※本記事は、株式会社クラシコム の有価証券報告書(第19期、自 2024年8月1日 至 2025年7月31日、2025年10月28日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. クラシコムってどんな会社?
同社は「北欧、暮らしの道具店」を運営し、独自のライフカルチャー(世界観)を通じて商品を販売する企業です。
■(1) 会社概要
同社は2006年に設立され、翌2007年にECサイト「北欧、暮らしの道具店」を開設しました。2015年にはクライアント企業の支援を行うブランドソリューション事業を開始し、2019年にはiOS版アプリをリリースしています。2022年に東証グロース市場へ上場し、2023年にはアパレルブランド「foufou」を展開する株式会社foufouを完全子会社化しました。
2025年7月31日現在、グループ全体の従業員数は100名(単体94名)です。筆頭株主は創業者で代表取締役社長の青木耕平氏、第2位は取締役副社長の佐藤友子氏であり、経営陣が主要株主となっています。第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 青木 耕平 | 54.91% |
| 佐藤 友子 | 12.01% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 7.15% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性4名、女性3名の計7名で構成され、女性役員比率は43.0%です。代表取締役社長は青木耕平氏が務めています。社外取締役比率は42.9%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 青木 耕平 | 代表取締役社長 | 2006年同社設立とともに代表取締役社長に就任。2023年よりミラティブ取締役を兼任。 |
| 佐藤 友子 | 取締役副社長 | 2006年同社取締役就任。ECメディア部部長を経て、2023年10月より現職。 |
| 山口 揚平 | 取締役CFO | 公認会計士。監査法人トーマツ等を経て、2022年10月より同社取締役CFOコーポレートプラットフォーム部部長に就任。 |
| 倉貫 義人 | 取締役CTO | 東洋情報システムを経て、ソニックガーデンを設立し代表取締役に就任。2024年10月より同社取締役CTOに就任。 |
社外取締役は、市川祐子(元楽天IR部長)、寺田有美子(弁護士)、和田洋一(元スクウェア・エニックス社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「北欧、暮らしの道具店」および「foufou」事業を展開しています。
■(1) 「北欧、暮らしの道具店」セグメント
ECサイト「北欧、暮らしの道具店」を通じて、北欧カルチャー等の世界観に共感するユーザーに対し、生活雑貨、アパレル、オリジナル商品などを販売するとともに、記事や動画などのコンテンツを提供しています。また、クライアント企業向けにブランディング支援を行うブランドソリューションも展開しています。
主な収益源は、一般消費者への商品販売による売上と、クライアント企業から受け取るマーケティング・ソリューション(記事広告や動画制作など)の対価です。D2Cドメインが収益の大半を占めており、ユーザーへの直接販売を行っています。運営はクラシコムが行っています。
■(2) 「foufou」セグメント
「健康的な消費のために」というコンセプトを掲げるファッションD2Cブランド「foufou」を展開しています。ECサイトを通じた直接販売に加え、ポップアップショップでの販売も行い、洋服や時計、革製品などのファッション雑貨を取り扱っています。
収益源は、消費者へのアパレル商品やファッション雑貨の販売代金です。SNSを活用して世界観を発信し、ユーザーのエンゲージメントを高めることで購入やリピーター化につなげています。運営は連結子会社の株式会社foufouが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
第18期から第19期にかけて売上高は増加傾向にあります。これは主力事業でのアプリダウンロード促進等のマーケティング施策が奏功したことによります。一方で、利益面ではマーケティング投資の拡大などにより、第19期は前期と比較して各利益段階で若干の減少が見られますが、依然として高い利益率を維持しています。
| 項目 | 2024年7月期 | 2025年7月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 70億円 | 85億円 |
| 経常利益 | 12億円 | 11億円 |
| 利益率(%) | 16.4% | 13.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 8億円 | 8億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は増加しましたが、売上総利益率はほぼ横ばいから若干の改善傾向にあります。これはカテゴリミックスの変化やセール規模の縮小によるものです。一方で、成長投資としての広告宣伝費や体制強化に伴う人件費の増加により、営業利益率は低下しました。
| 項目 | 2024年7月期 | 2025年7月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 70億円 | 85億円 |
| 売上総利益 | 31億円 | 38億円 |
| 売上総利益率(%) | 43.8% | 44.9% |
| 営業利益 | 11億円 | 11億円 |
| 営業利益率(%) | 15.5% | 12.8% |
販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が10.4億円(構成比38%)、給料手当及び賞与が6.1億円(同22%)、外注費が3.1億円(同11%)を占めています。
■(3) セグメント収益
「北欧、暮らしの道具店」は、アプリ活用や他ブランドとのコラボレーションなどの施策により大幅な増収となりましたが、利益は微増にとどまりました。「foufou」は、MD改革や価格戦略の見直しを進めましたが、売上高は減少し、営業損失を計上しています。
| 区分 | 売上(2024年7月期) | 売上(2025年7月期) | 利益(2024年7月期) | 利益(2025年7月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 北欧、暮らしの道具店 | 67億円 | 83億円 | 11億円 | 11億円 | 13.7% |
| foufou | 3億円 | 2億円 | 0.2億円 | -0.4億円 | - |
| 調整額 | - | - | - | - | - |
| 連結(合計) | 70億円 | 85億円 | 11億円 | 11億円 | 12.8% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、本業で稼いだ資金をもとに借入金の返済を進めつつ、投資については抑制的な動きを見せている**健全型**のキャッシュ・フロー状態です。
| 項目 | 2024年7月期 | 2025年7月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 8億円 | 7億円 |
| 投資CF | -5億円 | -0.2億円 |
| 財務CF | -4億円 | -2億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は14.3%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は84.4%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは「フィットする暮らし、つくろう。」をミッションとして掲げています。独自のライフカルチャー(世界観)に共感する人々のWell-being実現に貢献することを目指し、「自分の生き方を自分らしいと感じ、満足できること」=「フィットする暮らし」づくりを通じて、心地よい社会の実現の一助となることを事業の目的としています。
■(2) 企業文化
ミッションを果たすために、「自由」「平和」「希望」という3つの状態(マニフェスト)を獲得・維持することを経営方針としています。他者に支配されない「自由」、ユニークなポジションを築いて望まない競争に巻き込まれない「平和」、未来は今よりも良いものだと無理なく思える「希望」の3つの力を重視しています。また、行動指針として「センシティブ」「チャーミング」「サステナブル」という「フォーム」を掲げています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、ユーザーとの関係蓄積を表す指標として、エンゲージメントアカウント数、累計会員数、および年間購入者数を重視しています。また、財務的な健全性と成長を持続させるため、売上高、売上総利益、EBITDA等の収益性指標や、自己資本比率、在庫回転率等の安全性・効率性指標も目標としています。
■(4) 成長戦略と重点施策
「北欧、暮らしの道具店」では「カテゴリの花束戦略」として商品カテゴリを拡充し、コラボ商品やオリジナルコスメの開発を進めるほか、ブランドソリューションドメインでの高単価メニュー開発を行います。また、アプリダウンロードを訴求する広告投資を継続し、エンゲージメントアカウントの拡大と顧客基盤の強化を図ります。「foufou」ではMD改革やポップアップショップ開催により成長基盤を固めます。
* 2025年7月期の実績として、売上高スマートフォン比率は61.7%、9.3兆円(市場規模言及)
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「自由・平和・希望」の方針に基づき、自社サイトを通じた採用に注力し、ミッションやサービスへの深い共感を持つ人材を確保しています。人事制度では「キャリブレーション」を通じて役割と報酬を連動させ、信頼関係を構築しています。また、オンボーディングやOJT、マネジメント支援を通じて従業員のケイパビリティ向上を図り、内部昇格を促進することで組織の成長を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年7月期 | 36.6歳 | 5.7年 | 6,541,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 58.0% |
| 男性育児休業取得率 | 80.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規雇用) | - |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | - |
※男女賃金差異については、同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、ストレスチェック(全体結果)(A.良好)、高ストレス者割合(約6%)、ミドルマネジメントの社内昇格率(100%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 業界動向と市場環境の変化
BtoC-EC市場やインターネットメディア市場の成長鈍化、法規制の強化、プライバシー保護への意識の高まり、景気動向、過度な競争などが事業に影響を与える可能性があります。同社は業界動向を把握し、収益性や健全性を確保する体制を構築しています。
■(2) ライフカルチャープラットフォームの優位性
事業の根幹であるライフカルチャープラットフォームにおいて、ブランド価値の毀損やユーザーエンゲージメントの喪失が発生した場合、経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。同社はコンテンツ発信や品質管理を通じて信頼維持に努めています。
■(3) 特定ドメインへの高い依存度
売上の大半をD2Cドメインが占めているため、ユーザー減少や市場縮小等により同ドメインの売上が減少した場合、業績に影響が出る可能性があります。同社はコンテンツ提供や商品展開によりエンゲージメントを高めるとともに、ブランドソリューション等の他ドメインの成長にも取り組んでいます。



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