フジミインコーポレーテッド 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

フジミインコーポレーテッド 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

フジミインコーポレーテッドは東京証券取引所プライム市場および名古屋証券取引所プレミア市場に上場し、半導体基板向け超精密研磨材などを手掛ける企業です。直近の業績では先端半導体向け製品などが好調に推移し増収、営業利益は過去最高を記録しましたが、過年度法人税等の計上により純利益は減益となりました。


※本記事は、フジミインコーポレーテッドの有価証券報告書(第74期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. フジミインコーポレーテッドってどんな会社?


フジミインコーポレーテッドは、半導体基板等の超精密研磨材を製造販売する世界的なリーディングカンパニーです。

(1) 会社概要


1950年に創業し、国内初の研磨材生産を開始しました。1953年に不二見研磨材工業を設立し、1984年以降は米国やマレーシアなどに拠点を設立してグローバル展開を進めました。1991年に現在のフジミインコーポレーテッドへ商号変更し、2007年には東証及び名証の一部に上場、現在はプライム市場およびプレミア市場へ移行しています。

従業員数は連結で1,305名、単体で911名です。筆頭株主は有限会社コマで、第2位と第3位には資産管理業務を行う信託銀行が名を連ねており、安定した事業基盤を支える株主構成となっています。

氏名 持株比率
有限会社コマ 17.73%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 10.48%
日本カストディ銀行(信託口) 5.86%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.0%です。代表取締役社長は関敬史氏が務めており、社外取締役の比率は36.4%となっています。

氏名 役職 主な経歴
関敬史 代表取締役社長 1989年富士銀行入行、1997年同社入社。CMP事業本部長などを経て2008年より代表取締役社長。人事・組織開発本部長などを歴任し現職。
大脇寿樹 常務取締役 1983年同社入社。機能材事業本部長などを歴任し、2022年より常務取締役。子会社社長等を経て現職。
鈴木勝弘 常務取締役 1984年同社入社。シリコン事業本部長等を経て、2016年に取締役CMP事業本部長。子会社会長等を経て2021年より常務取締役となり現職。
日比勝之 取締役 1999年同社入社。社長室長などを経て、人事・組織開発本部長や事業企画本部長を歴任。2025年より取締役となり現職。


社外取締役は、川下政美(元日本特殊陶業代表取締役副社長)、吉村温子(VG-C代表取締役)、山﨑直子(合同会社NOKs Labo代表社員)、石川修平(元日本ガイシ専務執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、日本、北米、アジア、欧州の4つの報告セグメントで事業を展開しています。

日本


同社は、主にシリコンウェハー等の半導体基板や半導体デバイスの製造工程で用いられる超精密研磨材(CMP製品など)の研究開発および製造を行っています。また、ハードディスク基板向け研磨材や多様な業界向けの溶射材なども提供し、世界の先端産業を支えています。

収益源は、国内外の半導体デバイスメーカーやディスク基板メーカー等に対する研磨材製品の販売代金です。日本国内での開発・生産・販売の運営は、主に同社が主体となって担っています。

北米


北米においては、米国オレゴン州に拠点を構え、最先端の半導体市場に向けたCMP製品を中心とする研磨材の研究開発および製造販売を展開しています。

収益源は、北米市場を中心とする顧客に対する研磨材の販売代金です。同地域での運営は、子会社であるFUJIMI CORPORATIONが行っています。

アジア


アジアにおいては、半導体デバイスの製造拠点やハードディスクドライブ用ディスク基板の生産拠点が集中する地域をターゲットとし、製品の製造や技術サポートを展開しています。

収益源は、アジア地域の顧客に対する研磨材の販売代金です。運営は、マレーシア子会社のFUJIMI-MICRO TECHNOLOGY SDN. BHD.および台湾子会社のFUJIMI TAIWAN LIMITEDが担っています。

欧州


欧州においては、地域の顧客ニーズに応じた研磨材の販売活動および技術サポートを中心に事業を展開しています。

収益源は、欧州市場の顧客に対する研磨材の販売代金です。同地域における運営は、ドイツの子会社であるFUJIMI EUROPE GmbHが担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績は、売上高が概ね右肩上がりで推移しており、当期には694億円と過去最高を記録しました。経常利益も高い水準を維持しており、一時的な落ち込みがあったものの当期は142億円まで回復しています。利益率は常に17%〜24%前後と、高い収益性を確保していることがわかります。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 517億円 584億円 514億円 625億円 694億円
経常利益 125億円 136億円 90億円 123億円 142億円
利益率(%) 24.1% 23.3% 17.4% 19.6% 20.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 85億円 102億円 58億円 79億円 81億円

(2) 損益計算書


売上高の成長に伴い、売上総利益も順調に拡大しており、当期は312億円に達しました。売上総利益率は44%〜45%と安定しており、高い付加価値を維持しながら営業利益も着実に伸ばしていることが確認できます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 625億円 694億円
売上総利益 275億円 312億円
売上総利益率(%) 43.9% 45.0%
営業利益 118億円 138億円
営業利益率(%) 18.8% 19.9%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び賞与が62億円(構成比35%)、運賃諸掛が18億円(同11%)を占めています。

(3) セグメント収益


日本およびアジアセグメントが収益の柱となっており、特にアジアセグメントは売上高・利益ともに大きく伸長しています。北米セグメントも増益を達成しており、各地域で安定した収益基盤を確立しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
日本 355億円 395億円 97億円 114億円 28.9%
北米 82億円 80億円 3億円 3億円 4.2%
アジア 168億円 196億円 47億円 53億円 26.8%
欧州 21億円 24億円 2億円 2億円 6.8%
調整額 -億円 -億円 -31億円 -33億円 -%
連結(合計) 625億円 694億円 118億円 138億円 19.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.3%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も69.1%で市場平均を上回っています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 130億円 126億円
投資CF -159億円 -201億円
財務CF -56億円 122億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は企業使命として「高度産業社会の期待に新技術で応え、地球に優しく、人々が快適に暮らせる未来の創造に貢献します」と掲げています。また、パウダー&サーフェス分野で世界最高技術を提供し、持続的な成長や働きがい、環境負荷低減を実現する「エクセレントカンパニー」を目指しています。

(2) 企業文化


同社は「強く、やさしく、面白い会社」を目指す企業文化ビジョンを定めています。自由闊達で切磋琢磨する風土(強く)、仲間を大切にし助け合う姿勢(やさしく)、夢を抱き実現できる職場づくり(面白い)を重視し、一人ひとりが熱意と誠意をもってチャレンジできる組織運営を行っています。

(3) 経営計画・目標


中長期経営計画において、研磨材メーカーから「パウダー&サーフェスカンパニー」への進化を目指しています。半導体関連事業等の拡大と新規事業の創出を通じ、持続可能な社会への貢献を推進しています。

* 2029年3月期目標:連結売上高950億円
* 2029年3月期目標:EBITDAマージン27.0%
* 2029年3月期目標:ROE15.0%

(4) 成長戦略と重点施策


既存のシリコンやCMP事業で強靭な基盤を構築しつつ、次世代半導体向け材料分野で圧倒的な地位を確立することを目指しています。また、非半導体領域への用途拡大や、コア技術である「ろ過・分級・精製」「パウダー」「ケミカル」を発展させた新規事業の探索・育成に注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「働きやすさ」と「働きがい」を実感できる組織づくりを通じ、顧客満足と従業員のウェルビーイングの同時実現を目指しています。また、「100年企業を実現するGRIT(やり抜く力)な組織と人づくりへの挑戦」を掲げ、多様な人材の確保と柔軟な働き方を支援する社内環境整備を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 41.9歳 12.7年 8,920,784円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.2%
男性育児休業取得率 72.5%
男女賃金差異(全労働者) 69.2%
男女賃金差異(正規雇用) 81.3%
男女賃金差異(非正規雇用) 65.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性労働者の育児休業取得率(100.0%)、一人あたり研修受講時間(16.9時間)、新規採用者におけるキャリア採用比率(79.6%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原材料の調達難と価格高騰


同社が製造する研磨材には、海外から輸入される天然資源を原材料とするものがあり、一部は購入先が一社に限定されていたり特定国に集中していたりします。価格高騰や供給不足が生じた場合、生産活動の遅滞や収益性の低下など、同社の業績に影響を与える可能性があります。

(2) 研究開発の遅れによる競争力低下


超精密研磨材分野は技術や市場の変化が激しく、顧客の高度なニーズを満たす新製品を迅速に提供できない場合、将来の成長や収益性が低下するリスクがあります。同社は日本、北米、台湾に研究拠点を設け、顧客と一体となった開発や大学等との連携を推進し対応しています。

(3) 競合企業との競争激化


同社は半導体基板向け超精密研磨材などで高いシェアを有していますが、国内外に多様な競合企業が存在します。他社による画期的な新製品の開発などで市場優位性が脅かされるリスクに対し、同社は独自設計による研磨性能の向上や、最適な加工プロセスのトータルソリューション提供に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。