トランザクション 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

トランザクション 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場のファブレスメーカーです。エコバッグ等の環境配慮製品や、アニメ・ゲーム等の推し活グッズなどの雑貨を企画・製造・販売しています。2025年8月期はeコマースやエンタメ関連が伸長し、売上高275億円、経常利益60億円といずれも過去最高を更新し、増収増益となりました。


#記事タイトル:トランザクション転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

※本記事は、株式会社トランザクション の有価証券報告書(第39期、自 2024年9月1日 至 2025年8月31日、2025年11月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. トランザクションってどんな会社?


雑貨製品の企画から製造、販売までを一貫して行うファブレスメーカーです。「エコ」「推し活」等のトレンドを捉えた製品を展開しています。

(1) 会社概要


1987年に有限会社トランスとして設立され、雑貨製品の企画・製造を開始しました。2002年に卸売を行うトレードワークスを設立し、2010年にJASDAQへ上場、2015年には東証一部銘柄に指定されました。2022年の市場区分見直しに伴い、プライム市場へ移行しています。近年では2025年に関西国際空港に初の直営店をオープンするなど、事業領域を拡大しています。

2025年8月期末時点の従業員数は連結495名、単体30名です。筆頭株主は創業者で代表取締役会長の石川諭氏、第2位は日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、第3位は石川諭氏の親族である石川葵氏となっており、創業家が主要株主として名を連ねています。

氏名 持株比率
石川 諭 21.57%
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 8.46%
石川 葵 7.75%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性2名の計8名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表者は代表取締役会長の石川諭氏と、代表取締役社長の千葉啓一氏です。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
石川 諭 代表取締役会長 1984年ジュン入社。1987年同社設立し社長就任。グループ各社会長を経て、2022年11月より現職。報酬委員会委員長も務める。
千葉 啓一 代表取締役社長 1989年ナムコ入社。2001年同社入社。トレードワークス社長等を経て、2022年11月より現職。サステナビリティ委員会委員長も務める。
北山 善也 取締役 1988年野村證券入社。2015年同社入社。執行役員社長室長等を経て、経理・経営企画・人事・総務・システム部担当として現職。
猪口 祐紀子 取締役 1988年丸井入社。2008年T3デザイン社長。2018年同社取締役に就任し、現在はT3デザイン社長を兼任して現職。


社外取締役は、大森和幸(元丸井グループCSR担当課長)、佐々木稔郎(元キリンアグリバイオ社長)、櫟本健夫(公認会計士)、松尾祐美子(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「雑貨事業」の単一セグメントですが、製品の特徴により「エコプロダクツ」「ライフスタイルプロダクツ」「ウェルネスプロダクツ」等に分類して事業を展開しています。

(1) エコプロダクツ事業


環境省等のプロジェクトで推奨される製品や、リサイクル素材を使用したエコバッグ、タンブラー、サーモボトルなどを提供しています。企業のSDGs活動や環境意識の高まりを背景に、エンドユーザー企業や卸売事業者へ販売しています。

収益は、製品の販売代金として顧客から受け取ります。独自の環境配慮型素材を使用した製品開発を行い、株式会社トランスや株式会社トレードワークスが中心となって、企業向けのオーダーメイド販売や卸売、ECサイト「MARKLESS STYLE」などを通じた販売を行っています。

(2) ライフスタイルプロダクツ事業


「推し活」需要に対応したアニメ・ゲームキャラクターグッズや、トラベル用品、ペット関連製品などを提供しています。エンタテインメント業界や一般消費者を対象に、トレンドを反映したデザイン性の高い雑貨を展開しています。

収益は、製品の販売代金およびデザイン制作料などです。株式会社トランスによるエンタメ企業へのOEM供給や、株式会社トレードワークスによる自社オリジナル製品の卸売・小売が主軸です。また、株式会社T3デザインがグラフィックやプロダクトのデザイン機能を提供しています。

(3) ウェルネスプロダクツ事業


健康維持や清潔感保持に貢献する製品として、マスク等の衛生用品や加湿器、化粧雑貨などを提供しています。感染症対策や健康意識の高まる法人・個人顧客を対象としています。

収益は、製品の販売代金です。市場ニーズの変化に合わせ、株式会社トランスや株式会社トレードワークスが企画・販売を行っています。ファブレス体制を活かし、需要変動に応じた柔軟な生産・供給体制を構築しています。

(4) その他事業


雑貨製品以外のデザイン受託や印刷加工サービスなどを提供しています。グループ内外の企業に対し、グラフィックデザイン、WEBデザイン、製品への名入れ印刷などを行っています。

収益は、デザイン制作料や印刷加工料です。株式会社T3デザインがデザイン制作を、株式会社クラフトワークが印刷・加工・検品・物流手配を主に担当しており、グループ全体の付加価値向上とワンストップサービスを支えています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は5期連続で増加傾向にあり、直近の2025年8月期には275億円に達しました。利益面でも、経常利益、当期純利益ともに増加基調を維持しており、2025年8月期は経常利益60億円、当期純利益41億円といずれも過去最高を更新しています。利益率も20%を超える高い水準で推移しており、安定した成長を続けています。

項目 2021年8月期 2022年8月期 2023年8月期 2024年8月期 2025年8月期
売上高 171億円 183億円 230億円 250億円 275億円
経常利益 29億円 33億円 48億円 56億円 60億円
利益率(%) 16.8% 18.1% 20.9% 22.5% 21.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 9億円 8億円 10億円 21億円 60億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益も順調に拡大しています。売上総利益率は約39%と高い水準を維持しています。営業利益も増益となりましたが、営業利益率は前期よりわずかに低下しました。これは人件費や将来の成長に向けた投資等の販売費及び一般管理費が増加したことによるものです。

項目 2024年8月期 2025年8月期
売上高 250億円 275億円
売上総利益 98億円 108億円
売上総利益率(%) 39.2% 39.3%
営業利益 52億円 57億円
営業利益率(%) 20.9% 20.8%


販売費及び一般管理費のうち、給与及び手当が15億円(構成比30%)、運賃が7億円(同15%)を占めています。売上原価については、製品原価等が中心となっています。

(3) セグメント収益


同社グループは、「雑貨事業」の単一セグメントなので、セグメント利益は開示していません。

売上高は全製品分類で増加しました。特にeコマースの伸長やエンタメ需要の取り込みにより、ライフスタイルプロダクツが大きく成長しています。エコプロダクツも主力製品が好調で増収となりました。ウェルネスプロダクツも大幅な増収を記録しています。

区分 売上(2024年8月期) 売上(2025年8月期)
エコプロダクツ 105億円 112億円
ライフスタイルプロダクツ 129億円 143億円
ウェルネスプロダクツ 13億円 16億円
デザインその他 3億円 4億円
連結(合計) 250億円 275億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年8月期 2025年8月期
営業CF 30億円 42億円
投資CF -17億円 -5億円
財務CF -15億円 -29億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は21.6%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は82.6%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「モノづくりを通し地球環境に配慮した商品を提供することにより社会貢献を行なう」、「『デザイン』『品質』『価格』に魅力ある商品を提供し豊かな生活文化に貢献する」、「国際感覚を持ち既成概念にとらわれる事無く新たな創造を続ける」という3つの企業理念を掲げています。これらを通じて、持続可能な社会の実現と企業価値の向上を目指しています。

(2) 企業文化


同社は「挑戦するって面白い」をスローガンに掲げ、現状に満足せず新たな挑戦への強い意欲を持つ文化を共有しています。行動指針として「法令遵守はもとより社会から尊敬される会社でありつづける」「自由闊達な社風を維持し、共生と調和のとれた会社でありつづける」「企業活動を通し、お客様、社員、株主、さらに広く社会の幸福を実現する」を定めています。

(3) 経営計画・目標


2026年8月期を初年度とする5カ年の「第5次中期経営計画」を策定しています。持続的な成長を目指し、以下の目標を掲げています。

* eコマース事業の売上高を5年間で2.5倍に成長
* エンタメ(IP)関連の売上高を5年間で2倍に成長
* 気候変動対策・防災製品の売上高を5年間で2.5倍に成長
* 配当性向40%以上、DOE7%を下限とした連続増配

(4) 成長戦略と重点施策


「第5次中期経営計画」において、4つの成長戦略を推進します。「eコマース事業のオープン化」では、他社製品の取り扱いや専門ECサイトの新規開設を進めます。「エンタメ(IP)事業の進化」では、IPを活用した自社製品の開発や海外展開に挑戦します。「製品開発の深化」では、エコ・エンタメ・防災の掛け合わせによる付加価値向上を図ります。さらに、「M&A強化/海外挑戦」として40億円の資金枠を設定し、エコシステムの強化を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「人的資本の強化」をマテリアリティの一つとし、企業理念や行動指針の浸透を図りながら、多様な人材の確保と育成を進めています。新卒・中途を問わず多様な人材を登用し、階層別研修や次世代経営幹部候補の育成プログラムを実施しています。また、評価制度では行動目標と成果目標を設定し、公正な処遇を行うことで、社員のエンゲージメント向上と自律的なキャリア形成を支援しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年8月期 40.4歳 6.4年 5,909,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 31.3%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) 64.9%
男女賃金差異(正規雇用) 67.2%
男女賃金差異(非正規雇用) 25.1%


※男性育児休業取得率の「-」は、対象者がいないためです。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員比率(52.3%)、外国人社員比率(9.3%)、キャリア採用社員比率(53.3%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 市場や景気動向の影響


同社グループはセールスプロモーション用雑貨を販売しており、顧客企業の広告宣伝費削減やキャンペーン延期の影響を受ける可能性があります。また、景気悪化による個人消費の冷え込みが、卸売先や小売業者を通じた一般消費者向け販売の減少につながり、業績に悪影響を及ぼすリスクがあります。

(2) 製品の不具合及び供給停止


提供製品に不良品が発生した場合、値引きや回収、再生産等のコスト負担が生じるほか、製造物責任法(PL法)に基づく損害賠償請求を受ける可能性があります。また、キャラクター等の版権元との契約終了や条件変更が生じた場合、関連製品の販売に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 海外生産・調達に関するリスク


製品の多くを中国などアジア諸国のサプライヤーに委託する「移動型ファブレス」形態をとっています。現地の政治的混乱、災害、感染症、物流寸断、為替変動、原材料価格の高騰などが生じた場合、製品の安定供給や仕入コストに影響を与え、業績が悪化する可能性があります。

(4) 人材確保に関するリスク


持続的な成長には優秀な人材の確保と育成が不可欠です。採用や定着が計画通り進まない場合や、想定外の早期・大量退職が発生した場合には、競争力の低下や事業運営への支障を招き、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。