フジミインコーポレーテッド 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

フジミインコーポレーテッド 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

フジミインコーポレーテッドは、東証プライム市場等に上場する、研磨材製造のリーディングカンパニーです。半導体基板向け超精密研磨材で世界トップシェアを誇ります。2024年3月期の連結業績は、半導体市場の調整局面を受け、売上高514億円(前期比11.9%減)、経常利益90億円(同34.1%減)の減収減益となりました。


※本記事は、株式会社フジミインコーポレーテッドの有価証券報告書(第72期、自 2023年4月1日 至 2024年3月31日、2024年6月21日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. フジミインコーポレーテッドってどんな会社?


フジミインコーポレーテッドは、半導体シリコンウェハー向けなどの精密研磨材で世界的高シェアを持つメーカーです。技術力に強みがあります。

(1) 会社概要


同社は1950年に不二見研磨材工業所として創業し、国内初の研磨材生産を開始しました。1953年に法人改組後、1984年には米国に販売子会社を設立するなど早期から海外展開を進めています。1991年にグループ3社が合併し現社名へ変更しました。2007年に東証・名証の市場第一部へ上場し、2022年の市場区分見直しに伴いプライム市場およびプレミア市場へ移行しています。

現在の従業員数は連結1,110名、単体791名です。筆頭株主は有限会社コマで、第2位、第3位には資産管理業務を行う信託銀行が名を連ねています。

氏名 持株比率
有限会社コマ 17.73%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 10.50%
日本カストディ銀行(信託口) 8.16%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は関敬史氏が務めています。社外取締役比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
関 敬史 代表取締役社長 1989年富士銀行(現みずほ銀行)入行。1997年同社入社。CMP事業本部長などを経て2008年より現職。
大脇 寿樹 常務取締役 1983年同社入社。米国子会社出向、ディスク事業本部長、機能材事業本部長などを経て2022年より現職。
鈴木 勝弘 常務取締役 1984年同社入社。米国子会社出向、シリコン事業本部長、CMP事業本部長などを経て2023年より現職。


社外取締役は、川下政美(元日本特殊陶業代表取締役副社長)、浅井侯序(元ブラザー工業常務執行役員)、吉村温子(PhytoMol-Tech代表取締役CEO)、山﨑直子(合同会社NOKs Labo代表社員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」「北米」「アジア」「欧州」の4つの報告セグメントで事業を展開しています。

(1) 日本


同社が基盤とする国内市場において、半導体基板(シリコンウェハー)用研磨材、半導体デバイス用CMP(化学的機械的平坦化)製品、ハードディスク用研磨材などを提供しています。特にシリコンウェハー向けでは高いシェアを誇ります。

収益は、顧客である半導体メーカーやシリコンウェハーメーカー等からの製品販売代金です。開発・製造・販売の主要機能を有しており、運営は主に同社(提出会社)が担っています。

(2) 北米


北米市場の顧客に対し、半導体デバイス製造プロセスで使用されるCMP製品や、シリコンウェハー向け研磨材などを提供しています。現地の半導体産業の集積地に近い拠点で活動しています。

収益は製品の販売によるものです。オレゴン州に拠点を置く連結子会社FUJIMI CORPORATIONが製造および販売を行っています。

(3) アジア


台湾、韓国、中国、マレーシアなど、半導体およびハードディスク生産の主要拠点が集まるアジア地域において、研磨材製品を提供しています。ハードディスク基板用研磨材やCMP製品が主力です。

収益は製品販売によるものです。マレーシアのFUJIMI-MICRO TECHNOLOGY SDN. BHD.や台湾のFUJIMI TAIWAN LIMITEDなどの連結子会社が、製造および販売を担っています。

(4) 欧州


欧州地域の顧客に対し、研磨材製品の販売を行っています。主な取扱製品はCMP製品やシリコンウェハー向け研磨材などです。

収益は製品販売によるものです。ドイツに拠点を置く連結子会社FUJIMI EUROPE GmbHが販売機能を担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は2023年3月期まで拡大傾向にありましたが、2024年3月期は半導体市場の調整局面を受け減収となりました。利益面でも、売上減少や原材料高騰の影響により、2024年3月期は経常利益、当期純利益ともに大きく減少しています。高い利益率を維持してきましたが、直近では低下が見られます。

項目 2020年3月期 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期
売上高 384億円 420億円 517億円 584億円 514億円
経常利益 62億円 77億円 125億円 136億円 90億円
利益率(%) 16.1% 18.4% 24.1% 23.3% 17.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 36億円 55億円 85億円 102億円 58億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高の減少に伴い、売上総利益および営業利益が縮小しています。売上総利益率は40%台後半から40%台前半へと低下し、営業利益率は20%台から10%台後半へと推移しました。原材料価格の高騰や固定費負担の増加が利益を圧迫した形です。

項目 2023年3月期 2024年3月期
売上高 584億円 514億円
売上総利益 272億円 223億円
売上総利益率(%) 46.6% 43.5%
営業利益 132億円 83億円
営業利益率(%) 22.7% 16.0%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び賞与が51億円(構成比36%)、運賃諸掛が14億円(同10%)を占めています。売上原価においては、原材料費等の製造費用が含まれます。

(3) セグメント収益


2024年3月期は、日本、北米、欧州セグメントで減収減益となりました。特に日本はシリコンウェハー向けおよびCMP製品の販売減が響きました。一方、アジアセグメントは先端ロジックデバイス向けCMP製品が牽引し、増収増益を確保しています。

区分 売上(2023年3月期) 売上(2024年3月期) 利益(2023年3月期) 利益(2024年3月期) 利益率
日本 360億円 290億円 118億円 73億円 25.3%
北米 75億円 71億円 7億円 2億円 3.1%
アジア 130億円 136億円 31億円 33億円 24.5%
欧州 19億円 18億円 2億円 1億円 7.7%
連結(合計) 584億円 514億円 132億円 83億円 16.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、本業で稼いだ資金(営業CFプラス)をもとに、設備投資(投資CFマイナス)や株主還元(財務CFマイナス)を行っており、典型的な「健全型」のキャッシュ・フロー構造を示しています。

項目 2023年3月期 2024年3月期
営業CF 74億円 75億円
投資CF -8億円 -53億円
財務CF -61億円 -56億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.2%で市場平均(プライム市場9.4%)をわずかに下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は87.4%で市場平均(プライム製造業46.8%)を大きく上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は企業使命として「高度産業社会の期待に新技術で応え、地球に優しく、人々が快適に暮らせる未来の創造に貢献します」を掲げています。また、事業アイデンティティとして「パウダー&サーフェス分野で世界最高技術を提供し、私たちが理想とするエクセレントカンパニーを目指します」としています。

(2) 企業文化


企業文化ビジョンとして「強く、やさしく、面白い会社」を目指しています。「強く」は自由闊達で切磋琢磨する風土、「やさしく」は仲間を大切にし助け合い感謝すること、「面白い」は夢をいだき夢がかなう職場をつくることを意味しています。一人ひとりのアイデアを尊重し、それをカタチにする行動規範を持っています。

(3) 経営計画・目標


2029年3月期を最終年度とする中長期経営計画において、以下の数値目標を掲げています。

* 連結売上高:950億円
* 連結非半導体売上構成比:25.0%
* EBITDAマージン:27.0%
* ROE:15.0%

(4) 成長戦略と重点施策


「パウダー&サーフェスカンパニーへの進化」を目指し、既存の半導体関連事業の拡大と新規事業の創出を進めています。特に、次世代半導体向け材料分野での地位確立や、非半導体領域への用途拡大に注力しています。また、研究開発とグローバル供給体制の拡充に経営資源を投入し、サステナビリティ経営を実践する方針です。

* 半導体関連事業の強靭な基盤構築と次世代半導体向け材料分野での圧倒的な地位確立
* 研磨材メーカーからパウダー&サーフェスカンパニーへの進化を実現する新規事業の創出
* コア技術の発展と新技術の開発

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「働きがい」と「働きやすさ」を実感できる会社を目指し、グローバルに多様化し、革新的な環境の中で熱意と誠実さを持ち、自らの創造性と問題解決力を駆使して挑戦できる人材の採用を進めています。多様な働き方を取り入れた適材適所の人員配置や、階層別・専門スキル向上などの研修プログラムを通じた人材育成に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2024年3月期 42.4歳 13.7年 8,151,498円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.4%
男性育児休業取得率 46.6%
男女賃金差異(全労働者) 65.9%
男女賃金差異(正規雇用) 78.0%
男女賃金差異(非正規雇用) 60.6%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員一人あたり人事部門主催の研修受講時間(17.9時間)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原材料の調達リスク


一部の原材料、副資材等において一社購買となっている品目や、購入先が一国に集中しているものがあります。購入先の品質異常、需要急増や供給国の政策変更等により十分な供給を受けられない場合、生産活動が遅滞し業績に影響を与える可能性があります。

(2) 研究開発と技術革新リスク


技術・市場の変化が激しい分野において、顧客の技術的ニーズを満たす製品を速やかに提供できない場合、将来の成長と収益性が低下する可能性があります。予想を超えた技術変化への対応遅れは、業績に大きな影響を与える要因となります。

(3) 企業買収(M&A)に伴うリスク


事業成長のためにM&Aを行うことがありますが、買収後の市場環境や競争環境の著しい変化により、投下資本の回収が困難となる可能性があります。その場合、減損損失の計上などにより業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。