※本記事は、株式会社ハピネス・アンド・ディ の有価証券報告書(第35期、自 2024年9月1日 至 2025年8月31日、2025年11月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
ハピネス・アンド・ディ転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
1. ハピネス・アンド・ディってどんな会社?
宝飾品や時計、バッグ等のインポートブランド品を扱うセレクトショップを、全国の商業施設で展開する企業です。
■(1) 会社概要
1946年創業の時計店を前身とし、1990年に設立されました。2000年に初のモール型ショッピングセンターへ出店して以降、全国展開を加速させ、2012年にJASDAQ(現スタンダード)市場へ上場しました。2022年にはジュエリーブランドを展開するAbHeriを子会社化し、2023年には新ブランド開発を行うNo.を設立するなど、グループ経営体制を強化しています。
連結従業員数は316名、単体では283名が在籍しています。筆頭株主は取締役副社長の田篤史氏で、第2位は代表取締役会長の田泰夫氏となっており、創業家が主要株主として経営に関与しています。また、従業員持株会も大株主に名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 田 篤史 | 23.08% |
| 田 泰夫 | 21.93% |
| 有限会社DEN | 5.89% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性2名の計8名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長は前原 聡氏です。社外取締役比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 前原 聡 | 代表取締役社長 | 富士銀行、トライアルカンパニー専務取締役等を経て2020年に入社。専務取締役等を経て2025年6月より現職。 |
| 田 泰夫 | 代表取締役会長 | 1967年有限会社デン時計店入社。1990年の設立時より代表取締役社長を務め、2019年11月より現職。 |
| 田 篤史 | 取締役副社長 | 1992年入社。常務、代表取締役社長等を歴任し、2025年6月より現職。 |
| 丸山 誠 | 取締役管理部長 | キムラヤを経て2008年入社。執行役員店舗開発部長等を経て、2025年6月より現職。 |
| 平住 明子 | 取締役商品本部長 | 2007年入社。商品部長、執行役員商品本部長を経て、2024年11月より現職。 |
| 庄司 匡 | 取締役(監査等委員) | 野村證券、トライアルカンパニー出向等を経て、2024年11月より現職。 |
社外取締役は、久保 達弘(松田綜合法律事務所パートナー弁護士)、太田 美和子(太田美和子税理士事務所代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ブランドショップ運営」、「ジュエリー製造販売」および「新ジュエリーブランド」事業を展開しています。
■(1) ブランドショップ運営事業
全国のショッピングセンターを中心に、「ハピネス」「GINZA Happiness」等の店舗を展開し、インポートブランドのバッグ・小物、時計、宝飾品などを販売しています。「アニバーサリーコンセプトショップ」として、人生の節目や記念日のプレゼント選びの場を提供しています。
収益は一般消費者への商品販売による代金です。また、ブランド品の下取り・買取りや、オリジナルブランド「h&d」の展開、ヴィンテージ(リユース)商品の取扱いも行っています。運営はハピネス・アンド・ディが行っています。
■(2) ジュエリー製造販売事業
独自の世界観を持つジュエリーブランド「AbHeri(アベリ)」を展開しています。自社工房でデザインから製作までを一貫して行い、卸売りのほか、都市部の直営店やECサイトを通じて販売しています。
収益は商品の販売代金です。東京、大阪、福岡に直営店を構え、デザイン性の高いジュエリーを提供しています。運営は子会社のAbHeriが行っています。
■(3) 新ジュエリーブランド事業
新たなジュエリーブランドの創出と販路拡大を目的としています。商品の企画、開発、製造から販売までを手掛け、催事やポップアップ店舗、EC店舗での販売を行っています。
収益は商品の販売代金です。グループの事業領域拡大と収益基盤の確立を目指し、ブランドの確立に取り組んでいます。運営は子会社のNo.が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近の業績を見ると、売上高は減少傾向にあります。利益面では、経常損失および当期純損失が継続しており、損失幅が拡大する傾向にあります。
| 項目 | 2023年8月期 | 2024年8月期 | 2025年8月期 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 127億円 | 108億円 | 88億円 |
| 経常利益 | -2.4億円 | -1.9億円 | -4.4億円 |
| 利益率(%) | -1.9% | -1.7% | -4.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -6.8億円 | -5.0億円 | -8.2億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は減少し、営業損失が継続しています。売上総利益率は一定水準を維持していますが、販管費の負担により営業段階での赤字が続いています。
| 項目 | 2024年8月期 | 2025年8月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 108億円 | 88億円 |
| 売上総利益 | 41億円 | 36億円 |
| 売上総利益率(%) | 38.2% | 40.6% |
| 営業利益 | -1.6億円 | -4.0億円 |
| 営業利益率(%) | -1.5% | -4.6% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給与が15億円(構成比36.5%)、地代家賃が9億円(同21.6%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社グループは宝飾品、時計及びバッグ・小物等の製造・販売業という単一セグメントであるため、記載を省略します。
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動によるキャッシュ・フローがプラス、投資活動によるキャッシュ・フローがマイナス、財務活動によるキャッシュ・フローがマイナスであることから、健全型(営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業)に分類されます。ただし、営業キャッシュ・フローのプラスは主に棚卸資産の減少によるものです。
| 項目 | 2024年8月期 | 2025年8月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 8億円 | 2億円 |
| 投資CF | -0.4億円 | -1.1億円 |
| 財務CF | -17億円 | -3億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-143.6%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は2.7%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
お客様・お取引先様・従業員による「信頼とふれあいの輪」を基本理念としています。お客様に感動を与えるプレゼント選びの場を提供する「アニバーサリーコンセプトショップ」および、お客様が何度でも足を運びたくなる「おもてなしの接客」を事業コンセプトとして掲げています。
■(2) 企業文化
「一流のおもてなし」と「お客様の立場でのご提案」によって、喜びや感動を提供できる店づくりを目指しています。現場での実践や各種研修を通じて接客力や商品提案力の向上に取り組み、顧客との信頼関係構築を重視する文化があります。
■(3) 経営計画・目標
具体的な数値目標を含む中期経営計画については、2025年4月に数値計画を取り下げており、現在は早期の黒字化に向けた取り組みを推進しています。経営指標としては、売上高、客数・客単価の推移、営業利益を重視し、その向上を図る方針です。
■(4) 成長戦略と重点施策
グループ経営による事業モデルの多様化を急務とし、製販一体化モデルへの転換や新規事業による収益基盤の確立を進めています。ハピネス・アンド・ディではヴィンテージ商品や宝飾・地金商品の強化、不採算店舗の統廃合を実施し、子会社ではブランド認知と販路拡大に注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
自律型成長人財の育成と働きやすい労働環境の構築を柱としています。社内公募制度や正社員登用制度によるキャリア形成支援、資格取得奨励、階層別教育などを実施するとともに、テレワークやシフト制など多様な働き方に応じた環境整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年8月期 | 40.1歳 | 8.42年 | 4,054,000円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 36.5% |
| 男性育児休業取得率 | 50.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 69.4% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 75.5% |
| 男女賃金差異(非正規) | 122.3% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 継続企業の前提に関する重要事象等
急速な円安や物価高騰による販売低迷、不採算店舗の閉店等の影響で、3期連続して営業損失等の赤字を計上しています。これに対し、構造改革や新規事業の推進、金融機関との協調体制構築などにより早期黒字化と資金繰りの安定化を図っていますが、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせる状況が存在しています。
■(2) 商品仕入れ及び在庫
海外ブランドの商品供給政策の変更や流通トラブル、人気商品の需給バランス崩壊などにより、特定ブランドの仕入れが困難になる可能性があります。これにより売上高や利益が減少する恐れがあるため、プライベートブランドの拡充や仕入先の分散などの対策を講じています。
■(3) 為替や貴金属相場の変動
インポートブランド品やプライベートブランド商品の多くを海外から仕入れているため、為替変動の影響を受けます。また、宝飾品の原材料である貴金属相場の変動を販売価格に即座に転嫁することが難しく、利益率の低下や消費マインドの減退を招くリスクがあります。
■(4) 有利子負債への依存度
総資産に対する有利子負債の比率が高く、金融機関からの支援が得られない場合や市場金利が上昇した場合には、資金繰りの逼迫や支払利息の増加により、経営成績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。これに対し、金融機関との関係維持やキャッシュ・フロー改善に努めています。



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