JMホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

JMホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東京証券取引所(プライム市場)に上場しており、スーパーマーケット事業(「ジャパンミート生鮮館」「肉のハナマサ」等)を主力としています。直近の連結業績は、既存店の好調や新規出店の寄与により、売上高は前期比8.1%増、経常利益は8.9%増と増収増益を達成しています。


※本記事は、株式会社JMホールディングス の有価証券報告書(第47期、自 2024年8月1日 至 2025年7月31日、2025年10月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. JMホールディングスってどんな会社?


精肉専門店を起源とするスーパーマーケット事業を中核に、「ジャパンミート」「肉のハナマサ」等を展開する持株会社です。

(1) 会社概要


同社は1978年、茨城県にて食肉卸売を目的として設立されました。2013年には東京都内を中心に展開する「肉のハナマサ」の運営会社である花正を子会社化し、都市部へ店舗網を拡大しました。2016年に東証二部へ上場し、2018年には東証一部へ指定替えとなりました。2020年に持株会社体制へ移行し、現商号に変更しています。2023年には東京都北部を地盤とするスーパーみらべるを完全子会社化しました。

2025年7月末現在の連結従業員数は1,525名、単体では51名です。筆頭株主は同社代表取締役社長の境正博氏、第2位は取締役副会長の境和弘氏、第3位は取締役会長の境弘治氏となっており、創業家及びその関係者が主要株主として名を連ねています。

氏名 持株比率
境 正博 20.12%
境 和弘 9.72%
境 弘治 8.68%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性2名、計13名で構成され、女性役員比率は15.4%です。代表取締役社長は境正博氏です。取締役9名のうち3名が社外取締役であり、社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
境 正博 代表取締役社長 1996年ダイリキ入社。1999年同社入社。取締役特販部長等を経て2009年より現職。
境 弘治 取締役会長 1970年丸八肉店従事。1978年同社設立・代表取締役。2009年より現職。
境 和弘 取締役副会長 1975年丸八肉店従事。1978年同社専務取締役。副社長を経て2009年より現職。
藤原 克朗 常務取締役 1979年国家公務員採用。1983年同社入社。加工物流センター部長等を経て2012年より現職。
前田 香織 常務取締役管理本部長 2014年同社入社。経理部長等を経て2023年10月より現職。
阿部 耕生 取締役総務部長 2001年ハナマサ入社。2016年同社入社。執行役員総務部長を経て2019年より現職。


社外取締役は、緑川清春(フェルムコンサルティング代表取締役)、大瀧敦子(石本哲敏法律事務所パートナー弁護士)、松井繁忠(松井公認会計士事務所代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「スーパーマーケット事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) スーパーマーケット事業


精肉専門店として創業した強みを活かし、青果・鮮魚・惣菜の専門性を融合させた食品スーパーマーケットを展開しています。主な店舗ブランドには、大型商業施設内の「ジャパンミート生鮮館」、関東圏ロードサイドの「ジャパンミート卸売市場」、都市型ホールセールの「肉のハナマサ」、地域密着型の「スーパーみらべる」などがあります。

収益は、一般消費者や飲食店事業者等のプロ顧客への商品販売による対価です。運営は、株式会社ジャパンミート、株式会社花正、株式会社スーパーみらべる等の連結子会社が担っています。また、有限会社JM青果が青果仲卸事業を、株式会社柳田商店が米穀小売業を行い、グループの商品調達を支えています。

(2) その他


外食店舗の運営、食に関わるイベントの展開、スーパーマーケットのレジ業務受託、ショッピングセンターの運営などを行っています。外食事業では「焼肉や漫遊亭」等を展開し、イベント事業では「肉フェス」などを手掛けています。

外食事業の収益は飲食サービスの提供による対価であり、株式会社ジャパンデリカが運営しています。イベント事業はAATJ株式会社、アウトソーシング事業は株式会社アクティブマーケティングシステム、施設運営管理事業は株式会社ニコモールがそれぞれ運営を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は毎期増加傾向にあり、事業規模が拡大しています。利益面でも、経常利益および当期純利益は増加トレンドにあり、特に直近の2025年7月期は売上高1,862億円、経常利益101億円と過去最高を更新しました。利益率も安定して5%前後を維持しており、収益性を伴った成長を続けています。

項目 2021年7月期 2022年7月期 2023年7月期 2024年7月期 2025年7月期
売上高 1,298億円 1,408億円 1,548億円 1,723億円 1,862億円
経常利益 67億円 69億円 74億円 93億円 101億円
利益率(%) 5.2% 4.9% 4.8% 5.4% 5.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 42億円 43億円 44億円 55億円 65億円

(2) 損益計算書


直近2期間の比較では、売上高の増加に伴い売上総利益も順調に伸長しています。売上総利益率は28.6%から28.7%へと微増し、安定した利益体質を示しています。営業利益についても増益となっており、営業利益率は5.3%から5.4%へ向上しました。コストコントロールを行いつつ、事業拡大を実現していることが分かります。

項目 2024年7月期 2025年7月期
売上高 1,723億円 1,862億円
売上総利益 492億円 534億円
売上総利益率(%) 28.6% 28.7%
営業利益 91億円 100億円
営業利益率(%) 5.3% 5.4%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が165億円(構成比38.1%)、地代家賃が63億円(同14.4%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力のスーパーマーケット事業は、既存店の好調や新規出店の効果により増収増益となりました。利益率は5.3%と安定しています。その他事業も増収増益を達成しており、利益率は8.0%と高い水準を示しています。全社的に事業が順調に拡大しており、セグメント間の調整額を含めても連結全体で増益となっています。

区分 売上(2024年7月期) 売上(2025年7月期) 利益(2024年7月期) 利益(2025年7月期) 利益率
スーパーマーケット事業 1,670億円 1,806億円 86億円 96億円 5.3%
その他 53億円 56億円 5億円 6億円 8.0%
調整額 -24億円 -28億円 0億円 -1億円 -
連結(合計) 1,723億円 1,862億円 91億円 100億円 5.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


**健全型**:営業活動で得たキャッシュを借入金の返済や投資に充てており、財務体質が健全な状態です。

項目 2024年7月期 2025年7月期
営業CF 97億円 66億円
投資CF -53億円 -64億円
財務CF -22億円 -57億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は14.6%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は62.1%で市場平均(プライム・非製造業)を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「食を守り、ひとを育む」を経営理念として掲げています。また、経営の基本方針として「人材育成」「お客様第一主義」「変化対応」「本物の商品開発、技術の修得」を定めており、安心・安全・安価な商品と楽しい売場を提供することを目指しています。

(2) 企業文化


従業員の心がまえとして「JMグループスピリッツ」を掲げています。具体的には、①安心・安全・安価な「商品」を提供する、②お客様が楽しく買い物ができる「売場」を提供する、③食に関する「プロフェッショナル」として誠意をもって接客する、という3点を重視し、社員一人ひとりが店舗づくりに参加する文化があります。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、2026年7月期から2029年7月期までの4ヶ年を対象とする中期経営計画を策定しています。
2029年7月期の目標数値は以下の通りです。

* 売上高:2,500億円
* 営業利益:150億円
* 経常利益:151億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:91億円
* ROE:10%以上

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画の達成に向け、積極的な店舗開発による新規出店の加速、特に関西エリアの店舗網拡充や新たなエリアへの出店検討を進めています。また、PB商品や直輸入商品など独自の商品開発を加速させ、既存店売上の向上を目指すとともに、M&Aの積極的な検討や商品製造・加工の内製化を推進することで、さらなる成長を図る方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


経営方針の一つに「人材育成」を掲げ、真のプロフェッショナルの育成を使命としています。人事政策においては、「優秀な人材の確保と、能力開発・育成を図ることが企業の発展と成長の根源である」との考えに基づき、適材適所、公平な能力評価、そして働き甲斐や生き甲斐のある活気ある職場作りに重点を置いています。積極的な新規出店に伴い、必要な人材の確保にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年7月期 38.5歳 6.1年 5,323,000円


※平均年間給与は基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 14.3%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) 64.0%
男女賃金差異(正規雇用) 65.4%
男女賃金差異(非正規) 54.9%


※男性労働者の育児休業取得率については、育児休業取得対象者が不在のため「-」となっています。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性比率(19.8%)、中途採用者比率(80.2%)、外国人比率(1.9%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 食品の安全性について


生鮮食品や加工食品等を扱うため、食の安全性確保は最重要課題です。衛生・温度管理や検査体制を徹底していますが、万一、不適切な食材提供、異物混入、産地偽装、鳥インフルエンザ等の疫病、有害物質汚染などが発生した場合、業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。ISO9001に基づく管理手法を遵守し、リスク最小化に努めています。

(2) 雇用環境について


生産年齢人口の減少等により、正社員およびパート労働者の採用が困難な状況にあります。必要な人材の確保や育成が計画通り進まない場合、採用・教育費用の増加や人件費の上昇により、業績に影響を与える可能性があります。これに対し、新卒・中途採用の積極化や、地域ごとの賃金動向を注視したパート採用に努めています。

(3) 自然災害・事故・感染症について


店舗や加工物流センターにおいて、地震等の自然災害、事故、または感染症の流行が発生した場合、営業活動が制約されるリスクがあります。特に大規模災害による店舗被害や、感染症流行による営業時間の短縮・停止、対策費用の発生等は、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 経営環境について


個人消費の低迷や競合他社との競争激化により、店舗の収益性が悪化するリスクがあります。また、同社グループはジョイフル本田の商業施設内に「ジャパンミート生鮮館」を多数出店しており、売上高の約27.3%が同社施設内店舗によるものです。そのため、ジョイフル本田の集客力や店舗政策の動向が、同社グループの業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。