河西工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

河西工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

河西工業は東京証券取引所スタンダード市場に上場する自動車内装部品メーカーです。ドアトリムやルーフトリムなどの内装部品を主力製品とし、日産自動車や本田技研工業など向けにグローバルで製造販売を行っています。直近の業績は、売上高は増加したものの、営業損失および経常損失を計上し、最終赤字となっています。


※本記事は、河西工業株式会社 の有価証券報告書(第94期、自 2024年4月1日 至 2025年3月1日、2025年10月8日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 河西工業ってどんな会社?


自動車内装部品の企画・開発・製造を一貫して行う独立系サプライヤーとして、世界各地に拠点を展開する企業です。

(1) 会社概要


同社は1912年に織物工場として創業し、1946年に現在の法人へ組織変更されました。1964年に東京証券取引所市場第二部に上場し、自動車部品メーカーとしての地盤を固めました。1986年には米国に現地法人を設立して海外展開を本格化させ、2007年には東京証券取引所市場第一部銘柄に指定されました。

2025年3月末現在、連結従業員数は8,030名、単体では646名の体制です。大株主構成を見ると、筆頭株主は主要顧客である日産自動車、第2位は主要な原材料仕入先である長瀬産業、第3位はメインバンクであるりそな銀行となっており、事業パートナーが上位を占めています。

氏名 持株比率
日産自動車 13.04%
長瀬産業 12.10%
りそな銀行 4.09%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長 社長役員は古川幸二氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
古川幸二 代表取締役社長社長役員全般内部監査部新規事業創造室情報取扱責任者 日産自動車にて購買部門の要職を歴任し、ジヤトコ専務執行役員を経て、2024年より現職。
稲津茂樹 取締役副社長役員開発本部管掌生産技術本部管掌生産本部管掌SCM本部管掌北米地域統括 日産自動車にて生産管理等の要職を務め、ブラジル日産自動車会社への出向などを経て、2024年より現職。
小川耕一 取締役専務役員企画本部本部長兼)経理財務グループ担当兼)内部統制部部長 埼玉銀行(現りそな銀行)入行後、リスク統括部長や常務執行役員などを歴任し、2024年より現職。
松谷英明 取締役(常勤監査等委員) 1978年同社入社。経理部長や海外子会社社長、常務執行役員などを歴任し、2024年より現職。


社外取締役は、野地彦旬(元横浜ゴム代表取締役社長)、松岡大治(長瀬産業執行役員)、城戸和弘(公認会計士)、古川裕二(元りそな銀行代表取締役副社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」「北米」「欧州」「アジア」の4つの報告セグメントで事業を展開しています。

(1) 日本


国内において、自動車内装部品の製造販売を行っています。主な製品はドアトリムやルーフトリムなどで、自動車メーカーの国内工場向けに供給しています。

収益は自動車メーカーへの製品販売から得ています。運営は、主に河西工業および子会社の河西工業ジャパンが行っており、開発機能を持つ河西テクノなども事業に関与しています。

(2) 北米


米国およびメキシコにおいて、自動車内装部品の製造販売を行っています。主要顧客である日産自動車や本田技研工業などの北米生産拠点に対し、現地生産体制で製品を供給しています。

収益は現地自動車メーカー等への製品販売から得ています。運営は、米国のKASAI NORTH AMERICA, INC.やメキシコのKASAI MEXICANA S.A. DE C.V.などが担っています。

(3) 欧州


英国などを拠点に、自動車内装部品の製造販売を行っています。日産自動車やジャガー・ランドローバーなどの欧州拠点向けに製品を供給しています。

収益は現地の自動車メーカー等への製品販売から得ています。運営は、英国のKASAI UK LTDなどが中心となって行っています。

(4) アジア


中国、タイ、インドネシア、インドなどにおいて、自動車内装部品の製造販売を行っています。急成長するアジア市場において、日系自動車メーカーの現地工場等に製品を供給しています。

収益は現地の自動車メーカー等への製品販売から得ています。運営は、中国の広州河西汽車内飾件有限公司やタイのKASAI TECK SEE CO.,LTD.など、各国の現地法人が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は回復傾向にあり、2025年3月期には2,188億円に達しています。一方で利益面では苦戦が続いており、経常損益は赤字と黒字を行き来しています。特に当期は経常損失に加え、最終損益で大幅な赤字を計上しており、収益性の改善が課題となっています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,528億円 1,464億円 1,754億円 2,142億円 2,188億円
経常利益 -116億円 -114億円 -139億円 17億円 -13億円
利益率(%) -7.6% -7.8% -7.9% 0.8% -0.6%
当期利益(親会社所有者帰属) -40億円 -132億円 -72億円 -33億円 -333億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高は増収となったものの、売上原価および販売費及び一般管理費の負担により、営業損益は黒字から赤字へと転落しています。原価率の高止まりが続いており、利益確保に向けたコストコントロールが課題となっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 2,142億円 2,188億円
売上総利益 230億円 208億円
売上総利益率(%) 10.7% 9.5%
営業利益 17億円 -3億円
営業利益率(%) 0.8% -0.1%


販売費及び一般管理費のうち、給料が63億円(構成比30%)、運賃及び発送諸費が30億円(同14%)、支払手数料が27億円(同13%)を占めています。

(3) セグメント収益


セグメント別に見ると、北米と欧州が増収となる一方、日本とアジアは減収となりました。利益面では日本が堅調な利益を確保していますが、北米で大幅な赤字が継続しており、全社の収益を圧迫する要因となっています。アジアも利益率が低下傾向にあります。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
日本 585億円 522億円 40億円 48億円 9.1%
北米 1,059億円 1,169億円 -56億円 -63億円 -5.4%
欧州 227億円 275億円 -10億円 -3億円 -1.1%
アジア 271億円 222億円 38億円 15億円 6.8%
連結(合計) 2,142億円 2,188億円 17億円 -3億円 -0.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFはプラス、投資CFはマイナス、財務CFはプラスで、営業で得た資金と調達した資金を投資に回す「積極型」のキャッシュ・フロー構造です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -5億円 9億円
投資CF 9億円 -52億円
財務CF -107億円 73億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-81.1%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は8.6%で市場平均を大きく下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「誠意と新しい技術の創造によって、価値ある商品、サービスをグローバルに提供し、顧客・株主・従業員をはじめ、全ての関わる人々の幸福を実現します」という経営理念を掲げています。また、「社会の信用を」「企業の繁栄を」「相互の幸福を」という3つの社訓を経営の基本方針としています。

(2) 企業文化


同社は「One Kasai」をスローガンに、多様な人材が最大の力を発揮できる環境づくりを進めています。快適な移動空間を実現し続けるため、グローバルな視点とチームワークを重視する文化を醸成しています。

(3) 経営計画・目標


経営再建に向け、2027年度を最終年度とする中期経営計画「Kasai Turnaround Aspiration ("KTA")」を策定しています。主な数値目標は以下の通りです。

* 2027年度営業利益:4~5%

(4) 成長戦略と重点施策


経営再建と将来の成長に向け、北米事業の構造改革を中心とした収益改善、キャッシュコンバージョンサイクルの改善によるフリーキャッシュフロー創出、およびグローバル組織・プロセスの構築を重点施策としています。また、新規事業創出やイノベーション開発への投資シフト、人的資本経営の推進により、企業価値の向上を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は中期経営計画「KTA」において人的資本経営を柱の一つに掲げ、再建と成長の推進役となる人材の価値最大化を目指しています。具体的には、エンゲージメントレベルの向上をKPIとし、多様な人材が活躍できる「One Kasai」の環境整備を進めています。また、女性管理職比率の向上や、国籍・年齢を問わない採用、教育体系の整備に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.4歳 13.7年 6,474,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 6.1%
男性育児休業取得率 82.4%
男女賃金差異(全労働者) 77.2%
男女賃金差異(正規) 80.5%
男女賃金差異(非正規) 43.2%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済状況および特定地域への依存


同社グループの海外売上比率は76.1%と高く、進出先の経済状況の影響を受けやすくなっています。特に北米地域の売上高比率は53.4%を占めており、同地域の自動車市場の動向が経営成績に大きな影響を与える可能性があります。

(2) 継続企業の前提に関する重要事象


自己資本の低迷や営業損失の計上、借入契約の財務制限条項への抵触などにより、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせる事象が存在しています。これに対し、同社は収益力向上、資本増強、金融機関との協議などの対策を講じていますが、再建計画の進捗によっては財務状況等に重大な影響が及ぶ可能性があります。

(3) 大株主との関係および希薄化


日産自動車に対する優先株式の発行により、同社が支配株主となる可能性や、重要事項に対する拒否権を持つことによる影響が生じる可能性があります。また、優先株式の普通株式への転換による株式価値の希薄化や、上場維持基準への抵触リスクなども存在します。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。