#記事タイトル:ブラス転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
※本記事は、株式会社ブラス の有価証券報告書(第22期、自 2024年8月1日 至 2025年7月31日、2025年10月28日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ブラスってどんな会社?
東海地方を地盤に、「完全貸切ゲストハウス」スタイルの結婚式場を全国展開するウエディング企業です。
■(1) 会社概要
同社は1998年に愛知県一宮市で有限会社として設立され、2003年に第1号店「ルージュ:ブラン」を開店しました。2004年に株式会社へ組織変更し、2016年に東証マザーズおよび名証セントレックスへ上場を果たしました。その後、2017年には東証一部・名証一部へ市場変更し、2022年の市場区分見直しを経て、現在は東証スタンダードおよび名証プレミア市場に上場しています。
連結従業員数は581名、単体では533名です。大株主については、筆頭株主は創業者の河合達明氏で、第2位は専務取締役の河合智行氏、第3位は社員持株会となっており、経営陣と従業員が主要な株式を保有する構成です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 河合 達明 | 50.24% |
| 河合 智行 | 5.84% |
| ブラス社員持株会 | 3.53% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は河合達明氏が務めています。なお、社外取締役比率は20.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 河合 達明 | 代表取締役社長 | 1989年ドゥ・クレッセンド入社、真誠を経て1998年に同社(現株式会社ブラス)設立。以来、代表取締役社長として経営を牽引。 |
| 河合 智行 | 専務取締役 | 1993年セガエンタープライゼス入社。2005年同社入社後、管理本部長、ウエディング事業本部長などを歴任し、2017年より現職。 |
| 鷲野 真 | 取締役 | 東山会館、インペリアルウイング八事迎賓館を経て2004年同社入社。支配人、総支配人補佐を経て2015年より現職。 |
| 酒井 康成 | 取締役(非常勤) | 2014年同社入社。管理本部長を務めた後、公認会計士・税理士として独立。2015年より現職。 |
社外取締役は、山田美典(公認会計士山田美典事務所所長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ウエディング事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) ウエディング事業
愛知・岐阜・三重・静岡・大阪・京都・滋賀・千葉など東海地方を中心に、完全貸切ゲストハウスでの挙式・披露宴の企画・運営を行っています。「1チャペル、1パーティ会場、1キッチン」のスタイルを特徴とし、新郎新婦とゲストだけのプライベート空間を提供しています。
収益は主に挙式・披露宴を執り行う顧客からの施行代金や付帯商品の販売により得ています。運営は主に同社が行い、米国ハワイ州での挙式プロデュースをBRASS USA INC.が、フォトスタジオ運営を株式会社アロウブライトが担当しています。
■(2) その他
ウエディング周辺事業として、映像・写真商品の制作や結婚相談所の運営を行っています。これにより、結婚式のクオリティ向上や挙式後の顧客とのつながりを強化しています。
収益は、映像・写真商品の制作料や結婚相談所の会費・成婚料などから構成されます。運営は、映像・写真制作を株式会社lyricsが、結婚相談所事業を株式会社be familyが担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近3期間の業績推移です。売上高は回復基調にあり、特に直近では過去最高水準に達しています。利益面でも、経常利益・当期純利益ともに前期から大幅な増益を達成しており、利益率も改善傾向にあります。
| 項目 | 2023年7月期 | 2024年7月期 | 2025年7月期 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 133億円 | 127億円 | 136億円 |
| 経常利益 | 12.0億円 | 4.9億円 | 7.7億円 |
| 利益率(%) | 9.1% | 3.8% | 5.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 7.7億円 | 3.5億円 | 4.1億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を比較します。売上高の増加に伴い売上総利益が増加しています。営業利益率は前期の3.6%から5.5%へと改善しており、本業の収益性が高まっていることがうかがえます。
| 項目 | 2024年7月期 | 2025年7月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 127億円 | 136億円 |
| 売上総利益 | 85億円 | 92億円 |
| 売上総利益率(%) | 67.0% | 67.6% |
| 営業利益 | 4.5億円 | 7.5億円 |
| 営業利益率(%) | 3.6% | 5.5% |
販売費及び一般管理費のうち、給与が28億円(構成比33%)、広告宣伝費が11億円(同13%)を占めています。売上原価については内訳データがありません。
■(3) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2024年7月期 | 2025年7月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 5.4億円 | 19.1億円 |
| 投資CF | -11.8億円 | -8.3億円 |
| 財務CF | -0.7億円 | -4.4億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は36.4%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「それぞれの新郎新婦にとって最高の結婚式を創る」という企業理念を掲げています。創業以来、「完全貸切ゲストハウス・ウエディングプランナー一貫制・オープンキッチン」という独自のウエディングスタイルを貫き、一組一組に寄り添った結婚式の提供を目指しています。
■(2) 企業文化
同社グループのすべての仕組みは「いい結婚式」を創るために存在するという考え方が根付いています。一人のプランナーが新規接客から当日まで担当する「ウエディングプランナー一貫制」を採用し、顧客との深い信頼関係を構築しています。また、挙式後も「夏祭り」等のイベントを通じて顧客とのつながりを大切にする文化があります。
■(3) 経営計画・目標
持続的な成長を追求し、売上高、経常利益、売上高経常利益率の向上を主要な指標として掲げています。具体的な数値目標は記載されていませんが、安定した成長と株主価値の最大化を目指し、既存店舗の収益拡大と新規出店への継続投資を両輪として事業運営を行っています。
■(4) 成長戦略と重点施策
今後の成長に向けて、出店戦略の多様化と既存店の収益力強化を重点施策としています。具体的には、建築資材高騰等を踏まえ、郊外型だけでなく都市型・都心型テナントへの出店を推進します。また、広告戦略や店舗演出への投資により集客・成約率を高めるとともに、料理やドレス、映像制作等の内製化を進め、結婚式の質と収益性の向上を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社の主役であるウエディングプランナーは、新卒採用を主体として育成する方針をとっています。入社後の定期的な研修を通じて接客力を向上させ、事業展開と人材育成のバランスを図りながらサービスの質を維持・向上させることを重視しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年7月期 | 28.4歳 | 5.7年 | 4,377,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 28.7% |
| 男性育児休業取得率 | 22.2% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 68.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 71.3% |
| 男女賃金差異(非正規) | 103.8% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 競合他社の影響
同社は店舗デザインやサービス品質で差別化を図っていますが、同一商圏への競合企業の参入や異業種からの新規参入により競争が激化した場合には、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 市場環境の変化
少子化による結婚適齢期人口の減少や、「ナシ婚」等のライフスタイルの変化により市場規模が縮小する可能性があります。市場の縮小が急激に進んだ場合、同社グループの業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 出店に関するリスク
出店候補地の選定にあたっては立地や採算性を慎重に検討していますが、条件に合致する物件が見つからない場合は計画通りに出店が進まない可能性があります。また、建築資材価格の高騰等により出店コストが増加するリスクもあります。
■(4) 人材確保と育成
事業拡大には十分な人材の確保が不可欠ですが、労働力人口の減少に伴い採用競争が激化しています。計画通りの人材採用や育成が困難となった場合、出店計画やサービスレベルの維持に支障をきたし、業績に影響を及ぼす可能性があります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。