※本記事は、株式会社MERF の有価証券報告書(第40期、自 2024年9月1日 至 2025年8月31日、2025年11月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. MERFってどんな会社?
同社は、銅などの非鉄金属リサイクル事業と、富山県高岡の伝統産業である美術工芸品の製造販売を二本柱とする企業です。
■(1) 会社概要
1870年に創業者が美術銅器等の販売を開始し、1985年に新日本美術(現同社)として法人化しました。2011年に東証二部に上場し、2012年には米国法人を設立して海外展開を開始しました。2018年の東証一部指定を経て、2025年1月にCMX Metalsが事業譲受により事業を開始し、同時に現社名へ変更しました。
同グループの従業員数は連結154名、単体121名です。筆頭株主は創業家資産管理会社の黒谷商店で、第2位は代表取締役会長の黒谷純久氏、第3位は空気圧制御機器メーカーのSMCです。創業家および関連会社が株式の過半数を保有しており、安定した株主構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 黒谷商店 | 39.95% |
| 黒谷 純久 | 21.37% |
| SMC | 2.83% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性1名、計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は黒谷暁氏が務めています。社外取締役比率は40.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 黒谷 暁 | 取締役社長(代表取締役)社長執行役員 | 2012年同社入社。社長室長、非鉄営業部長を経て、2021年代表取締役社長に就任。2023年より現職。 |
| 黒谷 純久 | 取締役会長(代表取締役) | 1984年黒谷(現雄祥)取締役。1997年同社代表取締役専務、2005年社長を経て、2021年より現職。 |
| 浦田 伊希子 | 常務取締役常務執行役員美術工芸部長 | 1986年同社監査役。1992年黒谷(現雄祥)入社を経て、2011年同社美術工芸部部長。2023年より現職。 |
社外取締役は、石黒達郎(元北陸銀行取締役専務執行役員)、折橋清弘(税理士・元金沢国税局徴収部長)、長谷川豊(ヤマト代表取締役社長)、前川昌之(公認会計士・税理士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「非鉄金属事業」および「美術工芸事業」を展開しています。
■(1) 非鉄金属事業
銅を中心としたリサイクル事業を展開し、インゴットの製造・販売とリサイクル原料の加工・販売を行っています。インゴットは船舶用スクリューや水栓金具向けに製造し、リサイクル原料は電線メーカーや銅製錬メーカー等へ供給しています。多種多様な原料を一括購入できる点が特徴です。
収益は、製品および加工済み原料の販売代金から得ています。運営は主に同社が行っていますが、米国での事業は連結子会社のKUROTANI NORTH AMERICA INC.およびCMX Metalsが担当しています。
■(2) 美術工芸事業
美術工芸品の製造販売を行っており、貴金属製の置物や仏像・仏具が主な製品です。富山県高岡市の伝統的な鋳造技術と精緻な仕上げ技術を活かし、付加価値の高い工芸品を提供しています。企画から製造引き渡しまでの一貫体制を構築しています。
収益は、美術工芸品の販売代金から得ています。運営は同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は800億円台で安定的に推移していますが、利益面では非鉄金属相場の変動やコスト増の影響を受けやすく、直近の第40期では営業損益、経常損益ともに赤字となりました。特に第38期以降、利益率が低水準で推移しており、収益性の改善が課題となっています。
| 項目 | 2021年8月期 | 2022年8月期 | 2023年8月期 | 2024年8月期 | 2025年8月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益(または売上高) | 621億円 | 891億円 | 846億円 | 821億円 | 825億円 |
| 経常利益 | 21億円 | 9億円 | 2億円 | 10億円 | -2.2億円 |
| 利益率(%) | 3.4% | 1.1% | 0.3% | 1.3% | -0.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 13億円 | 5億円 | 2億円 | 6億円 | -1.8億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は横ばいですが、売上原価率は上昇傾向にあります。直近では売上総利益が前期の31億円から23億円へと大きく減少し、さらに販売費及び一般管理費が増加したことで、営業利益が大幅に悪化しました。コスト構造の変化が利益を圧迫しています。
| 項目 | 2024年8月期 | 2025年8月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 821億円 | 825億円 |
| 売上総利益 | 31億円 | 23億円 |
| 売上総利益率(%) | 3.8% | 2.8% |
| 営業利益 | 15億円 | 1億円 |
| 営業利益率(%) | 1.8% | 0.1% |
販売費及び一般管理費のうち、販売諸掛が5億円(構成比21%)、給料が3億円(同14%)を占めています。
■(3) セグメント収益
非鉄金属事業は売上高の大半を占めていますが、利益面では前回の14億円からほぼゼロに近い水準まで急減しました。一方、美術工芸事業は規模は小さいものの、売上高・利益ともに増加し、安定した収益を確保しています。
| 区分 | 売上(2024年8月期) | 売上(2025年8月期) | 利益(2024年8月期) | 利益(2025年8月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 非鉄金属 | 815億円 | 819億円 | 14億円 | 0.1億円 | 0.0% |
| 美術工芸 | 5億円 | 6億円 | 1億円 | 1億円 | 18.4% |
| 連結(合計) | 821億円 | 825億円 | 15億円 | 1億円 | 0.1% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-2.2%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は35.9%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
創業以来、「天然資源の少ない日本で資源の有効利用を透明性の高い所で行う」を方針としています。世界中で発生した金属リサイクル原料を社会の大事な再利用可能な資源と捉え、金属のリサイクルを通じて低炭素化社会・循環型社会の実現に向け、社会的責任を果たせる企業グループを目指しています。
■(2) 企業文化
持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に向け、サステナビリティへの対応を重要な経営課題と認識しています。「企業行動規範」を定め、株主、従業員、取引先、地域社会などのステークホルダーの権利・立場や健全な事業活動倫理を尊重する企業文化・風土の醸成に努めています。
■(3) 経営計画・目標
企業価値の向上及び財務体質の強化を図るため、具体的な数値目標は設定していませんが、以下の指標を重要な経営指標として掲げています。
* 売上高経常利益率
* 自己資本比率
* 自己資本利益率
* 有利子負債比率
■(4) 成長戦略と重点施策
海外市場への進出を重視し、米国での事業譲受を通じて北米での事業基盤を拡大します。また、銅系以外の鉄やレアメタルといった分野の強化、サーキュラーエコノミーにおけるバリューチェーンの拡大を目指します。人材面では、海外営業や商品市場取引に精通した人材の確保・育成に注力します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
多様な合金開発や市況変化に対応するため、海外営業や市場取引に精通した人材の確保を進めています。採用制度の多様化を図り、中途・新卒採用の併用や海外人材の採用を強化しています。また、語学研修などの育成制度や福利厚生の充実、公平な人事制度の確立を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均(598万円)とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年8月期 | 44.6歳 | 15.3年 | 5,982,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、管理職登用者に占める中途採用者の割合(約46%)、管理職登用者に占める女性の割合(約12%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) カントリーリスク
多国間取引の割合が高いため、取引先各国の経済情勢、貿易・通商規制、税制、予期しない法律等の変更により、業績が悪影響を受ける可能性があります。特に新興国等のインフラ整備拡大による需要増大や金融政策の変化は、事業環境に大きな影響を与えます。
■(2) 非鉄金属相場、為替相場の変動等
取扱品目の価格は、LME(ロンドン金属取引所)の相場や為替相場の影響を強く受けます。商品市場への投機資金の流入等により価格変動率が高まっており、ヘッジを行っていても完全にリスクを回避できる保証はなく、相場変動により業績が大きく変動する可能性があります。
■(3) 原材料の調達について
市況環境の変化により発生量や流通量が減少し、適正価格での調達が困難になるリスクがあります。調達不足による生産活動への支障や、仕入価格の大幅な上昇が発生した場合、経営成績に重要な影響を与える可能性があります。
■(4) 顧客が属する業界の需要動向について
主要顧客は造船、住宅販売、設備関連産業に属しており、これらの業界の非鉄金属需要動向に業績が左右されます。環境配慮型社会への移行やEV普及などの変化に伴う需要変動も含め、特定業界の景気動向が悪影響を及ぼす可能性があります。



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