さいか屋 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

さいか屋 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

さいか屋はスタンダード市場に上場する神奈川県地盤の老舗百貨店です。主要事業として横須賀、藤沢、川崎で百貨店等を運営しています。第94期は売場面積縮小等により減収となりましたが、テナント誘致やコスト削減が奏功し、営業利益・経常利益・当期純利益はいずれも増益となり、3期連続の黒字を達成しました。


※本記事は、株式会社さいか屋 の有価証券報告書(第94期、自 2024年9月1日 至 2025年8月31日、2025年11月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. さいか屋ってどんな会社?


神奈川県の横須賀・藤沢・川崎を拠点に、地域密着型の百貨店を展開する老舗企業です。

(1) 会社概要


1872年に雑賀屋呉服店として創業し、1950年に設立、1956年より川崎で百貨店業を開始しました。1990年には横須賀店を三館体制へ拡張しましたが、事業環境の変化に伴い店舗再編を進め、2021年にAFC-HDアムスライフサイエンスの連結子会社となりました。2022年の市場区分見直しによりスタンダード市場へ移行しています。

連結従業員数は137名、単体従業員数は137名です。筆頭株主は健康食品等の製造販売を行う親会社のAFC-HDアムスライフサイエンスで、第2位は同社代表取締役会長の淺山忠彦氏、第3位は神奈川県を基盤とする鉄道事業者の京浜急行電鉄です。

氏名 持株比率
AFC-HDアムスライフサイエンス 37.08%
淺山忠彦 13.09%
京浜急行電鉄 9.35%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長営業本部長は山野井輝夫氏です。社外取締役比率は22.2%です。

氏名 役職 主な経歴
浅山忠彦 代表取締役会長 1969年あさやま商事創業。2002年エーエフシー代表取締役会長。2003年AFC-HDアムスライフサイエンス代表取締役会長を経て、2022年より現職。
山野井輝夫 代表取締役社長営業本部長 1979年森谷健康食品入社。エーエフシー専務取締役、さいか屋関連事業部長、同社取締役常務執行役員企画開発本部長等を経て、2024年12月より現職。
脇田篤朗 専務取締役執行役員百貨店事業本部長 1983年入社。川崎店長、藤沢店長、横須賀店長、取締役執行役員営業本部長等を経て、2024年12月より現職。
中野宏治 常務取締役執行役員管理本部長 1991年入社。経営企画部部長代理、営業計画部長、取締役執行役員営業本部副本部長兼営業企画部長等を経て、2023年11月より現職。
田中雄大 取締役執行役員営業副本部長兼藤沢店長 1989年入社。町田ジョルナ店長、藤沢店長、川崎店長、取締役執行役員営業本部藤沢店長等を経て、2022年4月より現職。
淺山雄彦 取締役 2001年AFC-HDアムスライフサイエンス入社。エーエフシー代表取締役社長等を経て、2021年同社取締役就任。AFC-HDアムスライフサイエンス代表取締役会長。
稲毛悟 取締役監査等委員 1974年入社。経理部グループ長、経理部長代理、常勤監査役を経て、2022年5月より現職。


社外取締役は、木村絵美(弁護士法人たちばな法律事務所弁護士)、嶋田麗子(追手町法律事務所弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「百貨店事業」および「不動産事業」を展開しています。

(1) 百貨店事業


神奈川県の横須賀市および藤沢市で百貨店を、川崎市でサテライト型店舗を運営し、衣料品や食料品等を販売しています。また、子会社のアルファトレンドが時計・宝石・貴金属製品の卸売を行い、さいか屋友の会が前払式特定取引業を行っています。地域顧客に対し、商品販売やサービス提供を行っています。

収益は主に顧客への商品販売代金や、出店テナントからの賃貸料収入等から得ています。運営は主に同社が行い、時計・宝石等の卸売はアルファトレンド、友の会運営はさいか屋友の会が担っています。

(2) 不動産事業


同社が保有する不動産資産を活用し、アパート賃貸および不動産関連の仲介業務を行っています。百貨店事業を補完する収益源として、不動産の有効活用を図っています。

収益は、賃貸借契約に基づく賃料収入や仲介手数料等から得ています。運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間では、2022年の会計基準適用や決算期変更を経て、売上規模は縮小傾向にありますが、損益面では改善が見られます。特に直近3期は経常黒字を維持し、当期純利益もプラスで推移しています。抜本的な経営改革により、収益性の向上が図られています。

項目 2022年2月期 2022年8月期 2023年8月期 2024年8月期 2025年8月期
売上高 138億円 24億円 52億円 50億円 46億円
経常利益 -4.6億円 -0.8億円 1.3億円 1.0億円 1.4億円
利益率(%) -3.4% -3.3% 2.5% 2.0% 2.9%
当期利益(親会社所有者帰属) -5.1億円 -0.8億円 0.0億円 0.7億円 1.9億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で減少しましたが、売上原価や販管費の抑制により、営業利益は増加しました。売上総利益率はほぼ横ばいから若干低下しましたが、営業利益率は向上しています。コスト構造の見直しが進み、効率的な運営が定着しつつあることが読み取れます。

項目 2024年8月期 2025年8月期
売上高 50億円 46億円
売上総利益 26億円 23億円
売上総利益率(%) 51.7% 49.5%
営業利益 1.1億円 1.1億円
営業利益率(%) 2.2% 2.5%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が6.2億円(構成比28.5%)、地代家賃が3.5億円(同16.0%)を占めています。

(3) セグメント収益


百貨店事業はテナント誘致による売場面積縮小等で減収となりました。不動産事業は当期より報告セグメントとして追加されました。全体として減収となりましたが、効率化により利益確保を図っています。

区分 売上(2024年8月期) 売上(2025年8月期)
百貨店事業 50億円 46億円
不動産事業 - 0.1億円
連結(合計) 50億円 46億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

さいか屋は、百貨店業及び不動産事業を営んでおり、営業活動によるキャッシュ・フローは前連結会計年度に比べ増加しました。これは主に、減価償却費の収入があったことや、契約負債の減少等によるものです。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出が増加したため、前連結会計年度に比べ支出額が大きくなりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、リース債務の返済による支出がありました。

項目 2024年8月期 2025年8月期
営業CF 2.6億円 4.1億円
投資CF -3.9億円 -6.2億円
財務CF -0.0億円 -0.1億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、百貨店事業を核として、「人々に安心と潤いのある生活の提案を行う生活文化企業」を目指しています。永い間培ってきた信用を命とし、「地域のお客様に最も支持される百貨店」を目指すことを基本方針としています。地域のお客様と共に歩み、社会の持続可能な発展への貢献と企業価値の向上を追求しています。

(2) 企業文化


同社グループは、社員一人ひとりが「笑顔を絶やさず」「積極的に行動し」「あらゆることに興味を持って」「専門知識を深め」「若々しい感性で」「進んでいく」といった「さいか屋スピリッツ」を体現することを重視しています。性別や年齢等に関わらず、従業員が安心して働け、成長できる環境づくりを目指しています。

(3) 経営計画・目標


抜本的な経営スキームの改革により3期連続の黒字を達成しましたが、改革は未だ途上であり、安定した黒字化および利益の増大を目指しています。具体的な数値目標として、2026年8月期の業績予想において、営業利益対前年130%を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


今後は既存店舗の再編やグループシナジーの活用、金・地金買取強化を推進します。特に横須賀店では地権者の区画を取得し全区画を自社保有化することで賃料削減を実現し、さらに「ラウンドワン」の誘致により収益拡大を図ります。外商部門では高収益商材の販売と新規顧客開拓を強化し、費用面ではローコストオペレーションを徹底します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


社員一人ひとりが働きがいを感じ成長することがグループ全体の発展につながると考え、全ての従業員に成長機会を提供することを目指しています。性別や年齢、国籍等で分け隔てることなく、能力・成果に応じた人事評価を行い、中核人材を登用する方針です。特に女性管理職比率については30%以上を維持することを目標としています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年8月期 52.4歳 18.9年 3,819,000円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 24.1%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規) -
男女賃金差異(非正規) -


※男性労働者の育児休業取得率は、取得実績がないため算出しておりません。
※労働者の男女の賃金の差異については、公表義務の対象ではないため、記載を省略しております。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 環境リスク


同社グループは百貨店業を展開していますが、気候、景気動向、消費者の嗜好変化、または同一商圏内での競合状況等の外部環境の変化により、業績や財務状況に大きな影響を受ける可能性があります。

(2) 製品リスク


衣料品、食料品等の販売において、欠陥商品の販売や食中毒等が発生した場合、製造物責任による損害賠償や営業停止処分、社会的信用の失墜を招き、売上高の減少等を通じて業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 株式の希薄化リスク


同社はA種優先株式を発行しており、これには普通株式への転換請求権が付与されています。将来においてこの転換が行われた場合、既存の普通株式の持分が希薄化し、株価形成に悪影響が及ぶ可能性があります。

(4) 公的規制リスク


大規模小売店舗立地法や独占禁止法、労働法等の各種法令を遵守して営業していますが、万が一違反行為が発生した場合、公的な営業規制や関連費用の増加、社会的信用の失墜により、業績に悪影響が及ぶ可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。