※本記事は、株式会社旅工房の有価証券報告書(第31期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年10月31日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 旅工房ってどんな会社?
オンラインとコンシェルジュ対応を組み合わせた旅行事業を展開する企業です。
■(1) 会社概要
1994年4月に旅行商品の卸売りを目的として設立され、1998年9月にオンラインでの海外旅行商品販売を開始しました。2017年4月に東京証券取引所マザーズ市場へ上場し、2021年10月にはミタイトラベルを設立しています。2023年10月にアドベンチャーが親会社となり、事業基盤の強化を図っています。
従業員数は連結で108名、単体で78名です。筆頭株主は同社の親会社で事業会社のアドベンチャーで、第2位は個人の高山泰仁氏となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| アドベンチャー | 53.02% |
| 高山泰仁 | 7.16% |
| SBI証券 | 1.88% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は小林祐樹氏が務めており、社外取締役の比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 小林祐樹 | 代表取締役社長 | 2009年あらた監査法人入所、PwCインドネシア出向、Houlihan Lokey株式会社等を経て、2025年9月より現職。 |
| 朝居宏文 | 取締役レジャー本部長事業戦略本部長法人営業本部長 | 2005年アクディア入社、健康ホールディングス、KLab等を経て2016年アドベンチャー入社。2020年3月同社入社、2025年9月より現職。 |
| 轟木有里珠 | 取締役 | 2023年4月アドベンチャー入社。2023年10月より現職。 |
社外取締役は、甲斐亮之(ギャプライズ代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「旅行業」の単一セグメントですが、個人旅行事業や法人旅行事業などを展開しています。
■(1) 個人旅行事業
日本国内の個人顧客を対象に、海外向けを中心とするパッケージ旅行の企画・販売、航空券の販売、宿泊やオプショナルツアーの手配等を行っています。24時間対応のオンライン予約システムと、地域に精通した「トラベル・コンシェルジュ」による電話やメールでのサポートを組み合わせた「ハイブリッド戦略」を強みとしています。
顧客への旅行商品の販売に伴う手数料等を収益源としています。自社ホームページやポータルサイトでのインターネット販売に絞り込むことで、店舗運営にかかる固定費を削減しコスト低減を図っています。運営は主に旅工房が担い、現地手配等は海外子会社のTabikobo Vietnam Co. Ltd.やPT. Ramayana Tabikobo Travelが行っています。
■(2) 法人旅行事業・インバウンド旅行事業
法人旅行事業では、企業や官公庁、学校法人等の法人顧客向けに、国内外への業務渡航手配や団体旅行を取り扱っており、各種イベントや国際会議等の専門的な手配にも対応しています。インバウンド旅行事業では、海外からの訪日外国人を対象に、海外の企業や団体等の業務渡航や団体旅行を中心とした旅行手配を行っています。
法人顧客や海外の企業・団体からの旅行手配に係る手数料を収益源としています。業務渡航や団体旅行などの大型案件を通じて安定的な収益確保を目指しています。今後は国内の宿泊施設等とのネットワークを充実させ、個人による訪日旅行にも注力する方針です。これらの事業運営は旅工房が担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近4期間の業績推移を見ると、売上高はコロナ禍の影響から回復基調にあり、増収傾向が続いています。一方で利益面は、経常損失の赤字幅が縮小傾向にあるものの、コスト増加や特別損失の計上等により当期利益は依然として赤字が継続しており、収益性の改善が課題となっています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 11.2億円 | 12.6億円 | 33.4億円 | 37.2億円 |
| 経常利益 | -13.4億円 | -9.1億円 | -3.9億円 | -1.1億円 |
| 利益率(%) | -119.8% | -72.1% | -11.8% | -2.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -15.7億円 | -10.5億円 | -4.0億円 | -7.7億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は増加したものの、売上総利益はほぼ横ばいにとどまり、売上総利益率は低下しています。一方で、地代家賃の削減等により販売費及び一般管理費が減少した結果、営業赤字の幅は大幅に縮小し、営業利益率は改善傾向を示しています。
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 33.4億円 | 37.2億円 |
| 売上総利益 | 9.1億円 | 9.1億円 |
| 売上総利益率(%) | 27.1% | 24.4% |
| 営業利益 | -3.5億円 | -1.1億円 |
| 営業利益率(%) | -10.6% | -3.0% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が3.2億円(構成比32%)、支払手数料が2.6億円(同26%)、広告宣伝費が1.6億円(同16%)を占めています。売上原価については、旅行事業における仕入高が全額(構成比100%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社は旅行業の単一セグメントですが、事業区分別の売上高を見ると、主力の個人旅行事業が海外募集型企画旅行の受注増加により大きく伸長し、全体の増収を牽引しました。一方、法人旅行事業やインバウンド旅行事業は前期比で減収となっています。
| 区分 | 売上(2024年6月期) | 売上(2025年6月期) |
|---|---|---|
| 個人旅行事業 | 28.2億円 | 35.2億円 |
| 法人旅行事業 | 4.7億円 | 1.7億円 |
| インバウンド旅行事業 | 0.4億円 | 0.1億円 |
| その他 | 0.2億円 | 0.1億円 |
| 連結(合計) | 33.4億円 | 37.2億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは積極型です。営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態を示しています。
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -1.2億円 | 1.3億円 |
| 投資CF | -0.1億円 | -129万円 |
| 財務CF | 17.8億円 | 1万円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-78.8%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も15.8%といずれも市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「国際交流の発展及び世界平和に貢献することと同時に、全従業員及び関係者の物心両面の充足と幸福を追求する」ことを経営理念として掲げています。旅行業を通じて国際間における人的交流の促進に寄与することが、国際交流の発展と世界平和の実現につながるという考えのもと、全ステークホルダーの幸福実現を追求しています。
■(2) 企業文化
同社は、全ステークホルダーの幸福実現を目指す中で、多様性を重んじる企業文化を醸成しています。急速に変化し続ける事業環境に対応し、安定的な成長を実現するため、様々な人材が多様な働き方で能力を発揮できるよう、テレワークや時短勤務などを推奨しています。柔軟な働き方を通じて、一人ひとりがパフォーマンスを発揮できる組織づくりを推進しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、事業規模拡大の観点から、売上高および売上総利益の額とその成長率を重要な経営指標と位置付けています。また、事業の収益性と企業価値の向上を目指すべく、営業利益、経常利益、および1株当たり当期純利益の額とそれらの成長率についても重要指標と認識し、事業の安定化と継続的な発展を追求しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
主力事業である個人旅行事業においては、オンライン販売の利便性とトラベル・コンシェルジュによる柔軟な対応を組み合わせた「ハイブリッド戦略」を拡大・深化させる方針です。システム投資による利便性向上や人材の採用・教育強化を通じ、付加価値の高い商品提案を実現します。さらに、事業ポートフォリオの多様化や、コンプライアンス体制の抜本的な強化も進めています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、高いスキルを持った優秀な「トラベル・コンシェルジュ」の確保と能力向上を喫緊の課題と位置づけ、教育を担う専門セクションを設けて継続的な研修や海外派遣を行っています。また、多様な人材が活躍できるよう、テレワークや時短勤務などの柔軟な勤務形態を積極的に推奨し、女性管理職比率の向上を含めた働きやすい社内環境の整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年6月期 | 33.8歳 | 5.6年 | 4,049,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 33.3% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | - |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | - |
※同社は公表義務の対象ではないため、有報には男性労働者の育児休業取得率および労働者の男女の賃金の差異の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 感染症や国際情勢等による事業環境リスク
海外旅行市場を主力とする同社は、天候の変動や国際情勢、景気悪化等により旅行需要が減退するリスクを抱えています。特にパンデミック等で各国政府による移動制限が生じた場合、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。対策として、コスト削減の徹底や国内需要の取り込み、成長領域への資源集中を図っています。
■(2) 電子商取引の進展と競合参入リスク
オンライン販売中心の同社にとって、電子商取引市場の拡大は追い風である一方、新興ベンチャーの参入や航空会社・宿泊施設による直接販売(直販化)の進展による競争激化のリスクがあります。これに対し、専門的でスピーディなコンシェルジュ対応や、付加価値の高い企画商品の提供によって競合他社との差別化を図っています。
■(3) 情報システムと個人情報保護に関するリスク
オンラインでのサービス提供が中心のため、想定外のシステム障害やサイバー攻撃によるサービス停止が業績に影響を与える可能性があります。また、顧客の個人情報を多数保持しているため、情報漏洩が発生した場合には信用力の低下を招く恐れがあります。これに対し、セキュリティ対策の強化と厳格な情報管理体制の維持に努めています。



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