Ridge-i 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

Ridge-i 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証グロース上場のテクノロジー企業です。AI活用コンサルティングや開発を行う「カスタムAIソリューション事業」と、SNS広告や音楽制作を行う「デジタルマーケティング事業」を展開しています。第10期より連結決算へ移行し、子会社化に伴う事業拡大により売上規模が伸長しています。


※本記事は、株式会社Ridge-i の有価証券報告書(第10期、自 2024年8月1日 至 2025年7月31日、2025年10月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. Ridge-iってどんな会社?


AI・ディープラーニング技術を活用したソリューション開発と、デジタルマーケティング事業を展開する企業です。

(1) 会社概要


同社は2016年に設立され、ディープラーニング技術を活用したビジネス課題解決を目的として事業を開始しました。2018年にはAIを活用した衛星データ解析サービスを開始し、2023年に東証グロース市場へ上場しました。2024年には株式会社スターミュージック・エンタテインメントを子会社化し、デジタルマーケティング事業へ参入しています。

2025年7月31日現在の連結従業員数は74名(単体39名)です。筆頭株主は創業者の柳原尚史氏で、第2位は同氏の資産管理会社である株式会社柳原ホールディングス、第3位は資本業務提携先である株式会社バルカーです。

氏名 持株比率
柳原 尚史 26.89%
柳原ホールディングス 16.58%
バルカー 10.65%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は柳原尚史氏です。社外取締役比率は55.6%です。

氏名 役職 主な経歴
柳原 尚史 代表取締役社長 金融機関等を経て2016年7月に同社を創業し現職。2024年よりスターミュージック・エンタテインメント取締役を兼務。
市來 和樹 常務取締役カスタムAIソリューション事業部長 2018年同社入社。開発部長、プロフェッショナルサービス事業部長を経て、2024年8月より現職。スターミュージック・エンタテインメント取締役を兼務。
小松 平佳 常務取締役AI・DX事業共創 コンサルティング会社を経て2017年同社入社。2018年取締役就任。コンサルティング部長を経て、2024年8月より現職。
中井 努 取締役管理部長 監査法人、事業会社管理本部長を経て2019年同社入社。同年執行役員管理部長、2022年6月より現職。


社外取締役は、西村竜彦(株式会社QPS研究所社外取締役)、椿山善昭(株式会社バルカー専務執行役員)、松本範平(元日興アイ・アール常務取締役)、櫟本健夫(公認会計士)、齊藤友紀(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「カスタムAIソリューション事業」および「デジタルマーケティング事業」を展開しています。

(1) カスタムAIソリューション事業


AI活用コンサルティング、AI開発、AI運用保守、人工衛星データ解析などを提供しています。顧客の目的や課題に合わせて、ディープラーニング等の技術を用いた最適なAIソリューションを提案・実装します。主な顧客は製造業などの大手企業です。

収益は、コンサルティングや開発によるフロー収益と、開発したAIエンジンのライセンス提供や保守運用によるストック収益から成り立っています。運営は主にRidge-iが行っています。

(2) デジタルマーケティング事業


主要な動画配信プラットフォームと提携し、企業向けマーケティングコンサルティングや広告制作を行っています。また、音楽レーベル機能を持ち、独自の原盤配信や著作権ビジネス、プラットフォームへの楽曲提供なども手掛けています。

収益は、マーケティングコンサルティング料、広告制作費、および音楽配信による印税収入や楽曲著作権使用料などです。運営は主に子会社の株式会社スターミュージック・エンタテインメントが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


第9期までは単体決算、第10期より連結決算へ移行しています。第10期の売上高は子会社の連結化や生成AI案件の増加により26億円規模となっています。利益面でも黒字を維持しており、売上高に対する利益率は4%台で推移しています。

項目 第6期 第7期 第8期 第9期 第10期
売上収益(または売上高) - - - - 26億円
経常利益 - - - - 3億円
利益率(%) - - - - 4.5%
当期利益(親会社所有者帰属) -1.5億円 1.5億円 0.4億円 1.2億円 1.2億円

(2) 損益計算書


直近2期間のデータにおいて、第10期は売上高26億円、営業利益2.8億円を計上しています。第9期は連結損益計算書を作成していないため比較データはありませんが、第10期は3億円近い経常利益を確保し、堅調な収益性を維持しています。

項目 第9期 第10期
売上高 - 26億円
売上総利益 7億円 13億円
売上総利益率(%) - 51.1%
営業利益 2億円 3億円
営業利益率(%) - 10.9%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が3.1億円(構成比30%)、役員報酬が1.6億円(同15%)を占めています。

(3) セグメント収益


カスタムAIソリューション事業は大手企業向けのAIプロジェクトや生成AI案件が進捗し、13億円の売上を計上しました。新たに加わったデジタルマーケティング事業も13億円の売上を上げ、全社業績に寄与しています。

区分 売上(第9期) 売上(第10期) 利益(第9期) 利益(第10期) 利益率
カスタムAIソリューション事業 - 13億円 - 2億円 12.6%
デジタルマーケティング事業 - 13億円 - 1億円 9.2%
連結(合計) - 26億円 - 3億円 10.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


**健全型**
営業CFがプラスで、本業で得た現金を借入金の返済(財務CFマイナス)や投資(投資CFマイナス)に回せている、財務的に健全な状態です。

項目 第9期 第10期
営業CF - 0.5億円
投資CF - -0.5億円
財務CF - -2.9億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は77.0%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「データ・AIを駆使した最先端技術とビジネス知見を用いて、未解決の課題に挑み、新しい社会を実現する」をミッションとして掲げています。社会課題や顧客課題を先端技術で解消するため、コンサルテーションから開発、運用まで一貫した実用的なソリューションを提供することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、AI・エンジニアリング・ビジネスの3つの強みに精通したプロフェッショナルが、1つの課題にワンチームとなって挑む体制を重視しています。AI技術だけでなく、既存技術や人による運用も調和させることで、クライアントにとっての持続的な価値創造を実現する姿勢を持っています。

(3) 経営計画・目標


同社は、安定的な成長を図るため、売上高、営業利益、従業員数を重要な指標と位置づけています。AIコンサルティング等による価値の蓄積、その最大化、そして新たな市場創造というエコシステムによる事業拡大を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


中長期戦略として、ストック収益の拡大、コンサルティングファームとの連携による大規模案件の獲得、次世代AI(生成系AI、マルチモーダル等)の研究開発、人工衛星データ解析AIでのリーディングポジション確立とグローバル展開を掲げています。

* ストック収益の拡大:AIライセンスや保守運用サービスの提供強化
* 研究開発:官能検査・生成系AI・マルチモーダルなどの先行研究と人材採用
* 宇宙ビジネス:衛星データ解析AIの官公庁・民間への展開

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、AIをはじめとした先端技術の研究開発と事業化を迅速に実行するため、高度な技術・専門性とチャレンジ精神を持った人材の確保と育成を重視しています。従業員の生活を豊かにし、業務で成果を出せるよう、働きがいのある環境づくりに取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
第10期 35.5歳 2.5年 8,192,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金等を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 景気動向及び業界環境の変動による影響


AI業界は拡大が予測されていますが、国内外の経済情勢や景気動向、設備投資意欲の減退などにより市場成長が鈍化した場合、同社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

(2) 事業拡大に伴うリスク


同社グループは研究開発やM&Aなどを通じて事業拡大を進めていますが、新規分野での収益化の遅れや、M&A等の相手先との連携が計画通りに進まない場合、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 知的財産権におけるリスク


第三者の知的財産権侵害については調査等で注意を払っていますが、完全な把握は困難です。認識せずに他社の権利を侵害し紛争となった場合、社会的信用の失墜や損害賠償等により、事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 大規模な自然災害等による影響


地震や台風などの自然災害、感染症の流行等が想定を上回る規模で発生した場合、事業活動が困難となり業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、テレワーク可能な体制等を整備しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。