アドベンチャー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アドベンチャー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証グロース上場。オンライン旅行予約サイト「skyticket」等の旅行事業および投資事業を展開する。第19期(IFRS)は、旅行需要の回復により売上収益は13.3%増の254億円と増収となったが、のれん減損損失の計上により営業損益および当期損益は赤字に転落した。


※本記事は、株式会社アドベンチャー の有価証券報告書(第19期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年10月31日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. アドベンチャーってどんな会社?

旅行予約サイト「skyticket」を運営するOTA(Online Travel Agent)。格安航空券の横断検索に強みを持ちます。

(1) 会社概要

同社は2006年に設立され、2008年に主力となるオンライン旅行予約サイト「skyticket」の運用を開始しました。2013年に旧アドベンチャーを吸収合併し現社名へ変更、2014年に株式上場を果たしました。近年では2023年に株式会社旅工房を連結子会社化するなど、M&Aによる事業拡大を進めています。

連結従業員数は607名、単体では158名です。筆頭株主は創業者で代表取締役社長の中村俊一氏で、発行済株式の約67%を保有しています。第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は海外の機関投資家となっています。

氏名 持株比率
中村 俊一 66.58%
日本カストディ銀行(信託口) 5.64%
DAIWA CM SINGAPORE LTD 2.08%

(2) 経営陣

同社の役員は男性4名、女性4名の計8名で構成され、女性役員比率は50.0%です。代表取締役社長は中村俊一氏が務めています。社外取締役比率は37.5%です。

氏名 役職 主な経歴
中村 俊一 代表取締役社長 2004年に旧アドベンチャーを設立し代表取締役に就任。2006年に同社を設立し代表取締役社長に就任。創業以来、トップとして経営を牽引。
中島 照 取締役 ハーベストフューチャーズ等を経て2013年に同社入社。経営企画室長などを歴任し、2015年より取締役。グループ会社の監査役も兼務。


社外取締役は、三島健(Rokt合同会社日本代表)、雷蕾(シンフロンテラ代表取締役社長)、永田ゆかり(データビズラボ代表取締役)です。

2. 事業内容

同社グループは、「旅行事業」および「投資事業」を展開しています。

(1) 旅行事業

航空券等の旅行商品の比較・予約サイト「skyticket」等を中心に運営しています。国内外の航空券を一括検索できる「航空券の横断検索」機能を強みとし、LCCやリージョナル航空会社を含む多数の航空券を取り扱っています。また、店舗を持たないオンライン販売に特化し、多言語対応やIT技術による業務効率化を推進しています。

収益は主に、航空券や旅行商品の販売に伴う手数料や販売代金等を顧客から受け取ることで発生します。運営は主にアドベンチャーが行っていますが、子会社の株式会社旅工房やアヤベックス株式会社などもそれぞれの強みを活かした旅行事業を展開しています。

(2) 投資事業

将来性があり、キャピタルリターンの期待できるビジネスや企業への投資を行っています。創業初期のベンチャー企業などを中心に投資し、企業の成長を支援するとともに収益獲得を目指します。

収益は、保有する株式等の売却益や、公正価値評価に伴う評価益等から構成されます。運営は主にアドベンチャーが担当しています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

直近5期間の業績推移です。売上収益は順調に拡大傾向にあり、特に直近では250億円規模に達しています。一方で利益面では、第19期においてのれんの減損損失を計上した影響により、税引前利益および当期利益がマイナスとなり、赤字に転落しました。

項目 2021年6月期 2022年6月期 2023年6月期 2024年6月期 2025年6月期
売上収益 80億円 118億円 200億円 224億円 254億円
税引前利益 8億円 20億円 29億円 14億円 -13億円
利益率(%) 10.2% 17.1% 14.2% 6.2% -5.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 9億円 16億円 18億円 7億円 -17億円

(2) 損益計算書

第19期は前期比で増収となりましたが、営業損益は赤字となりました。売上総利益は増加していますが、販管費の増加に加え、その他の費用として多額の減損損失を計上したことが響いています。

項目 2024年6月期 2025年6月期
売上収益 224億円 254億円
売上総利益 151億円 156億円
売上総利益率(%) 67.3% 61.7%
営業利益 15億円 -12億円
営業利益率(%) 6.7% -4.6%


販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が80億円(構成比58%)、人件費が25億円(同18%)を占めています。

(3) セグメント収益

旅行事業は旅行需要の回復により売上が増加しましたが、子会社ののれん減損損失計上によりセグメント損失となりました。投資事業は増収となったものの、若干の損失を計上しています。

区分 売上(2024年6月期) 売上(2025年6月期) 利益(2024年6月期) 利益(2025年6月期) 利益率
旅行事業 224億円 251億円 15億円 -11億円 -4.5%
投資事業 -0.4億円 3億円 -0.4億円 -0.3億円 -9.8%
連結(合計) 224億円 254億円 15億円 -12億円 -4.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

本業の営業活動からキャッシュを生み出し、借入金の返済を進めつつ投資を行っている「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。ただし、PL上は赤字である点に留意が必要です。

項目 2024年6月期 2025年6月期
営業CF 9億円 22億円
投資CF -3億円 -11億円
財務CF 24億円 -16億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-17.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は39.5%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社グループは、「社会貢献とビジネスを両立する」をMISSIONとし、「世界中の”やりたい”を叶える」をVISIONとして掲げています。これらに基づき事業を推進し、持続可能な社会の実現と自らの成長発展を目指しています。

(2) 企業文化

同社は3つのVALUEを掲げています。高潔な倫理観を持ち誠実に業務を行う「Integrity」、理想から妥協せず社会公益性の高い事業に挑戦する「Visionary」、そして市場や社会情勢の変化に柔軟に対応し最適な手段を選択する「Flexibility」です。

(3) 経営計画・目標

同社グループが重視している経営指標は「収益」です。収益を継続的に成長させることにより、企業価値の向上を実現することを目指しています。当連結会計年度においては、収益260億円を目標としていました。

(4) 成長戦略と重点施策

「Global OTA」を目指し、海外への事業拡大を優先課題としています。特に東南アジア等のLCCとのAPI個別接続による取り扱い路線の拡充や、多言語対応を進めています。また、民泊運営やオフショア開発などの新規事業領域への参入、スマートフォン対応の強化による顧客利便性の向上にも取り組んでいます。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

VISION実現のため、多様性ある人材の採用を重視しています。特にグローバル展開を見据え、外国人顧客向けオペレーターや語学堪能な人材の採用強化、社内研修の充実に取り組んでいます。また、海外子会社を含むグループ間の人材交流や、新規事業提案会の実施により、経営者視点を持つ人材の育成を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年6月期 33.5歳 3.1年 5,040,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示

同社は従業員規模等の理由により公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、外国人比率(58%)などです。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 旅行市場の変動リスク

旅行市場は拡大傾向にありますが、感染症の蔓延、景気悪化、テロや戦争等の世界情勢の変化、自然災害等により旅行意欲が減退した場合、同社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 競合他社との競争激化

オンライン旅行事業を営む有力な競合企業が存在します。資本力や営業力を持つ競合がサービス強化を図り、競争が想定以上に激化した場合には、同社グループの事業や業績に影響を与える可能性があります。

(3) 投資事業に関するリスク

投資先企業の株式公開後の株価下落や流動性低下、あるいは未公開企業の経営不振等により、保有株式の評価損や売却損が発生する可能性があります。特に創業初期の企業への投資はリスクが高く、回収不能となる恐れがあります。

(4) のれんの減損リスク

M&Aにより取得した企業の収益性が著しく低下した場合、多額ののれんについて減損損失の計上が必要となり、同社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。実際に第19期にはのれんの減損損失を計上しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。