ユーピーアール 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ユーピーアール 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

スタンダード市場に上場する物流機器レンタルの大手企業です。パレット等の物流機器のレンタル・販売を主力とし、IoTを活用した追跡ソリューションなども展開しています。当連結会計年度は、輸送用パレットの需要は堅調でしたが保管用需要が伸び悩み、売上高は微減、各利益は減益となりました。


※本記事は、ユーピーアール株式会社 の有価証券報告書(第47期、自 2024年9月1日 至 2025年8月31日、2025年11月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ユーピーアールってどんな会社?


パレット等の物流機器レンタルを主軸に、アシストスーツやIoTソリューションも展開する企業です。

(1) 会社概要


1979年にウベパレットとして設立され、2002年に追跡システムの提供を開始しました。2007年に現社名のユーピーアールへ変更し、2019年に東京証券取引所市場第二部へ上場しました。2022年の市場区分見直しに伴いスタンダード市場へ移行し、現在は物流効率化やDX推進を支援する事業を展開しています。

同グループの連結従業員数は224名、単体では192名です。筆頭株主は代表取締役社長の酒田義矢氏であり、第2位、第3位も同氏の親族が名を連ねています。創業家が主要株主として経営に関与するオーナー系企業の特徴を持っています。

氏名 持株比率
酒田義矢 50.11%
酒田三男 5.03%
酒田加代子 4.18%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長執行役員は酒田義矢氏が務めています。取締役7名のうち4名が社外取締役であり、社外取締役比率は57.1%です。

氏名 役職 主な経歴
酒田義矢 代表取締役社長執行役員 1988年積水化学工業入社。1994年ウベパレット(現同社)専務取締役を経て、1998年より同社代表取締役社長。
石村浩 取締役専務執行役員 1987年東芝入社。同社新規事業開発部長等を経て2016年同社入社。経営企画部長、物流事業本部長等を歴任し、2025年9月より現職。
石川修 取締役上級執行役員 1988年三和銀行(現三菱UFJ銀行)入行。三菱UFJファクター事業開発部長を経て2019年同社入社。総務部長等を歴任し、2024年11月より現職。


社外取締役は、有宗政和(元丸紅セーフネット代表取締役社長)、土田亮(法律事務所フロンティア・ロー弁護士)、小野塚邦子(元キリンアンドコミュニケーションズ代表取締役社長)、野村有季子(元KPMG LLP Hong Kong事務所出向)です。

2. 事業内容


同社グループは、「物流事業」「コネクティッド事業」を展開しています。

(1) 物流事業


パレット等の物流機器や、作業負担を軽減するアシストスーツ、物流IoT機器(追跡ソリューション)のレンタルおよび販売を行っています。主な顧客は倉庫、自動車、電子機器、農産、食品など幅広い業種の企業です。特に人手不足を背景としたパレット輸送(一貫パレチゼーション)の提案に注力しています。

収益は、顧客からのレンタル料および製品の販売代金から成り立っています。運営は主にユーピーアールが行い、一部の製造・補修やデポ運営等は連結子会社のウベパレットサービスや海外現地法人(UPR Singapore Pte.Ltd.等)が担当しています。

(2) コネクティッド事業


遠隔監視ソリューション(ICT事業)と、カーシェアリングシステム等の提供(ビークルソリューション事業)を行っています。ICT事業では在庫管理や遠隔監視サービスを提供し、ビークルソリューション事業ではカーシェアシステムの提供や自主運営を行っています。

収益は、システムや機器のレンタル料、販売代金、および役務提供の対価から得ています。運営は主にユーピーアールが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は150億円前後で推移しており、直近では横ばいから微減の傾向が見られます。利益面では、2023年8月期をピークに経常利益、当期純利益ともに減少傾向にあり、利益率も低下しています。

項目 2021年8月期 2022年8月期 2023年8月期 2024年8月期 2025年8月期
売上高 129億円 133億円 148億円 155億円 154億円
経常利益 9億円 11億円 12億円 9億円 7億円
利益率(%) 6.6% 8.4% 8.0% 5.7% 4.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 6億円 7億円 7億円 6億円 3億円

(2) 損益計算書


売上高は微減となりましたが、コスト増により売上総利益および営業利益が減少しています。特に営業利益は前期比で半減しており、利益率の低下が顕著です。売上原価率の上昇に加え、販管費の増加が利益を圧迫している構造が見て取れます。

項目 2024年8月期 2025年8月期
売上高 155億円 154億円
売上総利益 48億円 46億円
売上総利益率(%) 31.2% 30.2%
営業利益 6億円 3億円
営業利益率(%) 3.7% 1.8%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び賞与が16億円(構成比36%)、支払手数料が6億円(同13%)を占めています。売上原価においては、減価償却費が31億円(売上原価に対する構成比29%)、保管料が16億円(同15%)、運送原価が14億円(同13%)となっています。

(3) セグメント収益


物流事業は輸送用パレットの需要が堅調だったものの、保管用パレットの需要減やコスト増により減収減益となりました。コネクティッド事業は一過性の売上があった前期の反動等により減収となりましたが、赤字幅は縮小しています。

区分 売上(2024年8月期) 売上(2025年8月期) 利益(2024年8月期) 利益(2025年8月期) 利益率
物流事業 144億円 143億円 21億円 19億円 13.2%
コネクティッド事業 11億円 11億円 -2億円 -1億円 -10.4%
連結(合計) 155億円 154億円 9億円 7億円 4.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.7%で市場平均を下回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は41.7%で市場平均を下回っています。

項目 2024年8月期 2025年8月期
営業CF 35億円 31億円
投資CF -35億円 -37億円
財務CF 3億円 4億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「パレットを通じ人々の生活を便利にすること」を事業原点とし、トータルパレットマネジメントカンパニーとして効率的な物流基盤の整備に貢献することを目指しています。また、「地球と人を尊重する会社」をあるべき姿とし、国際的視野と柔軟性を持ち、環境に配慮した循環型社会の構築に貢献することを掲げています。

(2) 企業文化


同社は「私たちは社業を通じ社会に貢献します」という社是のもと、行動指針として「情熱・挑戦・真摯・共創」を掲げています。社員一人ひとりがワクワク・イキイキとし、会社を通じて自己実現できる環境を追求するとともに、社会課題の解決と持続可能な物流の実現を目指す「シェアリング」の精神を大切にしています。

(3) 経営計画・目標


「中期ビジョン2030」のもと、国内のみならずアジアエリアでの積極的な事業展開による成長を目指しています。数値目標としては、EBITDAの継続的な伸長およびROE10%以上を掲げています。また、直近の5年間を「構造改革フェーズ(2年間)」と「収益拡大フェーズ(3年間)」に分け、段階的な成長を図る計画です。

* ROE 10%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「選択と集中」を基本方針とし、構造改革フェーズでは不採算事業やレンタル単価の見直し、デポ集約による効率化を進めます。収益拡大フェーズでは、改正物流効率化法の施行を追い風に「一貫パレチゼーション」を推進し、レンタル需要の拡大とソリューションサービスの拡販を図ります。また、アジアエリアでの売上拡大に向けた営業活動を強化し、海外売上比率の増加を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「情熱を抱き、常に挑戦し、真摯に向き合い、仲間と共創できる人物」を求める人材像としています。社員の成長が会社の成長に不可欠であるとの考えから、人材開発グループを中心に教育体系を整備し、特に海外研修など新たな挑戦を促す機会の提供を重視しています。また、多様な人材が活躍できる環境整備や健康経営の推進にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年8月期 41.1歳 10.5年 8,290,262円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 9.4%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全) -
男女賃金差異(正規) -
男女賃金差異(非正規) -


※同社は公表義務の対象ではないため、有報には男性育児休業取得率および男女賃金差異の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、育児休業からの復職率(100%)、1人当たり研修時間(16.0時間)、社内申請のペーパーレス化(78.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済情勢とパレット需要の変動


同社グループの収益はパレットレンタルへの依存度が高いため、景気後退や個人消費の冷え込みによる需要減少が売上減につながる可能性があります。また、原材料価格やエネルギーコスト、輸送費の高騰が続く場合、これらをレンタル価格等へ十分に転嫁できなければ、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 物流・ソリューション事業の競争環境


物流事業では、競争激化による価格下落や、デポ運営費等のコスト増加が収益性を低下させるリスクがあります。ソリューション事業においては、技術革新や新規参入によるサービスの陳腐化、および技術領域での価格競争激化が懸念されます。

(3) 特定仕入先への依存


レンタル用プラスチックパレットの仕入において、三甲株式会社(子会社含む)および岐阜プラスチック工業株式会社への依存度が99%以上と極めて高くなっています。これらの仕入先との取引が何らかの要因で継続困難になった場合、商品供給体制に支障をきたし、業績に重大な影響を与える可能性があります。

(4) 海外展開に関するリスク


アセアン地域を中心に海外展開を進めていますが、現地の経済情勢や事業環境の悪化、予期せぬ法規制の変更、自然災害等のリスクが存在します。これらが顕在化した場合、同社グループの事業および業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。