※本記事は、株式会社鉄人化ホールディングスの有価証券報告書(第27期、自 2024年9月1日 至 2025年8月31日、2025年11月28日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 鉄人化ホールディングスってどんな会社?
首都圏での「カラオケの鉄人」運営を主力とし、飲食、美容、コンテンツ企画など多角的に事業を展開する企業グループです。
■(1) 会社概要
1999年に設立され、2000年に「カラオケの鉄人」1号店を開業しました。2004年に東証マザーズへ上場し、2015年に東証二部、2022年に東証スタンダード市場へ移行しました。2023年には持株会社体制へ移行し、2024年に現社名へ変更しました。近年は美容事業や飲食事業のM&Aを積極的に進めています。
連結従業員数は446名、単体では83名です。筆頭株主は資産管理会社のファースト・パシフィック・キャピタル有限会社で、第2位には通信カラオケ機器メーカーであるエクシングと第一興商が同率で並んでおり、事業上の取引関係を有する企業が大株主となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ファースト・パシフィック・キャピタル有限会社 | 62.33% |
| エクシング | 3.77% |
| 第一興商 | 3.77% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性0名の計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は根来拓也氏です。社外取締役比率は66.7%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 根来 拓也 | 代表取締役社長 | シティグループ証券、バークレイズ証券を経て、ゴールドマン・サックス証券マネージング・ディレクター等を歴任。2020年10月同社入社、同年11月より現職。 |
| 浦野 敏男 | 常務取締役管理本部長 | アマダ、アークワールドを経て2002年同社入社。常務取締役管理本部長を務めた後、M.I.Tホールディングス専務取締役CFO等を経て2020年同社再入社。同年11月より現職。 |
社外取締役は、長洲謙一(元ゴールドマン・サックス証券パートナー)、野老覚(キャサンズ代表取締役)、山崎良太(弁護士)、渡邊劍三郎(元警視庁警視監)です。
2. 事業内容
同社グループは、「カラオケルーム運営事業」「飲食事業」「美容事業」「メディア・コンテンツ企画事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) カラオケルーム運営事業
首都圏において「カラオケの鉄人」ブランドで店舗を展開しています。また、アニメ・ゲーム等のコンテンツとのコラボレーション企画に特化した「カラオケの鉄人コラボミックス」を全国の主要都市で展開するなど、独自性を打ち出しています。
収益は、主に店舗利用者からのルーム利用料や飲食代金です。運営は、連結子会社である株式会社鉄人エンタープライズが行っています。
■(2) 飲食事業
「直久」ブランドでのラーメン事業を中心に、直営店やフランチャイズ展開を行っています。その他、「京都勝牛」「赤から」「福包酒場」「鳥竹」「かにざんまい」などのブランド店舗や、カラオケ・飲食複合業態店舗を運営しています。
収益は、店舗での飲食提供による代金や、フランチャイジー店舗等への販売収入です。運営は、株式会社直久、株式会社鉄人エンタープライズ、株式会社鳥竹などの連結子会社が行っています。
■(3) 美容事業
首都圏において「Bianca」ブランド、中京地区において「Rich to」ブランドで、まつ毛エクステ・ネイルサロンを展開しています。積極的な新規出店やスタイリストの育成を進めています。
収益は、来店客への施術サービス提供による対価です。運営は、株式会社Rich to、株式会社UIM、株式会社NIM、株式会社JEWEL、ビアンカグループ各社などの連結子会社が行っています。
■(4) メディア・コンテンツ企画事業
携帯電話用モバイルコンテンツ(着信メロディ、着うた等)の制作・販売・配信を行っています。「カラオケの鉄人モバイル」サイトを中心に運営しています。
収益は、モバイルコンテンツ利用者からの月額課金等による利用料収入です。運営は、株式会社鉄人エンタープライズが行っています。
■(5) その他
カラオケルーム運営事業を補完する事業として、アニメ・ゲームのコンテンツホルダーのライセンスを使用したコラボレーション事業や、ダンス・ヨガ・トレーニング等での利用を目的としたレンタルスペース事業を行っています。
収益は、コラボレーション事業におけるライセンス活用による売上や、スペース利用者からのレンタル料です。運営は、株式会社鉄人エンタープライズやミライアミューズ株式会社などが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は回復・拡大傾向にあり、第23期の52億円から第27期には80億円まで増加しました。利益面では、第23期、第24期は経常損失を計上していましたが、第25期以降は黒字化し、第27期には経常利益2.6億円と利益幅を拡大させています。
| 項目 | 2021年8月期 | 2022年8月期 | 2023年8月期 | 2024年8月期 | 2025年8月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 52億円 | 59億円 | 66億円 | 71億円 | 80億円 |
| 経常利益 | -1.9億円 | -2.2億円 | 0.0億円 | 0.4億円 | 2.6億円 |
| 利益率(%) | -3.6% | -3.7% | 0.1% | 0.5% | 3.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -2.8億円 | 0.3億円 | 0.1億円 | 0.0億円 | 3.4億円 |
■(2) 損益計算書
前期と比較して売上高が増加し、各利益段階でも増益となりました。売上総利益率および営業利益率ともに改善が見られます。特に営業利益は前期の約3倍の規模となり、収益性が向上しています。
| 項目 | 2024年8月期 | 2025年8月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 71億円 | 80億円 |
| 売上総利益 | 10億円 | 12億円 |
| 売上総利益率(%) | 14.0% | 14.4% |
| 営業利益 | 0.7億円 | 2.1億円 |
| 営業利益率(%) | 1.0% | 2.6% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が3.6億円(構成比38.2%)、業務委託料が1.3億円(同13.4%)を占めています。
■(3) セグメント収益
飲食事業は新規子会社の連結やインバウンド需要により大幅な増収増益となりました。カラオケルーム運営事業は運営効率化により増益、美容事業は先行投資により減益となりました。メディア事業は縮小傾向です。
| 区分 | 売上(2024年8月期) | 売上(2025年8月期) | 利益(2024年8月期) | 利益(2025年8月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| カラオケルーム運営事業 | 38億円 | 39億円 | 4.6億円 | 6.4億円 | 16.5% |
| 飲食事業 | 12億円 | 20億円 | 0.6億円 | 1.4億円 | 7.0% |
| 美容事業 | 18億円 | 19億円 | 1.3億円 | 0.7億円 | 3.5% |
| メディア・コンテンツ企画事業 | 0.7億円 | 0.6億円 | 0.6億円 | 0.5億円 | 83.1% |
| その他 | 1.8億円 | 2.6億円 | -1.4億円 | -1.8億円 | -67.8% |
| 調整額 | - | - | -4.8億円 | -5.0億円 | - |
| 連結(合計) | 71億円 | 80億円 | 0.7億円 | 2.1億円 | 2.6% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は営業活動で得た資金で借入金の返済や投資を行っている「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。
| 項目 | 2024年8月期 | 2025年8月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 4.3億円 | 6.8億円 |
| 投資CF | -2.2億円 | -1.7億円 |
| 財務CF | -3.5億円 | -2.7億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は78.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は14.3%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
専門領域において卓越した能力と品格を備えた存在を「鉄人」と定義し、社員一人ひとりが「鉄人」となることを目指しています。知識・技術に加え、誠実さ・謙虚さ・倫理観を兼ね備えたプロフェッショナルを育成・輩出することで、社会に本質的な価値と感動を提供し、持続的に成長する企業グループの実現を図るとしています。
■(2) 企業文化
「鉄人」としてのあり方を重視し、専門知識や技術だけでなく、誠実さ、謙虚さ、倫理観といった人間性や品格を兼ね備えることを行動の指針としています。真に尊敬されるプロフェッショナルとして、社会に価値と感動を提供することを大切にする文化があります。
■(3) 経営計画・目標
具体的な数値目標は記載されていませんが、スタンダード市場の上場維持基準である「流通株式比率25.0%」への適合を目指し、企業価値向上に取り組むとしています(2025年8月31日時点で24.7%)。
■(4) 成長戦略と重点施策
カラオケ事業への依存度が高い現状からの脱却と、収益構造の偏重解消を課題とし、既存事業の改善と新規事業投資、財務基盤強化を推進します。
* **既存事業の改善**: 店舗運営の効率化、カラオケ店舗の有効活用やリニューアル、「コラボ完全特化型店舗」の全国展開、飲食事業の新規出店、美容事業での新卒採用と教育強化に取り組みます。
* **新規事業投資**: 事業ポートフォリオの見直しとM&Aを積極的に検討し、リスク分散を図ります。
* **財務基盤強化**: 新たな資金調達手段の確立と自己資本の増強を検討します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
持続的な成長のために人材確保と育成、働き方の多様性を尊重した労働環境の改善を重視しています。採用では性別を問わず中途採用者、女性、外国人の採用を推進しています。また、IT環境を整備して積極的なテレワークを推進するほか、メンタルヘルス対策として定期的なストレスチェックを実施し、働きやすい職場環境づくりに努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年8月期 | 39.1歳 | 7.6年 | 4,936,900円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | - |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | 43.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 66.4% |
| 男女賃金差異(非正規) | 68.8% |
※女性管理職比率については、情報公開項目として選択していないため記載を省略しています。
※男性育児休業取得率については、当事業年度中に配偶者が出産した男性労働者が存在しないため記載していません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、美容事業における正規雇用労働者に占める女性の割合(98.6%)、美容事業における管理職(9名)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 基本戦略について
カラオケルーム運営事業に加え、飲食、美容事業などへの多角化を進めていますが、市場環境の悪化や顧客減少などが生じた場合、グループ全体の業績に影響を及ぼす可能性があります。また、主力であったカラオケ事業も市場環境の変化により拡大戦略が厳しくなっています。
■(2) コラボ完全特化型カラオケ店舗について
アニメ・ゲーム等のコンテンツとのコラボレーション企画に特化した店舗展開を進めていますが、提供コンテンツがユーザーに受け入れられなかった場合や、IP(知的財産)の使用許諾が得られず計画通りの提供ができない場合、集客や業績に影響が出る可能性があります。
■(3) 出店施策等について
首都圏・中京圏を中心に収益性の高い地域へ出店する戦略ですが、物件獲得競争の激化により希望条件での確保が困難になる可能性があります。また、既存店舗において周辺環境の変化等により収益が見込めないと判断した場合は退店することもあり、その際の費用負担等が業績に影響する可能性があります。
■(4) 人材の確保及び育成について
カラオケ・飲食事業ではアルバイトからの正社員登用、美容事業では美容師等の専門職の採用・育成が重要ですが、人手不足の深刻化や、優秀な人材の確保・定着が計画通りに進まない場合、将来の事業展開に影響を及ぼす可能性があります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。