さくらさくプラス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

さくらさくプラス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証グロース市場に上場する、認可保育所の運営を中心とした子ども・子育て支援事業を展開する企業です。2025年7月期の連結業績は、売上高184億円(前期比6.8%増)、経常利益10億円(同18.5%増)となり、保育所の安定運営や関連事業の拡大により増収増益を達成しています。


※本記事は、株式会社さくらさくプラス の有価証券報告書(第8期、自 2024年8月1日 至 2025年7月31日、2025年10月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. さくらさくプラスってどんな会社?


東京都23区を中心に「さくらさくみらい」ブランドの認可保育所を運営するほか、不動産や学習塾など子育て支援事業を多角的に展開しています。

(1) 会社概要


2009年に前身となる株式会社ブロッサム(現さくらさくみらい)を設立し、保育所運営を開始しました。2017年に持株会社体制へ移行し、2020年に東証マザーズ(現グロース)へ上場を果たしました。その後、2021年に子育て支援事業を行うみらいパレットの設立や進学塾のVAMOSの子会社化を行い、2024年にはフェムケア事業を行うYELLを完全子会社化するなど、事業領域を拡大しています。

2025年7月31日現在、グループ全体の連結従業員数は1,804名、単体では33名体制です。大株主構成は、筆頭株主が取締役副社長の中山隆志氏の資産管理会社で、第2位と第3位は代表取締役社長の西尾義隆氏の資産管理会社となっており、創業経営陣による安定的な保有構造となっています。

氏名 持株比率
株式会社TKS 15.24%
株式会社だいぎ 10.93%
株式会社プラスユー 10.57%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性2名の計7名で構成され、女性役員比率は28.6%です。代表取締役社長は西尾義隆氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
西尾 義隆 代表取締役社長 2000年に日本アセットマーケティング入社。2009年にブロッサム(現さくらさくみらい)を設立し代表取締役社長に就任。2017年の同社設立より現職。
中山 隆志 取締役副社長 2000年に日本アセットマーケティング入社。2009年のブロッサム設立時より取締役副社長を務め、2017年の同社設立より現職。
森田 周平 取締役専務 2000年にエッチ・ケー・エス入社。2009年にクリエイトアップを設立。2010年にブロッサム取締役専務に就任し、2017年の同社設立より現職。


社外取締役は、北村聡子(弁護士、半蔵門総合法律事務所パートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「子ども・子育て支援事業」および「その他」事業を展開しています。

子ども・子育て支援事業(保育サービス)

東京都23区を中心に「さくらさくみらい」ブランドで認可保育所および東京都認証保育所を運営しています。「おうちのようなほいくえん」をコンセプトに、安全と安心を提供し、子どもたちが健やかに育つ環境を整備しています。2025年7月末現在の運営施設数は88施設です。

収益は、主に国や自治体から支払われる施設型給付費(委託費)や運営費補助金、および利用者からの保育料等から構成されています。運営は連結子会社のさくらさくみらいが担っています。

その他(周辺事業)

保育所運営で培ったノウハウを活用し、子育て支援住宅「東京こどもすくすく住宅」の企画開発や、保育所等の不動産仲介・管理、保育士向け研修、進学塾運営、フェムケア商品の企画販売などを展開しています。

収益は、不動産の仲介手数料や管理料、研修受講料、塾の授業料、商品販売代金などから構成されています。運営は、さくらさくパワーズ(不動産)、保育のデザイン研究所(研修)、VAMOS(進学塾)、YELL(フェムケア)などの連結子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は着実な右肩上がりを続けており、直近5期間で約1.8倍に成長しています。経常利益も安定して推移しており、2023年7月期に一時的な利益率の低下が見られましたが、その後は回復傾向にあります。事業規模の拡大とともに利益額も伸長する堅調な成長トレンドを示しています。

項目 2021年7月期 2022年7月期 2023年7月期 2024年7月期 2025年7月期
売上高 100億円 120億円 138億円 172億円 184億円
経常利益 16億円 12億円 5億円 9億円 10億円
利益率(%) 16.4% 9.7% 3.9% 5.1% 5.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 2億円 1億円 -0.3億円 -0.4億円 3億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益ともに増加しています。売上総利益率は前年の13.4%から15.7%へ、営業利益率は4.5%から6.2%へとそれぞれ改善しており、収益性が向上していることが読み取れます。増収効果に加え、効率的な運営が進んでいることがうかがえます。

項目 2024年7月期 2025年7月期
売上高 172億円 184億円
売上総利益 23億円 29億円
売上総利益率(%) 13.4% 15.7%
営業利益 8億円 11億円
営業利益率(%) 4.5% 6.2%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が4億円(構成比24%)、地代家賃が1億円(同8%)、役員報酬が1億円(同8%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の保育所事業は、補助金の増額や地域交流活動の推進により増収となりました。その他事業も、不動産販売などの寄与により売上を伸ばしています。全体として、中核事業の安定成長と周辺事業の展開が相まって連結売上の増加につながっています。

区分 売上(2024年7月期) 売上(2025年7月期)
保育所 143億円 153億円
その他 29億円 30億円
連結(合計) 172億円 184億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、本業の営業活動から得たキャッシュで借入金の返済を進めつつ、投資活動も自己資金の範囲内等でコントロールする「健全型」のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2024年7月期 2025年7月期
営業CF 31億円 23億円
投資CF -11億円 -2億円
財務CF -13億円 -10億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は43.9%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「おうちのようなほいくえん」づくりをコンセプトとし、「安全と安心を提供し、自然で和やかな笑いに満ちたあたたかい子育て環境をつくり出す」ことを経営理念として掲げています。子どもたちが心身ともに健やかに育つ環境を提供するとともに、子どもを産み育てやすい環境づくりを通じて社会に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


「さくらさく」という言葉から連想される、子どもが成長して花開いていく喜びや嬉しさを、子ども自身はもちろん、保護者、職員、地域の人々など、あらゆるステークホルダーが笑顔の中で分かち合っていけることを重視しています。職員の資質向上が良い保育の源泉と考え、教育研修に力を入れる文化があります。

(3) 経営計画・目標


高い成長性を維持し、継続的に企業価値の最大化を図ることを目標としており、特に「営業利益率」を重視する経営指標としています。子ども・子育て支援事業は投資先行型で収益性が徐々に向上する特性があるため、安定的な収益基盤の構築と並行して、営業利益率の向上を課題の進捗を図る適切な指標と位置づけています。

(4) 成長戦略と重点施策


「共働き家族・子育て家族のための総合ソリューションカンパニー」として、中核の保育サービスではICT化推進や研修事業の展開による付加価値向上を図っています。また、不動産開発力を活かした子育て支援住宅や、女性の健康支援を行うフェムケア事業など、周辺領域への参入を進めています。

* 優秀な人材の確保・育成:研修制度充実や労働環境の改善。
* 組織力の強化:コンプライアンス遵守やシステム投資による効率化。
* 新規事業への進出:保育以外の新領域や関連領域での事業創出。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


保育の質を維持・向上させるため、優秀な人材の確保と育成を最優先課題としています。女性管理職の積極登用や男性社員の育児休業取得促進、社内研修制度の充実に取り組んでいます。また、従業員の健康維持や働きやすい環境づくり、適切な人事制度の構築を通じて、モチベーションを維持できる組織文化の醸成に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年7月期 42.8歳 6.7年 500万円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 86.4%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 90.1%
男女賃金差異(正規) 80.5%
男女賃金差異(非正規) 97.8%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 人材確保及び育成に関するリスク

保育所の新規開設や運営には、有資格者である優秀な人材の確保が不可欠です。積極的な採用活動や研修を行っていますが、人材確保が計画通りに進まない場合や、人件費の高騰に対して補助金等の手当てが不十分な場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 国及び地方自治体の政策に関するリスク

待機児童解消に向けた国の支援策等の動向に事業が影響を受けます。今後、補助金の削減や株式会社による保育所開設の制限など、重要な政策変更が行われた場合、業績に重大な影響が生じる可能性があります。

(3) 少子化の進行や待機児童の減少に関するリスク

主要事業である子ども・子育て支援事業は児童数の動向に左右されます。少子化の急速な進行や待機児童の減少により市場が著しく縮小した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) 法的規制等に関するリスク

児童福祉法などの関係法令を遵守する必要があります。コンプライアンス体制を整備していますが、法令違反が発生した場合、事業停止命令や社会的信用の失墜を招き、業績に重大な影響を与える可能性があります。また、法令改正への対応も必要となります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。