Link-Uグループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

Link-Uグループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場のLink-Uグループは、サーバープラットフォーム技術を核に、マンガアプリの運営やAIソリューションを提供しています。第12期は、リカーリングサービスが好調で売上収益は大幅な増収となりましたが、成長投資等の影響により最終利益は減益となりました。


※本記事は、株式会社Link-Uグループ の有価証券報告書(第12期、自 2024年8月1日 至 2025年7月31日、2025年10月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. Link-Uグループってどんな会社?

独自設計のサーバー技術とAIを強みに、マンガアプリ運営やDX支援をワンストップで展開するIT企業です。

(1) 会社概要

2013年に設立され、翌2014年に小学館と「マンガワン」をリリースしました。2019年にマザーズへ上場し、2024年には持株会社体制への移行に伴い現商号へ変更しました。サーバーインフラ技術を基盤に、集英社の「ゼブラック」など大手出版社のマンガアプリ運営を支援し、事業を拡大しています。

連結従業員数は193名、単体では35名です。筆頭株主は代表取締役の松原裕樹氏で、第2位は個人株主の山田剛史氏です。第3位には、同社がサーバー保守運用を受託するなど取引関係にあるメディアシークが名を連ねています。

氏名 持株比率
松原 裕樹 31.30%
山田 剛史 29.30%
メディアシーク 7.85%

(2) 経営陣

同社の役員は男性5名、女性1名の計6名で構成され、女性役員比率は17.0%です。代表取締役グループCEOは松原裕樹氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
松原 裕樹 代表取締役グループCEO 楽天、サイバーエージェント、電通を経て、2013年に同社設立し取締役に就任。2014年より代表取締役社長。HashPalette等のグループ会社役員を兼任し、2024年2月より現職。
藤田 貴弘 取締役グループ管理統括 アビ代表取締役社長、商業藝術取締役管理本部長を経て、2022年に同社入社。執行役員経営管理本部長、Link-U Technologies取締役CFO等を歴任し、2024年2月より現職。
平文 英徳 取締役グループ事業統括 ソフトバンクBBを経て、2017年に同社入社。VaLa担当執行役員、Studio Moon6代表取締役CEO等を歴任。2025年4月より執行役員グループ経営推進本部長を務め、同年10月より現職。


社外取締役は、安藤伸次(元かんぽシステムソリューションズ取締役)、塚田英樹(塚田会計事務所所長)、萩生田彩(CREA LEGAL代表取締役)です。

2. 事業内容

Link-Uグループは「インターネットサービス事業」の単一セグメントですが、サービス区分として「リカーリングサービス」、「初期開発・保守開発サービス」および「その他サービス」を展開しています。

(1) リカーリングサービス

出版社等のコンテンツホルダーと協業し、マンガアプリ等のサーバー調達からアプリ開発、サービス運用までをワンストップで提供しています。小学館の「マンガワン」や集英社の「ゼブラック」などが主要なサービスです。

収益は主にレベニューシェア(収益配分)および月額固定のサブスクリプションで構成されています。ユーザーの課金や広告収入の一部をコンテンツホルダーから受領します。運営は主に株式会社Link-U Technologiesなどのグループ会社が行っています。

(2) 初期開発・保守開発サービス

リカーリングサービス獲得のための入り口として、取引先の新規サービス立ち上げや既存サーバーからの乗り換え時に、サーバープラットフォームやアプリの受託開発を提供しています。

顧客から開発対価を受け取るフロー型の収益モデルです。納品後の保守運用やアップデート対応を通じて、ストック型のリカーリングサービスへと繋げています。開発は同社グループが請け負っています。

(3) その他サービス

上記の2サービスに分類されない、Webサイト開発などのスポット的な開発案件を手掛けています。

顧客から開発費等を受領します。案件ごとに発生する単発の収益が中心であり、同社グループが対応しています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

直近の業績を見ると、売上収益は前期比で3割以上増加し、事業規模が拡大しています。一方、税引前利益は横ばい、当期利益は微減となっており、増収に対して利益の伸びが追いついていない状況です。積極的な事業拡大に伴うコスト増や投資の影響が見受けられます。

項目 2024年7月期 2025年7月期
売上収益 37億円 48億円
税引前利益 3億円 3億円
利益率(%) 8.5% 6.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 1.6億円 1.5億円

(2) 損益計算書

直近2期間を比較すると、売上収益の大幅な増加に伴い売上総利益も増加していますが、利益率は低下しています。これは売上原価の増加率が売上の伸びを上回ったためと考えられます。また、営業利益額は微増に留まっており、収益性の改善が課題となっています。

項目 2024年7月期 2025年7月期
売上高 37億円 48億円
売上総利益 21億円 23億円
売上総利益率(%) 57.4% 47.8%
営業利益 3億円 3億円
営業利益率(%) 8.5% 6.8%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給付費用が13億円(構成比65%)、外注委託費が9億円(同42%)を占めています。売上原価においては、外注委託費やサーバー関連費用などが主な構成要素です。

(3) セグメント収益

Link-Uグループは「インターネットサービス事業」の単一セグメントなので、セグメント別の利益は開示していません。サービス区分ごとの売上高は、主力のリカーリングサービスは、既存サービスの伸長や新規連結子会社の寄与により大幅な増収となりました。初期開発・保守開発サービスも案件が順調で増収となっています。

区分 売上(2024年7月期) 売上(2025年7月期)
リカーリングサービス 33億円 43億円
初期開発・保守開発サービス 3億円 5億円
連結(合計) 37億円 48億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

営業CFはプラスを維持しつつ、投資活動や借入金の返済等を行っており、健全型のキャッシュ・フロー状態と言えます。

項目 2024年7月期 2025年7月期
営業CF 2.6億円 2.2億円
投資CF -0.3億円 -1.1億円
財務CF -0.9億円 -3.6億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.7%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は46.9%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社グループは、「あらゆる価値を解放し、ココロ震える体験を世界に。」をグループパーパス(経営理念)としています。マンガアプリのような革新的なプロダクトやコミカライズ、新しいソリューションの提案を通じて、よりよい未来を築くことを基本方針としています。

(2) 企業文化

現状を疑い、前例のないことを恐れず、新たな可能性を探りながら「ココロ震わせる仕掛け作り」に挑戦し続ける姿勢を重視しています。技術革新を進め、多くの人々に感動体験を届けることを目指す文化があります。

(3) 経営計画・目標

2026年7月期を最終年度とする中期的な目標として、以下の数値を掲げています。
* 売上収益:60億円
* 営業利益:6億円

(4) 成長戦略と重点施策

グローバルビジネスの拡大、自社IP創出、制作事業の強化に注力しています。具体的には、日本のコンテンツを海外へローカライズ・流通させるほか、制作体制を強化してオリジナルヒット作品を生み出し、他社との差別化を図ります。また、AIを活用した効率的かつ高品質な開発を進め、収益力向上と成長投資を両立させる方針です。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

優秀なエンジニアの確保を重要課題と捉え、人材育成や多彩な人材活用の基盤確立に努めています。株式報酬制度の導入や社内教育制度の整備、福利厚生の充実を図ることで、人材獲得競争に対応しています。また、産休育休の取得推進やフレックスタイム制の導入により、ワークライフバランスの向上にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年7月期 32.8歳 2.1年 5,207,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 37.5%


同社は公表義務の対象ではないため、有報には男性育児休業取得率および男女賃金差異の記載がありません。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定顧客への依存

主要顧客上位3社向けの売上が全体の約25%を占めており、特定顧客への依存度が高い状態です。各顧客の方針変更や経営状況の悪化があった場合、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。サービスの差別化や新規顧客開拓により依存度の軽減に努めています。

(2) Apple社及びGoogle社の動向

スマートフォンアプリは主にApple社やGoogle社のプラットフォーム上で提供されており、そこからの売上比率が高くなっています。プラットフォーム運営事業者の規約変更や事業戦略の転換があった場合、同社グループの事業運営や業績に影響を与える可能性があります。

(3) 競合他社との競争

主力とするコンテンツ配信市場は参入障壁が低く、出版社等も非独占的にコンテンツを提供しています。競合他社との差別化が図れない場合や、技術対応の遅れによりサービスが陳腐化した場合には、利用者数が減少し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。