※本記事は、株式会社ウォンテッドリー の有価証券報告書(第15期、自 2024年9月1日 至 2025年8月31日、2025年11月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ウォンテッドリーってどんな会社?
同社は、ビジネスSNS「Wantedly」を運営し、条件ではなくビジョンや価値観でのマッチングを支援する企業です。
■(1) 会社概要
2010年に設立され、2012年に会社訪問アプリ「Wantedly(現 Wantedly Visit)」のサービスを開始しました。2017年に東証マザーズへ上場し、2022年の市場区分見直しに伴い東証グロース市場へ移行しています。2024年には次世代型採用管理システム「Wantedly Hire」をリリースし、事業領域を拡大しています。
同社の従業員数は連結で135名、単体で134名です。筆頭株主は創業者の仲暁子氏で、第2位はインターネット広告事業などを手掛ける事業会社のサイバーエージェント、第3位はエンジェル投資家の川田尚吾氏となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 仲暁子 | 68.20% |
| サイバーエージェント | 7.67% |
| 川田尚吾 | 5.77% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性4名、女性1名の計5名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役は仲暁子氏が務めています。社外取締役比率は60.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 仲 暁子 | 代表取締役 | ゴールドマン・サックス証券、Facebook Japanを経て2010年に同社設立、代表取締役就任。2016年よりWantedly Singapore取締役を兼任。 |
| 恩田 将司 | 取締役 | リクルートスタッフィング、リクルートテクノロジーズ(現リクルート)を経て2019年に同社入社。2022年より執行役員および取締役就任。 |
社外取締役は、成松淳(ミューゼオ代表取締役社長)、桃原隼一(桃原公認会計士事務所代表)、曽和利光(人材研究所代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ビジネスSNS事業」の単一セグメントを展開しています。
■ビジネスSNS事業
同社は、ビジネスSNS「Wantedly」を運営し、個人のキャリア形成と企業の採用・組織づくりを支援しています。主要サービスには、会社訪問アプリ「Wantedly Visit」、採用管理システム「Wantedly Hire」、エンゲージメント領域の「Engagement Suite」があります。「Wantedly Visit」では、給与等の条件ではなく、ビジョンや価値観への共感を軸としたマッチングを提供しています。
収益は主に、企業ユーザから受け取るサービス利用料で構成されています。「Wantedly Visit」の掲載料などのサブスクリプション型収益(ストック収益)に加え、スカウトオプションなどの追加機能利用料(フロー収益)を得ています。運営は主にウォンテッドリーが行い、海外展開においては子会社のWantedly Singapore Pte. Ltd.が一部事業を担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は36億円から49億円へと右肩上がりで成長しています。経常利益も4.1億円から16億円へと大幅に拡大しており、高い収益性を維持しています。当期は増収増益となり、過去最高益を更新しました。
| 項目 | 2021年8月期 | 2022年8月期 | 2023年8月期 | 2024年8月期 | 2025年8月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 36億円 | 45億円 | 47億円 | 47億円 | 49億円 |
| 経常利益 | 4.1億円 | 12億円 | 16億円 | 16億円 | 16億円 |
| 利益率(%) | 11.3% | 27.5% | 33.0% | 33.4% | 33.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 2.4億円 | 7.4億円 | 10億円 | 10億円 | 11億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の業績を比較すると、売上高の増加に伴い、営業利益も堅調に推移しています。営業利益率は30%台前半の高い水準を維持しており、効率的な事業運営が継続されていることがうかがえます。
| 項目 | 2024年8月期 | 2025年8月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 47億円 | 49億円 |
| 営業利益 | 16億円 | 16億円 |
| 営業利益率(%) | 33.8% | 33.5% |
営業費用(33億円)のうち、給料及び手当が7.3億円(構成比22%)、広告宣伝費が5.1億円(同16%)、通信費が5.0億円(同15%)、外注費が4.9億円(同15%)を占めています。
■(3) セグメント収益
ビジネスSNS事業の単一セグメントです。主力プロダクトの機能改善による顧客単価の向上等が寄与し、売上高は増加しました。
| 区分 | 売上(2024年8月期) | 売上(2025年8月期) |
|---|---|---|
| ビジネスSNS事業 | 47億円 | 49億円 |
| 連結(合計) | 47億円 | 49億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、本業で稼いだ資金(営業CFプラス)の一部を投資に回し(投資CFマイナス)、配当支払等を行っている(財務CFマイナス)ため、健全型と言えます。
| 項目 | 2024年8月期 | 2025年8月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 10億円 | 21億円 |
| 投資CF | -0.2億円 | -2億円 |
| 財務CF | -2億円 | -2億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は24.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は68.4%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「究極の適材適所により、シゴトでココロオドルひとをふやす」というミッションを掲げています。このミッションのもと、ビジョン・個性・価値観など従来の仕組みでは見過ごされてきた観点でのビジネス上のつながりを創出し、より多くの働く人々が仕事に熱中して心から楽しめる状態をつくり、社会全体を活性化することを目指しています。
■(2) 企業文化
ミッション実現のために、「最短距離の最大社会的インパクト」という方法論を掲げています。テクノロジーを中心とした拡張性の高い手法で、より多くの働く人々にサービスを届けることを重視しており、この方針がプロダクト、ビジネスモデル、組織のすべてに反映されています。
■(3) 経営計画・目標
同社は持続的な成長を通じた企業価値の向上を目指しており、営業収益および営業利益を重要な経営指標と位置づけています。特定の数値目標等は記載されていませんが、中長期的には有料企業数の増加や顧客単価の向上を図ることで、継続的な成長を目指す方針です。
■(4) 成長戦略と重点施策
主力プロダクト「Wantedly Visit」の提供価値強化に加え、新規事業領域への投資を加速させる戦略をとっています。「Wantedly Visit」で獲得した利益を、「Engagement Suite」や新規事業「Wantedly Hire」へ投資し、これらを中長期的な成長の牽引役に育てる方針です。また、AI技術の積極的な活用により、事業の競争優位性を高めることにも注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
多様な従業員が個々の強みを活かし成長することが長期的成長につながると考え、性別や国籍を問わず人材を採用しています。人事評価では多面的な議論を行い、週次1on1面談などを通じて日常的な成長支援を実施しています。また、経営層や管理職のサクセッションプランを作成・実行し、人材育成に注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年8月期 | 32.3歳 | 2.5年 | 6,483,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、育児休業復職率(100%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 特定サービス(Wantedly Visit)への収益依存
同社グループの収益の大部分は「Wantedly Visit」のサービス利用料に依存しています。競合激化等により同サービスの収益が減少した場合、業績に大きな影響を与える可能性があります。このため、新規事業の推進等による収益源の多様化に取り組んでいます。
■(2) 採用市場の動向による影響
主要収益源である「Wantedly Visit」は企業の採用活動に関連するため、企業の採用計画や雇用情勢の変動による影響を受ける可能性があります。市場動向や顧客ニーズの変化を注視し、迅速な経営判断を行うとともに、新規サービスの開発等を通じてリスクの軽減に努めています。
■(3) 情報セキュリティと個人情報管理
求職者の応募情報や名刺情報などの個人情報を多数保有しており、情報漏洩や不正利用が発生した場合、損害賠償請求や社会的信用の低下により業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。ISMS認証の取得や社内教育の徹底などにより、管理体制の強化を図っています。
■(4) 代表取締役への依存
創業者の仲暁子代表取締役は、経営方針や事業戦略の決定において極めて重要な役割を果たしています。同氏が業務を継続困難となった場合、事業や業績に影響を与える可能性があります。このため、役員や幹部社員への情報共有や組織強化を図り、過度な依存を脱却する体制整備を進めています。



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