ココナラ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ココナラ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証グロース上場。個人の知識・スキル・経験を売買できる「ココナラスキルマーケット」を主力とし、法律相談やエージェント事業も展開しています。2025年8月期は、新規事業やM&A効果により売上高94億円で前期比42.8%の大幅増収を達成しましたが、営業利益は2.6億円で同16.0%の減益となりました。


※本記事は、株式会社ココナラの有価証券報告書(第14期、自 2024年9月1日 至 2025年8月31日、2025年11月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ココナラってどんな会社?


個人のスキルを可視化しマッチングするプラットフォームを運営。人手不足を背景に多様な働き方を支援する企業です。

(1) 会社概要


2012年1月にウェルセルフとして設立され、同年7月に「ココナラ(現・ココナラスキルマーケット)」を開始しました。2014年6月にココナラへ商号変更し、2021年3月に東証マザーズへ上場しました。2024年6月にはココナラテック(旧アン・コンサルティング)を子会社化し、エージェント事業を拡大しています。

同グループの従業員数は連結266名、単体219名です。筆頭株主はメディアプラットフォームを運営するnoteで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は個人株主の新明智氏です。

氏名 持株比率
note 9.70%
BBH(LUX) FOR FIDELITY FUNDS PACIFIC FUND - PACIFIC POOL 5.11%
新明 智 4.67%

(2) 経営陣


同社の役員は男性4名、女性1名の計5名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長CEOは鈴木歩氏が務めています。社外取締役比率は80.0%です。

氏名 役職 主な経歴
鈴木 歩 代表取締役社長CEO 2006年リクルート入社。2016年5月同社入社、執行役員、取締役を経て、2020年9月より現職。


社外取締役は、小池政秀(gratch scaling代表取締役)、矢冨健太朗(南富士有限責任監査法人パートナー)、肥後結花(インクルージョン・ジャパン代表取締役)、今村健一(ispace Chief People Officer)です。

2. 事業内容


同社グループは、「マーケットプレイス」および「エージェント」事業を展開しています。

(1) マーケットプレイス


個人の知識・スキル・経験を売買する「ココナラスキルマーケット」や、弁護士検索サイト「ココナラ法律相談」などを運営しています。デザイン、制作、相談など多岐にわたるサービスが出品され、すべての取引がオンラインで完結するのが特徴です。

収益は、主に「ココナラスキルマーケット」における取引成立時の出品者および購入者からの手数料や、「ココナラ法律相談」における弁護士からの広告料収入です。運営は主にココナラが行い、法人向けサービスの一部をみずほココナラが担っています。

(2) エージェント


ITフリーランスと企業をマッチングする「ココナラテック」や、ハイクラス人材紹介の「ココナラプロ」、ビジネス代行の「ココナラアシスト」などを展開しています。マーケットプレイスでは扱いづらい継続的な業務委託ニーズに対応しています。

収益は、企業からの業務委託に対する報酬等が主な源泉となっています。運営は、ココナラおよび子会社のココナラテックが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2022年8月期から2025年8月期までの業績を見ると、売上高は順調に拡大しており、特に直近では大幅な増収を達成しています。利益面では、投資フェーズによる赤字期間を経て黒字化し、その後は安定的な利益を確保しつつ事業拡大を進めている傾向が見られます。

項目 2022年8月期 2023年8月期 2024年8月期 2025年8月期
売上高 38億円 47億円 66億円 94億円
経常利益 -5.1億円 -1.7億円 2.3億円 2.3億円
利益率(%) -13.3% -3.6% 3.4% 2.4%
当期利益(親会社所有者帰属) -4.9億円 -0.8億円 2.4億円 3.1億円

(2) 損益計算書


売上高は大幅に増加していますが、営業利益率は低下しました。これは事業規模の拡大に伴い売上原価および販売費及び一般管理費が増加したことによるものです。売上総利益率は高い水準を維持していますが、成長投資を継続していることが伺えます。

項目 2024年8月期 2025年8月期
売上高 66億円 94億円
売上総利益 51億円 61億円
売上総利益率(%) 77.3% 65.1%
営業利益 3.0億円 2.6億円
営業利益率(%) 4.6% 2.7%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が16億円(構成比26%)、広告宣伝費が12億円(同21%)を占めています。

(3) セグメント収益


マーケットプレイス事業は増収ながらも利益は微減となりましたが、依然として高い利益率を維持しています。一方、エージェント事業は売上が急拡大していますが、先行投資により損失を計上しています。全体として、既存事業で稼ぎつつ新規領域へ投資する構造となっています。

区分 売上(2024年8月期) 売上(2025年8月期) 利益(2024年8月期) 利益(2025年8月期) 利益率
マーケットプレイス 51億円 57億円 5.9億円 5.6億円 9.7%
エージェント 15億円 37億円 -2.4億円 -2.8億円 -7.6%
調整額 - - -0.5億円 -0.2億円 -
連結(合計) 66億円 94億円 3.0億円 2.6億円 2.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業の営業活動からキャッシュを生み出しつつ、投資活動や財務活動(借入返済等)に資金を充てている健全型です。

項目 2024年8月期 2025年8月期
営業CF 6.2億円 2.6億円
投資CF -13.4億円 -4.8億円
財務CF 16.3億円 -7.4億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は14.6%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は31.8%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「一人ひとりが『自分のストーリー』を生きていく世の中をつくる」をビジョンに掲げています。個人の知識・スキル・経験を可視化し、必要とする全ての人に結びつけ、個人をエンパワーメントするプラットフォームを提供することをミッションとしています。

(2) 企業文化


同社はビジョン実現のために集まるプロジェクトチームであり、「個人と会社は対等である」という考え方を基本方針としています。個人のキャリアは個人がつくるものであり、会社は育成ではなく「成長支援」にコミットするという姿勢を重視しています。また、バリューの体現を評価・表彰することで成果創出への行動を支援しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、あらゆる分野での困りごとに対して「困ったらココナラ」と想起されることを目指しています。そのために、全体の流通総額を重要な経営指標として設定し、企業規模の拡大と企業価値の向上を図っています。

(4) 成長戦略と重点施策


同社は「すべてが揃うサービスプラットフォームを確立する」を方針とし、経済圏の構築を進めています。マーケットプレイス事業ではデータベースを活用したプロダクトラインナップの拡充を、エージェント事業ではAI活用等による競争優位性の強化を推進します。また、オーガニックな成長に加え、M&Aも積極的に行う方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「組織戦略オプションの獲得」をコンセプトに、既存事業の維持・拡大と新規事業の立ち上げを両立できる体制を目指しています。特に「採用」と「エンゲージメントの維持・向上」を重点テーマとし、キー人材の確保や抜擢人事による成長機会の提供、スキル学習プログラムの整備などを行っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年8月期 34.7歳 2.8年 6,596,193円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 8.3%
男性育児休業取得率 87.5%
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用) -
男女賃金差異(非正規雇用) -


※同社は公表義務の対象ではないため、有報には男女賃金差異の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、リーダーシップ比率(34.7%)、リモートワーク制度の利用比率(78.0%)、副業制度の利用比率(13.6%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) シェアリングエコノミー市場の動向


同社が属するシェア×スキルの領域は拡大が見込まれていますが、法令整備やトラブル発生、利用者ニーズの変化などにより市場拡大が予測通り進まない場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 競合環境の激化


クラウドソーシングや海外事業者などとの競争が存在します。現在は先行者利益を有していると考えていますが、海外大手や他社の新規参入により競争が激化した場合には、業績に影響を与える可能性があります。

(3) サイト利用の安全性と健全性


無形商材を扱うため、サービス品質に関する認識相違やトラブルが生じる可能性があります。また、不適切なサービスの出品リスクもあります。監視体制を構築していますが、トラブルが発生した場合は信頼性の低下や損害賠償請求等により、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 生成AIの影響


生成AIの技術進歩により、同社サービスの一部が代替される、または低コストで提供される可能性があります。利用者の需要が代替手段へシフトし、収益機会や競争優位性が損なわれるリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。