ツクルバ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ツクルバ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所(グロース)上場。中古・リノベーション住宅の流通プラットフォーム「cowcamo(カウカモ)」を主力事業として展開しています。当連結会計年度は、カウカモ事業の規模拡大により、売上高は前期比47.7%増と大幅な増収を達成し、経常利益も大幅な増益となりました。


※本記事は、株式会社ツクルバ の有価証券報告書(第14期、自 2024年8月1日 至 2025年7月31日、2025年10月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ツクルバってどんな会社?


中古・リノベーション住宅流通プラットフォーム「cowcamo」を運営し、住まいの流通変革を目指す企業です。

(1) 会社概要


2011年に設立され、2015年に中古・リノベーション住宅の流通プラットフォーム「cowcamo」の提供を開始しました。2019年に東京証券取引所マザーズへ上場し、2022年の市場区分見直しに伴いグロース市場へ移行しました。2023年には不動産企画デザイン事業を会社分割により新設会社へ承継させています。

同グループの従業員数は連結235名、単体215名です。筆頭株主は共同創業者である村上浩輝氏で、第2位は資産管理会社と推察される株式会社エイチ、第3位は投資会社と思われる株式会社ワングローブキャピタルです。

氏名 持株比率
村上 浩輝 19.17%
エイチ 10.26%
ワングローブキャピタル 7.92%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役CEOは野村駿太郎氏です。社外取締役比率は62.5%です。

氏名 役職 主な経歴
野村駿太郎 代表取締役CEO 2009年コスモスイニシア入社。2023年ツクルバ入社、ツクルバボックス代表取締役などを経て、2025年9月より現職。
北原寛司 取締役CSO コーポレイトディレクション、デロイトトーマツコンサルティングを経て2016年入社。取締役COOなどを歴任し2023年7月より現職。
竹内真 取締役 2001年富士ソフトABC入社。ビズリーチ取締役、ビジョナル取締役CTOなどを歴任。2025年5月より現職。


社外取締役は、小林賢治(シニフィアン代表取締役)、福島良典(LayerX代表取締役CEO)、西浦千栄子(公認会計士)、石本忠次(メンターキャピタル税理士法人代表社員)、木村勇人(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「cowcamo(カウカモ)事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) cowcamo事業(仲介・付帯サービス)


ITを活用した中古・リノベーション住宅流通プラットフォーム「cowcamo」において、オンラインメディアを通じた物件情報の提供や、自社エージェントによる売買仲介サービスを展開しています。独自の物件情報データベースやアプリを活用し、顧客体験の刷新を図っています。

主な収益源は、中古・リノベーション住宅の売買に関して売手および買手から受領する売買仲介手数料や、リノベーション等の斡旋手数料等です。運営は主に同社および連結子会社のツクルバボックスが行っています。

(2) cowcamo事業(自社企画商品)


蓄積された顧客ニーズや物件・取引データを活用し、リノベーション物件の商品企画や販売支援などの業務支援サービスを提供しています。また、自社で企画したリノベーション済み住宅の開発・販売も行っています。

主な収益源は、自社企画商品の販売収益です。データを活用した最適なリノベーション企画の立案や販売価格の推計により、ユーザーに適した物件供給を行うとともに、収益機会の拡大を図っています。運営は同社グループが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近2期間の業績を見ると、売上高は大幅な増加傾向にあります。経常利益も前期比で増加しており、事業規模の拡大に伴い収益性が向上しています。一方、当期利益に関しては、当期においてマイナスに転じています。

項目 2024年7月期 2025年7月期
売上高 55億円 81億円
経常利益 1.1億円 2.0億円
利益率(%) 2.1% 2.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 1.9億円 -0.5億円

(2) 損益計算書


売上高は大幅に伸長し、それに伴い売上総利益も増加しています。売上総利益率は若干低下していますが、営業利益および営業利益率は改善しており、本業の収益力が高まっていることがうかがえます。

項目 2024年7月期 2025年7月期
売上高 55億円 81億円
売上総利益 28億円 35億円
売上総利益率(%) 51.5% 43.8%
営業利益 1.6億円 2.7億円
営業利益率(%) 2.8% 3.4%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が13億円(構成比41%)、広告宣伝費が5億円(同15%)を占めています。

(3) セグメント収益


サービス別の売上高を見ると、自社企画商品が大きく伸びており、全体の増収を牽引しています。仲介・付帯サービスも堅調に推移しています。

区分 売上(2024年7月期) 売上(2025年7月期)
仲介・付帯サービス 25億円 29億円
自社企画商品 28億円 52億円
連結(合計) 55億円 81億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


なお、同社は在庫を多く抱える事業を主力としているため、営業CFのマイナスは棚卸資産(商品・販売用不動産等)の増加(事業拡大)に起因している可能性があり、必ずしも業績悪化を意味するものではありません。

項目 2024年7月期 2025年7月期
営業CF -9.0億円 -14.8億円
投資CF 0.8億円 -0.8億円
財務CF 9.5億円 15.0億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.2%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は29.1%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「住まいの『もつ』を自由に。『かえる』を何度でも。」をビジョンに掲げています。情報通信技術とデザインを高次に融合させることで、誰もが個性豊かな生き方を実現できる仕組みを提供し、顧客本位の住宅流通の変革を目指して事業活動を行っています。

(2) 企業文化


同社グループは、創業者の「『場の発明』を通じて欲しい未来をつくる。」という理念のもと設立されました。デザインとテクノロジーを活用し、分断された流通構造を統合・アップデートすることで、ユーザー本位の体験を提供することを重視しています。また、自分らしい生活を志向するリノベーション時代の価値観に対応し、ビジュアルコミュニケーションやストーリー性を大切にする文化があります。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、企業価値向上のため、売上総利益の継続的な成長と営業利益率の改善を重視しています。経営管理上の重要指標(KPI)として、売上総利益、取引件数、収益単価、営業人員数、営業生産性を設定しています。

* 売上総利益
* 取引件数
* 収益単価
* 営業人員数
* 営業生産性

(4) 成長戦略と重点施策


主力事業であるcowcamo事業において、統合型の住宅流通プラットフォームの確立と拡大を目指しています。具体的には、メディアとエージェントサービスの統合による顧客体験の刷新、自社開発システムによる業務プロセスの効率化、蓄積データの活用による周辺領域での収益化を推進します。

* 取引件数の増加(会員数蓄積、成約率向上)
* 取引あたり収益の増加(流通価格適正化、周辺領域での収益化)
* 広告効率およびオペレーション効率の改善

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


事業規模の拡大と成長に向け、専門性を有する人材の採用および社員の育成、企業理念の浸透を重要課題としています。社内研修の強化や福利厚生の充実を図るとともに、志望者を惹きつける事業展開により優秀な人材の採用を強化する方針です。また、経営ビジョンを踏まえた研修を計画的に実施し、社員育成に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年7月期 32.1歳 2.5年 6,068,000円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 30.3%
男性労働者の育児休業取得率 75.0%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 68.5%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) 82.2%
労働者の男女の賃金の差異(非正規) 113.3%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 不動産市況の変動リスク


中古住宅流通市場を中心とした不動産市況の動向に影響を受ける可能性があります。想定を上回る景気悪化等により長期的に不動産市況が低迷した場合、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。また、仲介サービスの売上はサービス提供完了時点で計上されるため、時期により四半期ごとの業績に変動が生じる可能性があります。

(2) 競合他社の参入リスク


テクノロジーに長けた企業による新規参入や、類似した事業モデルを有する海外企業の日本市場への進出等により、競争環境が激化する可能性があります。独自の顧客基盤やノウハウにより差別化を図っていますが、競合企業の動向が想定を超える場合、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 財務上の特約に関するリスク


金融機関との借入契約において財務制限条項が付されているものがあります。これらに違反または抵触した場合、期限の利益を喪失し、一括返済を求められるなど、財政状態および資金繰りに影響を及ぼす可能性があります。

(4) 在庫リスク


自社企画商品については、販売先に対する契約不適合責任を負う可能性があります。また、販売状況が不振となり、その間に不動産の市場価格が下落した場合には、棚卸資産に評価減が発生すること等により、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。