ベストワンドットコム 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ベストワンドットコム 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証グロース上場のオンライン旅行会社です。クルーズ旅行に特化した予約サイト「ベストワンクルーズ」を運営し、個人向けに乗船券やツアーを販売しています。2025年7月期はチャータークルーズの販売不振等により減収減益となりましたが、インバウンド需要対応やシステム強化等の先行投資を進めています。


※本記事は、株式会社ベストワンドットコム の有価証券報告書(第20期、自 2024年8月1日 至 2025年7月31日、2025年10月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ベストワンドットコムってどんな会社?


ベストワンドットコムは、クルーズ旅行専門のオンライン予約サイトを展開する旅行会社です。

(1) 会社概要


2005年に設立された同社は、2006年にオンライン旅行予約サイト「ベストワンクルーズ」の運用を開始しました。2018年に東証マザーズ(現グロース)へ上場を果たし、その後もハネムーン向けや高級船専門サイトを展開しています。近年では2024年に初の単独チャータークルーズを実施するなど、事業を拡大しています。

2025年7月末時点で、連結従業員数は19名、単体従業員数は19名という少数精鋭の体制です。筆頭株主は同社取締役会長の澤田秀太氏で、第2位は外国法人の証券会社、第3位は創業者の米山実香氏です。

氏名 持株比率
澤田 秀太 31.62%
GOLDMAN SACHS INTERNATIONAL 9.17%
米山 実香 8.09%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は野本洋平氏です。社外取締役比率は約11.1%です。

氏名 役職 主な経歴
澤田 秀太 取締役会長 日興コーディアル証券(現SMBC日興証券)等を経て2012年同社社長。2022年代表取締役会長、2025年10月より現職。
野本 洋平 代表取締役社長 国土交通省関東運輸局を経て2009年同社入社。取締役旅行部長等を経て2022年4月より現職。
田渕 竜太 取締役経営管理本部長 2011年同社入社。旅行部企画リーダー、ファイブスタークルーズ取締役等を経て2020年2月より現職。
米山 実香 取締役管理部長 NTTデータ入社後、2005年同社設立し代表取締役社長就任。取締役、監査役を経て2016年10月より現職。
小川 隆生 取締役 リクルート(現リクルートHD)、ベンチャー・リンク等を経て2014年同社入社。経営管理本部長等を経て2020年2月より現職。


社外取締役は、高木洋平(弁護士・LM虎ノ門南法律事務所パートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「旅行業」および「その他事業」事業を展開しています。

(1) 旅行業


オンライン旅行会社として、海外・国内クルーズの乗船券やパッケージ旅行、フェリー乗船券などを販売しています。主要サイト「ベストワンクルーズ」では約58,000コースを取り扱い、子会社のファイブスタークルーズでは高級船専門の販売を行っています。また、ハネムーン向けの専門サイトも運営しています。

主な収益源は、顧客からの旅行代金や提携船会社からの手数料等です。運営は主に同社および連結子会社のファイブスタークルーズが行っています。専門スタッフによるサポートと24時間対応のオンライン予約を組み合わせ、顧客ニーズに対応しています。

(2) その他事業


京都駅前にて宿泊施設「えびす旅館」の運営を行っています。9室の宿泊特化型ホテルとして、主に外国人旅行客に向けた予約販売を行っており、インバウンド需要に対応しています。

収益源は、宿泊客からの宿泊料です。運営は連結子会社のえびす旅館が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2023年7月期に黒字転換を果たし、2024年7月期には売上・利益ともに大きく伸長しました。しかし、2025年7月期は一転して減収減益となり、利益率は大きく低下しています。

項目 2021年7月期 2022年7月期 2023年7月期 2024年7月期 2025年7月期
売上高 0.8億円 2.5億円 13.3億円 31.4億円 25.4億円
経常利益 -1.3億円 -1.8億円 0.2億円 2.8億円 0.3億円
利益率(%) -158.8% -71.9% 1.2% 8.9% 1.1%
当期利益(親会社所有者帰属) -1.3億円 -2.2億円 0.3億円 2.4億円 0.1億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で減少し、売上総利益率も低下しました。販売費及び一般管理費は微増しており、これらが影響して営業利益率は大幅に低下しました。

項目 2024年7月期 2025年7月期
売上高 31.4億円 25.4億円
売上総利益 7.3億円 5.1億円
売上総利益率(%) 23.4% 19.9%
営業利益 2.6億円 0.3億円
営業利益率(%) 8.4% 1.1%


販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が1.7億円(構成比35.0%)、給料手当が0.8億円(同17.2%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の旅行業において、チャータークルーズ等の販売が見込みを下回ったことで減収減益となりました。一方、その他事業はインバウンド需要の増加により増収増益を達成しました。

区分 売上(2024年7月期) 売上(2025年7月期) 利益(2024年7月期) 利益(2025年7月期) 利益率
旅行業 31.0億円 25.0億円 2.5億円 0.2億円 0.7%
その他事業 0.4億円 0.4億円 0.1億円 0.1億円 30.0%
連結(合計) 31.4億円 25.4億円 2.6億円 0.3億円 1.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

ベストワンドットコムのキャッシュ・フローの状況についてご説明します。

営業活動によるキャッシュ・フローは、旅行前払金の増加や法人税等の支払いがあったものの、契約負債の増加により、前年と比べて資金の支出が増加しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券の償還による収入があったものの、固定資産や投資有価証券の取得による支出があったため、支出となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入れによる収入が大きかったことから、大幅な収入超過となりました。

項目 2024年7月期 2025年7月期
営業CF 2.9億円 -1.9億円
投資CF -0.2億円 -0.1億円
財務CF 1.5億円 11.2億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、経営理念として「テクノロジーにより世界中に感動体験と豊かな生活を創出する」を掲げ、ミッションとして「人類の進化と豊かな感性を最も多く創るカンパニー」を目指しています。クルーズ旅行を主力事業とし、新しい旅行スタイルを経験するきっかけを提供することを基本方針としています。

(2) 企業文化


同社は、多様な価値観や能力を持った人材を育成するため、フラットにコミュニケーションが取れる環境や、様々な人材があらゆる業務に携わることができる環境の整備を重視しています。また、子会社のファイブスタークルーズでは「すべてのお客様に初めての感動体験を」を謳い、顧客への提案を行っています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、事業を継続的に発展させるため、「売上高」及び「営業利益」を重要な経営指標として捉え、その向上を図る経営に努めています。具体的な数値目標は記載されていませんが、適正な利益確保と売上の増加を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、取扱い船会社やツアーのラインナップ数を強みとし、オリジナルツアーの改善やチャータークルーズなど独自商品の提供による需要創出を目指しています。また、オンライン予約システムの強化や、インバウンド需要への対応、グローバル人材の採用、マーケティングの進化、ブランド認知度の向上などに注力する方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、オンライン完結型の予約システム構築のための優秀なエンジニア確保と、クルーズ案内の専門性が高いスタッフの育成を重要課題としています。多様性のある人材の確保と雇用維持が必要と考え、開発現場でのOJTや船会社による研修、乗船研修などを通じて、エンジニアの能力向上と専門性の高い接客対応力の強化を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年7月期 32.5歳 3.9年 3,826,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 20.0%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用) -
男女賃金差異(非正規雇用) -


男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異については、同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 競合他社との競争激化


クルーズ旅行は大手旅行会社も取り扱っており、有力な競合企業や新興ベンチャー企業が資本力や技術力を活かして参入することで競争が激化する可能性があります。同社は専門特化による差別化を図っていますが、想定以上の競争激化は事業及び業績に影響を与える可能性があります。

(2) 船会社による直販化の影響


航空券やホテル予約同様、インターネットの発達によりエンドユーザーへの直販が増加傾向にあります。クルーズ旅行は旅行代理店のサポート需要が高いものの、旅行者がクルーズに習熟し船会社サイトでの直接購入を選好するようになれば、同社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) チャータークルーズ等の在庫リスク


同社は独自商品の企画やリピーター囲い込みのため、在庫を伴うチャータークルーズやキャビン買取を強化しています。過去の販売統計に基づき計画的に仕入を行っていますが、市場環境の変化等により販売が計画を大きく下回った場合、在庫リスクが顕在化し業績に悪影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。