マルマエ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

マルマエ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

マルマエは東証プライム市場に上場し、半導体やFPD(フラットパネルディスプレイ)製造装置向けの精密部品事業と、アルミ材料等を扱う機能材料事業を展開しています。当期より連結決算へ移行し、売上高114億円、営業利益21億円を計上。主力の消耗品需要回復や新規連結効果により業績は堅調に推移しています。


※本記事は、株式会社マルマエ の有価証券報告書(第38期、自 2024年9月1日 至 2025年8月31日、2025年11月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. マルマエってどんな会社?


半導体やFPD製造装置の真空パーツ製造を主力とし、アルミ加工技術に強みを持つ精密部品メーカーです。

(1) 会社概要


1965年に鹿児島県出水市で創業し、1988年に法人化しました。2001年に現社名へ変更後、半導体・FPD分野へ本格展開し、2006年に東証マザーズへ上場しました。2018年には東証一部(現プライム)へ市場変更を果たしています。2025年4月にはKMアルミニウムを完全子会社化し、機能材料事業を新たな柱としています。

同グループの従業員数は連結462名(単体222名)です。筆頭株主は社長の前田俊一氏で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は創業家親族となっています。創業者が大株主として経営をリードする体制です。

氏名 持株比率
前田 俊一 35.14%
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 6.23%
前田 美佐子 3.98%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長は前田俊一氏が務めています。社外取締役比率は55.6%です。

氏名 役職 主な経歴
前田 俊一 代表取締役社長(統括、管理本部担当兼務) 1987年入社。2003年より代表取締役社長。製造・管理部門の統括を経て、2025年より子会社KMアルミニウム代表取締役を兼務し、グループ経営を牽引。
海﨑 功太 取締役営業本部長(営業本部担当) 1999年入社。営業部長、精密加工部長、関東事業所長などを歴任し、2018年より現職。営業部門の統括責任者を務める。
安藤 博音 取締役技術生産本部長(技術生産本部担当) 2008年入社。品質管理部長を経て、2018年より現職。技術・生産部門を統括し、2025年より子会社KMアルミニウム取締役を兼務。
外西 啓治 取締役(監査等委員) 鹿児島銀行出身。支店長や監査部検査役を歴任し、2020年より現職。常勤監査等委員として監査体制の一翼を担う。


社外取締役は、門田晶子(渕上印刷代表取締役社長)、世耕久美子(元文部科学大臣政務官)、桃木野聡(弁護士)、山本隆章(セイコーソリューションズシニアアドバイザー)、宮川博次(公認会計士)です。

2. 事業内容


同社グループは精密部品事業の単体セグメントですが、「精密部品事業」および「機能材料事業」を展開しています。

(1) 精密部品事業


半導体やFPD(フラットパネルディスプレイ)の製造装置に使用される真空部品等を製造・販売しています。主な顧客は半導体製造装置メーカーやFPD製造装置メーカーです。その他、スマートフォン筐体の表面処理装置や太陽電池製造装置、医療装置などの産業用装置部品も手掛けています。

製品の販売代金を顧客から受け取るビジネスモデルです。特に半導体製造装置向けでは、真空中で使用されるため高い対電圧性能や精密度が求められ、一度採用されると継続的な受注が見込めます。また、消耗品の交換需要による安定的な収益も特徴です。運営は主にマルマエが行っています。

(2) 機能材料事業


半導体スパッタリング工程用ターゲット材料(高純度アルミ)や、半導体製造装置用の真空チャンバー(鋳物)、電解コンデンサ用材料などを製造・販売しています。2025年4月に子会社化したKMアルミニウムが中核となり、素材から加工、表面処理までの一貫生産体制を構築しています。

製品販売による収益が主たる収入源です。99.999%以上の超高純度アルミ製造能力や、大型の真空チャンバーを製造できる低圧鋳造設備を活用し、半導体・電子部品メーカー等のニーズに応えています。運営は主にKMアルミニウムが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2025年8月期より連結決算へ移行しました(それ以前は単体決算)。当期の売上高は114億円、経常利益は19.4億円、当期利益は13.5億円となり、売上高経常利益率は17.0%と高い収益性を確保しています。子会社化による事業規模の拡大と、半導体関連需要の取り込みが業績に寄与しています。

項目 2025年8月期
売上高 114億円
経常利益 19.4億円
利益率(%) 17.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 13.5億円

(2) 損益計算書


当期(2025年8月期)は連結初年度のため単年の数値となります。売上高114億円に対し、売上総利益は35億円(利益率31.1%)、営業利益は21億円(利益率18.4%)となりました。製造業として高い利益率を実現しており、高付加価値製品の販売が奏功していることが読み取れます。

項目 2025年8月期
売上高 114億円
売上総利益 35億円
売上総利益率(%) 31.1%
営業利益 21億円
営業利益率(%) 18.4%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が4億円(構成比26%)、手数料が2億円(同12%)、役員報酬が2億円(同11%)を占めています。また、のれん償却額が1億円(同9%)計上されています。

(3) セグメント収益

同社グループは精密部品事業の単体セグメントであり、セグメント利益は開示していません。

売上高は、精密部品事業が売上の約68%を占める主力事業であり、機能材料事業が約32%で続いています。精密部品事業は半導体市場の回復を受け、消耗品需要などが堅調でした。機能材料事業は連結化に伴い当期より収益に寄与しています。

区分 売上(2025年8月期)
精密部品事業 77億円
機能材料事業 37億円
連結(合計) 114億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動で得た資金に加え、財務活動(長期借入)で調達した資金も合わせて、将来の成長に向けた投資(子会社の取得)に積極的に充当している状態です。

項目 2025年8月期
営業CF 31億円
投資CF -97億円
財務CF 79億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は16.6%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は32.1%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「素材と加工の技術力で社会に貢献する」を経営方針として掲げています。モノづくりの源流である部品加工にこだわり、先端技術と供給力を併せ持つ「部品加工のリーディングカンパニー」として、総合メーカーを支え社会に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


精密部品事業では「技術は究極を目指し」「競争と協調を尊び」技術注力企業として社会貢献することを理念としています。解決困難な技術課題に対し、社内で時には競い合い、時には協力しながら対峙し、最適な解決策を見出す文化があります。機能材料事業では、アルミニウムという資源を技術・技能でより役立つ姿に変えることを使命としています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、2026年8月期から2028年8月期を期間とする中期事業計画「Fusion2028」を策定しています。生産手法や管理手法の革新を測る指標として投下資本利益率(ROIC)を重視し、計画期間中に以下の目標達成を目指しています。

* グループ全体でのROIC:15%

(4) 成長戦略と重点施策


中期事業計画「Fusion2028」のもと、マルマエとKMアルミニウムの統合およびシナジー創出に注力します。半導体分野の技術ニーズを捉え、両社の技術協力により市場成長を上回るグループ成長を目指します。具体的には、新素材・新技術の創出や、真空中で使用される高付加価値な消耗品(ESCや電極類)の受注拡大により、設備投資変動の影響を受けにくい安定成長基盤を構築します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を最重要価値と位置づけ、「人材育成方針」と「社内環境整備方針」を掲げています。技術の陳腐化を防ぐための継続的な技術開発、多能工化、専門人材の育成を推進し、上司と部下の対話を通じたスキル伝承を基本としています。また、仕事と育児・介護の両立支援や、多様な勤務形態の導入により、社員満足度の向上と人材の安定化を図り、長期的な育成を実現する方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年8月期 40.0歳 8.3年 5,646,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 13.6%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 61.8%
男女賃金差異(正規雇用) 87.3%
男女賃金差異(非正規雇用) 63.2%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障がい者雇用率(2.62%)、一人当たり福利厚生費(111,023円)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 景気変動に関するリスク


同社グループの製品は、最終的に海外へ輸出される顧客製品にも組み込まれているため、世界的な景気後退の影響を受ける可能性があります。米中貿易摩擦、地政学リスク、環境問題等が国内外の景気を下振れさせた場合、グループの業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) のれんの減損に関するリスク


企業買収に伴い多額の「のれん」を計上しており、当連結会計年度末残高は約47億円です。事業環境の変化等により期待する収益が得られず、減損損失を計上することになった場合、業績および財務状況に影響を与える可能性があります。

(3) 原材料等の調達に関するリスク


円安や地政学リスクにより原材料価格が上昇しています。特に機能材料事業で用いる超高純度アルミ原料等は供給メーカーが限定的で価格変動性が高い状況です。想定以上の価格高騰や長期化により、コスト増を価格転嫁や削減で吸収できない場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。