エコモット 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

エコモット 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証グロース、札証アンビシャスに上場するIoTインテグレーション企業です。建設DXや融雪システム遠隔監視等のソリューションを提供しています。直近の業績は、売上高30億円(前期比11.6%増)、経常利益0.5億円(同132.2%増)と増収増益ですが、最終損益は赤字となっています。


※本記事は、エコモット株式会社 の有価証券報告書(第19期、自 2024年9月1日 至 2025年8月31日、2025年11月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. エコモットってどんな会社?


IoTインテグレーション事業を主軸に、建設現場のDX支援や融雪システムの遠隔監視サービスなどを提供する企業です。

(1) 会社概要


同社は2007年に設立され、翌年には融雪装置遠隔制御システムの特許を取得しました。2009年に建設情報化施工支援ソリューション「現場ロイド」、2014年にIoTデータコレクトプラットフォーム「FASTIO」をリリースしています。2017年に札幌証券取引所アンビシャスへ上場し、2018年には東京証券取引所マザーズ(現グロース)への上場を果たしました。

同グループの従業員数は連結134名、単体76名です。大株主については、筆頭株主は創業者で代表取締役の入澤拓也氏で、第2位は業務資本提携先の通信大手、第3位も同じく業務資本提携先の加工製品メーカーとなっています。

氏名 持株比率
入澤 拓也 21.70%
KDDI 20.50%
積水樹脂 5.00%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役は入澤 拓也氏が務めています。取締役(監査役を除く)における社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
入澤 拓也 代表取締役 2002年クリプトン・フューチャー・メディア入社。2007年同社設立・代表取締役。北海道IT推進協会会長等を歴任し、2023年よりGRIFFY代表取締役を兼務。
内藤 彰人 取締役副社長 2008年キヤノンマーケティングジャパン入社。2016年同社入社。IoTインテグレーション部長、IoTソリューション事業部長等を経て2023年11月より現職。
細川 博之 取締役開発本部長 2016年同社入社。製品開発部長、デバイスソフトウェア開発部長、クラウドソリューション開発部長等を経て2023年11月より現職。
武田 研輔 取締役経営管理本部長 2001年ユニオン入社。シーエスアイ、和弘食品、ロゴスホーム、ノベルズ等を経て2023年11月同社入社・社長室長。同月より現職。


社外取締役は、野口 一宙(KDDI ビジネス事業本部プロダクト副本部長)、村上 彩子(エシカルタイム代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「IoTインテグレーション事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) IoTビジネスイノベーション


独自のIoTプラットフォーム「FASTIO」を活用したDX支援や、融雪・消雪装置の監視ソリューション「ゆりもっと」、交通事故削減を図るカーテレマティクスサービス「Pdrive」などを提供しています。幅広い業界の課題解決に貢献するソリューションを展開しています。

収益は、システム受託開発やIoTサービスの利用料などから得ています。運営は主に同社が行っています。

(2) コンストラクションソリューション


建設現場の安全性、生産性、施工品質を向上させる総合情報化ソリューション「現場ロイド」や、遠隔臨場システム「Gリポート」などを提供しています。モバイルワイヤレス技術やセンサーを活用し、建設業界の人手不足解消や防災に貢献しています。

収益は、サービスのレンタル料や機器販売代金などから得ています。運営は主に株式会社GRIFFYが行っています。

(3) IoTパワード


GX(グリーントランスフォーメーション)分野として、太陽光発電EPC(設計・調達・建設)事業や蓄電池設置事業などを展開しています。IoT技術を付加価値として競合他社との差別化を図り、再生可能エネルギーの普及に取り組んでいます。

収益は、太陽光発電設備の請負工事代金や販売代金から得ています。運営は株式会社パワーでんきイノベーションが行っていましたが、2025年8月に全株式を譲渡しグループから除外されています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は30億円規模まで拡大しており、経常利益も黒字を維持しています。当期は売上が前期比で増加し、経常利益も回復傾向にありますが、最終損益については特別損失等の影響もあり赤字となっています。

項目 2021年8月期 2022年8月期 2023年8月期 2024年8月期 2025年8月期
売上高 22億円 22億円 27億円 27億円 30億円
経常利益 0.8億円 0.3億円 -0.8億円 0.2億円 0.5億円
利益率(%) 3.5% 1.5% -3.1% 0.9% 1.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 0.1億円 0.3億円 -1.4億円 -0.2億円 -1.6億円

(2) 損益計算書


売上高は増加しており、売上総利益も拡大しています。営業利益についても黒字転換を果たし、利益率は改善傾向にあります。

項目 2024年8月期 2025年8月期
売上高 27億円 30億円
売上総利益 10億円 11億円
売上総利益率(%) 37.2% 35.6%
営業利益 0.1億円 0.5億円
営業利益率(%) 0.3% 1.7%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が3.7億円(構成比36%)、役員報酬が1.0億円(同10%)を占めています。

(3) セグメント収益


「IoTビジネスイノベーション」はシステム受託開発や融雪監視サービスが堅調で増収となりました。「コンストラクションソリューション」も建設DX需要を捉え売上が伸長しています。「IoTパワード」は太陽光発電設備の販売等が寄与し増収となりました。

区分 売上(2024年8月期) 売上(2025年8月期)
IoTビジネスイノベーション 11億円 13億円
コンストラクションソリューション 10億円 10億円
IoTパワード 7億円 7億円
連結(合計) 27億円 30億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年8月期 2025年8月期
営業CF 0.1億円 -3.0億円
投資CF -1.6億円 -2.5億円
財務CF 1.5億円 2.9億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は当期純損失のため算出されていません。財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は30.6%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「未来の常識を創る」をミッションとし、「もっと、グリーンな明日に。」というVISIONを掲げています。AIやIoTなどの最先端テクノロジーを駆使して、創エネ、再エネ、畜エネで地球環境保護に貢献しつつ、持続的な企業価値向上を実現することを目指しています。

(2) 企業文化


同社グループは経営理念を実現するために「CREDO(クレド)」という6つの行動指針を定めています。中でも、従業員の自発的な成長を促す「成長にコミット(Commit to Growth)」と、ワークライフバランスを重視した健康的な生活を後押しする「健康に気を配る(Care for Wellness)」を重視しています。

(3) 経営計画・目標


成長途上にある同社は、より高い成長性を確保する観点から「売上高」の増加を最重視しています。また、成長性向上を継続していくために「売上総利益」「営業利益」を重要な指標として位置づけ、営業基盤の拡大による企業価値の継続的拡大を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、IoTを垂直統合的にワンストップで提供する強みを基盤とし、AI活用や電源・電池領域の事業化による「垂直統合領域の拡大」、新製品開発や販売チャネル開拓による「既存ソリューション領域の深化」、BtoBtoC領域やDX支援事業立ち上げによる「事業領域の拡大」を基本方針として掲げ、収益基盤強化と事業拡大を図っています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


技術革新のスピードが速い業界に対応するため、開発環境の整備と優秀な人材の採用・教育に注力しています。また、「成長にコミット」や「健康に気を配る」といった行動指針に基づき、従業員の自発的な成長支援やワークライフバランスを重視した環境づくりを進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年8月期 38.4歳 5.5年 4,960,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 10.5%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 65.4%
男女賃金差異(正規雇用) 72.7%
男女賃金差異(非正規雇用) 191.6%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) ストック収益の強化と変動性


主力サービスの「現場ロイド」は建設投資動向、「ゆりもっと」は積雪地域限定かつ天候や原油価格に需要が左右される特性があります。これに対し、通信キャリアとの提携強化や市場成長率の高いインテグレーションソリューションの営業強化により、安定した収益基盤の構築を図っています。

(2) 技術革新への対応


IoT業界は技術革新が速く、常に最新技術への対応が求められます。同社は新技術への挑戦や開発環境の整備を進めていますが、想定を超える環境変化が生じた場合、対応が遅れることで競争力が低下し、事業活動や業績に影響を与える可能性があります。

(3) 特定顧客への依存


売上高の一定割合を占める主要顧客が存在しており、これらの顧客との取引関係の維持・拡大に努めていますが、取引方針の変更や取引縮小等が生じた場合、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。また、新規顧客開拓による顧客基盤の分散化も進めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。