MFS 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

MFS 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所グロース市場に上場するMFSは、住宅ローン媒介サービス「モゲチェック」や不動産投資サービス「INVASE」を展開する企業です。直近の決算では、主力サービスのユーザー数増加や不動産投資事業の契約増により大幅な増収となり、営業損益および最終損益ともに黒字転換を達成しています。


※本記事は、株式会社MFS の有価証券報告書(第16期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. MFSってどんな会社?


オンラインでの住宅ローン診断・媒介サービスを主力とし、ユーザー視点の金融サービスを提供する企業です。

(1) 会社概要


同社は2009年に設立され、2014年に現在の商号へ変更して事業を開始しました。2015年に住宅ローン診断サービス「モゲチェック」、2021年には不動産投資サービス「INVASE」をリリースしています。2024年6月には東京証券取引所グロース市場への上場を果たし、事業基盤の拡大を進めています。

2025年6月30日時点で、連結従業員数は91名、単体では69名です。筆頭株主は創業者で代表取締役CEOの中山田明氏(17.30%)で、次いでJICベンチャー・グロース・ファンド1号投資事業有限責任組合などのベンチャーキャピタルが名を連ねています。

氏名 持株比率
中山田 明 17.30%
JICベンチャー・グロース・ファンド1号投資事業有限責任組合 8.90%
結長期戦略投資事業有限責任組合 8.20%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役CEOは中山田明氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
中山田 明 代表取締役CEO 三井物産、モルガン・スタンレー証券等を経て新生銀行に入行。その後SBIモーゲージ(現SBIアルヒ)に入社し取締役を務める。2014年10月より現職。
塩澤 崇 取締役CMO モルガン・スタンレー証券、ボストン・コンサルティング・グループを経て、2015年8月に同社取締役COOに就任。2024年10月より現職。
平山 亮 取締役CFO 野村證券、BHI取締役を経て、2020年3月に同社入社。2020年12月より現職。


社外取締役は、伊藤雅仁(元ワイジェイFX代表取締役社長CEO)、柴田暁(Weights & Biases, Inc.カントリーマネージャー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「モゲチェック」事業および「INVASE」事業を展開しています。

「モゲチェック」事業


住宅購入予定者に対し、ウェブサービスおよびアプリを通じて最適な住宅ローンを提案・媒介するサービスです。独自のロジックによる融資承認確率の判定や、ユーザーにとって有利な条件のローン提案を行っています。

収益は、ユーザーが住宅ローンの審査申込を行った際に、提携する金融機関や広告代理店から受け取る広告宣伝費や紹介手数料が中心です。また、提携不動産会社等への顧客紹介に対する手数料の支払いや受領も発生します。運営は主にMFSが行っています。

「INVASE」事業


投資用不動産の購入予定者や保有者に対し、不動産投資用ローンの借り入れ・借り換え支援や、投資用物件の売買・仲介を行う総合プラットフォームです。アプリを通じて物件の適正価格や借入可能額の情報を提供し、マッチングを支援します。

収益源は、ユーザーへの物件仲介に伴う仲介手数料、金融機関への送客手数料、ローンの借り換え成功時に顧客から受け取る手数料などです。また、子会社であるコンドミニアム・アセットマネジメント株式会社が不動産仲介等の実務を担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は一貫して増加傾向にあり、特に直近期では大幅な成長を遂げています。利益面では、先行投資により損失計上が続いていましたが、直近期において増収効果により経常利益および当期純利益ともに黒字転換を果たしました。

項目 2021年6月期 2022年6月期 2023年6月期 2024年6月期 2025年6月期
売上高 5.0億円 8.4億円 16.1億円 18.9億円 29.2億円
経常利益 -2.3億円 -5.5億円 -1.5億円 -1.4億円 2.0億円
利益率(%) -45.6% -65.4% -9.1% -7.6% 6.8%
当期利益(親会社所有者帰属) -2.3億円 -5.3億円 -0.4億円 -0.4億円 2.3億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で大きく伸長し、売上総利益率も高い水準を維持しています。増収に伴い売上総利益が増加したことで、販売費及び一般管理費の増加を吸収し、営業損益が黒字化しました。

項目 2024年6月期 2025年6月期
売上高 18.9億円 29.2億円
売上総利益 15.5億円 21.7億円
売上総利益率(%) 81.8% 74.4%
営業利益 -1.1億円 2.0億円
営業利益率(%) -5.9% 6.7%


販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が11.5億円(構成比58%)、給料及び手当が3.5億円(同18%)を占めています。

(3) セグメント収益


モゲチェック事業は集客数とユーザー登録数が大幅に増加し、増収増益となりました。INVASE事業は物件契約件数の増加等により売上が倍増しましたが、先行投資等の影響でセグメント損失が継続しています。

区分 売上(2024年6月期) 売上(2025年6月期) 利益(2024年6月期) 利益(2025年6月期) 利益率
モゲチェック事業 14.3億円 19.8億円 1.4億円 4.7億円 23.5%
INVASE事業 4.6億円 9.4億円 -2.5億円 -2.7億円 -28.8%
連結(合計) 18.9億円 29.2億円 -1.1億円 2.0億円 6.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社は、不動産販売開始に伴う販売用不動産の増加が営業活動による資金獲得を抑制したものの、税金等調整前当期純利益の増加により、営業活動で資金を獲得しました。投資活動では、定期預金の預入や投資有価証券の取得等により資金を使用しましたが、定期預金の払戻しで一部相殺されました。財務活動では、主に長期借入金の返済により資金を使用しました。

項目 2024年6月期 2025年6月期
営業CF -0.7億円 1.2億円
投資CF -0.9億円 -2.6億円
財務CF 5.6億円 -1.2億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「テクノロジーと分析の力でユーザーにパワーを」をミッションに掲げ、「真にユーザーサイドに立った新しいフィナンシャルサービスを作る」ことをビジョンとしています。住宅ローンを必要とする全ての人が最も有利な条件で借り入れ・借り換えができる世界の実現を目指しています。

(2) 企業文化


同社は3つのバリュー(行動指針)を定めています。「Enjoy(挑戦は明るく楽しく、チーム一丸となる)」、「Big Try(非連続な成長ポイントを見極め果敢にチャレンジする)」、「Professional(結果にこだわり、自分の頭で考えて実行する)」を共通の価値観として大切にしています。

(3) 経営計画・目標


同社は、持続的な成長と企業価値向上を目指し、売上高および営業利益を重要な経営指標としています。具体的には、「モゲチェック」事業におけるサービスサイトへのアクセス数、登録者数、住宅ローン審査申込数などを重視しています。また、「INVASE」事業においても集客数や物件契約数などをKPIとして管理しています。

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、オンラインを中心とした広告展開の強化や提携不動産会社等とのリレーション強化により、サービスの認知度向上と顧客基盤の拡大を図る方針です。また、テクノロジーを活用した新サービスの開発やUI/UXの改善、AIやビッグデータ解析等の技術導入を推進し、他社との差別化と付加価値向上を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、成長戦略の実行と企業価値向上のために人材を重要な経営資源と位置付けています。エンジニアやデジタルマーケター等のDX人材をはじめとする優秀な人材の採用強化と育成、および多様性の確保に注力しています。また、従業員の安全と健康を確保するため、残業時間の抑制などの環境整備も推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年6月期 39.0歳 3.2年 6,892,000円

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性の管理職比率(30%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経営環境の変化について


住宅ローン市場は低金利政策や減税措置の影響を受けていますが、金融政策の転換や税制改正等により市場が縮小した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は事業計画のモニタリングや収益源の多角化によりリスク低減を図っています。

(2) 検索エンジンからの集客について


同社サービスは検索サイトからの集客が重要であり、検索アルゴリズムの大幅な変更により表示順位が下落した場合、集客減につながる可能性があります。SEO対策の継続や、不動産会社・保険代理店経由などのオフラインでのユーザー獲得を進めています。

(3) 情報管理体制について


サービスに関連して多数の個人情報を取り扱っているため、情報漏洩や不正利用が発生した場合、信用失墜や損害賠償請求等により経営成績に影響を与える可能性があります。情報セキュリティ基本方針の策定や社内教育等により管理体制を強化しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。