#記事タイトル:プリントネット転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
※本記事は、プリントネット株式会社 の有価証券報告書(第40期、自 2024年9月1日 至 2025年8月31日、2025年11月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. プリントネットってどんな会社?
同社は、ネット印刷通販サイト「プリントネット」「プリントプロ」等を運営し、全国の顧客に印刷物を提供する企業です。
■(1) 会社概要
1968年に創業し、1987年に有限会社小田原印刷として設立されました。2005年に印刷通販サイトを開設し、インターネット事業へ本格参入しています。2018年にJASDAQ(スタンダード)へ上場を果たし、2022年には東証スタンダード市場へ移行しました。2025年には名証メイン市場への重複上場も行っています。
同社(単体)の従業員数は256名です。大株主構成を見ると、筆頭株主は同社役員の資産管理会社とみられるPNコーポレーション、第2位は代表取締役の小田原洋一氏、第3位は資産管理業務を行う信託銀行となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| PNコーポレーション | 39.33% |
| 小田原 洋一 | 14.53% |
| 株式会社日本カストディ銀行(信託口) | 7.83% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性5名、女性0名の計5名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役CEOは小田原洋一氏が務めています。社外取締役比率は60.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 小田原 洋一 | 代表取締役CEO | 1985年同社入社、2005年代表取締役社長を経て、2025年11月より現職。 |
| 小田原 一誠 | 取締役COO | 日本アグフア・ゲバルト入社後、2015年同社入社。製造本部長等を経て、2025年11月より現職。 |
社外取締役は、佐藤清一(元東レ印写システム事業部顧問)、大久保範俊(大久保範俊税理士事務所代表)、上釜明大(福元法律事務所所属弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ネット印刷通信販売事業」および「その他」事業を展開しています。
■ネット印刷通信販売事業
Webサイト「プリントネット」「プリントプロ」等を通じて、チラシ、パンフレット、ポスターなどの印刷物を全国の顧客に販売しています。完全データの入稿を受け、印刷から発送までを行うビジネスモデルです。
顧客からの印刷注文に対する代金が主な収益源です。運営は主にプリントネットが行っています。
■その他
ネット印刷通販事業以外の事業として、調剤薬局の経営などを行っています。
調剤薬局事業における売上などが収益源となります。運営はプリントネットが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は72億円から96億円の間で推移しており、直近は92億円となっています。経常利益は2億円台から7億円台の間で変動しており、利益率は概ね3%から7%の範囲です。全体として、一定の事業規模を維持しながら利益を確保している状況が読み取れます。
| 項目 | 2021年8月期 | 2022年8月期 | 2023年8月期 | 2024年8月期 | 2025年8月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 72億円 | 87億円 | 96億円 | 93億円 | 92億円 |
| 経常利益 | 2.1億円 | 5.7億円 | 6.9億円 | 4.6億円 | 5.7億円 |
| 利益率(%) | 3.0% | 6.6% | 7.2% | 4.9% | 6.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1.4億円 | 4.0億円 | 4.2億円 | 2.1億円 | 4.3億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を比較すると、売上高は微減となりましたが、売上総利益および営業利益は増加しています。売上総利益率は21.3%から22.7%へ、営業利益率は4.8%から6.1%へと改善しており、収益性が向上していることが分かります。
| 項目 | 2024年8月期 | 2025年8月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 93億円 | 92億円 |
| 売上総利益 | 20億円 | 21億円 |
| 売上総利益率(%) | 21.3% | 22.7% |
| 営業利益 | 4.5億円 | 5.6億円 |
| 営業利益率(%) | 4.8% | 6.1% |
販売費及び一般管理費のうち、荷造運搬費が8.0億円(構成比52%)、給料及び手当が2.0億円(同13%)を占めています。売上原価においては、材料費が41億円(構成比58%)、労務費が13億円(同19%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力のネット印刷通信販売事業は、大口得意先の売上が減少したものの、利益率重視の方針転換により増益となりました。その他事業は減収となりましたが、黒字転換を果たしています。全社費用等の調整額が増加しましたが、全体としては増益を確保しています。
| 区分 | 売上(2024年8月期) | 売上(2025年8月期) | 利益(2024年8月期) | 利益(2025年8月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| ネット印刷通信販売事業 | 92億円 | 91億円 | 5.9億円 | 7.5億円 | 8.2% |
| その他 | 1.3億円 | 1.0億円 | -0.1億円 | 0.0億円 | 0.6% |
| 調整額 | - | - | -1.3億円 | -1.8億円 | - |
| 連結(合計) | 93億円 | 92億円 | 4.5億円 | 5.6億円 | 6.1% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.9%でスタンダード市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は55.6%で製造業平均をわずかに下回っています。
| 項目 | 2024年8月期 | 2025年8月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 6.4億円 | 13.5億円 |
| 投資CF | -3.6億円 | -0.7億円 |
| 財務CF | -3.2億円 | -7.5億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「謙虚な心で皆様と共に進む」を社是とし、従業員・家族・お客様・株主・取引先と共に進み、関わる全ての人々が幸せになるための経営を行うことを方針としています。この方針達成のため、人材育成による社業の向上や利益還元を通じて満足度向上に努めています。
■(2) 企業文化
同社は、人材育成による社業の向上と利益還元を重視し、関わる全ての人々の満足度向上に努める文化を持っています。また、環境や社会への配慮も行っており、例えばオフセット印刷におけるインキのノンVOC化など、環境負荷低減に向けた取り組みを他社に先駆けて推進しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、目標とする経営指標として「前期対比売上高成長率」および「売上高営業利益率」を掲げています。これらを重要な指標として認識し、業界のリーディングカンパニーを目指してユーザビリティ強化や業務効率化を推進し、売上高営業利益率を維持しつつ売上高成長も見込めるよう投資を行っていく方針です。
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は「強固な経営基盤」作りのため、独自のマーケティングによる売上継続成長、次世代基幹システム構築による一貫管理体制、固定費抑制等の財務基盤構築、人材育成の仕組みづくり、および生産自働化による管理体制向上に取り組む方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は事業の継続的発展のため、多様な専門技術に精通した人材やマネジメント能力に優れた人材の確保、および中長期的な成長を支える人材育成を重要課題としています。そのため、中間層を中心とした研修制度の導入やジョブローテーション、キャリア支援制度を構築し、社員の定着と育成に努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年8月期 | 38.0歳 | 8.4年 | 4,260,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 81.3% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) | 81.6% |
| 労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) | 88.1% |
※管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率については、公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒者の採用者に占める女性比率(75%)、男性育児休業等取得率(100%)、女性育児休業等取得率(100%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 競合企業との競争激化
インターネット印刷通販市場には多数の事業者が存在し、商品・サービス・価格面での競争が激しい状況です。高付加価値サービスの提供や低価格化などにより競争力が相対的に低下した場合や、価格競争がさらに激化した場合には、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 特定取引先への依存
同社はラクスルと業務提携契約を締結しており、同社への売上割合は16.6%(2025年8月期)となっています。同社への依存度を下げる取り組みを行っていますが、同社の経営方針変更などにより受注が大幅に減少した場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 印刷材料の価格変動
同社事業にとって用紙等の印刷材料は不可欠であり、製品材料費の大部分を用紙代が占めています。市況や供給量の変動により仕入価格が上昇し、これを販売価格に転嫁できなかった場合には、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。



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