地域新聞社 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

地域新聞社 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証グロース上場。千葉県・茨城県を中心にフリーペーパー「ちいき新聞」の発行や折込チラシ配布を行う広告関連事業が主力です。当事業年度は、売上高32億円、経常利益0.5億円と増収増益を達成しました。成長戦略「Strategic Plan」に基づき、アライアンス強化等で黒字定着を図っています。


※本記事は、株式会社地域新聞社 の有価証券報告書(第41期、自 2024年9月1日 至 2025年8月31日、2025年11月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 地域新聞社ってどんな会社?


地域密着型のフリーペーパー「ちいき新聞」の発行を中核とし、折込チラシ配布や販促支援を行う企業です。

(1) 会社概要


1984年に有限会社八千代地域新聞社として設立され、「地域新聞」八千代台版を創刊しました。1988年に株式会社地域新聞社へ商号変更し、発行エリアを拡大。2007年にヘラクレス市場(現・グロース市場)へ上場を果たしました。2014年には株式会社東京新聞ショッパー社を子会社化(後に吸収合併)するなど事業基盤を強化しています。

2025年8月31日時点の従業員数は167名(単体)です。筆頭株主は投資事業等を行うMTMCapital株式会社で、第2位は投資運用業のマイルストーン・キャピタル・マネジメント株式会社です。

氏名 持株比率
MTMCapital株式会社 15.94%
マイルストーン・キャピタル・マネジメント株式会社 7.55%
株式会社ライフイン24group 5.89%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性2名の計8名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長は細谷佳津年氏です。社外取締役比率は20.0%です。

氏名 役職 主な経歴
細谷 佳津年 代表取締役社長 元株式会社ADワークスグループ専務取締役CFO。2023年11月より同社社外取締役を経て、2024年2月より現職。
金箱 義明 取締役印刷・物流・配布等業務全般管掌 1998年同社入社。本社営業部部長、東葛支社支社長等を歴任。一時退社を経て再入社後、CS推進室長等を務め2014年より現職。
松川 真士 取締役人的資本経営管掌 2004年同社入社。成田支社長、営業本部本部長、管理本部本部長等を歴任し、2014年より現職。
齋藤 律子 取締役コーポレートガバナンス・リスクマネジメント管掌 元株式会社リクルートコスモス入社。株式会社ADワークスグループ経営企画室部長等を経て、2024年11月より現職。


社外取締役は、田中康郎(元札幌高等裁判所長官、弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「広告関連事業」「不動産事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 広告関連事業


千葉県・茨城県を中心にフリーペーパー「ちいき新聞」を発行し、地域情報や広告を掲載しています。また、同紙へのチラシ折込や、行政刊行物の制作受託、イベント企画などの販促支援も行っています。地域を細分化したエリアマーケティングが可能で、地元の商店から大手企業まで幅広い顧客を持ちます。

収益は、広告主からの広告掲載料、チラシ配布料、および制作・販促支援サービスの対価から構成されます。また、求人情報紙「Happiness」の発行による求人広告枠の販売収入も得ています。運営は同社が行っています。

(2) 不動産事業


千葉県市川市に所有する賃貸マンションおよび賃貸土地を活用した不動産賃貸事業を行っています。当事業年度より報告セグメントとして区分されました。

収益は、賃貸マンションおよび土地の賃借人から受け取る賃料収入です。運営は同社が行っています。

(3) その他の事業


報告セグメントに含まれない事業として、WEBサイト「チイコミ!」の運営、カルチャースクール運営、外壁塗装等のマッチング事業、通信販売事業などを展開しています。

収益は、WEB広告掲載料、カルチャースクールの入会金・受講料、マッチング成約手数料、商品販売代金などから構成されます。運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は30億円前後で推移してきましたが、直近の2025年8月期は32億円へ伸長しました。損益面では、2021年8月期から赤字と黒字を行き来する状況が続いていましたが、2024年8月期に黒字転換し、2025年8月期はさらに利益幅を拡大させています。

項目 2021年8月期 2022年8月期 2023年8月期 2024年8月期 2025年8月期
売上高 28億円 29億円 29億円 30億円 32億円
経常利益 -0.5億円 0.1億円 -0.5億円 0.2億円 0.5億円
利益率(%) -1.8% 0.3% -1.6% 0.6% 1.7%
当期利益(親会社所有者帰属) -0.9億円 0.1億円 -0.5億円 0.0億円 0.4億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加し、売上総利益率も改善傾向にあります。増収効果により営業利益も増加し、利益率が向上しました。

項目 2024年8月期 2025年8月期
売上高 30億円 32億円
売上総利益 21億円 22億円
売上総利益率(%) 71.5% 71.1%
営業利益 0.3億円 0.5億円
営業利益率(%) 1.2% 1.4%


販売費及び一般管理費のうち、配布業務委託料が8億円(構成比35%)、給与手当が7億円(同31%)を占めています。売上原価においては、経費(外注費含む)が75%を占めています。

(3) セグメント収益


主力の広告関連事業は、既存媒体の深耕や新規提案により売上高約30億円を維持し、全社収益を牽引しています。新規に立ち上げた不動産事業は売上規模は小さいものの、黒字化に寄与しています。その他の事業もWEB領域等で売上を計上していますが、セグメント損益は赤字となっています。

区分 売上(2024年8月期) 売上(2025年8月期) 利益(2024年8月期) 利益(2025年8月期) 利益率
広告関連事業 - 30億円 - 4.8億円 16.2%
不動産事業 - 0.1億円 - 0.1億円 50.2%
その他の事業 - 1.8億円 - -0.3億円 -15.5%
調整額 - - - -4.1億円 -
連結(合計) - 32億円 - 0.5億円 1.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年8月期 2025年8月期
営業CF 1.3億円 0.1億円
投資CF -0.6億円 -8.9億円
財務CF 0.3億円 9.5億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は28.4%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「人の役に立つ」を経営理念として掲げています。これは、働く人々の豊かな生活と生きがいを確保し、地域社会に喜ばれる事業を継続することを意味しています。また、「地域の人と人をつなぎ、あたたかい地域社会を創る」をミッションとし、日々の暮らしに出会いと感動を提供することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、会社とは広義において奉仕活動であり、自分以外の人のために自分を役立たせる最高の手段であると考えています。この理念に基づき、成長と拡大を行い続けることを義務と捉え、全情熱を傾けて事業を行うことを善とする価値観を持っています。

(3) 経営計画・目標


同社は、時価総額の増大に向け、資本生産性と資本コストの関係においてROICがWACCを上回る状態を目指し、EVA(経済的付加価値)を重要な経営指標として採用しています。現在は盤石な経営基盤を構築するフェーズと認識し、以下の指標を重視しています。

* 売上高(額の伸張)
* 売上総利益率
* EBITDA

(4) 成長戦略と重点施策


創業41年で培ったアセット(企業資産)を活用し、他社との提携を通じて新サービスを創出する「アセット活用型シーパワー・ストラテジー」を掲げています。既存の広告関連事業を安定収益源としつつ、生成AI等の新技術を融合させ、非連続な成長を目指しています。

* 全国媒体ネットワーク(VC)加盟によるナショナルクライアント開拓
* 他社とのアライアンスによるヒューマンリソース事業等の強化
* 生成AIを活用した広告効果最大化技術の実用化

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「人を犠牲にしない」経営を掲げ、社員が自らの人生や幸せのために働ける環境づくりを目指しています。フレックスタイム制度やテレワーク推奨など柔軟な働き方を構築し、エンゲージメント向上をイノベーションの原動力としています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年8月期 40.5歳 8.5年 4,339,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 18.5%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用) -
男女賃金差異(非正規雇用) -


※同社は公表義務の対象ではないため、男性育児休業取得率および男女賃金差異については有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員の男女比(男性44.9%、女性55.1%)、管理職の男女比(男性81.5%、女性18.5%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 広告関連市場の動向


同社の売上の大部分は広告関連事業が占めています。景況感の悪化に伴う広告需要の減少や、インターネット広告との競合激化により、同社の事業や業績に悪影響が及ぶ可能性があります。媒体やターゲットの多様化が進む中で、競争優位性の維持が課題となります。

(2) フリーペーパーの発行トラブル


「ちいき新聞」は制作から配布まで約1週間を要します。システム障害、自然災害、事故等により発行や配布の遅延・不能が発生した場合、広告主や読者からの信頼失墜を招き、広告収入の減少につながる可能性があります。印刷や配布は外部委託しており、委託先のトラブルリスクも含みます。

(3) 用紙価格等の変動


「ちいき新聞」の主要原材料である印刷用紙の価格や印刷代が高騰した場合、コスト増となり業績に影響を与える可能性があります。同社は複数の印刷業者と比較検討を行うなどで対策していますが、予想外の変動リスクがあります。

(4) 感染症の流行による影響


新型コロナウイルス感染症のような重大な感染症が流行し、経済活動が停滞した場合、広告出稿や折込チラシの減少、サービス利用者の減少を招き、業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。