※本記事は、株式会社ほぼ日 の有価証券報告書(第47期、自 2024年9月1日 至 2025年8月31日、2025年11月28日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ほぼ日ってどんな会社?
「ほぼ日手帳」などの生活関連商品の開発・販売や、ウェブサイト「ほぼ日」の運営を行う企画・編集会社です。
■(1) 会社概要
同社は1979年12月、コピーライター糸井重里の個人事務所として設立されました。1998年6月にウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」を開設し、2001年10月には主力商品となる「ほぼ日手帳」の販売を開始しました。その後、2016年12月に現在の社名へ変更し、2017年3月に株式を上場しました。
現在の従業員数は単体で156名です。筆頭株主は創業者の糸井重里氏で、第2位は個人の池田あんだ氏、第3位は社外取締役の山本英俊氏です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 糸井重里 | 26.70% |
| 池田あんだ | 20.69% |
| 山本英俊 | 14.08% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性2名の計8名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長最高経営責任者(CEO)兼最高クリエイティブ責任者(CCO)は糸井重里氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 糸井重里 | 代表取締役社長最高経営責任者(CEO)兼最高クリエイティブ責任者(CCO) | 1979年12月同社設立。代表取締役社長を経て、2023年11月より現職。 |
| 小泉絢子 | 取締役副社長最高執行責任者(COO)兼商品事業部長 | 2001年4月同社入社。商品事業部長、取締役を経て、2023年11月より現職。 |
| 鈴木基男 | 取締役最高財務責任者(CFO)兼管理部長 | 株式会社リンクアンドモチベーション等を経て、2018年11月同社入社。2023年11月より現職。 |
社外取締役は、山本英俊(円谷フィールズホールディングス代表取締役社長グループCEO)、塚越隆行(元ウォルト・ディズニー・ジャパン エグゼクティブ・プロデューサー)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ほぼ日手帳」などの商品販売および「ほぼ日」等のメディア運営を展開しています。
■(1) ほぼ日手帳事業
同社の主力商品である「ほぼ日手帳」および、カバー、下敷き、文具などの関連商品を企画・開発し、販売しています。毎年新しいラインナップを発表し、国内外のユーザーに提供しています。
収益は、主に直営ECサイト「ほぼ日オンラインストア」や卸売先を通じた商品販売により、個人および法人顧客から代金を受け取ります。運営は同社が行っています。
■(2) ウェブメディア・その他事業
ウェブサイト「ほぼ日」の運営をはじめ、イベント「生活のたのしみ展」、学びの場「ほぼ日の學校」、店舗「TOBICHI」、SNSアプリ「ドコノコ」などの企画・運営を行っています。
収益は、商品販売に加え、イベントでの売上、有料サービスの利用料、広告収入など、多岐にわたる名目で顧客から受け取ります。運営は同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は着実な増加傾向にあり、直近5期間で約1.5倍の規模に成長しています。利益面では、経常利益が安定して黒字を維持しており、利益率も7〜8%台で推移しています。当期純利益も安定的に確保しており、事業規模の拡大とともに収益基盤も維持されています。
| 項目 | 2021年8月期 | 2022年8月期 | 2023年8月期 | 2024年8月期 | 2025年8月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 56億円 | 59億円 | 68億円 | 75億円 | 87億円 |
| 経常利益 | 1.7億円 | 2.9億円 | 5.8億円 | 5.4億円 | 6.5億円 |
| 利益率(%) | 3.0% | 4.9% | 8.6% | 7.2% | 7.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 2.0億円 | 2.1億円 | 4.1億円 | 4.0億円 | 4.5億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益も順調に拡大しています。売上総利益率は50%台後半で安定しており、高い収益性を維持しています。営業利益も増加しており、販管費の増加を吸収して利益成長を実現しています。
| 項目 | 2024年8月期 | 2025年8月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 75億円 | 87億円 |
| 売上総利益 | 43億円 | 49億円 |
| 売上総利益率(%) | 56.7% | 57.0% |
| 営業利益 | 5.5億円 | 6.2億円 |
| 営業利益率(%) | 7.3% | 7.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が9億円(構成比20%)、発送費が9億円(同20%)を占めています。
■(3) セグメント収益
全事業における売上高が増加しました。特に主力の手帳関連が国内外で好調に推移し、その他商品やサービス売上も伸長しています。手帳以外の物販やイベント事業も売上増に寄与しています。
| 区分 | 売上(2024年8月期) | 売上(2025年8月期) |
|---|---|---|
| 手帳 | 49億円 | 59億円 |
| その他商品 | 21億円 | 23億円 |
| その他売上 | 5億円 | 5億円 |
| 連結(合計) | 75億円 | 87億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は将来の経営環境への対応や新規事業に必要な資金を内部留保しています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、利益の計上等で増加したものの、棚卸資産や売上債権の増加、税金等の支払いにより減少しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形・無形固定資産や長期前払費用の取得により、支出超過となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、主に配当金の支払いにより、支出となりました。
| 項目 | 2024年8月期 | 2025年8月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 4.0億円 | 1.6億円 |
| 投資CF | -4.7億円 | -4.9億円 |
| 財務CF | -1.1億円 | -1.1億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「やさしく、つよく、おもしろく。」を行動指針としています。「やさしく」を前提とし、それを実現する力が「つよく」、その上に新しい価値となる「おもしろく」を生み出すことを目指しています。また、社是として「夢に手足を。」を掲げ、夢を実現させる会社であることを目指しています。
■(2) 企業文化
「場」をつくり、「いい時間」を提供するコンテンツを企画・編集・制作・販売することを重視しています。作り手と受け取り手の関係がフラットで、役割が固定されず、互いにリスペクトし合う能動的な当事者であるような「場」をつくろうとしています。コンテンツ制作においては、「集合」「動機」「実行」の3つのプロセスを大切にしています。
■(3) 経営計画・目標
会社の未来を「遠景」「中景」「近景」の3つに分けて考えています。「中景」としては、「『いい時間』を提供する場をつくり、育てている」姿を目指しており、国内外を問わず幅広い属性の顧客との関係構築を図っています。具体的な数値目標としてのKPI等は記載されていませんが、ITシステム開発やサプライチェーン強化等を課題としています。
■(4) 成長戦略と重点施策
「場」の立ち上げと育成、多様な人材の確保、インターネット環境変化への対応、経営基盤の強化、市場の拡大を重点施策としています。具体的には、「ほぼ日手帳アプリ」の開発、統合IDサービス「ほぼ日ID」の活用、越境ECや海外販路の開拓による市場拡大を推進しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「やさしく、つよく、おもしろく。」が社内に浸透し実践され続けるよう、継続的な人材確保と育成、組織づくりに取り組んでいます。コンテンツを生み出す力や届ける力をつけ、経営基盤を強化するために、職種を限定せず多様な人材の確保に努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年8月期 | 38.5歳 | 6.3年 | 6,952,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 33.3% |
| 男性育児休業取得率 | 33.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規雇用) | - |
| 男女賃金差異(非正規) | - |
※同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員の育児休業取得率(100.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) ブランドに関するリスク
ウェブサイト「ほぼ日」や主力商品「ほぼ日手帳」のブランド価値が、生活者の志向変化やSNSでの炎上等により低下した場合、事業に悪影響を及ぼす可能性があります。コンテンツの品質確保やSNS運用の管理に努めていますが、予期せぬ評価の低下がリスクとなり得ます。
■(2) 特定商品への依存に関するリスク
売上高の約7割を「ほぼ日手帳」が占めています。市場動向は堅調ですが、手帳市場の縮小や競合激化、または製造上の問題等により当該商品の売上が減少した場合、全体の業績に大きな影響を与える可能性があります。
■(3) 組織に関するリスク
創業者である代表取締役社長への依存度が高く、業務継続が困難になった場合、事業推進力が停滞する可能性があります。また、独自の組織風土がコンテンツの源泉であるため、組織拡大等により風土が維持できなくなった場合、競争力の低下につながる可能性があります。
■(4) インターネット環境等に関するリスク
事業の中核をウェブサイト運営やEC販売が担っており、システム障害やサイバー攻撃、情報漏洩等が発生した場合、事業停止や信用失墜につながる可能性があります。また、検索エンジンのアルゴリズム変更やプラットフォームの規約変更等の外部環境変化もリスク要因となります。



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