※本記事は、株式会社旅工房 の有価証券報告書(第31期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年10月31日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 旅工房ってどんな会社?
オンライン販売の利便性と「トラベル・コンシェルジュ」による手厚いサポートを融合させた「ハイブリッド戦略」で海外旅行を主力に展開する旅行会社です。
■(1) 会社概要
同社は1994年に海外航空券等の販売を目的として設立されました。2017年に東京証券取引所マザーズ市場へ上場し、2022年の市場区分再編に伴いグロース市場へ移行しました。2023年には第三者割当増資により株式会社アドベンチャーの連結子会社となり、経営体制の強化と事業の再構築を進めています。
連結従業員数は108名、単体では78名です。筆頭株主は親会社であり旅行予約サイト「skyticket」を運営する株式会社アドベンチャーで、発行済株式の53.03%を保有しています。第2位は同社元代表取締役会長の高山泰仁氏、第3位は証券業務を行う株式会社SBI証券です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 株式会社アドベンチャー | 53.02% |
| 高山 泰仁 | 7.16% |
| 株式会社SBI証券 | 1.88% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は小林祐樹氏が務めています。取締役7名のうち1名が社外取締役で、社外取締役比率は14.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 小林 祐樹 | 代表取締役社長 | 2009年あらた監査法人入所。Houlihan Lokey株式会社CFOなどを経て、2025年4月BitStar株式会社CFOに就任。2025年9月より現職。 |
| 朝居 宏文 | 取締役レジャー本部長事業戦略本部長法人営業本部長 | 2016年株式会社アドベンチャー入社。2020年同社入社。事業戦略本部本部長などを経て、2025年9月より現職。 |
| 轟木 有里珠 | 取締役 | 2023年4月株式会社アドベンチャー入社(現任)。2023年10月より現職。 |
社外取締役は、甲斐亮之(株式会社ギャプライズ代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「旅行業」の単一セグメントで事業を展開しており、主に「個人旅行事業」「法人旅行事業」「インバウンド旅行事業」を行っています。
■(1) 個人旅行事業
個人顧客を対象に、海外パッケージ旅行の企画・販売、航空券や宿泊、オプショナルツアーの手配を行っています。オンライン予約システムによる24時間対応と、方面別の専門知識を持つ「トラベル・コンシェルジュ」による電話・メールでのきめ細かな対応を組み合わせた「ハイブリッド戦略」が特徴です。
収益は、顧客から受け取る旅行代金や各種手配の手数料等です。運営は主に旅工房が行っていますが、インドネシアの連結子会社であるPT. Ramayana Tabikobo Travelも個人顧客向けの宿泊及びオプショナルツアーの手配等を行っています。
■(2) 法人旅行事業
企業、官公庁、学校法人などの法人顧客に対し、国内外の業務渡航手配や団体旅行(研修旅行、報奨旅行、国際会議等)の取り扱いを行っています。少人数のグループ旅行から数百人規模の大型旅行まで幅広く対応しています。
収益は、法人顧客から受け取る手配手数料や旅行代金等です。運営は主に旅工房が行っています。
■(3) インバウンド旅行事業
海外から日本を訪れる訪日外国人を対象とした旅行手配を行っています。現在は海外の企業や団体等の業務渡航や団体旅行への対応が中心ですが、今後は国内宿泊施設とのネットワークを強化し、個人旅行にも注力する方針です。
収益は、訪日外国人旅行者や海外エージェントから受け取る旅行代金や手数料等です。運営は主に旅工房が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は回復基調にあり、直近では37億円規模まで拡大しています。利益面では、過去数期間にわたり営業損失および当期純損失が続いており、依然として厳しい状況ですが、営業損失の幅は縮小傾向にあります。当期は雇用調整助成金の返還に伴う損失計上などが響き、最終赤字が拡大しました。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 9億円 | 11億円 | 13億円 | 33億円 | 37億円 |
| 経常利益 | -20億円 | -13億円 | -9億円 | -4億円 | -1億円 |
| 利益率(%) | -216.5% | -119.8% | -72.1% | -11.8% | -2.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -29億円 | -16億円 | -10億円 | -4億円 | -8億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益率は改善傾向にありますが、依然として営業損失を計上しています。販売費及び一般管理費の削減に取り組んだ結果、営業損失の赤字幅は縮小しました。しかし、特別損失の計上により最終損益は悪化しています。
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 33億円 | 37億円 |
| 売上総利益 | 9億円 | 9億円 |
| 売上総利益率(%) | 27.1% | 24.4% |
| 営業利益 | -4億円 | -1億円 |
| 営業利益率(%) | -10.6% | -3.0% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が3.2億円(構成比32%)、支払手数料が2.6億円(同26%)を占めています。売上原価については、旅行業における仕入高等が大半を占めています。
■(3) セグメント収益
同社グループは旅行業の単一セグメントであるため、事業別の売上高を記載します。個人旅行事業は海外旅行需要の回復を取り込み増収となりましたが、法人旅行事業は減少しました。インバウンド旅行事業は実績がありませんでした。
| 区分 | 売上(2024年6月期) | 売上(2025年6月期) |
|---|---|---|
| 個人旅行事業 | 35億円 | 44億円 |
| 法人旅行事業 | 36億円 | 24億円 |
| インバウンド旅行事業 | 0.0億円 | - |
| 連結(合計) | 71億円 | 67億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
旅工房のキャッシュ・フローの状況は、営業活動によるキャッシュ・フローが前連結会計年度の支出から収入に転換しました。これは、旅行前受金や仕入債務の増加、助成金返還損の計上などが主な要因です。投資活動によるキャッシュ・フローは、敷金の差入による支出が減少し、支出額が大幅に縮小しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度と比較して収入が大きく減少しました。
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -1.2億円 | 1.3億円 |
| 投資CF | -0.1億円 | -0.0億円 |
| 財務CF | 17.8億円 | 0.0億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「国際交流の発展及び世界平和に貢献することと同時に、全従業員及び関係者の物心両面の充足と幸福を追求する」ことを経営理念として掲げています。旅行業を通じた人的交流の促進が国際交流の発展と世界平和につながると考え、事業を推進しています。また、全てのステークホルダーの幸福実現も追求しています。
■(2) 企業文化
同社は、オンラインの利便性と人の温かみを融合させた「ハイブリッド戦略」を重視しています。方面別に配置された「トラベル・コンシェルジュ」が、顧客一人ひとりのニーズに合わせて旅行をカスタマイズする体制をとっており、専門知識とホスピタリティを持ったプロフェッショナルによる対応を企業文化の核としています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、事業規模拡大の観点から売上高および売上総利益の額と成長率を、収益性と企業価値向上の観点から営業利益、経常利益、1株当たり当期純利益の額と成長率を重要な経営指標として位置付けています。具体的な数値目標としては、各利益指標の成長を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
主力である個人旅行事業では、オンラインとコンシェルジュ対応を組み合わせた「ハイブリッド戦略」をさらに拡大・深化させます。システム投資による利便性向上、商品企画や人材教育の強化を通じて付加価値を高め、シェア拡大を図ります。また、事業ポートフォリオの多様化のため、法人旅行事業とインバウンド旅行事業の強化も継続します。
* コンプライアンス体制の強化:不正受給問題等の再発防止策の実行とガバナンス意識改革。
* システム強化:オンライン予約システムの機能増強やウェブサイトの利便性向上。
* マーケティングの進化:従来の手法にとらわれない新たな集客方法の模索。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「トラベル・コンシェルジュ」の採用と教育を最重要課題と位置付けています。専門の教育セクションを設け、研修や外部講師の招聘を通じて接客力や提案力を向上させています。また、多様な人材が活躍できるよう、テレワークや時短勤務などを推奨し、女性管理職比率の向上など社内環境の整備にも取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年6月期 | 33.8歳 | 5.6年 | 4,049,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 33.3% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | - |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | - |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) | - |
| 労働者の男女の賃金の差異(パート・有期) | - |
※「男性労働者の育児休業取得率」および「労働者の男女の賃金の差異」については、同社は女性活躍推進法に基づき「管理職に占める女性労働者の割合」のみを公表しているため、有報には記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 継続企業の前提に関する重要事象等
新型コロナウイルス感染症の影響による業績悪化に加え、雇用調整助成金の返還に伴う損失や特別調査費用等の発生により、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせる事象が存在しています。同社はコスト削減や海外旅行需要の取り込みによる収益改善、資金調達などを進めていますが、財務状況の注視が必要です。
■(2) コンプライアンス・ガバナンスリスク
過去にGo Toトラベル事業給付金の不適切受給や雇用調整助成金の不正受給が発覚しており、これらに伴う社会的信用の低下や課徴金納付等の行政処分の可能性があります。再発防止策の徹底とコンプライアンス体制の強化が進められていますが、新たな問題が発生した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 旅行市場の変動リスク
海外旅行を主力としているため、国際情勢の不安定化、為替変動、感染症の流行などが旅行需要に直接的な影響を与えます。特に円安進行は旅行代金の上昇を招き、需要減退につながる可能性があります。また、テロや自然災害などの外的要因も事業リスクとなります。
■(4) 競合他社・ビジネスモデルの変化
オンライン旅行会社(OTA)や異業種からの参入に加え、航空会社や宿泊施設による直販化が進んでいます。競争激化やビジネスモデルの変化に対応できない場合、市場シェアの低下や収益性の悪化を招く可能性があります。同社はコンシェルジュによる付加価値提供で差別化を図っています。



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