トーセ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

トーセ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場する独立系の受託開発専門企業です。家庭用ゲームソフトやモバイルコンテンツの企画・開発・運営を主力事業としています。直近の業績は、複数の大型開発プロジェクトが活発化したことなどにより大幅な増収となり、営業利益・経常利益ともに黒字転換を果たしました。


※本記事は、株式会社トーセ の有価証券報告書(第46期、自 2024年9月1日 至 2025年8月31日、2025年11月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. トーセってどんな会社?


特定の資本系列に属さない独立系のデジタルコンテンツ開発会社として、企画提案から開発、運営まで一貫したサービスを提供しています。

(1) 会社概要


1979年に京都市で設立され、業務用ゲーム機の開発販売を開始しました。1983年に家庭用ゲーム分野へ戦略を変更し、パソコン用ソフトの開発に着手しています。1999年に株式を上場し、2001年には東京証券取引所第一部に指定されました。2022年の市場区分見直しに伴い、現在はスタンダード市場へ移行しています。

連結従業員数は613名、単体では561名です。筆頭株主は株式会社S-CAN、第2位は株式会社シン、第3位は株式会社京都銀行となっており、上位株主には法人や金融機関が名を連ねています。

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長には渡辺康人氏が就任しています。取締役8名のうち4名が社外取締役であり、社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
齋藤 茂 取締役会長代表取締役CEO 1979年同社入社、開発本部長を経て1987年社長就任。2004年よりCEOを兼務し、2015年より現職。
渡辺 康人 取締役社長代表取締役COO 1996年同社入社。経営管理本部長、経営企画部長等を歴任し、2015年より現職。
齋藤 真也 取締役執行役員知的財産管理統括 1992年同社入社。開発部門担当、知的財産管理室長等を経て2023年より現職。
馬場 均 取締役(監査等委員) 1980年同社入社。海外事業室長、内部監査室長、常勤監査役等を経て2020年より現職。


社外取締役は、山田啓二(元全国知事会会長)、堀木エリ子(株式会社堀木エリ子アンドアソシエイツ代表取締役)、藤岡博史(元大和プロパティ代表取締役社長)、山田善紀(税理士法人川嶋総合会計代表社員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ゲーム事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) ゲーム事業


家庭用ゲーム機、スマートフォン、アーケード向けのゲームソフト等に関する企画・開発・運営等の受託を行っています。国内最大級の開発体制を活かし、幅広い業種の顧客に対してワンストップでサービスを提供しています。

収益は、顧客からの受託開発費や運営費、および開発したタイトルの販売実績に応じたレベニューシェア(成功報酬)等から構成されています。運営は主にトーセが行っており、海外では中国の東星軟件(杭州)有限公司が開発拠点を担っています。フィリピンの子会社は清算手続き中です。

(2) その他事業


非ゲーム領域におけるデジタルコンテンツの企画・開発や、ソリューションサービスの提供を中心とした新しいビジネスの創出を行っています。具体的には、教育関連分野やメタバース、SI(システムインテグレーション)事業、家庭用カラオケ楽曲配信事業などが含まれます。

収益は、コンテンツの開発・制作費やサービスの利用料等が主な源泉です。運営はトーセのほか、子会社のフォネックス・コミュニケーションズがコンテンツ事業や新規事業の創出を担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は変動がありますが、最新期では大幅な増収を記録しています。利益面では、前期に損失を計上しましたが、当期はV字回復を果たし、営業利益、経常利益、当期利益のいずれも黒字転換しました。

項目 2021年8月期 2022年8月期 2023年8月期 2024年8月期 2025年8月期
売上高 60億円 57億円 58億円 46億円 66億円
経常利益 3億円 5億円 5億円 -5億円 7億円
利益率(%) 4.8% 8.9% 9.2% -10.9% 10.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 1億円 2億円 4億円 -3億円 3億円

(2) 損益計算書


売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益が急増しました。これにより、前期はマイナスだった営業利益が当期はプラスに転じ、利益率も大きく改善しています。

項目 2024年8月期 2025年8月期
売上高 46億円 66億円
売上総利益 5億円 18億円
売上総利益率(%) 11.2% 27.0%
営業利益 -5億円 7億円
営業利益率(%) -11.3% 10.4%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が3億円(構成比24%)、役員報酬が1億円(同13%)を占めています。売上原価においては、人件費や外注費などの労務費関連が大きな割合を占める構造となっています。

(3) セグメント収益


ゲーム事業は、複数のプロジェクトで開発活動が活発化したことやレベニューシェアの増加により、大幅な増収増益となりました。その他事業も、教育関連分野での開発などが寄与し、増収増益となっています。

区分 売上(2024年8月期) 売上(2025年8月期) 利益(2024年8月期) 利益(2025年8月期) 利益率
ゲーム事業 42億円 60億円 -6億円 6億円 10.3%
その他事業 4億円 6億円 0.5億円 0.7億円 11.5%
調整額 -0.6億円 -0.5億円 - - -
連結(合計) 46億円 66億円 -5億円 7億円 10.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

トーセのキャッシュ・フローは、営業活動で資金を得て、投資活動で一部を使用し、財務活動では配当金の支払いに充てています。営業活動では、売上債権の減少などが主な要因となり、資金が増加しました。投資活動では、有価証券の償還収入などがあった一方で、取得による支出もあり、使用超過となりました。財務活動では、配当金の支払いが主な支出要因となっています。

項目 2024年8月期 2025年8月期
営業CF -13億円 3億円
投資CF 2億円 -0.5億円
財務CF -2億円 -2億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは「永遠に続く会社づくり」を経営理念として掲げています。従業員や顧客、地域社会などすべてのステークホルダーとともに継続的に成長し、より良い製品とサービスを提供することで、健全で豊かな社会の実現に寄与することを使命としています。

(2) 企業文化


「地球のココロおどらせよう。」をスローガンとし、変化の激しい業界の中で常に技術と知見をアップデートすることを重視しています。行動指針として「成長と挑戦」「人財との共生」などを掲げ、従業員一人ひとりの成長と、個性を尊重し生き生きと働ける職場づくりに取り組む文化があります。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益、およびROE(自己資本利益率)を重要な経営指標と位置づけています。中長期的にはROE 8.0%を目標値として掲げ、収益性と資本効率の向上に取り組んでいます。

(4) 成長戦略と重点施策


ゲーム領域では、高性能プラットフォーム向けやリメイクタイトルの開発を主軸に、優れた企画提案力と開発力で事業成長を図ります。非ゲーム領域では、教育やメンタル・ウェルビーイング分野などで、技術応用力と企画力を活かした新ビジネスの創出に取り組みます。また、AI活用やDX推進による生産性向上、人的資本の拡充、組織の最適化を推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人的資本の拡充を最重要課題とし、採用活動の強化による人員の安定的確保と多様性の拡大を進めています。また、従業員の自律的な成長と挑戦を支援する育成方針のもと、研修機会の充実やキャリア形成支援を実施しています。さらに、報酬制度のアップデートや新オフィスビルの活用などを通じて、エンゲージメントを高め、安心して力を発揮できる職場環境の整備に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年8月期 34.8歳 10.1年 4,463,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.4%
男性育児休業取得率 50.0%
男女賃金差異(全労働者) 82.1%
男女賃金差異(正規雇用) 83.2%
男女賃金差異(非正規雇用) 137.8%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、離職率(7.4%)、係長級の女性比率(19.3%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 事業環境の変化と競争激化


デジタルコンテンツ市場では、技術進化やユーザー嗜好の変化が加速しており、予期せぬ要因で市場発展が阻害された場合、業績に影響を与える可能性があります。また、プラットフォームの多様化やAI等の新技術への対応遅れ、競合他社との競争において優位性を維持できない場合も、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 受託開発ビジネス特有のリスク


主に受託契約において進捗度に基づき収益を認識していますが、仕様変更等による工数増加で原価が増加した場合、業績に影響を与える可能性があります。また、開発期間の長期化に伴う予測との差異や、納入コンテンツの瑕疵による損害賠償請求等のリスクも存在します。

(3) 人的資本の確保と流出


高度な技術力や企画力を持つ人財の確保・育成が事業の要ですが、獲得競争の激化により優秀な人財が確保できない場合や、既存の人財が流出した場合、事業運営や業績に影響を与える可能性があります。特に、事業拡大に伴う人財需要への対応が課題となる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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