エッチ・ケー・エス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

エッチ・ケー・エス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場、自動車のアフターパーツ(マフラー、サスペンション等)の開発・製造・販売を主力とするメーカー。米国市場の需要減退や製造受託事業の受注減等の影響を受け、当連結会計年度の売上高は89億7700万円(前期比0.3%減)、経常利益は4億5800万円(同4.1%減)の減収減益となりました。


※本記事は、株式会社エッチ・ケー・エスの有価証券報告書(第52期、自 2024年9月1日 至 2025年8月31日、2025年11月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. エッチ・ケー・エスってどんな会社?


自動車用アフターパーツの総合メーカーとして、マフラーやサスペンション、ターボチャージャー等の開発・製造・販売を展開しています。

(1) 会社概要


1973年、レース用エンジンの開発・製造等を目的として設立され、翌年にはターボチャージャーを発売しました。その後、電子制御製品やマフラー、サスペンション等の製造を開始し、事業を拡大しました。2004年にジャスダック証券取引所へ上場し、2022年の市場区分見直しに伴い東京証券取引所スタンダード市場へ移行しました。近年では、天然ガス自動車用システムや電気自動車関連技術の開発など、環境対応技術にも注力しています。

同社の連結従業員数は383名、単体では263名です。筆頭株主は株式会社アポロで発行済株式の44.89%を保有しています。第2位は株式会社静岡銀行(常任代理人 日本マスタートラスト信託銀行株式会社)、第3位は個人株主の服部勝也氏となっています。

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は水口大輔氏が務めています。

氏名 役職 主な経歴
水口 大輔 代表取締役社長 1993年同社入社。CNG開発部長、取締役を経て、2016年11月より現職。
坂詰 達也 取締役営業部長 1987年同社入社。電子制御開発部長、自動車開発部長、商品戦略室長等を経て、2019年9月より現職。
天野 健太郎 取締役製造部長兼資材管理部長 1997年同社入社。製造部長を経て、2023年11月より現職。HKS(THAILAND)CO.,LTD.取締役社長を兼任。
長谷川 和代 取締役社長室長 2016年同社入社。社長室長を経て、2023年11月より現職。
木本 慎也 取締役管理部長兼財務部長 1994年同社入社。管理部長、財務部長を経て、2023年11月より現職。


社外取締役は、車田聡(元日産車体株式会社執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「自動車等の関連部品事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 自動車等の関連部品事業


自動車用アフターパーツとして、マフラー、電子制御機器、ターボチャージャー、サスペンション、エンジン部品等の開発・製造・販売を行っています。また、自動車メーカー等からの依頼に基づき、エンジンの試験・開発受託や、部品の製造受託も行っています。

収益は、国内外の販売代理店や自動車用品店等への製品販売による対価や、受託業務における委託元からの対価から構成されています。製造は主に同社およびタイの子会社HKS(THAILAND)CO.,LTD.が行い、販売は同社やHKS EUROPE LIMITED、HKS USA, INC.等の海外子会社が各地域で担っています。

(2) その他の事業


主な製品として、軽量小型飛行機用のエンジン部品を取り扱っています。ニッチな分野における独自技術の活用の一環として展開されています。

収益は、当該エンジン部品の販売による対価が主な源泉です。この事業の運営および販売は、同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

項目 2021年8月期 2022年8月期 2023年8月期 2024年8月期 2025年8月期
売上高 80億円 86億円 92億円 90億円 90億円
経常利益 4.6億円 7.2億円 7.3億円 4.8億円 4.6億円
利益率(%) 5.7% 8.4% 7.9% 5.3% 5.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 3.5億円 5.0億円 4.5億円 3.5億円 3.6億円


売上高は2023年8月期まで増加傾向にありましたが、直近2期は横ばいから微減で推移しています。利益面では、2022年8月期および2023年8月期に高い水準を記録しましたが、直近2期は原材料価格の高騰やコスト増等の影響により、利益率が5%台へと低下しています。

(2) 損益計算書

項目 2024年8月期 2025年8月期
売上高 90億円 90億円
売上総利益 37億円 36億円
売上総利益率(%) 40.6% 40.3%
営業利益 4.2億円 3.9億円
営業利益率(%) 4.6% 4.4%


売上高は微減となり、売上原価率の上昇に伴い売上総利益率もわずかに低下しました。営業利益は販売費及び一般管理費の減少等で一定の抑制が図られたものの、減益となりました。

販売費及び一般管理費のうち、その他経費が16億円(構成比50.4%)、給料及び手当が11億円(同32.9%)を占めています。売上原価に関しては、当期の商品及び製品売上原価の内訳等は詳細に記載されていませんが、物価高による原材料費等の増加が利益率圧迫の要因となっています。

(3) セグメント収益


自動車等の関連部品事業は国内需要が堅調でしたが、米国市場の落ち込みや製造受託の減少により全体では微減収となりました。その他の事業は規模が小さく、大幅な減収となっています。

区分 売上(2024年8月期) 売上(2025年8月期)
自動車等の関連部品事業 90億円 90億円
その他の事業 0億円 0億円
連結(合計) 90億円 90億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


**健全型**:本業である営業活動から得た資金で、設備投資等の投資活動を行い、同時に借入金の返済や配当支払い等の財務活動を行っている、財務的に安定した状態です。

項目 2024年8月期 2025年8月期
営業CF 3.8億円 9.9億円
投資CF -0.1億円 -6.1億円
財務CF -2.4億円 -3.2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.4%で市場平均(スタンダード7.2%)を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は80.5%で市場平均(スタンダード製造業57.5%)を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「感性に訴える こだわりのもの造りを通じて お客様のライフスタイルを より個性豊かなものに演出する事に 挑戦し続ける」という経営理念を掲げています。独自の技術と創造性を活かし、顧客に新たな価値と喜びを提供し続ける企業を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、経営理念に基づき、「お客様の立場で行動する」「全ての品質を向上する」「世界的視野で行動する」「市場は自ら創造する」「環境との調和を図る」の5項目を経営方針として定めています。顧客視点と品質重視の姿勢に加え、グローバルな展開と環境への配慮を重視する企業風土を持っています。

(3) 経営計画・目標


同社は収益重視の経営体質を目指しており、重要な経営指標として「売上高」と「経常利益」を位置づけています。具体的な数値目標は、各事業年度の計画において設定され、達成に向けた施策が推進されています。

(4) 成長戦略と重点施策


今後の自動車業界における電動化や環境規制強化に対応するため、同社はカーボンニュートラルを見据えた研究開発や新製品の展開に注力します。具体的には、既存のスポーツカー向け製品の開発スピード向上に加え、内製部品のコスト競争力強化、グローバル市場での新規販路開拓を推進します。また、従業員の成長を促す新たな評価制度の導入や、ブランド戦略として工場見学を通じたファン作りなど、「ものづくり」と「ことづくり」の両面から企業価値向上を図る方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、事業の持続的成長には従業員の教育と満足度向上が不可欠であると認識し、人的資本経営を推進しています。技術セミナーや動画マニュアルによる技能伝承、eラーニングを通じた自己研鑽の支援などを行い、従業員の専門性とモチベーションを高める環境を整備しています。また、企業理念やビジョンの共有を通じて、全従業員が一体となって成長できる組織づくりを目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年8月期 42.6歳 18.2年 5,816,000円


※平均年間給与は、賞与および基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 0.0%
男性育児休業取得率 33.3%
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用) -
男女賃金差異(パート・有期) -


※男女賃金差異については、公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(77%)、労働者に占める女性労働者の割合(8%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 市場における競争


同社はアフターパーツ市場において高いブランド力を有していますが、競合他社との競争に加え、自動車メーカーによる同市場への参入などにより競争環境が激化する可能性があります。魅力ある製品のタイムリーな提供ができない場合や、価格競争が進んだ場合には、売上高の減少や利益率の低下を招くリスクがあります。

(2) 自動車メーカーの商品戦略


同社の事業は自動車メーカーが販売する車両に依存しているため、メーカーの商品戦略変更が業績に影響を与える可能性があります。特に、同社が得意とするスポーツカーのラインアップが縮小し、エコカーや軽自動車等へシフトした場合には、製品販売の機会が減少し、売上高が減少する可能性があります。

(3) 地震等自然災害による影響


同社の主要な生産拠点は静岡県富士宮市に集中しており、東海地震等の大規模な自然災害が発生した場合、生産設備の損害や操業停止により、事業活動に重大な支障をきたす可能性があります。これにより、製品供給の遅延や復旧費用の発生など、業績および財務状況に悪影響が及ぶリスクがあります。

(4) 新たな感染症の蔓延による影響


世界的な感染症の蔓延が発生した場合、経済活動の停滞やサプライチェーンの混乱により、同社の事業活動も制約を受ける可能性があります。特に、製造受託や開発受託の受注減少などが生じた場合、同社グループの業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。