ヴィッツ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ヴィッツ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場のソフトウェア開発企業。自動車や産業機械向けの組込ソフトウェア開発を主力とし、デジタルツインやAIセーフティ等の先端技術も展開します。直近決算では、M&Aによるセンシング事業の取り込みや主力のソフトウェア事業が好調に推移し、大幅な増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社ヴィッツ の有価証券報告書(第29期、自 2024年9月1日 至 2025年8月31日、2025年11月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ヴィッツってどんな会社?


自動車や産業機械向けの組込ソフトウェア開発を主力とし、デジタルツインやAI安全技術も手掛ける技術者集団です。

(1) 会社概要


同社は1997年に株式会社ソフィックス名古屋として設立され、2000年に現社名へ変更しました。2019年に東京証券取引所マザーズへ上場し、2022年の市場区分見直しを経て現在はスタンダード市場に上場しています。2024年にテスコ株式会社を子会社化してセンシング事業を開始、2025年には株式会社リザーブマートを子会社化するなど、積極的な事業拡大を進めています。

連結従業員数は317名、単体では197名体制です。筆頭株主は創業社長の資産管理会社である株式会社Office Hatで、第2位は主要取引先でもある株式会社アイシン、第3位は同じく取引先のオークマ株式会社となっており、事業上の関係が深い企業が大株主として名を連ねています。

氏名 持株比率
Office Hat 15.29%
アイシン 7.52%
オークマ 7.52%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長は服部博行氏が務めています。社外取締役比率は36.4%です。

氏名 役職 主な経歴
服部博行 取締役社長(代表取締役) メイテックを経て1997年に同社設立。CTO等を歴任後、2015年より現職。アトリエ取締役会長、ヴィッツ沖縄取締役会長などを兼任。
大西秀一 取締役副社長(代表取締役) 2001年同社入社。システムズエンジニアリング事業領域部長などを経て、2024年11月より現職。アトリエ代表取締役副社長、クリスタライト代表取締役社長などを兼任。
武田英幸 専務取締役 松下電器情報システム名古屋研究所、船井電機を経て2013年同社入社。組込制御開発部部長などを経て、2024年11月より現職。イーガー代表取締役社長などを兼任。
尾関和磨 取締役 公認会計士。新日本監査法人、JPホールディングス、ジェイキャスト代表取締役社長などを経て2019年同社入社。2024年11月より現職(CFO)。


社外取締役は、領木正人(オークマ特別顧問)、益川路隆(益川公認会計士事務所所長)、山田洋(アイシン執行幹部)、井川真由美(三好総合法律事務所弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ソフトウェア事業」「センシング事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) ソフトウェア事業


自動車、半導体検査装置、産業機械、建設機械メーカー等に対し、組込ソフトウェア開発やコンサルティング、教育サービスを提供しています。また、「SF Twin」(製造業向けデジタルツイン)や「WARXSS」(交通シミュレーション)などの自社製品、AIの安全性を評価する「AIセーフティ」サービスも展開しています。

収益は、顧客企業からの受託開発費、コンサルティングフィー、製品ライセンス料等から構成されます。運営は主に同社が担うほか、アトリエ、ヴィッツ沖縄、スクデット・ソフトウェア、クリスタライト、イーガー等のグループ各社が連携して事業を行っています。

(2) センシング事業


X線検査装置の製造・販売・保守を中心に、X線検査サービスや非接触スキャナーの販売を行っています。産業用非破壊検査装置として、機械部品や電子基板などの内部検査ニーズに対応しており、自社設備を用いた検査受託も手掛けています。

収益は、検査装置の販売代金、保守サービス料、検査受託料等から構成されます。運営は、同社の子会社であるテスコが主に行っています。

(3) その他


全国の公共施設、貸会議室、音楽スタジオ等に向けたクラウド型施設予約システムの開発および保守サービスを提供しています。システム導入によるストック型ビジネスを展開しています。

収益は、システムの開発費および継続的な利用料・保守料等から構成されます。運営は、同社の子会社であるリザーブマートが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は22億円規模から49億円規模へと倍増しており、力強い成長トレンドにあります。経常利益も増減はあるものの、直近では5.9億円と過去最高水準に達しています。特に直近2期は売上の伸びが著しく、M&Aや事業拡大の効果が表れています。当期利益も順調に拡大しており、成長投資と収益確保の両立が進んでいます。

項目 2021年8月期 2022年8月期 2023年8月期 2024年8月期 2025年8月期
売上高 22億円 23億円 25億円 35億円 49億円
経常利益 2.9億円 2.7億円 2.2億円 3.5億円 5.9億円
利益率(%) 13.4% 11.3% 9.0% 10.0% 12.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 1.9億円 1.8億円 1.1億円 2.2億円 3.3億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を比較します。売上高は前期の35億円から49億円へと約40%増加しました。売上総利益も12億円から18億円へ伸長し、利益率も改善しています。営業利益は2.8億円から5.7億円へと倍増しており、売上拡大に伴う利益創出能力が向上していることが伺えます。

項目 2024年8月期 2025年8月期
売上高 35億円 49億円
売上総利益 12億円 18億円
売上総利益率(%) 35.2% 37.2%
営業利益 2.8億円 5.7億円
営業利益率(%) 8.1% 11.7%


販売費及び一般管理費のうち、給与及び手当が2.6億円(構成比21%)、役員報酬が1.4億円(同12%)を占めています。人員増強や子会社増加に伴い人件費関連のコストが増加しています。

(3) セグメント収益


ソフトウェア事業は自動車・産業機器向けの需要が堅調で、売上高40億円、利益5億円と増収増益を牽引しました。センシング事業はX線検査装置の大型案件等が寄与し、売上高9億円を計上して黒字化しています。その他事業は新規連結の影響で売上計上されましたが、取得費用等により若干の損失となっています。

区分 売上(2024年8月期) 売上(2025年8月期) 利益(2024年8月期) 利益(2025年8月期) 利益率
ソフトウェア事業 33億円 40億円 2.5億円 5.1億円 12.7%
センシング事業 1.4億円 9億円 -0.5億円 0.4億円 4.8%
その他 - 0.1億円 - -0.1億円 -61.8%
連結(合計) 35億円 49億円 2.8億円 5.7億円 11.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年8月期 2025年8月期
営業CF 3.6億円 5.7億円
投資CF 1.6億円 0.9億円
財務CF -2.6億円 -0.8億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は16.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は69.4%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「Creating Life of Your Dreams ~半歩先の技術で人々の生活を豊かに~」を掲げています。世の中のニーズを敏感に察知し、半歩先のソフトウェア技術で「未知の課題」を解決することを自らの使命とし、未来社会への貢献を目指しています。

(2) 企業文化


役職員が誇りを持ち活躍し続けられる「社員が幸福を実感できる企業」を目指しています。社会のニーズに応える技術の習得や高度化を実践すると同時に、未来社会に貢献し企業を持続的に発展させるため、ソフトウェアの価値を高め、収益構造を変革する企業として活躍することを行動の指針としています。

(3) 経営計画・目標


安定的な経営と収益構造の変革を実現するため、以下の指標を重要な経営目標として掲げています。
* 自己資本利益率(ROE)
* 営業利益
* 売上総利益率

(4) 成長戦略と重点施策


「Society 5.0」の実現に必要なシミュレーション、セキュリティ、セーフティ、AIセーフティ等の基本技術を軸に競争優位性を確保する方針です。エンジニア不足や少子化を見据え、労働集約型の収益構造から、知財や製品、新サービスによる収益比率を高める「次世代事業の創生」と「収益性の向上」を目指します。

* ソフトウェア事業:技術者育成、次世代技術(AIセーフティ等)の獲得、知財・自社製品の販売拡大による高付加価値化。
* センシング事業:ソフトウェア技術との融合による非破壊検査技術の高度化(高精度化・自動化)と利用用途の拡大。
* 組織力強化:グループ間の技術連携・人材流動性の向上、エンゲージメント向上による人材確保。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


技術進歩の速い環境下で持続的に成長するため、従業員のスキル棚卸とポートフォリオ管理によるターゲットを絞った育成・採用を推進しています。また、労働力提供型から付加価値提供型への転換を目指し、AI活用やDX化による開発効率向上、公正な評価・報酬制度の整備、心身の健康を重視した労働環境づくりに取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年8月期 35.3歳 8.1年 6,348,915円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 8.3%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全) -
男女賃金差異(正規) -
男女賃金差異(非正規) -


※同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、男性社員の育児休業取得率(100%)、中途採用社員比率(管理職)(29.2%)、女性エンジニア比率(9.9%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 関連市場及び顧客経営状態に関連するリスク


同社グループの顧客は自動車、産業機械、建設機械メーカー等です。為替変動や地政学的要因で産業全体が悪影響を受けた場合や、数年先に向けた顧客の投資計画に影響を与える事象が発生した場合、同社グループの財政状態や業績に悪影響が及ぶ可能性があります。

(2) 特定取引先及び特定産業分野への依存


売上の多くは自動車分野であり、特にトヨタ自動車やアイシン及びそのグループからの受注が中心です。自動車市場の拡大予測が想定を下回る場合や、特定取引先の経営状態悪化・戦略変更があった場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 品質不良による損害賠償のリスク


ソフトウェア開発やシミュレータ事業等において、品質不良や納期遅延による損害賠償が発生する可能性があります。特に自動車向け開発は要求が厳密であり、IT賠償保険でカバーできない規模の賠償請求が発生した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) 人材の確保と人件費の高騰


事業継続・拡大には十分な技術者の確保が必要ですが、採用難や退職者の増加により計画通りに確保できない可能性があります。また、人件費や外注費の高騰が発生した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。