売れるネット広告社グループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

売れるネット広告社グループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

売れるネット広告社グループは、東京証券取引所グロース市場に上場し、D2C(ネット通販)向けデジタルマーケティング支援やグローバル情報通信事業を展開しています。直近の業績は、M&Aによる事業拡大で売上高が増収となる一方、のれん減損等の影響で赤字幅が縮小傾向ながらも損失を計上しています。


※本記事は、売れるネット広告社グループ株式会社 の有価証券報告書(第16期、自 2024年8月1日 至 2025年7月31日、2025年10月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 売れるネット広告社グループってどんな会社?


D2C(ネット通販)事業者向けに、A/Bテストに基づく「売れるノウハウ」を実装したクラウドサービスや広告支援を行う企業です。

(1) 会社概要


2010年に設立され、2011年に主力サービス「売れるネット広告つくーる(現・売れるD2Cつくーる)」をリリースしました。2023年に東証グロース市場へ上場後、2024年にはM&Aにより広告運用会社やD2C事業会社を子会社化するなど事業を拡大。2025年1月には持株会社体制へ移行し、現商号へ変更しました。

連結従業員数は54名、単体では7名です。筆頭株主は創業者で代表取締役社長CEOの加藤公一レオ氏で、第2位は同氏の資産管理会社であるレオアセットマネジメントです。第3位には楽天証券などの金融機関が名を連ねており、創業者が安定的な支配権を維持しています。

氏名 持株比率
加藤公一レオ 33.87%
レオアセットマネジメント 30.97%
楽天証券 4.11%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性0名の計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長CEOは加藤公一レオ氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
加藤 公一レオ 代表取締役社長CEO 1998年三菱商事入社。ハバスワールドワイドジャパン、アサツー・ディーケイを経て、2010年同社設立・代表取締役社長CEOに就任。現在はグループ各社の取締役も兼任。
植木原 宗平 取締役CFO 大日本商事、JR九州高速船、アクセンチュア、freeeを経て、2019年同社入社。2022年より現職。現在はグループ子会社の代表取締役等も兼任。
板越 英真 取締役 米国にてItasho America, Inc.等を設立。クラウドファンディング総合研究所代表取締役などを経て、2024年より現職。


社外取締役は、池戸秀勝(元ADKホールディングス執行役員)、瀧本岳(イントゥスタンダード代表取締役)、播摩洋平(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「D2C(ネット通販)向けデジタルマーケティング支援事業」、「D2C(ネット通販)事業」および「グローバル情報通信事業」を展開しています。

(1) D2C(ネット通販)向けデジタルマーケティング支援事業


D2C(ネット通販)事業者に対し、ランディングページ特化型クラウドサービス「売れるD2Cつくーる」やコンサルティング、制作、広告運用支援を提供しています。過去のA/Bテストで培った「売れるノウハウ」を機能やサービスに反映させ、クライアントの広告費用対効果の改善を支援することが特徴です。

収益は、クラウドサービスの月額利用料、コンサルティング料、制作費、および広告配信成果に応じた手数料等から得ています。運営は、売れるネット広告社、オルクス、売れる越境EC社、売れるAIマーケティング社などのグループ各社が行っています。

(2) D2C(ネット通販)事業


「人々の生活環境を豊かにするお手伝いを担う」を理念とし、化粧品、サニタリー用品、健康食品、機能性表示食品等のD2C(ネット通販)事業を展開しています。広告運用事業で培ったプロモーション戦略を活かし、国内生産にこだわった独自性のある商品開発を行っています。

収益は、一般消費者への商品販売代金として受け取ります。運営は主にオルクスが行っています。

(3) グローバル情報通信事業


海外および国内向けのWi-Fiを中心とした、BtoB特化型の通信機器レンタル事業を展開しています。世界150カ国のビジネスシーンで利用可能な通信環境を提供し、企業のグローバル展開やテレワーク需要に対応しています。

収益は、顧客企業からの通信機器レンタル料等から得ています。運営は主にJCNTが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近2期間の業績を見ると、売上高はM&Aによる事業拡大に伴い倍増しています。利益面では、営業損失および経常損失が継続しているものの、赤字幅は縮小傾向にあります。当期純損失については、のれん減損損失の計上などが影響し、損失額が拡大しました。

項目 2024年7月期 2025年7月期
売上高 7.6億円 15.7億円
経常利益 -3.2億円 -1.7億円
利益率(%) -41.7% -10.8%
当期利益(親会社所有者帰属) -2.2億円 -4.9億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で約2倍に伸長しましたが、売上原価の増加により売上総利益率は低下しました。販管費も増加しましたが、売上高の伸びが上回ったことで営業損失率は改善しています。

項目 2024年7月期 2025年7月期
売上高 7.6億円 15.7億円
売上総利益 4.6億円 9.2億円
売上総利益率(%) 61.2% 58.6%
営業利益 -3.1億円 -1.7億円
営業利益率(%) -40.8% -10.6%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が2.3億円(構成比21%)、役員報酬が1.0億円(同10%)を占めています。

(3) セグメント収益


デジタルマーケティング支援事業は前年並みの売上を維持しつつ損失を縮小しました。D2C事業は売上が大幅に増加しましたが損失計上となっています。新たに加わったグローバル情報通信事業が売上に大きく寄与し、唯一の黒字セグメントとして利益貢献しました。

区分 売上(2024年7月期) 売上(2025年7月期) 利益(2024年7月期) 利益(2025年7月期) 利益率
D2C(ネット通販)向けデジタルマーケティング支援事業 6.7億円 6.6億円 -3.1億円 -1.0億円 -15.6%
D2C(ネット通販)事業 0.8億円 2.2億円 0.0億円 -0.4億円 -18.6%
グローバル情報通信事業 - 6.9億円 - 0.8億円 11.1%
連結(合計) 7.6億円 15.7億円 -3.1億円 -1.7億円 -10.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業は赤字ですが、株式発行や借入などの財務活動で資金を調達し、事業拡大のための投資やM&Aを積極的に行っている「勝負型」の状況です。

項目 2024年7月期 2025年7月期
営業CF -3.8億円 -0.6億円
投資CF -1.9億円 -0.9億円
財務CF 4.7億円 3.6億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は当期純損失のため算出できない一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は35.5%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「“最強の売れるノウハウ®”を用いて関わるすべての企業を100%成功に導くことで世界中にたくさんのドラマを創る」という企業理念を掲げています。また、上場後は「世界中をダイレクトマーケティングだらけにする」というビジョンを掲げ、あらゆる領域の課題解決を目指しています。

(2) 企業文化


創業以来、2,600回以上のA/Bテストを実施し、事実に基づくノウハウを蓄積することを重視する文化があります。クライアントの費用対効果改善と業績拡大にコミットし、関わる企業を成功に導くことで「ドラマを創る」という価値観を共有しています。

(3) 経営計画・目標


事業を継続的に発展させるため、収益力を高め適正な利益を確保することを重要視しています。客観的な経営指標として、売上高、売上総利益、営業利益を重視し、これらの中長期的な向上を図ることを目標としています。

(4) 成長戦略と重点施策


業界の成長と競争激化に対応するため、新規クライアント獲得とサービス満足度向上による継続率改善に注力します。また、M&Aや新規事業による多角化を推進し、グローバル情報通信事業への参入やグループ間連携によるシナジー創出を図ります。さらに、人材確保・育成や情報セキュリティ体制の強化など、経営基盤の拡充にも取り組みます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


事業拡大に向け、優秀な人材の確保と育成を最重要課題の一つと位置づけています。知名度向上や教育の充実に加え、長期的にやりがいを持って働ける職場環境の整備を進めています。また、定期的な人事ローテーションや新規事業提案機会の創出を通じて、常に新しい環境に挑戦できる組織構築を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年7月期 36.5歳 3.9年 5,376,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) インターネット広告市場の変動


同社事業はインターネット広告市場やD2C市場に深く連動しています。企業の広告予算は景況感に左右されるため、市場環境の悪化や新たな法的規制の導入等がなされた場合、同社グループの事業および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 法的規制等の適用


広告規制(景品表示法、薬機法等)やガイドラインの遵守が求められます。制作物のチェック体制を整備していますが、万が一法令違反等が発生した場合、社会的信用の低下や業績への悪影響が生じる可能性があります。

(3) 「成果報酬」型サービスの不確実性


マーケティング支援サービスの一部は成果報酬型で提供されています。クライアントが得る成果に基づいて売上が確定するため、ノウハウが機能せず成果が出ない場合やリスクコントロールが不十分な場合、業績やキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。

(4) 運用型広告事業の先行投資


成果報酬型サービスにおいては、マーケティングコストやシステム導入費が先行して発生します。事業拡大のために積極的な投資を行う方針ですが、これらが想定通りの成果につながらない場合、経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。