※本記事は、リンカーズ株式会社 の有価証券報告書(第14期、自 2024年8月1日 至 2025年7月31日、2025年10月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. リンカーズってどんな会社?
ものづくり系企業に特化したビジネスマッチングプラットフォームを運営し、技術探索や用途開拓を支援する企業です。
■(1) 会社概要
2011年にDisttyとして設立され、2013年に技術探索サービスを開始しました。2015年に現社名へ変更し、2022年に東証グロース市場へ上場しています。2024年8月にはリサーチ事業を分社化し、株式会社リンカーズOI研究所を設立しました。
同グループの連結従業員数は102名(単体79名)です。筆頭株主は創業者の前田佳宏氏で、第2位は同氏の資産管理会社である合同会社SAKUNANAです。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 前田 佳宏 | 19.44% |
| 合同会社SAKUNANA | 18.11% |
| SBI AI&Blockchain投資事業有限責任組合 | 9.20% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名、計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は前田佳宏氏で、社外取締役比率は40.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 前田 佳宏 | 代表取締役社長 | 京セラ、野村総合研究所を経て、2012年に同社代表取締役に就任。2017年より現職。 |
| 加福 秀亙 | 取締役 | 野村総合研究所を経て、2013年に同社代表取締役に就任。2018年より現職。 |
| 江頭 宏一 | 取締役経営管理本部長 | 高島、GMOコインを経て、2017年に同社入社。2021年より現職。 |
社外取締役は、水田正道(元パーソルホールディングス社長)、長島聡(元ローランド・ベルガー社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ビジネスマッチング事業」および「リサーチ事業」を展開しています。
■(1) ビジネスマッチング事業
技術探索サービス「Linkers Sourcing」や用途開拓サービス「Linkers Marketing」、SaaS型システム「LFB」などを提供しています。主な顧客は製造業の大手・中堅企業や金融機関です。
基本利用料や成果報酬(面談・成約)、システムの導入支援料や月額利用料を収益としています。運営は主に同社が行っています。
■(2) リサーチ事業
技術リサーチサービス「Linkers Research」を提供し、企業の新規事業やR&Dにおける技術パートナー探索、ベンチマーク調査などを支援しています。
調査レポート等の成果物納品時に発生する契約額を収益としています。運営は連結子会社の株式会社リンカーズOI研究所が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
第14期より連結財務諸表を作成しているため、当期のみのデータを表示します。当期は売上高14億円に対し、システム投資や営業体制強化に伴う費用増により、4億円の経常損失となりました。また、減損損失の計上により当期純損失も拡大しています。
| 項目 | 2025年7月期 |
|---|---|
| 売上高 | 14億円 |
| 経常利益 | -4億円 |
| 利益率(%) | -31.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -5億円 |
■(2) 損益計算書
当期は連結初年度のため単年のみの表示となります。売上総利益率は67.6%と高い水準を確保していますが、販管費の負担が重く、営業損失となっています。
| 項目 | 2025年7月期 |
|---|---|
| 売上高 | 14億円 |
| 売上総利益 | 9億円 |
| 売上総利益率(%) | 67.6% |
| 営業利益 | -5億円 |
| 営業利益率(%) | -33.7% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が6億円(構成比43%)、業務委託料が2億円(同12%)を占めています。売上原価については、業務委託料等の外注費が主要な構成要素となっています。
■(3) セグメント収益
ビジネスマッチング事業は海外探索等で成果が出始めているものの、国内探索の逓減や投資負担により損失となりました。リサーチ事業は生成AIの影響等による受注低迷を受け、損失を計上しています。
| 区分 | 売上(2025年7月期) | 利益(2025年7月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|
| ビジネスマッチング事業 | 10億円 | -4億円 | -38.9% |
| リサーチ事業 | 3億円 | -1億円 | -16.2% |
| 連結(合計) | 14億円 | -5億円 | -33.7% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業の赤字に加え、無形固定資産(ソフトウエア)への投資や借入金の返済を行ったため、全てのキャッシュ・フローがマイナスとなっています。不足資金は手元の現預金(約9億円)を取り崩して賄っている状況です。
| 項目 | 2025年7月期 |
|---|---|
| 営業CF | -2億円 |
| 投資CF | -1億円 |
| 財務CF | -0億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は赤字のため算出できませんが、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は82.0%で市場平均(グロース非製造業43.3%)を大きく上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「マッチングで世界を変える」というミッションを掲げ、従来の産業構造では成し得なかった最適な出会いを提供することを目指しています。ビジネスマッチングプラットフォームを通じて国内産業の生産性向上や国力の発展に寄与し、産業全体の連携ハブとなることを経営方針としています。
■(2) 企業文化
役員・従業員の共通価値観として「Linkers Quality」を定めています。「三方良し」「悩んだらブレスト」「強固な信頼インフラ」「ボトルネックとキードライバー」「トライ&エラーの高速回転」「ユーザーファースト」「オーナーシップ」の7つの指針に基づき、日々の活動を行っています。
■(3) 経営計画・目標
SaaS型マッチングプラットフォームの拡大と商流構築までをサービスに取り込むことで、生産性の高い新産業構造の創出を目指しています。持続的な事業拡大のため、売上高、営業利益、経常利益の中長期的な成長を重要指標とし、各サービスの案件数や導入機関数をKPIとして設定しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
ビジネスマッチング業務のワンストップ支援体制構築と、金融機関向けSaaS型サービスの拡大に注力しています。生成AIを活用した技術分析サービスやリサーチ子会社との連携によりマッチング機会を創出し、SaaSを通じたサブスクリプション型収益の最大化を図る方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
ミッションの実現に向けて、性別や国籍を問わず高度なスキルを持つ多様なキャリア人材を採用し、プロフェッショナル集団の構築を目指しています。目標管理制度や人物主義の人事評価、社内公募制度などを通じて、従業員の自律的な成長と組織全体の創造性向上を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均(629万円)とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年7月期 | 38.9歳 | 3.5年 | 6,462,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 16.7% |
| 男性育児休業取得率 | 75.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 77.7% |
| 男女賃金差異(正規) | 83.2% |
| 男女賃金差異(非正規) | 201.9% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員比率(36.6%)、外国人労働者の人数(5人)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 競合の参入について
ビジネスマッチング事業は参入障壁が比較的低く、国内外の事業者が参入する可能性があります。同社は独自データベースや産業コーディネーターとの連携で差別化を図っていますが、競争激化により経営成績に影響を与える可能性があります。
■(2) システムトラブルについて
主力サービスをクラウドサーバー上のプラットフォームとして提供しており、システム障害や不正アクセス等が発生した場合、サービス停止や信頼低下を招き、経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 特定人物への依存について
創業者の前田佳宏氏は経営方針や事業戦略において重要な役割を担っています。組織的な経営体制の整備を進めていますが、同氏の業務遂行が困難になった場合、経営成績等に影響を与える可能性があります。



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