河西工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

河西工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

河西工業は東京証券取引所スタンダード市場に上場し、自動車内装トリムシステム部品の企画から製造販売までをグローバルに展開しています。直近の業績では、主要販売先の生産台数減少により減収となったものの、事業構造改革の進展や北米地域等の収益性改善により、営業利益および経常利益が黒字転換を果たしました。


※本記事は、河西工業株式会社の有価証券報告書(第95期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月30日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. 河西工業ってどんな会社?


自動車内装部品の独立系メーカーとして、グローバルに事業を展開しています。

(1) 会社概要


1912年に織物工場として創業し、1933年に河西合名会社を設立、1946年に現在の河西工業に組織変更しました。1964年に東京証券取引所市場第二部へ上場し、1986年の米国での子会社設立を皮切りに海外展開を本格化させています。その後、中国や欧州、アジアなど全世界に生産・販売ネットワークを拡大し、2007年には東京証券取引所市場第一部への上場を果たしました。

現在の同社グループは、連結従業員数7,358名、単体従業員数648名という体制で事業を運営しています。筆頭株主は同社の主要な取引先でもある日産自動車で、第2位も化学品専門商社の長瀬産業となっており、事業会社を中心とした株主構成となっています。

氏名 持株比率
日産自動車 13.04%
長瀬産業 12.10%
りそな銀行 4.09%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は古川幸二氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
古川幸二 代表取締役社長 社長役員 全般内部監査部新規事業創造室情報取扱責任者 1984年日産自動車入社。同社購買部長等を経て、2015年ジヤトコ入社、専務執行役員等を歴任。2024年より現職。
稲津茂樹 取締役 副社長役員 開発本部管掌生産技術本部管掌生産SCM本部管掌生産工順最適化推進室北米地域統括 1992年日産自動車入社。同社生産企画統括本部副本部長等を経て、2024年同社顧問。2026年より現職。
小川耕一 取締役 専務役員 企画本部本部長兼)経理財務グループ担当 1990年埼玉銀行(現りそな銀行)入行。同社プロセス改革部担当等を経て、2024年同社専務役員。2026年より現職。
武田泰浩 取締役(常勤監査等委員) 1984年日産自動車入社。2012年同社転籍、生産企画部長、内部監査部長等を経て、2026年より現職。


社外取締役は、野地彦旬(元横浜ゴム代表取締役社長)、松岡大治(長瀬産業執行役員モビリティソリューションズ事業部事業部長)、城戸和弘(元有限責任監査法人トーマツ代表社員)、古川裕二(元りそな決済サービス代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」「北米」「欧州」「アジア」の4つの事業を展開しています。

日本


国内の自動車メーカー向けに、ドアトリムやルーフトリムをはじめとする自動車内装トリムシステム部品の設計、開発、製造および販売を行っています。独立系サプライヤーとして幅広いメーカーのニーズに対応しています。
主要な自動車メーカーからの部品販売代金を受け取ります。運営は主に同社および河西工業ジャパンが行い、設計開発を河西テクノが担っています。

北米


米国やメキシコに生産拠点を構え、北米地域に進出している日系および海外の自動車メーカー向けに内装部品の製造および販売を行っています。グループにおいて最大の売上規模を誇る主力市場です。
現地の自動車メーカーへの製品納入による販売代金が主な収益源です。運営は米国のKASAI NORTH AMERICA, INC.やメキシコのKASAI MEXICANA S.A. DE C.V.が行っています。

欧州


英国に拠点を置き、欧州市場で展開する自動車メーカー向けに内装部品の製造および販売を行っています。現地での一貫した生産体制を構築し、高品質な製品を提供しています。
現地の自動車メーカーからの製品販売代金を収益として受け取ります。運営は主に英国のKASAI UK LTDが行っています。

アジア


中国、台湾、タイ、インドネシア、マレーシアに拠点を展開し、アジア市場で成長する自動車需要に対応した内装部品の製造および販売を行っています。
日系を中心とした現地の自動車メーカーからの部品販売代金を収益源としています。運営は広州河西汽車内飾件やKASAI TECK SEE CO.,LTD.などが各地域で行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績をみると、売上高は一時拡大傾向にありましたが、直近では減収となっています。一方で、利益面は長期にわたり厳しい状況が続いていましたが、継続的な構造改革や価格見直しの効果により、直近の経常利益および当期利益は黒字転換を果たしており、収益基盤の回復が進んでいることがうかがえます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1,464億円 1,754億円 2,142億円 2,188億円 1,962億円
経常利益 -114億円 -139億円 17億円 -13億円 57億円
利益率(%) -7.8% -7.9% 0.8% -0.6% 2.9%
当期利益(親会社所有者帰属) -132億円 -72億円 -33億円 -333億円 24億円

(2) 損益計算書


売上高は減少したものの、採算性の改善や構造改革が進展し、売上総利益は大幅に増加しています。これに伴い、売上総利益率および営業利益率も顕著な改善を示しており、営業利益は赤字から大幅な黒字へと転換を果たしています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 2,188億円 1,962億円
売上総利益 208億円 284億円
売上総利益率(%) 9.5% 14.5%
営業利益 -3億円 66億円
営業利益率(%) -0.1% 3.4%


販売費及び一般管理費のうち、給料が61億円(構成比28%)、運賃及び発送諸費が33億円(同15%)、支払手数料が30億円(同14%)を占めています。

(3) セグメント収益


セグメント別の売上高をみると、最大の収益源である北米市場をはじめ、日本、欧州、アジアの全地域で前期を下回る減収となっています。特に欧州では事業撤退の影響により売上高が大きく減少しましたが、各地域で不採算事業の整理やコストコントロールが進められています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
日本 522億円 517億円
北米 1,169億円 1,088億円
欧州 275億円 144億円
アジア 222億円 213億円
連結(合計) 2,188億円 1,962億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業(健全型)の傾向を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 9億円 96億円
投資CF -52億円 -78億円
財務CF 73億円 -49億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は27.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は11.5%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「誠意と新しい技術の創造によって、価値ある商品、サービスをグローバルに提供し、顧客・株主・従業員をはじめ、全ての関わる人々の幸福を実現します」という経営理念を掲げています。また、「社会の信用を」「企業の繁栄を」「相互の幸福を」という3つの社訓を基本方針として企業活動を展開しています。

(2) 企業文化


同社は、社訓および経営理念のもと、多様な人材が「One Kasai」として力を発揮できる環境整備を進めています。エンゲージメント向上や多様性の確保、人材育成の強化を人的資本戦略の中核に据え、全社員が一丸となって変革を推進し、誠意をもって新しい価値の創造に挑戦する企業文化を醸成しています。

(3) 経営計画・目標


過去数年間で毀損した経営基盤を再構築するため、2028年3月期を最終年度とする中期経営計画「Kasai Turnaround Aspiration」を策定しています。北米事業構造改革を中心とした収益改善などを図り、成長軌道へのスタートラインに立つことを目指しています。

* 2027年度営業利益率:4~5%

(4) 成長戦略と重点施策


北米事業の構造改革を中心とした収益改善、キャッシュ・コンバージョン・サイクルの改善によるフリー・キャッシュ・フローの創出、グローバル組織およびプロセスの構築を重点施策として推進しています。持続的な成長に向けて、新規事業創出とイノベーション開発への投資をシフトさせるとともに、人的資本経営を推進して経営基盤の強化を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、人的資本を中長期的な企業価値向上の重要な基盤と位置付けています。多様な人材が「One Kasai」として能力を最大限発揮できる環境整備を進め、エンゲージメントの向上、多様性の確保、人材育成の強化を戦略の中核に据えています。教育面では階層別研修や語学教育などを体系的に実施し、継続的な成長を支援しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 42.8歳 13.6年 6,616,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.8%
男性育児休業取得率 81.3%
男女賃金差異(全労働者) 77.1%
男女賃金差異(正規雇用) 77.2%
男女賃金差異(非正規雇用) 55.4%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、直接雇用の従業員に占める女性比率の目標(15%以上)、2か月以上の育児休業取得者の割合の目標(45%以上)、管理職に占める中途採用者の割合(46%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定の取引先への依存


現在の主要販売先は日産自動車グループと本田技研工業グループであり、連結売上高に占める割合が74.2%と高い水準にあります。両社の自動車販売動向が業績に大きく影響を及ぼす可能性があるため、既存取引の維持発展とともに販売先の多様化を推進しています。

(2) 北米市場等の経済状況への依存


海外売上比率が73.6%と高く、特に北米地域の売上高が連結売上高の55.5%を占めています。同地域の自動車市場の景気動向や需要変動、米国の関税政策を含む通商環境の変化が業績に大きく影響するリスクがあり、各地域でバランスの取れた経営体制を目指しています。

(3) 希薄化および大株主との関係


2024年に日産自動車に対してA種優先株式を発行しており、将来的に普通株式への転換が行われた場合、株式価値の大幅な希薄化や日産自動車が支配株主となる可能性があります。また、投資契約により重要事項に事前の承諾を要するなど、経営の意思決定に影響を及ぼすリスクがあります。

(4) 金銭を対価とする取得請求権に関するリスク


発行したA種優先株式には年率7.0%の優先配当条項が定められており、2028年4月以降に行使可能な金銭を対価とする取得請求権が付されています。当該権利が行使された場合、一括して金銭の支払いを行う必要があり、財務状態およびキャッシュ・フローに影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。