ビジョナル 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ビジョナル 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場するホールディングカンパニーです。プロフェッショナル人材の採用支援を行うHR Tech事業『BizReach(ビズリーチ)』を中核に、事業承継M&Aや物流DXなどのIncubation事業を展開しています。2025年7月期は売上高21.2%増、経常利益22.9%増の増収増益でした。


※本記事は、ビジョナル株式会社 の有価証券報告書(第6期、自 2024年8月1日 至 2025年7月31日、2025年10月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ビジョナルってどんな会社?


即戦力人材と企業をつなぐ転職サイト『BizReach(ビズリーチ)』等のHR Tech事業を中核に、新規事業開発も行う企業です。

(1) 会社概要


2007年に株式会社ビズリーチが設立され、2009年に『BizReach』を開始しました。2016年には『HRMOS』採用管理システムを開始し、2020年にグループ経営体制への移行に伴いビジョナル株式会社を設立。2021年に東証マザーズ(現グロース)へ上場し、2023年にプライム市場へ区分変更しました。

同グループの従業員数は連結2,175名、単体116名です。筆頭株主は創業者で代表取締役社長の南壮一郎氏で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。また、海外の機関投資家等も大株主として名を連ねています。

氏名 持株比率
南 壮一郎 34.94%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 9.69%
STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505001 5.30%

(2) 経営陣


同社の役員は男性4名、女性3名の計7名で構成され、女性役員比率は42.8%です。代表取締役社長は南 壮一郎氏です。社外取締役比率は42.9%です。

氏名 役職 主な経歴
南 壮一郎 代表取締役社長 1999年モルガン・スタンレー・ディーン・ウィッター・ジャパン・リミテッド入社。楽天野球団を経て、2007年ビズリーチ(現連結子会社)設立、社長就任。2020年2月より現職。
村田 聡 取締役 2003年グローバルメディアオンライン(現GMOインターネットグループ)入社。ルクサ(現auコマース&ライフ)代表取締役などを経て、2022年8月より現職。
酒井 哲也 取締役 2003年日本スポーツビジョン入社。リクルートエイブリック(現リクルート)を経て、2015年ビズリーチ入社。2022年10月より現職。
末藤 梨紗子 取締役 2004年モルガン・スタンレー証券(現モルガン・スタンレーMUFG証券)入社。日本GE、グラクソ・スミスクラインを経て、2024年10月より現職。


社外取締役は、播磨 奈央子(公認会計士)、石本 忠次(メンターキャピタルホールディングス代表取締役)、千原 真衣子(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「HR Tech」および「Incubation」事業を展開しています。

HR Tech事業


即戦力人材と企業をつなぐ転職サイト『BizReach』、人財活用プラットフォーム『HRMOS』シリーズ、OB/OG訪問ネットワークサービス『ビズリーチ・キャンパス』等を提供しています。『BizReach』はプロフェッショナル人材に特化した会員制転職プラットフォームです。

『BizReach』では、直接採用企業からのプラットフォーム利用料や採用成功報酬、ヘッドハンターからの利用料や採用支援成功報酬、求職者からのプレミアム課金を受け取ります。『HRMOS』では企業からシステム利用料等を得ています。運営は主に株式会社ビズリーチが行っています。

Incubation事業


物流DXプラットフォーム『トラボックス』、法人限定M&Aプラットフォーム『M&Aサクシード』、脆弱性管理クラウド『yamory』、クラウドサービスのセキュリティ信用評価『Assured』等を提供しています。新規事業の創出を行うセグメントです。

各サービスの利用企業等から利用料や手数料等の収益を得ています。運営は、トラボックス株式会社、株式会社M&Aサクシード、株式会社アシュアード、株式会社TSUIDEなどのグループ各社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年7月期から2025年7月期までの5期間において、売上高は右肩上がりで成長を続けており、約2.8倍の規模に拡大しています。利益面でも、経常利益は大幅な増益傾向にあり、利益率は直近で20%台後半の高い水準を維持しています。当期純利益も順調に増加し、収益性の高い事業運営が継続しています。

項目 2021年7月期 2022年7月期 2023年7月期 2024年7月期 2025年7月期
売上高 287億円 440億円 563億円 661億円 802億円
経常利益 23億円 87億円 144億円 185億円 227億円
利益率(%) 7.9% 19.8% 25.5% 27.9% 28.3%
当期利益(親会社所有者帰属) -9億円 30億円 55億円 109億円 143億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で大きく増加し、売上総利益もそれに伴い伸長しています。売上総利益率は90%を超える高い水準を維持しています。営業利益も増加し、営業利益率は約27%と高い収益性を確保しています。事業拡大に伴いコストも増加していますが、増収効果がそれを上回っています。

項目 2024年7月期 2025年7月期
売上高 661億円 802億円
売上総利益 604億円 729億円
売上総利益率(%) 91.4% 91.0%
営業利益 178億円 214億円
営業利益率(%) 27.0% 26.7%


販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が244億円(構成比47%)、給料手当が86億円(同17%)を占めています。

(3) セグメント収益


直近の2025年7月期は、国内企業の好調な求人意欲を背景に、主力のHR Tech事業がグループ全体の業績を力強く牽引し、連結全体として大幅な増収増益を達成しました。

HR Techは、転職サイト『BizReach(ビズリーチ)』や人財活用プラットフォーム『HRMOS(ハーモス)』、OG/OB訪問ネットワークサービス『ビズリーチ・キャンパス』などを展開しています。主力の『BizReach』において、プロフェッショナル人材の強い需要や積極的な広告宣伝が奏功し、累計導入企業数やスカウト可能会員数などの各指標が順調に増加しました。『HRMOS』も利用企業数を大きく伸ばしており、セグメント全体で大幅な増収増益となりました。

Incubationは、物流DXプラットフォーム『トラボックス』や法人限定M&Aプラットフォーム『M&Aサクシード』、サイバーセキュリティ領域の『yamory』『Assured』などの新規事業を展開しています。HR Tech事業で創出した利益の範囲内で、人材投資や新規プロダクト開発、広告宣伝活動などの先行投資を継続しており、大幅な増収を達成したものの損失幅は拡大しています。

区分 売上(2024年7月期) 売上(2025年7月期) 利益(2024年7月期) 利益(2025年7月期) 利益率
HR Tech 638.4億円 771.0億円 200.6億円 247.4億円 32.1%
Incubation 22.6億円 31.4億円 -10.2億円 -16.9億円 -53.9%
調整額等 0.5億円 -0.7億円 -12.0億円 -16.1億円 -
連結(合計) 661.5億円 801.6億円 178.4億円 214.4億円 26.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFはプラス、投資CFはマイナス、財務CFはマイナスであり、これは本業で稼いだ資金で借入返済を行い、投資も手元資金で賄っている「健全型」を示しています。

項目 2024年7月期 2025年7月期
営業CF 184億円 196億円
投資CF -17億円 -37億円
財務CF 3億円 -12億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は26.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は70.5%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「新しい可能性を、次々と。」をミッションとして掲げています。社会における様々な「課題」を、テクノロジーを活用したサービス創造を通じて解決する事業を複数擁するデジタル・トランスフォーメーション・カンパニーとして、社会への貢献を目指しています。

(2) 企業文化


同社グループでは、コンプライアンスの徹底や企業倫理の確立のため、「ビジョナルグループ行動規範」を定めています。これをグループ各社共通の理念・行動基準とし、社内研修等を通じて役員・従業員への浸透・徹底を図ることで、公正な企業活動の展開を目指しています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、事業規模と収益性を測る指標として、売上高及び営業利益を重視しています。また、中長期的な企業価値向上のため、新規事業への先行投資を継続する方針です。

* 『BizReach』:累計導入企業数、年次利用中企業数、スカウト可能会員数
* 『HRMOS』シリーズ:ARR、Churn rate、利用中企業数、ARPUの合計値

(4) 成長戦略と重点施策


主力サービス『BizReach』を含むHR Tech領域での事業成長に加え、社会的課題を捉えた新規事業の継続的な創出、国内外の有望企業への投資等を通じて事業領域の拡大を図ります。特に、「ダイレクトリクルーティング」の浸透、収益源の多様化、優秀な人材の確保、情報・内部管理体制の強化を優先課題としています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人材」を最も重要な資産と位置づけ、多様なバックグラウンドを持つ人材の採用と成長支援に注力しています。新卒・中途採用の組み合わせや、リモートワーク・フレックス制度による柔軟な働き方の提供、エンゲージメント向上のための施策を実施しています。また、『社内版ビズリーチ by HRMOS』を活用した社内人材のマッチングも推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年7月期 38.6歳 5.2年 8,613,000円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 16.7%
男性労働者の育児休業取得率 75.0%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 65.7%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) 72.4%
労働者の男女の賃金の差異(非正規雇用) -%


※非正規雇用労働者については、該当者がいない等の理由により記載を省略しています。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 景気変動と雇用情勢の影響


同社グループの主力であるHR Tech事業は、景気変動や雇用情勢の影響を受けやすい特性があります。経済情勢の悪化等により企業の人材採用需要が減退した場合、サービスの需要低下や収益性の低下を招き、業績に影響を与える可能性があります。

(2) 競合との競争激化


人材採用市場には多数の競合他社が存在しています。既存の人材紹介会社や求人情報サービスに加え、海外の競合他社が日本市場を強化する場合など、競争が激化する可能性があります。技術革新への対応遅れ等により競争力が低下した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 特定事業への依存リスク


同社グループの収益はBizReach事業への依存度が高く、2025年7月期の売上高の85.6%を占めています。オンライン採用支援市場の成長鈍化や、事業環境の変化等により同事業の成長が阻害された場合、グループ全体の業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。