※本記事は、ブレインズテクノロジー株式会社の有価証券報告書(第17期、自 2024年8月1日 至 2025年7月31日、2025年10月28日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ブレインズテクノロジーってどんな会社?
ブレインズテクノロジーは、企業の業務変革を支援する異常検知AIや企業内検索エンジンを開発・提供しています。
■(1) 会社概要
同社は2008年に設立され、2012年に企業内検索エンジン「Neuron」、2014年に異常検知ソリューション「Impulse」の提供を開始しました。その後、AI技術の実装を推進し、2021年に東京証券取引所マザーズ(現・グロース市場)へ上場を果たしました。現在も「Impulse」と「Neuron」を主力製品として展開しています。
2025年7月31日時点の従業員数は単体で73名です。筆頭株主は創業者で代表取締役社長の齋藤佐和子氏、第2位と第3位は同社取締役の中澤宣貴氏、河田哲氏であり、経営陣が主要株主となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 齋藤 佐和子 | 45.95% |
| 中澤 宣貴 | 12.01% |
| 河田 哲 | 4.29% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性2名(比率25.0%)で構成されています。代表取締役社長は齋藤佐和子氏です。社外取締役比率は12.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 齋藤 佐和子 | 代表取締役社長 | フューチャーシステムコンサルティング(現フューチャーアーキテクト)を経て、2008年に同社を設立し取締役に就任。2013年8月より現職。 |
| 中澤 宣貴 | 取締役 | フューチャーシステムコンサルティングを経て、2009年に同社入社。2013年8月より現職。 |
| 河田 哲 | 取締役 | NTT、フューチャーシステムコンサルティングを経て、2010年に同社入社。2017年10月より現職。 |
| 林 琢磨 | 取締役 | フューチャーシステムコンサルティングを経て、2015年に同社入社。2017年10月より現職。 |
社外取締役は、日置健二(K&Momentum代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「エンタープライズAIソフトウエア事業」を展開しています。
■(1) 異常検知ソリューション「Impulse」
製造業や建設業などの現場において、膨大なデータ(センサー、画像、動画など)を収集・分析するAIプラットフォームです。予知保全や品質管理、不良品の自動検出などに活用され、業務の高度化や省人化を支援しています。主な顧客は製造業、建設業、IT業などの企業です。
収益は、サブスクリプションモデルによる利用料や、ソフトウエアの使用ライセンス料、保守ライセンス料によって構成されています。また、製品の導入支援やトレーニングに係る作業売上も収益源となります。運営は同社が行っています。
■(2) 企業内検索エンジン「Neuron Enterprise Search」
企業内のファイルサーバーやポータルサイト、クラウドストレージなどに散在するデータを横断的に検索できるエンジンです。資料を探す時間を短縮し、ホワイトカラーの生産性向上を支援しています。製造業、建設業、IT業を中心に導入されています。
収益は、「Impulse」と同様にソフトウエアの利用料やライセンス料、保守ライセンス料が中心です。これにより、労働集約型ではないストック性の高い収益モデルを構築しています。運営は同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2021年7月期から2023年7月期にかけて売上高は順調に拡大してきましたが、2024年7月期は一時的に利益率が低下しました。しかし、2025年7月期には売上高が過去最高水準に達し、経常利益もV字回復を果たして利益率も改善しています。
| 項目 | 2021年7月期 | 2022年7月期 | 2023年7月期 | 2024年7月期 | 2025年7月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 8.5億円 | 9.3億円 | 10.5億円 | 10.0億円 | 12.6億円 |
| 経常利益 | 1.4億円 | 1.7億円 | 1.6億円 | 0.7億円 | 1.7億円 |
| 利益率(%) | 16.7% | 18.5% | 15.4% | 7.3% | 13.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1.1億円 | 1.4億円 | 1.2億円 | 0.5億円 | 1.3億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益、営業利益ともに大きく伸長しました。特に営業利益率は前期の7.3%から13.2%へと大幅に改善しており、増収効果が利益に直結する収益構造への回帰が見られます。
| 項目 | 2024年7月期 | 2025年7月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 10.0億円 | 12.6億円 |
| 売上総利益 | 5.7億円 | 7.5億円 |
| 売上総利益率(%) | 56.3% | 59.9% |
| 営業利益 | 0.7億円 | 1.7億円 |
| 営業利益率(%) | 7.3% | 13.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が2.0億円(構成比35%)、役員報酬が0.8億円(同14%)、研究開発費が0.8億円(同13%)を占めています。売上原価においては、労務費が3.4億円(構成比62%)と大半を占めており、人件費が主要なコスト要因となっています。
■(3) セグメント収益
同社は単一セグメントですが、サービスごとの販売実績を見ると、主力であるエンタープライズAIソフトウエア事業全体で大幅な増収を達成しています。自動車業界へのアプローチや既存顧客のアップセルが奏功しました。
| 区分 | 売上(2024年7月期) | 売上(2025年7月期) |
|---|---|---|
| エンタープライズAIソフトウエア事業 | 10.0億円 | 12.6億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは「健全型」です。本業で稼いだ営業キャッシュ・フローで投資や財務活動を賄っており、財務的に安定した状態と言えます。
| 項目 | 2024年7月期 | 2025年7月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 2.3億円 | 4.2億円 |
| 投資CF | -2.4億円 | -1.9億円 |
| 財務CF | 0.1億円 | -0.5億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.4%で市場平均(グロース市場2.9%)を上回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も79.9%で市場平均(同非製造業43.3%)を大きく上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「企業活動の継続性と生産性の劇的な向上に貢献すること」をミッションに掲げています。企業がデジタル技術による業務やビジネスの変革(DX)を加速するためのAIを実装することを通じて、顧客企業の事業継続性と競争優位性の確立に寄与することを目指しています。
■(2) 企業文化
「明るい未来を創造する技術者集団」であり続けることを目指し、先端オープン技術の活用力と独自の高い技術力を競争の源泉としています。絶え間ない技術革新から生み出される先端技術をいち早く獲得・事業化し、環境変化に適応した顧客価値を創出することを重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、主な成長性・収益性の指標として、「売上高成長率」と「営業利益率」を重視しています。ソフトウエアの提供形態(クラウド型/オンプレミス型)に関わらず、共通でソフトウエアによる収益の獲得を志向しており、これら指標の向上を通じて企業価値の増大を図る方針です。
■(4) 成長戦略と重点施策
今後の成長に向けて、主力製品である異常検知ソリューション「Impulse」と企業内検索エンジン「Neuron Enterprise Search」の推進を継続するとともに、研究開発による新製品・サービスの創出を図ります。特に、製造業におけるデジタル変革ニーズの取り込みや、中小企業への展開強化を進めています。
* 新技術への対応:AI関連の先端技術をいち早く獲得・事業化する。
* 人材の確保・育成:変化に適応できる柔軟性と専門性を備えた人材を獲得する。
* 開発・営業体制の強化:開発プロセスの改善や販売パートナー連携を強化する。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
変化の激しい市場環境に対応するため、特定の分野の専門スキルを持つスペシャリストを国内外から採用することに投資しています。また、書籍・講習費用の補助や技術発表への参加支援など、専門スキルの向上を推奨する環境を整備し、個人の能力を最大限に活かすことで組織力の強化を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年7月期 | 34.1歳 | 4.6年 | 7,453,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 14.2% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規) | - |
| 男女賃金差異(非正規) | - |
※同社は公表義務の対象ではないため、有報には男性育児休業取得率および男女賃金差異の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンジニア従業員比率(65.7%)、外国籍従業員比率(16.4%)、女性従業員比率(21.9%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 技術革新への対応
AI技術やIT業界は技術革新のスピードが速く、予想以上の急速な変化や代替技術の出現がリスクとなり得ます。同社は先端オープン技術と独自技術の組み合わせで対応していますが、競争力や付加価値を確保できない場合、受注減少などにより業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 人材の確保及び育成
同社のサービス開発はエンジニアの技術力に大きく依存しています。事業拡大に応じた人材育成や優秀な人材の採用が計画通りに進まない場合、あるいは人材の社外流出が発生した場合には、成長戦略の遂行や事業運営に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 情報管理及びシステム障害
顧客の機密情報を取り扱うため、情報漏洩が発生した場合は損害賠償や信用失墜のリスクがあります。また、クラウドサービスの基盤となるインターネット通信網やサーバーに障害が発生した場合、サービス提供が困難となり、業績に影響を与える可能性があります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。