 |
■(2) 損益計算書
前期と当期の損益計算書比較です。売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益、営業利益ともに大きく伸長しています。利益率も向上しており、効率的な運営と集客の成功が収益性の向上に寄与していることが読み取れます。
| 項目 | 2024年7月期 | 2025年7月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 82億円 | 105億円 |
| 売上総利益 | 36億円 | 47億円 |
| 売上総利益率(%) | 43.1% | 44.6% |
| 営業利益 | 16億円 | 22億円 |
| 営業利益率(%) | 18.8% | 21.5% |
販売費及び一般管理費のうち、委託サービス費が4億円(構成比16%)、広告宣伝費が3億円(同11%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社グループはスキー場運営の単一セグメントですが、全社的な売上高は前期比で大きく増加しています。インバウンド需要の取り込みやグリーンシーズンの集客強化などが奏功し、全体としての収益規模が拡大しています。
| 区分 | 売上(2024年7月期) | 売上(2025年7月期) |
|---|---|---|
| スキー場事業 | 82億円 | 105億円 |
| 連結(合計) | 82億円 | 105億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は21.3%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は61.2%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「自然、お客様、そして地域社会の全てがハッピーに」を経営理念として掲げています。スキー場運営に関する問題を解決し、非日常的な時間と空間を演出することで、多くの人々に自然の素晴らしさやウィンタースポーツの楽しさを伝えることをミッションとしています。
■(2) 企業文化
スキー場の運営において、地域の文化や伝統を尊重し、地元関係者と一体となって活性化に取り組む姿勢を重視しています。また、スキー場を取得した際は役職員が現地に常駐し、現場感覚を共有しながら迅速な経営判断を行う「ハンズオン」の手法を徹底しています。
■(3) 経営計画・目標
高い収益性を持って成長し続けることを目標とし、成長性、収益性、健全性、効率性のバランスを重視しています。具体的な経営指標として以下を掲げています。
* 売上高営業利益率20%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
スキー場を地域活性化の中心的存在と位置づけ、中長期的な視点での再生に取り組んでいます。インバウンド需要の取り込みやキッズプログラムによる新規スキー人口の創出、ノンスキーヤーの誘客を推進し、気候変動リスクに対応するためグリーンシーズンの事業強化も図っています。
* インバウンド受入体制の強化とプロモーション
* 人工降雪機への継続投資による安定的な営業期間確保
* グリーンシーズンにおける展望テラスや遊具施設等の開発
* グループ経営によるノウハウ共有とコスト削減
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材を最大の資産と捉え、自ら挑戦を推奨する組織風土の醸成と社員活力の最大化を目指しています。専門性の高い多様な人材の採用強化や、効率的で柔軟な働き方の実現を推進しており、定期的なエンゲージメントサーベイによる意識確認や、グループ全体でのキックオフ会などを通じて組織力の強化を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年7月期 | 35.9歳 | 4.1年 | 5,227,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 11.8% |
| 男性育児休業取得率 | 50.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 62.7% |
| 男女賃金差異(正規) | 62.7% |
| 男女賃金差異(非正規) | -% |
※パート・有期労働者の男女の賃金差異については、重要性が乏しいため、記載を省略しております。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 安全性に関するリスク
スキー場運営においては、リフト等の索道事業の安全性が最重要課題です。点検整備やスタッフ教育、パトロールを実施していますが、万が一重大な事故が発生した場合、許認可の取り消しやブランド毀損につながり、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 気候変動・天候不順のリスク
ウィンターシーズンの積雪不足や暖冬、グリーンシーズンの台風や悪天候は、来場者数の減少に直結します。人工降雪機の活用や通年営業化によるリスク分散を図っていますが、想定を超える天候不順は業績に悪影響を与える可能性があります。
■(3) 経済情勢およびインバウンドの影響
国内の少子高齢化や経済停滞に加え、インバウンド需要は地政学的リスクや為替変動、感染症等の影響を受けやすい性質があります。これらにより集客が減少した場合、業績に影響が及ぶ可能性があります。



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