※本記事は、株式会社アイモバイル の有価証券報告書(第18期、自 2024年8月1日 至 2025年7月31日、2025年10月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. アイモバイルってどんな会社?
アイモバイルは、国内最大級のふるさと納税サイト「ふるなび」の運営と、アドネットワーク等のインターネット広告事業を両輪とするマーケティング企業です。
■(1) 会社概要
同社は2007年に設立され、モバイルアドネットワークサービスを開始しました。2014年にふるさと納税ポータルサイト「ふるなび」のサービスを開始し、事業を多角化しました。2016年に東京証券取引所マザーズ市場へ上場を果たし、2018年には市場第一部へ変更、2022年の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行しています。2025年には小売電気事業を行う子会社を設立するなど、新規事業への展開も進めています。
2025年7月31日現在、グループ全体の従業員数は215名(単体同数)です。筆頭株主は代表取締役会長の資産管理会社であるティーネットで、第2位は代表取締役社長の資産管理会社であるあさひ、第3位は創業者の田中俊彦氏となっており、経営陣およびその関係会社が高い持分を保有するオーナー企業的な側面を持っています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ティーネット | 22.27% |
| あさひ | 21.41% |
| 田中 俊彦 | 6.75% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は野口哲也氏が務めています。社外取締役比率は60.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 野口 哲也 | 代表取締役社長 | 日本アイ・ビー・エム、アーサー・D・リトル・ジャパンを経て、2007年同社取締役就任。2017年より現職。 |
| 田中 俊彦 | 代表取締役会長代表プロジェクト本部本部長 | 2006年サイバーコンサルタント設立。2007年同社設立とともに代表取締役社長就任。2017年より会長、2025年よりふるなび電力代表取締役を兼務。 |
| 文田 康博 | 専務取締役コーポレート統括本部本部長 | ジャスフォート(現キタムラ)、ブロードリーフ等を経て2019年同社入社。経営企画部長、執行役員を経て2023年より現職。 |
| 溝田 吉倫 | 取締役アドプラットフォーム事業本部本部長 | レオパール、グローバル住販を経て2009年同社入社。2015年取締役就任。サイバーコンサルタント代表取締役を兼務。 |
社外取締役は、田中邦裕(さくらインターネット代表取締役社長)、嶋聡(元ソフトバンク社長室長)、崔真淑(エコノミスト)、轟幸夫(元SBI証券常務取締役)、石本忠次(税理士)、髙木明(公認会計士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「コンシューマ事業」および「インターネット広告事業」を展開しています。
■(1) コンシューマ事業
ふるさと納税サイト「ふるなび」の運営を中心に、トラベル事業、レストランPR事業、ポイントサービス事業を行っています。「ふるなび」では寄附申し込みの受付や、あとで特産品を選べる「ふるなびカタログ」などの独自サービスを提供し、ユーザーと自治体をつなぐプラットフォームとしての役割を担っています。
主な収益源は、ふるさと納税の普及促進や寄附受付業務の代行に対する自治体からの手数料収入です。運営は主にアイモバイルが行っており、トラベル事業では寄附金額に応じたポイントで旅行プランを利用できる「ふるなびトラベル」などを展開しています。
■(2) インターネット広告事業
アドネットワーク事業、インフルエンサーマーケティング事業、メディアソリューション事業、広告代理店事業、アプリ運営事業を展開しています。アドネットワークではクリック課金型広告や動画広告を配信し、広告主とメディア双方の価値最大化を図っています。また、子会社を通じてスマートフォン向けパズルゲーム等のアプリ運営も行っています。
収益は、広告主からの広告費や、広告枠を提供するメディアへの手数料、アプリ内広告収益等から得ています。運営はアイモバイルのほか、広告代理店事業を行う株式会社サイバーコンサルタント、アプリ運営を行うオーテ株式会社などの連結子会社が担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は着実に増加傾向にあり、事業規模が拡大しています。利益面では、経常利益率が10%台後半から20%台後半の高い水準を維持しており、収益性の高さがうかがえます。特に当期は売上高、経常利益ともに過去最高水準となり、安定した成長を続けています。
| 項目 | 2021年7月期 | 2022年7月期 | 2023年7月期 | 2024年7月期 | 2025年7月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 116億円 | 139億円 | 164億円 | 187億円 | 215億円 |
| 経常利益 | 34億円 | 38億円 | 34億円 | 35億円 | 41億円 |
| 利益率(%) | 29.0% | 27.6% | 20.9% | 18.5% | 18.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 19億円 | 23億円 | 23億円 | 24億円 | 31億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を見ると、売上高の増加に伴い、売上総利益も順調に伸長しています。売上総利益率は99%以上と極めて高く、原価率が非常に低いビジネスモデルであることが特徴です。営業利益率も約19%と高水準を維持しており、効率的な事業運営が行われていることがわかります。
| 項目 | 2024年7月期 | 2025年7月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 187億円 | 215億円 |
| 売上総利益 | 187億円 | 215億円 |
| 売上総利益率(%) | 99.8% | 99.9% |
| 営業利益 | 35億円 | 41億円 |
| 営業利益率(%) | 18.9% | 19.2% |
販売費及び一般管理費のうち、販売促進費が92億円(構成比53%)、広告宣伝費が36億円(同21%)を占めています。これらは主にコンシューマ事業におけるユーザー獲得や利用促進のための費用と考えられます。
■(3) セグメント収益
セグメント別に見ると、コンシューマ事業が全社売上の約9割を占める主力事業となっており、当期も増収増益で成長を牽引しました。「ふるなび」の認知度向上や会員数増加が寄与しています。一方、インターネット広告事業は減収減益となり、利益率も低下しました。市場環境の変化や大口顧客の予算減少などが影響しています。
| 区分 | 売上(2024年7月期) | 売上(2025年7月期) | 利益(2024年7月期) | 利益(2025年7月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| コンシューマ事業 | 160億円 | 191億円 | 34億円 | 40億円 | 21.1% |
| インターネット広告事業 | 28億円 | 24億円 | 3億円 | 2億円 | 6.4% |
| 調整額 | 0億円 | 1億円 | -2億円 | 0億円 | - |
| 連結(合計) | 187億円 | 215億円 | 35億円 | 41億円 | 19.2% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、収益基盤の安定化と持続的成長のため、新規事業創出やM&A等による事業・サービスへの積極的な投資方針を掲げています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益や預り金の増加等により、前連結会計年度より増加しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、定期預金の増加や固定資産取得による支出があったものの、投資有価証券売却収入等により、前連結会計年度より支出額が拡大しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の取得や配当金の支払い等により、前連結会計年度より支出額が増加しました。
| 項目 | 2024年7月期 | 2025年7月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 38億円 | 48億円 |
| 投資CF | -7億円 | -36億円 |
| 財務CF | -7億円 | -23億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「“ひとの未来”に貢献する事業を創造し続ける」というビジョンを掲げています。マーケティングを通じて価値ある体験を提供し続けることで、ユーザーや取引先に対して満足度の高いサービスを提供し、企業価値および株主価値の最大化を目指すことを基本方針としています。
■(2) 企業文化
同社は、グループビジョンの実現を支える行動指針として「Smile × Growth × Team」というValuesを掲げています。協力性の高さや熱量を持って仕事に取り組む姿勢を強みとし、社員間や部署間のコミュニケーションを重視する文化があります。誰もが安心・安全に活躍できる環境構築にも努めています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、重視する経営指標として売上高、営業利益、およびROEを挙げています。事業成長に向けた最適な資本構成を目指すため、中長期的な資本効率の目標として以下の数値を設定しています。
* ROE目標:15%
* 総資産回転率:1回転以上
■(4) 成長戦略と重点施策
今後の持続的な成長に向けて、既存事業の強化と新規事業の創出に取り組む方針です。コンシューマ事業では「ふるなび」ブランドを活用した認知向上とユーザー獲得、周辺事業への展開を強化します。インターネット広告事業では、広告配信技術の向上やアプリ運営などの新領域を推進します。また、M&Aや事業提携による成長への投資も積極的に行う計画です。
* 新規ユーザー獲得とエンゲージメント強化
* 「ふるなび」を基点とした周辺事業への投資による新規事業創出
* 事業ポートフォリオの拡大とビジネスモデルの多様化
* グリーンエネルギー事業などのサステナブル領域への展開
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「Smile × Growth × Team」というValuesを体現する人材の育成と確保を重視しています。社員の成長を支える制度やコミュニケーション活性化の仕組みを整備し、誰もが活躍できる環境を構築することで、組織としての実行力を高める方針です。また、事業拡大に応じた適正な人員配置により、効率的で機動的な組織運営を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年7月期 | 36.0歳 | 6.4年 | 7,001,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 14.0% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 68.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 69.2% |
| 男女賃金差異(非正規) | 43.9% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、離職率(9.3%)、有給取得率(89.5%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) インターネット広告市場の変動
インターネット広告市場は拡大傾向にありますが、外国資本プラットフォームの台頭や個人情報保護規制の強化、景気変動による広告費の減少などが起きた場合、想定した収益を確保できず、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 技術革新への対応
技術進化や顧客ニーズの変化が速い業界であるため、対応が遅れた場合にはサービスの陳腐化や競争力の低下を招く恐れがあります。また、新技術への対応やシステム改良に伴う費用増加が発生する可能性もあります。
■(3) ふるさと納税事業に関する規制
主力事業であるふるさと納税事業は、税制改正や法的規制だけでなく、政府や自治体からの指導・要請の影響を受ける可能性があります。制度変更等により事業環境が変化した場合、業績に影響を与える可能性があります。



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