大庄 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

大庄 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場する同社は、「庄や」等の飲食事業や卸売・ロジスティクス事業を展開する企業です。直近の業績は、既存店売上の回復や物流サービスの拡大により、売上高は526億円、経常利益は12億円となり、前期比で増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社大庄 の有価証券報告書(第54期、自 2024年9月1日 至 2025年8月31日、2025年11月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 大庄ってどんな会社?


「庄や」「大庄水産」などの飲食店チェーンを全国展開するとともに、食材の卸売や物流事業も行う企業です。

(1) 会社概要


1971年に株式会社朱鷺として設立され、1973年に大衆割烹「庄や」第1号店を開店しました。1989年に現商号である株式会社大庄へ変更し、1999年には東京証券取引所市場第一部へ指定替えしました(現在はスタンダード市場)。近年では物流機能を強化しており、2018年に新物流センター「DS・Lヘッドクォーター羽田」を開設しています。

連結従業員数は1,537名、単体では966名です。筆頭株主は代表取締役社長が代表を務める株式会社宇宙で、第2位は飲料メーカーのアサヒビール、第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。

氏名 持株比率
宇宙 28.42%
アサヒビール 9.51%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 6.02%

(2) 経営陣


同社の役員は男性13名、女性0名の計13名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は平了壽氏です。社外取締役比率は約22.2%(2名/9名)です。

氏名 役職 主な経歴
平 了壽 代表取締役社長 サントリーを経て1994年に入社。営業戦略本部長、商品本部長などを歴任し、2014年より社長を務める。2020年11月より現職。
野間 信護 代表取締役副社長管理本部長リスク統括 三井銀行(現三井住友銀行)出身。2018年に入社し、管理本部長などを経て2023年7月より副社長。2024年12月より現職。
塚田 英紀 常務取締役商品本部長DSL管理部長 ノースウィンド(現ディ・エス物流)設立に関わり、同社社長を経て2020年に取締役就任。2023年7月より現職。
石田 安雄 取締役営業本部長法人営業推進室長パートナー事業サポート部長 1995年入社。営業本部副本部長などを経て2019年に取締役就任。2023年10月より現職。
田邊 隆教 取締役営業戦略本部長MD開発部長 1994年入社。営業戦略本部副本部長などを経て2019年に取締役就任。米川水産社長も兼任。
島倉 俊明 取締役人事・総務本部長 三井銀行(現三井住友銀行)出身。2016年に入社し、内部監査部長、総務部長等を経て2019年に取締役就任。
亀田 昌則 取締役企画本部長企画宣伝部長プロダクツセールス部長広報室長 BRISKを経て2011年に入社。広報室、企画宣伝部を経て2020年11月より現職。


社外取締役は、三浦一朗(元住友商事常務執行役員)、平尾覚(西村あさひ法律事務所・外国法共同事業弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「飲食事業」「卸売・ロジスティクス事業」「不動産事業」「FC・VC事業」および「その他事業」を展開しています。

飲食事業

手づくりの和食料理をメインとした「庄や」「大庄水産」を主力業態とし、関東エリアを中心に全国に向けてチェーン展開による料理飲食業を行っています。一般顧客に対して店舗での飲食サービスを提供しています。

収益は、来店客からの飲食代金として得ています。運営は、主に同社が行っています。

卸売・ロジスティクス事業

直営店舗およびFC店舗・VC(ボランタリーチェーン)店舗、ならびに飲食店等の一般取引先へ、生鮮食材等の卸売や、外販・倉庫・運送を一体化した総合物流サービスを展開しています。

収益は、取引先への食材販売代金や物流サービス料として得ています。運営は、同社および連結子会社の米川水産、ディ・エス物流が行っています。

不動産事業

ビルテナント等の不動産の賃貸・管理および賃借店舗物件の転貸を行っています。また、飲食店等の害虫防除や除菌事業なども手掛けています。

収益は、テナントや転貸先からの賃貸料収入等として得ています。運営は、同社および連結子会社のアサヒビジネスプロデュースが行っています。

FC・VC事業

フランチャイズ(FC)加盟店およびボランタリーチェーン(VC)加盟店への運営支援・指導等を行っています。

収益は、加盟店からのロイヤリティ収入等として得ています。運営は、主に同社が行っています。

その他事業

デニッシュ食パン「MIYABI(ミヤビ)」の製造・販売や、食器および調理備品類の販売を行っています。

収益は、製品や商品の販売代金として得ています。運営は、同社および連結子会社の光寿が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は2021年8月期の288億円から回復傾向にあり、2025年8月期には526億円に達しています。利益面では、2021年8月期から2023年8月期までは経常損失を計上していましたが、2024年8月期以降は黒字化し、利益率は2%台で推移しています。

項目 2021年8月期 2022年8月期 2023年8月期 2024年8月期 2025年8月期
売上高 288億円 358億円 455億円 506億円 526億円
経常利益 -58.2億円 -4.1億円 -4.9億円 11.6億円 12.0億円
利益率(%) -20.2% -1.1% -1.1% 2.3% 2.3%
当期利益(親会社所有者帰属) -48.6億円 -7.7億円 -7.7億円 13.3億円 11.7億円

(2) 損益計算書


直近2期間の売上高は増加傾向にあり、売上総利益率も38%台後半で安定しています。営業利益率は前期の2.0%から当期は2.3%へと改善しており、増収効果により利益額も増加しています。

項目 2024年8月期 2025年8月期
売上高 506億円 526億円
売上総利益 197億円 203億円
売上総利益率(%) 38.8% 38.7%
営業利益 10億円 12億円
営業利益率(%) 2.0% 2.3%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が80億円(構成比42%)、その他費用が36億円(同19%)、地代家賃が29億円(同15%)を占めています。

(3) セグメント収益


飲食事業は既存店売上の回復により増収となりましたが、セグメント利益は減少しました。一方、卸売・ロジスティクス事業は外部売上の増加により増収増益となり、利益貢献度が高まっています。不動産事業は売上高は横ばいながら増益となりました。

区分 売上(2024年8月期) 売上(2025年8月期) 利益(2024年8月期) 利益(2025年8月期) 利益率
飲食事業 235億円 238億円 14億円 13億円 5.5%
卸売・ロジスティクス事業 242億円 259億円 7億円 9億円 3.6%
不動産事業 16億円 16億円 4億円 4億円 27.1%
FC・VC事業 9億円 9億円 3億円 3億円 38.4%
その他 3億円 3億円 0.0億円 -0.0億円 -0.3%
調整額 -80億円 -91億円 -19億円 -18億円 -
連結(合計) 506億円 526億円 10億円 12億円 2.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


改善型:営業活動で得た現金と資産売却等による収入を、借入金の返済に充てており、財務体質の改善を進めている状態です。

項目 2024年8月期 2025年8月期
営業CF 15億円 21億円
投資CF 4億円 3億円
財務CF -10億円 -55億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は38.2%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「食」を人間にとって根源的な欲求に基づく永遠のテーマと捉え、企業理念として「人類の健康と心の豊かさに奉仕する」を掲げています。食育を実行し、家庭料理を作る場であった「日本の台所」の役割を果たすことを目指しています。

(2) 企業文化


店舗に来店する顧客を家族と思い、愛情あふれる接客サービスや手作り料理を提供することで理念の具現化を図っています。また、「利他の心」を持ち、「日本の食文化と居酒屋文化の発展に貢献する」という基本方針に基づき事業運営を行っています。安全・安心、鮮度、旬、健康を重視し、独自の厳しい安全基準「大庄基準」を設けています。

(3) 経営計画・目標


同社は「キャッシュ・フロー経営」を基本方針とし、安定的な収益体制と強固な財務基盤の構築を目指しています。収益性指標として「売上高営業利益率」を重視しており、中長期的には5%の達成を目標としています。

(4) 成長戦略と重点施策


今後は、既存業態のブランディング強化と強化業態の出店推進、メニュー・集客戦略の強化に取り組みます。また、卸売・ロジスティクス事業の強化、不動産事業およびFC・VC事業の拡充、DXによる業務効率化・経費削減、人材確保・育成にも注力し、売上高の確保と営業利益率の向上を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


調理人を含めた従業員の確保・育成を重視し、やりがい・生きがいを高める施策として、各種研修の充実や適正な評価に基づく制度、賃上げ、インセンティブの充実を図っています。また、多面的な人材評価による納得感のある処遇の実現や、ライフイベントに応じた柔軟な働き方の提供を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年8月期 47.6歳 15.3年 4,900,000円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 9.2%
男性労働者の育児休業取得率 87.5%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 73.9%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) 79.8%
労働者の男女の賃金の差異(非正規) 96.9%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 食の安全性について

食中毒や異物混入などの食品事故が発生した場合、社会的信用の失墜、売上高の減少、損害賠償による損失、行政処分などにより、経営成績および財政状態に多大な影響を及ぼす可能性があります。同社は2つの専門機関を設置するなど対策を講じていますが、最大のリスクと認識しています。

(2) 食材仕入について

環境変動、天候不順、自然災害等により、生鮮魚介類や野菜などの主要食材の調達難、品質不安、価格高騰、物流機能の停止等が発生した場合、経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 外食産業市場の動向について

外食市場の縮小や中食市場を含めた競争激化など、想定以上の市場変化が発生した場合、経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。消費者の節約志向や原材料価格の高騰、人手不足によるコスト上昇などが続く厳しい環境にあります。

(4) 出店戦略について

新規出店は立地や賃貸条件を総合的に勘案して決定しているため、条件に合致する物件が確保できない場合、計画通りの出店が進まず、経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。