※本記事は、株式会社ヒト・コミュニケーションズ・ホールディングスの有価証券報告書(第7期、自 2024年9月1日 至 2025年8月31日、2025年11月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ヒト・コミュニケーションズ・ホールディングスってどんな会社?
ヒト・コミュニケーションズ・ホールディングスは、「成果追求型営業支援」を掲げ、販売・営業・サービス分野に特化したアウトソーシングや人材派遣、EC支援等を展開する持株会社です。
■(1) 会社概要
同社は、2019年3月に株式会社ヒト・コミュニケーションズの単独株式移転により持株会社として設立されました。同年4月には株式会社ビービーエフを子会社化し体制を移行しています。2022年4月に東京証券取引所プライム市場へ移行しました。2023年7月には空港事業強化のため株式会社FMG等を子会社化し、事業領域を拡大しています。
連結従業員数は1,411名、単体従業員数は15名です。筆頭株主と第3位株主は信託銀行の信託口ですが、これらは有価証券報告書の注記によると、委託者である新井隆二氏(創業者)が信託したものです。第2位は株式会社ダッチパートナーズとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 野村信託銀行株式会社(信託口2052116) | 30.92% |
| ダッチパートナーズ | 11.84% |
| みずほ信託銀行株式会社有価証券管理信託0700026 | 9.77% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性2名(男性9名、女性2名 ※JSONデータとHTMLの整合性を確認し合計11名)の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役社長グループCEOは安井豊明氏が務めています。社外取締役比率は37.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 安井 豊明 | 代表取締役社長グループCEO | みずほフィナンシャルグループ、ビックカメラを経て、ヒト・コミュニケーションズ代表取締役社長に就任。2019年3月より現職。 |
| 福原 直通 | 常務取締役CFO | みずほフィナンシャルグループを経て、2017年ヒト・コミュニケーションズ入社。2019年3月同社取締役CFO、2025年9月より現職。 |
| 田村 淳 | 取締役 | ブロードバンドタワー等を経て、2005年ビービーエフ設立し代表取締役社長。2019年3月より現職。 |
| 花堂 哲 | 取締役 | バックスグループを経て、2009年ヒト・コミュニケーションズ入社。同社代表取締役社長営業統括本部長を務め、2025年11月より現職。 |
| 鳥越 靖司 | 取締役 | 日本航空インターナショナル執行役員、JALパック代表取締役副社長等を経て、2023年FMG代表取締役社長。2025年11月より現職。 |
| 森 忠嗣 | 取締役 | 阪急百貨店入社。エイチ・ツー・オーリテイリング取締役常務執行役員等を経て、2020年11月より現職。 |
| 野村 恭子 | 取締役 | アジア航測、国立環境研究所等を経て、2019年Social-i設立し代表取締役。2022年11月より現職。 |
| 石井 清信 | 取締役 | 博報堂第12営業局長、NTTドコモ第1カスタマーサクセス部長等を経て、2023年ONE STONE設立し代表取締役。2024年11月より現職。 |
社外取締役は、森忠嗣(元エイチ・ツー・オーリテイリング取締役常務執行役員)、野村恭子(Social-i代表取締役)、石井清信(ONE STONE代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「アウトソーシング事業」「人材派遣事業」「EC・TC支援事業」「ホールセール事業」および「その他」事業を展開しています。
■アウトソーシング事業
通信キャリアやメーカー等から、販売戦略の企画立案、販売体制構築、接客販売業務、スタッフ管理などの一連の業務を受託しています。また、空港におけるグランドハンドリング業務も行っています。
クライアントからの業務委託契約に基づき、成果追求型の営業支援を行います。運営は主に株式会社ヒト・コミュニケーションズ、株式会社ティーシーエイ、株式会社ジャッツ、株式会社WSS、SALES ROBOTICS株式会社、株式会社FMG等が行っています。
■人材派遣事業
通信キャリア、メーカー、スーパー・GMS(総合スーパー)、旅行業者等に対し、ニーズに応じたスタッフを派遣しています。販売、営業、添乗、コールセンター業務などが中心です。
派遣先からの派遣料金を収益源としています。運営は主に株式会社ヒト・コミュニケーションズ、株式会社ティーシーエイ、株式会社ジャッツ、株式会社WSSが行っています。
■EC・TC支援事業
ブランド等のオフィシャルECサイトの運営受託や、テレビショッピング販売支援を行っています。ECサイトの企画・開発から物流、代金回収までを一括して受託します。
クライアントからの運営受託手数料やレベニューシェアによる成功報酬等を収益としています。運営は主に株式会社ビービーエフが行っています。
■ホールセール事業
国内・海外の大手小売店に対し、衣料品・雑貨等の企画、製造、卸売を行っています。ブランドやインフルエンサーとの協業による商品開発も特徴です。
小売店への商品卸売による売上が収益源となります。運営は主に株式会社ブランチ・アウトおよび上海布藍綺国際貿易有限公司が行っています。
■その他
システム開発関連サービス、富裕層向けリムジンサービス、訪日外国人旅行者向けサービス、社会福祉サービス、オンライン接客サービスなどを実施しています。
各サービスの利用料等が収益となります。運営は株式会社ヒト・コミュニケーションズ、株式会社ジャパンリムジンサービス、フィグニー株式会社などが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は第4期から第6期にかけてやや減少傾向にありましたが、第7期には636億円へと回復・増加しています。経常利益は第6期に一時落ち込みましたが、第7期には25億円まで回復しました。利益率も第6期の低迷から改善傾向にあります。
| 項目 | 2021年8月期 | 2022年8月期 | 2023年8月期 | 2024年8月期 | 2025年8月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 842億円 | 641億円 | 640億円 | 585億円 | 636億円 |
| 経常利益 | 51億円 | 58億円 | 43億円 | 15億円 | 25億円 |
| 利益率(%) | 6.1% | 9.0% | 6.7% | 2.6% | 3.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 28億円 | 32億円 | 19億円 | -0.4億円 | 11億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で増加し、売上総利益も増加しました。売上総利益率はほぼ横ばいですが、営業利益および営業利益率は大きく改善しています。販管費のコントロールや収益性の向上が見られます。
| 項目 | 2024年8月期 | 2025年8月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 585億円 | 636億円 |
| 売上総利益 | 121億円 | 129億円 |
| 売上総利益率(%) | 20.7% | 20.3% |
| 営業利益 | 16億円 | 25億円 |
| 営業利益率(%) | 2.7% | 3.9% |
販売費及び一般管理費のうち、給与が24億円(構成比23%)、支払手数料が13億円(同12%)を占めています。
■(3) セグメント収益
当期は、全セグメントで売上高が前期と同水準か増加しました。特にホールセール事業とアウトソーシング事業が増収となりました。利益面では、ホールセール事業が大幅な増益となった一方、EC・TC支援事業は減益となりました。アウトソーシング事業は前期の損失から黒字転換を果たしています。
| 区分 | 売上(2024年8月期) | 売上(2025年8月期) | 利益(2024年8月期) | 利益(2025年8月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| アウトソーシング事業 | 232億円 | 258億円 | -3億円 | 6億円 | 2.5% |
| 人材派遣事業 | 89億円 | 88億円 | 4億円 | 5億円 | 5.6% |
| EC・TC支援事業 | 108億円 | 93億円 | 9億円 | 3億円 | 3.5% |
| ホールセール事業 | 128億円 | 167億円 | 5億円 | 10億円 | 5.9% |
| その他 | 29億円 | 30億円 | 0.3億円 | 0.6億円 | 2.0% |
| 調整額 | -億円 | -億円 | -0.2億円 | -0.2億円 | -% |
| 連結(合計) | 585億円 | 636億円 | 16億円 | 25億円 | 3.9% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFはプラス、投資CFはマイナス、財務CFはマイナスとなっており、本業で稼いだ現金を投資や借入返済に回している「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。
| 項目 | 2024年8月期 | 2025年8月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 10億円 | 34億円 |
| 投資CF | -12億円 | -36億円 |
| 財務CF | -20億円 | -20億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.9%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は42.6%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、販売・営業・サービス分野に特化した「成果追求型営業支援」をビジネスモデルとしています。常にお客様の笑顔と満足を追求し、明るく活力ある社会の創出に貢献することを事業テーマとして取り組んでいます。
■(2) 企業文化
同社グループは、「ビジネスにおける具現化の伴走者」をテーマとしています。人と人、サービスや仕事と人を結び付けることで社会の課題や悩みを解決する「絆」ビジネスを展開し、より良い社会を形成することを使命としています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは中長期的な経営戦略として、事業ポートフォリオを「重点領域」「成長領域」「深化領域」「再編領域」の4つに分類し、経営資源を集中投下することで強固な経営基盤の確立を目指しています。
* ROE 10%以上
* 配当性向 30%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は「重点領域」として「エアポート」「ホールセール」「デジタル営業支援」「インバウンド・ツーリズム」を定義し、経営資源を集中的に投下します。特にエアポート領域では、インバウンド需要に対応するためグランドハンドリング事業の拡大やランプ事業への注力を行います。また、デジタル営業支援の強化やグループ経営の高度化も重点課題としています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
優秀な人材の確保と育成を事業推進の重要要素と位置づけています。即戦力となる人材や専門性の高い人材へのニーズに応えるため、現場力の強化に貢献するスタッフの確保に注力します。また、デジタル営業支援分野においても優秀な人材を採用し、研修やグループ内人事交流を通じて人材育成を推進します。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年8月期 | 48.5歳 | 11.1年 | 8,282,833円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 17.7% |
| 男性育児休業取得率 | 82.4% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 86.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 75.2% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 87.9% |
※上記数値は主要な連結子会社である株式会社ヒト・コミュニケーションズの実績です。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、管理職手前のリーダー的な存在における女性比率(47.4%)、正社員における外国籍従業員比率(20%超)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 特定の業務分野への依存
同社グループの売上において、アウトソーシング事業の構成比が高く、通信分野やエアポート分野のクライアントに取引が集中する傾向があります。当該事業の需要が大幅に縮小した場合、業績に影響を与える可能性があります。
■(2) スタッフの確保
事業における重要な要素である優秀なスタッフについて、雇用情勢の変化などによりクライアントニーズに適合した人材が確保できない場合、業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 法的規制への対応
労働者派遣法や職業安定法などの労働関連法令、特定商取引法などの消費者関連法令による規制を受けています。これらの法令改正や解釈変更への対応が適切に行えない場合や、法令違反が生じた場合、業績に影響を与える可能性があります。



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