カラダノート 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

カラダノート 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東京証券取引所(グロース)に上場し、ファミリーデータプラットフォーム事業を展開する企業です。妊娠・育児層向けアプリやメディア運営、マーケティング支援を行っています。直近の業績は、事業ポートフォリオの見直しや不採算事業の譲渡等により、売上高は前期比で大幅に減少し、各利益段階で赤字となりました。


※本記事は、株式会社カラダノート の有価証券報告書(第17期、自 2024年8月1日 至 2025年7月31日、2025年10月21日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. カラダノートってどんな会社?


ファミリーデータプラットフォーム事業を軸に、妊娠・育児層向けアプリやメディアを展開する企業です。

(1) 会社概要


2008年12月にプラスアールとして設立され、2011年に「ママびより(旧妊娠なう)」の提供を開始しました。2017年7月にカラダノートへ社名変更し、2020年10月に東証マザーズへ上場しました。2025年3月には経営資源の集中を図るため、宅配水事業を他社へ譲渡しています。

同社(単体)の従業員数は45名です。筆頭株主は創業者の佐藤竜也氏で、第2位は事業提携先である生命保険会社、第3位は同じく事業提携先である電力会社となっています。

氏名 持株比率
佐藤 竜也 44.14%
住友生命保険相互会社 9.72%
中部電力 4.49%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性1名の計6名で構成され、女性役員比率は17.0%です。代表取締役は佐藤竜也氏が務めています。社外取締役比率は66.7%です。

氏名 役職 主な経歴
佐藤 竜也 代表取締役 フラクタリスト入社後、2008年12月にプラスアール(現同社)を設立し代表取締役に就任。以来、現職。
山本 和正 取締役ビジネス本部長 Q(現セカイエ)を経て2020年2月に入社。サービス本部副本部長、取締役サービス本部長などを歴任し、2023年10月より現職。


社外取締役は、松島陽介(元JMDC代表取締役社長兼CEO)、横山敬子(公認会計士)、長野修一(弁護士)、中村賀一(公認会計士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ファミリーデータプラットフォーム事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) ライフイベントマーケティング


企業向けにファミリーデータを利活用し、マーケティング支援を実施する「かぞくアシスタント」を展開しています。妊娠・育児層の家族にとってライフサポートに資するヘアケア・衛生用品関連商材、食材宅配、教育、人材など複数の商材を提供しており、クライアント企業へのデータ提供等で収益を得ています。

収益は、クライアント企業からのマーケティング支援料やデータ提供料等からなります。運営は主にカラダノートが行っています。

(2) 家族サポート


ユーザーの家族生活環境の効率化支援を目的に、モバイル等での記録ツールや生活インフラ改善に向けた自社サービスを提供しています。「ママびより」等のアプリ提供のほか、金融関連領域の保険代理事業「かぞくの保険」、住関連領域の「かぞくのおうち」などを展開しています。

収益は、保険代理店手数料や住関連サービスの成約課金などからなります。運営は主にカラダノートが行っています。なお、宅配水事業「カラダノートウォーター」は2025年3月にウェルディッシュへ事業譲渡されました。

(3) 家族パートナーシップ


ライフイベントマーケティングおよび家族サポートで培った知識・ノウハウを活用し、大企業向けにマーケティング支援等を実施しています。金融領域における企業との提携を強化し、マーケティングの効率化や新規事業の創出を支援しています。

収益は、提携先企業からの支援料等からなります。運営は主にカラダノートが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は第13期から第16期にかけて拡大傾向にありましたが、第17期は事業譲渡や不採算領域の縮小など構造改革を進めた影響で大幅な減収となりました。利益面では、黒字と赤字を行き来しており、第17期は再び営業損失、経常損失、当期純損失を計上しています。

項目 2021年7月期 2022年7月期 2023年7月期 2024年7月期 2025年7月期
売上高 10.0億円 13.1億円 20.6億円 21.9億円 12.7億円
経常利益 2.1億円 -2.6億円 -2.3億円 1.1億円 -0.4億円
利益率(%) 20.8% -19.7% -11.3% 4.8% -3.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 1.4億円 -3.3億円 -3.7億円 1.1億円 -0.7億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で大きく減少しました。これに伴い売上総利益も半減しています。コスト削減を進めたものの、売上高の減少幅が大きく、営業損益は赤字に転落しました。事業構造の転換期における一時的な業績悪化が見て取れます。

項目 2024年7月期 2025年7月期
売上高 21.9億円 12.7億円
売上総利益 14.8億円 6.2億円
売上総利益率(%) 67.6% 48.8%
営業利益 1.0億円 -0.3億円
営業利益率(%) 4.6% -2.7%


販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が1.8億円(構成比27%)、給料及び手当が1.6億円(同25%)を占めています。売上原価では、経費(主に外注費)が2.7億円(構成比41%)、商品仕入高が3.1億円(同48%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社はファミリーデータプラットフォーム事業の単一セグメントです。売上高は前期比42.1%減の13億円、セグメント利益(営業損失)は0.3億円の赤字となりました。フリーキャッシュフロー重視への転換に伴う事業ポートフォリオの見直し、特に宅配水事業の譲渡やヘアケア・衛生用品領域の縮小が減収の主な要因です。

区分 売上(2024年7月期) 売上(2025年7月期) 利益(2024年7月期) 利益(2025年7月期) 利益率
ファミリーデータプラットフォーム事業 22億円 13億円 1億円 -0億円 -2.7%
連結(合計) 22億円 13億円 1億円 -0億円 -2.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社は、事業運営に必要な流動性と資金源泉の安定確保を基本方針としています。営業活動によるキャッシュ・フローは、事業運営に必要な資金を確保しています。投資活動によるキャッシュ・フローは、事業拡大に向けた投資を行っています。財務活動によるキャッシュ・フローは、資金調達や返済等を行っています。

項目 2024年7月期 2025年7月期
営業CF -1.1億円 -1.2億円
投資CF -0.0億円 1.4億円
財務CF -0.9億円 0.8億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「家族の健康を支え 笑顔をふやす」というコーポレートビジョンのもと、インターネットメディア等を活用したファミリーデータプラットフォーム事業を軸としたプロダクトやサービス等の開発を展開しています。家族の繋がりを起点にテクノロジーやファミリーデータの有効活用による課題解決を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、ミッションとして「未来の社会に貢献すると同時に、全メンバーの金銭的・精神的幸福を追求する」を掲げています。また、バリューとして「仕事もプロ 家族もプロ」「成長が生む幸せ」「全てはビジョンに向けたストーリー」を定めており、これらに基づく行動指針により、成長を支援する環境づくりに取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


同社は株主価値向上のため、中長期的にはROE(自己資本利益率)を最大化していく方針ですが、短期的には売上を増加させ利益を安定的に出す体制を構築することに注力しています。そのため、現在はROEについては公表可能な目標値を設定しておらず、期初予算で設定した売上高並びに営業利益を経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等として監視を行っています。

(4) 成長戦略と重点施策


「ファミリーデータベースの拡大」と「収益性の向上」を軸に事業拡大を目指しています。データベース拡大では、子育てアプリやヘルスケアアプリの充実により、妊娠・育児層から中高年層までターゲットを広げます。収益性向上では、住宅関連事業等のフロー型収益に加え、保険代理業等のストック型収益の拡大を図ります。

* シンプルな事業構造で採算管理を平易にし、利益が出る体質へ原点回帰する。
* 身の丈にあった人員配置と、利益が出る役割分担へゼロベースで変化する。
* 金融領域への選択と集中を進め、住友生命との資本業務提携を通じた事業基盤の強化を図る。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)に基づいて行動指針を定め、成長を支援する環境づくりに取り組んでいます。四半期ごとの目標設定による明確な評価や、週1回の「FFmtg(Feed Forward meeting)」による上司との対話を実施しています。また、セミナー受講費用の全額負担など個人の成長支援に加え、フレックスタイムや在宅勤務制度など多様な働き方を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年7月期 33.2歳 3.2年 5,398,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 37.5%
男性労働者の育児休業取得率 -%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 84.8%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) 85.9%
労働者の男女の賃金の差異(非正規) 98.9%


※男性労働者の育児休業取得率の「-」は、男性の育児休業取得の対象となる従業員がいないことを示しています。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員幸福度(82.93pt)、MVVサーベイ(6.55pt)、男女比(男性44%:女性56%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 出生数の減少


日本における出生数は減少傾向にあります。同社の主力事業はクライアント企業からの成果型報酬が主な収入源であり、クライアント開拓等により売上拡大の余地はあると考えていますが、出生数の減少が加速し、ユーザー集客数が減少した場合は、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 広告宣伝活動によるユーザー獲得


事業にとって会員数の増加は重要であり、自社コンテンツによる獲得に注力していますが、新規獲得の一部は広告宣伝活動に依存しています。今後も費用対効果を勘案して施策を実施しますが、想定通りにユーザー数が増加しない場合、事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 個人情報保護と漏洩リスク


ファミリーデータプラットフォーム事業を通じて、出産予定日や子供の誕生日など機微な個人情報を保有しています。管理体制の整備やプライバシーマーク取得等に取り組んでいますが、不正アクセスや管理体制の不備により個人情報が流出した場合、損害賠償請求や社会的信用の失墜により、業績に多大な影響を及ぼす可能性があります。

(4) 継続企業の前提に関する重要事象等


営業活動によるキャッシュ・フローが4期連続でマイナスとなっており、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせる事象が存在しています。ただし、消費税の修正申告の影響を除けばプラスに転じていることや、事業譲渡による資金確保、住友生命を割当先とする第三者割当増資の実施などにより、現時点では重要な不確実性は認められないと判断しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。