日創グループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日創グループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダードおよび福岡証券取引所に上場する企業で、金属加工、化成品、建設、タイル事業などを多角的に展開しています。M&Aによる事業領域の拡大を推進し、2025年6月に持株会社体制へ移行しました。直近の業績は、新規連結子会社の寄与や建設事業の伸長により、増収増益となっています。


※本記事は、日創グループ株式会社 の有価証券報告書(第42期、自 2024年9月1日 至 2025年8月31日、2025年11月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日創グループってどんな会社?


金属加工、化成品、建設、タイルなどの事業を展開する持株会社です。M&Aにより事業を拡大しています。

(1) 会社概要


1983年に日創工業有限会社として設立され、2007年に福岡証券取引所Q-Boardへ上場しました。2019年に東京証券取引所市場第二部へ上場し、2022年の市場区分見直しによりスタンダード市場へ移行しました。M&Aを積極的に進め、ゴム加工やタイル事業などへ領域を拡大し、2025年6月に持株会社体制へ移行して現社名となりました。

2025年8月31日時点の従業員数は連結695名、単体13名です。筆頭株主は資産管理会社のNTi companyで、第2位は創業者の親族である石田洋子氏、第3位は代表取締役社長の石田徹氏です。

氏名 持株比率
NTi company 18.55%
石田 洋子 13.44%
石田 徹 7.99%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は石田徹氏です。社外取締役比率は11.1%です。

氏名 役職 主な経歴
石田 徹 代表取締役社長 1992年同社入社。管理部長、品質管理部長などを歴任し、2014年より社長。グループ各社の代表取締役を兼務し、2025年より現職。
大里 和生 専務取締役グループ経営戦略本部長 1987年同社入社。営業部長を経て2014年専務取締役。日創エンジニアリング社長などを兼務し、2025年より現職。
猪ノ立山 住夫 取締役グループ経営戦略本部経営管理担当 ディックスクロキを経て2009年同社入社。管理部長などを務め、ワタナベテクノス社長を兼務。2025年より現職。
諸岡 安名 取締役グループ経営戦略本部IR・SR担当IR・SR部長 佐賀銀行、アイ・ケイ・ケイ(現アイ・ケイ・ケイホールディングス)取締役を経て2014年同社入社。経営企画室長などを務め、2025年より現職。


社外取締役は、髙山大地(明倫国際法律事務所代表パートナー弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「金属加工事業」「化成品事業」「建設事業」「タイル事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 金属加工事業


建設、エネルギー、機械設備分野等における各種金属製品の企画・設計・加工・製造・販売を行っています。主要製品には太陽電池アレイ支持架台、金属サンドイッチパネル、空調関連機器、防音・消音設備、畜産排泄物処理設備などがあります。

収益は、これらの製品の販売により得ています。運営は主に日創プロニティ、綾目精機、ダイリツ、ワタナベテクノス、天神製作所が行っています。

(2) 化成品事業


住宅、機械、インフラ分野、輸送機械等における各種ゴム・ウレタン製品・樹脂成型製品の企画・設計・加工・製造・販売を行っています。主要製品は下水道マンホール耐震性継手、止水テープ、車両向け樹脂製品などです。

収益は、これらの製品の販売により得ています。運営は主に吾嬬ゴム工業、大鳳、フォームテックス、泉製作所が行っています。

(3) 建設事業


内外装パネル工事、太陽光発電設備工事等を中心とした建設工事を行っています。金属加工事業で製造された製品の設置工事なども含みます。

収益は、工事請負契約に基づく工事代金等により得ています。運営は主に日創エンジニアリングが行っています。

(4) タイル事業


住宅・ビル外装タイル、内装タイル等の企画・設計・加工・製造・販売を行っています。主要製品には、焼き物特有の風合いを持つ湿式タイルや、高圧プレス成形の乾式タイルがあります。

収益は、これらのタイル製品の販売により得ています。運営は主にニッタイ工業が行っています。

(5) その他


木材加工・販売、住宅設備機器の企画・EC販売、ものづくりWEBサービス、システム受託開発などを行っています。

収益は、製品販売やサービス提供の対価として得ています。運営は主にカナエテ、マルトクが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は直近5期間で継続的に増加しており、特に2024年8月期から2025年8月期にかけて大きく伸長しています。経常利益も売上の拡大に伴い増加傾向にありますが、利益率は変動が見られます。当期純利益は2023年8月期に大きく計上された後、安定した水準で推移しています。

項目 2021年8月期 2022年8月期 2023年8月期 2024年8月期 2025年8月期
売上高 75億円 74億円 125億円 177億円 230億円
経常利益 5億円 4億円 4億円 14億円 14億円
利益率(%) 7.0% 5.4% 3.3% 7.7% 6.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 5億円 2億円 15億円 11億円 9億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で大幅に増加しましたが、売上総利益率は若干低下しました。営業利益は増加したものの、営業利益率は低下しています。これは事業規模の拡大に伴い売上原価や販管費が増加したことによるものと考えられます。

項目 2024年8月期 2025年8月期
売上高 177億円 230億円
売上総利益 48億円 56億円
売上総利益率(%) 27.2% 24.4%
営業利益 13億円 14億円
営業利益率(%) 7.2% 6.0%


販売費及び一般管理費のうち、その他が18億円(構成比43%)、給料及び手当が9億円(同22%)を占めています。

(3) セグメント収益


金属加工事業は横ばいですが、化成品事業はM&A効果により売上・利益ともに倍増以上となりました。建設事業も大幅な増収増益を達成しています。一方、タイル事業は住宅需要の減少等の影響を受け減益となりました。

区分 売上(2024年8月期) 売上(2025年8月期) 利益(2024年8月期) 利益(2025年8月期) 利益率
金属加工事業 80億円 80億円 13億円 11億円 13.7%
化成品事業 10億円 27億円 1億円 2億円 8.6%
建設事業 33億円 68億円 3億円 8億円 11.1%
タイル事業 52億円 48億円 1億円 0.1億円 0.2%
その他 2億円 7億円 -1億円 -2億円 -22.7%
連結(合計) 177億円 230億円 13億円 14億円 6.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業活動で得た資金と財務活動による調達資金を合わせて、投資活動に積極的に振り向けている「積極型」のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2024年8月期 2025年8月期
営業CF -2億円 29億円
投資CF -5億円 -39億円
財務CF -2億円 25億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.4%でスタンダード市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は46.9%でスタンダード市場平均(製造業)を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「日々創造」をグループ経営理念として掲げています。また、「「創る」力で未来に挑む企業グループ」をグループビジョンとし、付加価値を創造する力である「創る」力を事業の源泉と捉え、ステークホルダーからの信頼に応えつつ、持続的な成長と企業価値の向上を目指しています。

(2) 企業文化


同社グループは、独自の価値創造ストーリーおよび価値創造プロセス「日創BOOOOST!」を策定しています。これは、「創る」力で未来に挑み、日本のものづくり企業が輝く未来を目指してビジネスサイクルを回していくという考え方に基づいています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、第4次中期経営計画において、最終年度である2027年8月期の定量目標を掲げています。

* 売上高:300億円
* EBITDA:27億円
* ROE:8%

(4) 成長戦略と重点施策


同社グループは、「創る」力で未来に挑む企業グループの形成を目指し、M&Aを成長ドライバーと位置づけています。また、持株会社化によるグループ支援体制の拡充や、資本コストを意識した経営を推進しています。

* M&A投資の推進(投資枠50億円)
* 先行投資の推進(投資枠10億円):人財、新規事業、新製品開発、海外拠点化プロジェクト
* 持株会社化によるグループ支援体制の拡充:プロフェッショナル人財の採用・育成、グループシナジーの発揮
* 資本コストや株価を意識した経営の推進

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループは、人が企業価値を生む源泉であると考え、多様な人財の確保・育成に注力しています。プロフェッショナル人財の採用や次世代経営人財の育成を進めており、特にM&Aに関しては、原則として子会社のプロパー人財を社長・役員に登用するほか、グループ従業員を派遣して経営経験を積ませる方針をとっています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年8月期 41.7歳 4.2年 6,909,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではない、または公表していないため、有報には本稿の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、採用者に占める女性の割合(35.7%)、年次有給休暇の取得日数(11.3日)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) M&A(投資判断に関するリスク)


同社グループはM&Aによる事業拡大を進めていますが、条件交渉の不調等により実行が困難になる可能性があります。また、投資後に計画通りの事業運営が進まない場合、のれんや固定資産の減損損失が発生し、財政状態や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) ファイナンス(資金調達に関するリスク)


設備投資やM&Aの資金を自己資金や借入で調達していますが、市況や事業見通しの悪化により、希望する条件での資金調達が困難になる可能性があります。これにより、グループの財政状態や業績に影響が出るおそれがあります。

(3) 人財の確保、育成


事業拡大には多様な人財の確保と育成が不可欠ですが、これらが十分にできない場合、成長が制限され、業績に影響を及ぼす可能性があります。同社はプロフェッショナル人財の採用や次世代経営人財の育成に注力しています。

(4) 建築関連の投資動向


同社グループの製品・サービスは建築業界向けが多く、国内の建築関連投資の影響を受けます。住宅・非住宅分野の市場が急激に冷え込んだ場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。